文章力無いもので、説明が分かり辛いかもしれません。
ではでは、ご覧くださいませ。
愛しい人との別れを想像し沈痛な顔になる風間と太刀川。霧ヶ峰は自嘲するかのような軽薄な笑みを浮かべている。
「あの時程自分の無力さを呪った事は無い。何も出来なかった自分を憎んで……。俺はそのまま二年も近界を旅していたんだ」
「そうか………。命も、か……」
「………………」
空気が痛く感じる程の沈黙。何時まで続くのか。
何か話しかけろよ、いやお前が話しかけろよと米屋と出水が肘を突き合ってなんとかこの空気を変えようと奮戦するも、奮戦虚しく誰も声をかけられなかった。
だが、いつの間にか基地に直通する通路に到着した事で痛々しい空気も霧散し、ホッとため息を吐く一同だった。
「この通路のようなものがこの三門市の至る所にある。鍵となるのは隊員が個人でもつトリガーだ。それを掲げないと扉は開かないという仕組みになっている………いや、これ以上の説明はお前には必要なかったか」
「いや、五年前とは技術も違うだろうからそう説明してくれるのは助かる」
「ふん、この通路のシステムを考案した本人が何を言う。今の開発室長の鬼怒田さんもこのシステムを褒め称えていたぞ」
「真逆、近界の技術をそのまま使ったようなものなんだ。俺を褒めるのは筋違いというものだろう。俺がやったのはこの技術を導入して精々、認証にボーダーで認識されたトリガーを使うことしか手を加えていない」
「それでも、だ。この近界の技術を導入しようと決めたのはお前だろう。その結果、今では隊員の足となって大助かりだ。警戒区域外に出たり、基地に入ったりする時に使われるのが主なんだが、もしも、無かったら、と考えるとその功績は莫大だと鬼怒田さんも言っていたぞ」
「ふむ、鬼怒田さんという人物がいかなる人物かはわからんが有難く受け取っておこう」
打てば響くというのはこういう事を言うのだろう。口角を僅かに釣り上げながら掛け合う三人は親友、戦友という言葉が似合いそうなほどしっくりときた。
「………風間さんたち、三人は元々は一緒の隊だったんですか?」
「いや、蒼也と慶は忍田さんの隊に三人で配属されて、俺は命と一緒に二人で独立して動いていた」
「さっきも言っただろう?こいつの異名は【単体戦略機動兵器】だと。それ程青藍の戦闘能力は俺たちとかけ離れている。下手に組ませて青藍の戦闘能力に枷を嵌めるのならば、いっその事単体で動かしたほうが運用し易い」
「そーそー、青藍は一人で忍田隊と旧東隊に最上隊、林藤隊の四つの隊だったか。それと真正面からぶつかって引き分けにするオカシイ戦闘能力をもつからなぁ。まぁ、綾小路もいたから一人じゃなかったけど、ほぼ一人でやり合っていたようなものだしな」
懐かしそうにしながらも、遠い目をしながら放たれた言葉は三輪たちを戦慄させるのに十分すぎる言葉だった。
当時の忍田隊は忍田、太刀川、風間兄。
旧東隊は東、二宮、加古。(後に三輪)
最上隊は最上、木崎、迅、小南
林藤隊は林藤、風間弟、嵐山、片桐。
現在のボーダーでも最強格の隊員が全員揃っている夢のような隊だったにもかかわらず、目の前の霧ヶ峰は引き分けに持ち込んだ。それも綾小路と二人で、だ。同じトリガーで、ブラックトリガーを持っていない状態でだ。
改めて一同は思う。
ーーーー忍田や二宮、太刀川が可愛く見えるほど怪物じゃねぇか、と。
それは風間と太刀川も同意見のようで感慨深げに頷いている。
「……貴様ら、失礼な事を考えたな」
ギックゥッ!?とトリオン体が跳ね上がる。疑問符も無い確信した口調だった。目を閉じたままだというのに、左目に走る傷痕と冷たい端麗な顔立ちと身にまとう、何某海賊王の覇王色もかくやの威圧感が恐ろしい。
顔を青ざめた一同は瞬時にアイコンタクトを取る。
(何故、暴露た!?)
(しまった、霧ヶ峰のサイドエフェクトのこと、忘れていた!)
(え、ちょっと何それ、なんで忘れんの、バカなの?ねぇ、バカなんでしょ)
(霧ヶ峰のサイドエフェクトは超感覚であるS級に分類される【波紋振動体感】だ)
(え、どういう事。なんかチートの気配が………)
(いや、霧ヶ峰さんの存在そのものがチートっていうか、バグっているから)
(説明するぞ?【波紋振動体感】とはーーー)
「【波紋振動体感】とは、何なのかを説明しようか。例えば、音。音も振動、波となって空気や水、物体を振動させて音を生み出すだろう?又は光にも波があるのは知っているだろう?所謂電波というやつだが、それを肌で感知出来る能力だ。分かりやすく言えば、太鼓を鳴らすとビリビリと空気が震えるのが肌で分かるだろう?あれと同じ原理だ」
これほどの内容のアイコンタクトを瞬時に取れる風間たちもそうだが、さらっと瞬時に交わされるアイコンタクトの中に入れる霧ヶ峰も大概である。
「なにそのチート……って使いづらく無い?使いところなさそうだけど。僕も聴覚強化のサイドエフェクトを持っているけど使い所を分けてやらないと負担になるんだけど」
「いや、そうでも無い。これは、足音、銃を撃つ音、剣を振るう事で起きる空気の揺れ、トリオンを使う事で起こるトリオンの伝播。意識を集中させれば、心臓の鼓動も分かる。息遣いも筋肉の動きや骨の軋みまで。振動や波紋が届く限りの範囲全てが俺の領域だ。確かに、このサイドエフェクトが発現したばかりの頃……7歳くらいか。吐き気やら頭痛で動けない日もあったくらいだが、有吾さんに拾われて旧ボーダーに入ったり、近界を旅したりすることである程度のコントロールが出来るようになったから今では大した苦にはならない」
口角を吊り上げて笑っている霧ヶ峰だったが背筋が凍る思いだった。近寄ろうとすれば足音で。狙撃しようとすれば、音速を超えない限り弾の音で。銃撃しようとすれば、発砲音で。近接に持ち込めば、刃先の風切り音で。モールクローで奇襲をかけても地面を割る音で。
音を耳で聞くのではなく、振動を肌で感じるというのだから、反則もいいところだった。
このサイドエフェクトがある限り、奇襲も狙撃も通用しないという事になる。
真正面からの戦闘も忍田隊ら四つの隊、十四人とぶつかり合って引き分けになるほど桁外れの戦闘力。そして、今はブラックトリガーも持ち合わせ、その戦闘能力は計り知れない。
正に化け物だった。
「まぁ、前に忍田さんたちとやりあった時とは違って“視力を失って”いるし、このサイドエフェクトも調整が難しいからいまやり合えばどうなるかはわからんな。ブラックトリガーを使えば勝てるだろうが、ノーマルトリガーだと負けるかもしれんな」
「そこだ。なぜ視力を失った?それに左目の傷痕。なにがあった?」
「………会議室で纏めて説明しようかと思っていたんだが、……良いだろう。近界にある、巨大なトリガーで作られた星々、つまりは近界民が暮す国が一定の軌道で回っている事は分かるな?その星々は貿易をする国もあれば、戦争による略奪経済を成り立てている国もある。そして、残念な事に近界民は略奪経済の国が多く、そんな国が近づけばどうなるかは分かるだろう」
「……戦争か」
「然り。この傷は四年前の春を過ぎた頃、【キオン】に滞在していた時に運悪く、近界でも最大級の軍事大国である【アフトクラトル】が攻めて来た。ブラックトリガー五本を投下した大兵力だ」
「五本………!!?」
驚愕する風間たち。
このボーダーでも、霧ヶ峰が持つブラックトリガーを含めて三本しかない。そして、ブラックトリガーは防衛のためにも重要な戦力であり、攻勢に多くのブラックトリガーを投入できない。それでも五本のブラックトリガーが投入されたのだからアフトクラトルの軍事力が如何程強大かが理解出来るだろう。
「アフトクラトルは四年前の時点で13本のブラックトリガーを保有しているのを確認している」
「な、なん……だと……?」
「……ん?ちょっと待て、四年前の春だと?こちらに攻めてきた時と重なるな。もしや、こちらに攻めてきた国もアフトクラトルとやらか?」
「いや、それは違う。このの世界を攻めたのは決まった軌道を持たずに彼方此方を自在に飛び回る星、【乱星国家】と呼ばれる国の一つだ。名前までは掴めなかったが間違いなく近界最大級の軍事力を持つ、というところまで調べられたが。……話が逸れたな。攻めてきたアフトクラトルのブラックトリガーの内、四本を相手にしていた」
思わず唖然とする風間。自分らしくないということは分かっていたが、ブラックトリガーを四本も相手にしていたとは誰が思うだろうか。
この人の滅茶苦茶な戦闘能力の片鱗を垣間見た気がして思いっきり精神的疲労を負う。
「命がブラックトリガーになった事で四人とも討てたが、それと引き換えに俺の両の眼と……命を失った」
「そうか………」
それしきり会話が途絶え、重苦しい沈黙が辺りを包む。綾小路と面識がある風間と太刀川はその死を悼み、綾小路の事をよく知らない三輪たちは何も言えず、目の前を歩く男の壮絶な過去に思いを馳せた。
「………あれ?霧ヶ峰、くん……?」
「ん?おや、沢村さん。お久しぶりです」
いつの間にか会議室の近くにまで来ていたようで、通りかかった沢村と遭遇する。
沢村はあり得ないものを見たかのような表情になり、バサバサと抱えていた書類を落とすが全く視界に入っていないようでツカツカと歩いてくると、存在を確認するかのように霧ヶ峰の顔や体を叩いたり、頰を引っ張ったりして確認してくる。
「えっ!?嘘、本当に霧ヶ峰くんなの!?」
「本物の霧ヶ峰ですよ。五年ぶりですね」
相変わらず目を閉じたままだったが、表情は穏やかで懐かしいものを見たかのような顔になる。トリオン体であるが故に赤くない頰を摩るのはご愛嬌だ。
「さっさと会議室に入りませんか?城戸さんたちにも顔を合わせないとなりませんから」
「あっ!そ、そうよね、ごめんね」
お気になさらず、と顔を赤くして謝る沢村を先に会議室に入れてから扉を軽くノックすると、中から「入りたまえ」と声がかかる。
「……む?何処だ?」
「全く……。これで入れるだろう」
「すまん、助かる」
ドアノブの位置がわからず、空振りしながら探る霧ヶ峰に目も当てられなかったのか、風間が扉を開けて先に入る。
「……霧ヶ峰か。五年間ご苦労だった」
「……城戸さんたちも創建なようで何より。しかし、随分とあの頃と大きく変わりましたね」
「ふん……、我々もまた人間だったと言う訳だ。お前も色々あったようだな。ふむ………今晩ひと飲みどうだ?」
皮肉げな笑みを浮かべ、片手で器を傾ける仕草をして霧ヶ峰を呑みに誘う城戸。そんな姿は三輪たちにとって初めて見るものであり、瞠目し、啞然としており、太刀川たちは懐かしいものを見たなというように目を細めて喜ぶ。
「お、いいですね。何処か美味いところあればお願いします」
「ふ、期待しておけ。忍田くんと林藤くんもどうだ?」
「そうですね。久しぶりに旧ボーダー成年組を集めて飲み明かすのもいいでしょう」
「おっし、俺んとこからはレイジを連れて行くわ。忍田んとこと城戸さんとこはよろしく!」
気づけばわいのわいのと話が進み、沢村が嬉しそうに微笑みながらお店を見繕うために会議室を出て、林藤はレイジに電話を掛けて夜の都合を開けろと上司命令を下し、忍田は嵐山や片桐に声を掛け、城戸も自ら旧ボーダーからいるメンバーに声を掛けている。
同席している鬼怒田や根付、唐沢といった人物もこの流れにはついていけないようでぽかんと口を開けて呆気にとられていた。
そうしてひと段落すると、三人とも思わず気恥ずかしそうに後頭部を掻いてごまかそうとする。
「……コホン。暫し我を忘れていた。さて、話を訊こう」
「その前に、城戸さん、鬼怒田さんたちにも彼のことを説明しておかないと……」
「……ふむ、そうだな。鬼怒田くん、根付くん、唐沢くん。彼は霧ヶ峰 青藍。旧ボーダーの時代から私たちと共に活動していた古参の一人だ。しかし、五年前にある目的を果たすためにボーダーを抜けて近界を旅していた。しかし、こうして居るということはその目的も果たせたのだな?」
「完全にとは言えませんが、手応えはあります。恐らく、今年中にやって来るでしょう」
「……そうか。他にはあるか?」
「ええ、もちろんですよ。私が解析するつもりでしたが、こちらの鬼怒田さんが開発室長というのであれば、彼に渡した方がいいでしょう。……このトリガーを収めてください。近界の様々なトリガーです」
目を瞑った城戸が催促すると、霧ヶ峰は背中にぶら下げていたリュックを卓の上に置いて袋の紐を解き、中から十二本のトリガーを取りだして並べる。
「そしてーーー綾小路 命です」
コトリと、腰から取り出して、大切そうに撫でた後置いたのはブラックトリガー。一点の曇りもない黒い小さな、手のひらに収まるほどのトリガー。
それをみた城戸たちの目が見開かれる。
「なに……!?」
「綾小路がブラックトリガーになっちまったのか……!?」
「真逆……!」
「忍田さん。申し訳ありません。命を……命を守りきれませんでした……!」
林藤が心底悲しそうに顔を歪め、忍田が呆然とする。突如、霧ヶ峰が忍田に向き合って深く頭を下げる。それはもう、土下座をせんがばかりの勢いだ。閉じられた瞼から薄っすらと涙まで滲み出る。
綾小路は忍田の叔母の娘に当たる存在で忍田が妹のように可愛がっていた。
五年前、霧ヶ峰に付いて近界に出ようとした時も猛反対したが、説得されて泣く泣く認めた。説得時に霧ヶ峰との一騎討ちもあった模様。
「ーーー……………そう、か………。青藍、辛かっただろう……。私にもその悲しみ、背負わせてくれ」
「此れは……此れはっ!俺の、過失で……!」
「今晩、詳しく話を聞かせて貰おう」
五年前、青藍はこの近界への旅は凡そ三年程で終える予定です、と言っていた。しかし、予定を過ぎても帰ってこないものだから、死んだのかと半ば諦観していた。
しかし、五年経って帰ってきた。綾小路と両眼を失って。
何があったのか、察しが出来ない忍田ではない。それどころか、頭を下げたままの霧ヶ峰の肩に手を置いて励ましの言葉もかけてくれた。
忍田は守りきれなかった霧ヶ峰のみが悪いのではなく、行かせた自分らにも、綾小路を追い込んだ敵にも様々な原因があると判断した。
改めて霧ヶ峰は、本当に強い人だと忍田に尊敬の意を抱く。そして、その言葉だけでも救われたような気もした。
■□■□■□
「ーーーそうか。では、鬼怒田くん、このトリガーの解析、よろしく頼む」
「ええ、分かっとります。至急解析班に回します。霧ヶ峰くんも協力頼む。今のところ、このトリガーの扱いに長けているのは君だからな」
「勿論です。あ、ですが、これらのトリガーは近界で適当に漁ってきたものですから、この世界でも適しているかと言われれば首を傾げざるを得ないものもあります」
「それを調べるのがワシらの仕事だ。気にせんでいい。それにしても……、此れほどのトリガーは遠征4回分の成果だ。素晴らしい、未知のトリガーだ」
霧ヶ峰が持ってきたトリガーは十二本。
その内訳は【キオン】は二本、【ロドクルーン】は一本、【ガロプラ】も一本。【スピンテール】二本、【カルワリア】二本、【レオフォリオ】一本、【ベルゼル】二本。
どの国もこの世界とは全く違うトリガー技術の発展を辿ってきた。確かに、この世界もトリガー技術は近界から取り入れたものであるが、この世界独自の発展を遂げた。
しかし、まだまだトリガー数は決定的に足りないのだ。アフトクラトルならば、ブラックトリガー十三本に加えてノーマルトリガーも数十、数百、数千とあるだろう。此方の世界とは違って星そのものがトリガーでできているのだから、トリガーに対する知識には天と地程の差がある。
その差を埋めるためには他の星のトリガーを研究、開発し、新たなトリガーを作る必要があったのだ。
「本当ならば、アフトクラトルからもトリガー持って来たかったのですが、ガロプラとロドクルーンで大暴れしたので、アフトクラトルに警戒を抱かせてしまったようで、入る事が出来なかったんです」
「大暴れって……何やってんだよ」
「いやぁ、あの時は命を失ったばかりで荒れていましたからねぇ………」
呆れたような表情を浮かべる林藤に苦笑を浮かべた。
近界では色々あったなと思いを馳せる。
すると、扉の外からドヤドヤと足音が響いて、会議室の床を震えさせる。一人だけではなく、数人の足音。
「ん?誰か来ましたね……いや、此れは見知った人々ですね」
コンコンとノックが鳴り、城戸が入室を許可すると、わらわらと人の波、波。
「久しぶりだな、望、匡貴。冬島さん、東さん、レイジ、迅に、嵐山、片桐、桐絵」
「本当に霧ヶ峰か!?」
「漸く帰って来たのね!遅いんだから……!心配したのよ……」
入ってきたのは旧ボーダーの頃から共に戦ってきたメンバーたち。嵐山が喜びを爆発させたかのように満面の笑みを浮かべて肩を叩き、加古が涙声交じりに声をかけてくる。
その他の皆も穏やかに、ホッと一息付いたというような顔だった。
「五年も居なくて済まない」
「本当よ!……でも、此れからは此処にいるんでしょ?」
「ああ、そのつもりだ。……それと、迅。お前にはこの未来は視えていたのか?」
「………ああ。だが、確率は一番低かった。霧ヶ峰さんと綾小路さんの二人なら問題なくくぐり抜けられると思っていたんだ。慢心していたんだ……。本当なら、伝えるべきだったのに……」
険しい顔になった迅。彼はサイドエフェクトで未来予知ができるため、綾小路がブラックトリガーになるという結末も視えていただろう。又は二人とも近界で死ぬという未来も。
心の底から悔いるような表情を浮かべているが、霧ヶ峰にそれを責めるつもりは無い。
「迅。俺はお前を責めるつもりは無い。不甲斐ないのは命を守れなかった俺自身だ。せめて、命のためにしてやれるのは“これ”で仲間を守る事だろう。最期の願いでもあるし、常に言っていた事だからな」
《ーーー私は、もっと、もっともっと強くなって、青藍も、忍田さんたちも手が届く限り皆を守れるようになりたいの。皆が笑顔でいられるととても嬉しいから。欲張りだってのはわかってる。でも、青藍を見ているとそう思いたくなってくるの。憧れ、と言えばいいのかな》
青藍の脳裏にそう言って頰を赤くしてはにかむ綾小路の顔が浮かぶ。しかし、その彼女はブラックトリガーとなって、この世を去った。残された霧ヶ峰にできる事は彼女の願いを叶えること。つまり、皆が笑顔で居られるようにする事。それだけだ。
「………え?な、何の話なの?青藍、命は……、命はどこ?……嫌よ、最期なんて、守れなかったなんて………!」
「加古……!青藍、綾小路は……」
「……これだ」
涙を浮かべて青藍に縋り付く加古。彼女は綾小路と同じ時期にボーダーに入ったため、本物の姉妹のように仲が良かった。綾小路が霧ヶ峰の恋人になったときは悔しがったものの、お似合いだと祝福してくれたのだ。
そんな綾小路が居ないなんて信じられなかった。もうあの顔を見る事は出来ないのだと、笑いあう事はもう来ないのだと、恋話をする事も無いのだと、あの温もりを感じる事はもう無いのだと。
二宮が加古の肩に手を置いて慰め、固い表情で問いかける。
それに対する青藍の答えは卓に置かれた黒いトリガーを手にとって加古たちの目の前に差し出す。
「そんな……っ!命、命………!」
「嘘よ……!」
「そんな……」
「………何死んでんだ。何を聞いていた……。死んだら意味が無いと言っただろう……」
綾小路が変化したブラックトリガー。
そう、脳が認識した途端、涙が溢れる。加古と小南が真っ先に泣き崩れ、嵐山が呆然とつぶやき、木崎が厳しい表情になる。
言葉を発しなかったメンバーも悲痛な表情になり、それを見つめる霧ヶ峰、迅たちは悲しげな表情を浮かべる。
文章力が無いもので、サイドエフェクトの説明が分かり辛いかもしれません。
イメージとしては、影浦+菊地原のサイドエフェクトが一番近いです。もっとも、自身に向けられた感情を感じ取る能力でしたが、霧ヶ峰は振動や波紋を感じる能力です。
発現したときは常に酷い船酔いの状態で視界や感覚の全てが歪んでいるように感じるという状態でした。
旧ボーダーの隊員については想像です。東隊は原作設定にあるようでしたので、そのまま使っていますが、五年前以前の時点でしたので、三輪が未加入という設定になっています。
城戸さんの態度、軟化です。まぁ、旧ボーダーメンバーの前のみです。