ワールドトリガー■バグ級チートの歩む道■   作:霧のまほろば

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感謝至極の念に堪えません。
第3話投稿になります。

今回は次回の模擬戦に繋げるための会話中心の進め方となります。


第3話 その男のランクは?

泣き崩れた加古と小南がレイジと嵐山に連れられて会議室を出て行き、静かになった会議室。四人もイヤホンをつけているから会議室の会話の内容は通じている。

 

「ーーーさて、此れから、霧ヶ峰のボーダー内での立場になるのだが」

「立場?」

「そうだ。お前は五年間ボーダーに居なかった。その間にもボーダーもいろいろ変わった。しかし、その変化をお前はまだ知らないだろう?」

「ええ、そうですね。此処に来るまでに話はある程度聞きましたけど、基地を建設した事、複数の支部、隊員数も増えたことで、ランク付けをする事、トリガーも数種類増えた事。差し当りその辺りですか」

「概ね、その認識で間違っていない。基地の内部や隊員の紹介、トリガーの種類は追々教えていくつもりだが、それには慣れが必要だと思う。だが、目下の問題は霧ヶ峰のランクを如何するかだ」

 

普通ならば、新入隊員はC級から始まるのだが、この男は五年前、ボーダーに居たという事実があり、そして、その実力もA級以上。更に言うならばブラックトリガー持ちであり、S級となるのが道理だった。

しかし、何も知らない隊員から見れば、この男は得体の知れない存在であり、そんな男がいきなり自分たちの頭を超えてS級、A級になるとなったら、反発があるのは目に見えている。されば、となれば、B級となるが、目の前の男はそれを断った。

何故かと問いかける。

 

「いきなりB級に飛び入りしても反発はあるでしょう。それに、新しく増えたトリガーの訓練を積むためにもC級スタートの方がいいでしょう。但し、有事の事態はブラックトリガーを遠慮なく使います」

「ううむ……。確かに、一理あるが……」

「霧ヶ峰さんは孤月とトリオンキューブだけでも充分強いじゃないですか。それにブラックトリガーが加わるのですから、別にS級、A級から始まっても、誰も文句は言いませんよ。言うとしたら、霧ヶ峰さんの事を知らない人でしょうけど、実力を見せてやれば誰もすんなりと認めると思いますよ」

 

鬼怒田が唸るとその後ろから片桐が手を上げて発言する。その内容も最も過ぎで皆が頭を悩ませる。

それに、と続くのは二宮だ。

 

「まだ触った事のないトリガーに慣れておきたいのならば、ランク戦や訓練を重ねて行けば直ぐにマスタークラスになれるだろう。何故その実力でC級になろうと思う。それに、そのブラックトリガーを持っているのならば、A級、B級云々の前にS級になるのが当然でしょう」

 

二宮も霧ヶ峰の意見に反対を具申する。そして、よく見れば、太刀川が不満気な顔をしている。

 

「慶、何故そんな不満そうな顔をする」

「S級やC級になればランク戦が出来ないだろ。だからA級に入れ!でなくば、B級には必ず入れ!」

「別にS級やC級でもポイントが変動しない模擬戦でもやり合えるでしょうに……」

 

子供のように駄々をこねる太刀川が可笑しくてついつい口角を吊り上げて笑ってしまう。旧ボーダー時代から霧ヶ峰と太刀川、迅はライバル同士であり、現在の戦績は霧ヶ峰が大きく二人を引き離して勝ち越して、時点で太刀川、迅と続く。

 

「………ふむ、霧ヶ峰。何故スコーピオンら新しいトリガーに拘る?何かあるのか?」

「実は、まだ未定のようですが、この世界に近界から大規模侵攻が起きるようです」

「なに……!?」

「どういう事だ!?迅!」

「大規模侵攻のイメージはあったけど、物凄い揺らいでいて、道ができたり、出来なかったり、大規模侵攻そのものが起きたり、起こらなかったりと不安定だったからまだ伝えるわけにはいかなかったんだけど、ついさっき……、ちょうど霧ヶ峰さんが帰ってきた頃にイメージが定まったんですよ」

 

つまり、未来が大きくぶれていたため、はっきりしたイメージが見えず、こんな事は初めてだったため、様子を見ていたら、その時に霧ヶ峰が帰ってきた。帰ってきたのと同時にぶれていた未来が定まり、一つの道が見えたのだ。

 

「成る程、大規模侵攻が起こるかどうかのキーは俺だったという訳か。俺の情報源はその大規模侵攻を起こす星の配下の星の情報だ。それで、迅、どうなった?」

「結構酷いね……。どの道でも死者は確実に出る。行方不明になるやつも出る。それに最悪なのはブラックトリガーも数本も侵攻して来るよ。霧ヶ峰さんの抑えの為にみたいだな。それで街が壊滅する未来もあった」

「ふむ……。俺を抑えるために、となればヴィザ翁も出てくるか……。次こそは、斬る」

 

刹那。ゾン……と会議室の広い空間を闇が覆い潰す。次の瞬間、黒い空気は元の色を取り戻すが、その代わり、上から凄まじい重量で押し付けられるかのような錯覚さえ起こる、否、実際に地面に押し付けられようとしていた。トリオンでできている窓もビリビリと震え、卓に置かれたコップも次々と砕け弾け飛ぶ。

 

「むぅ……!なんという重圧……」

「む、……済まぬ」

 

ドパァンッと到底コップが割れるような音じゃない破裂音が響き、それで我に返った霧ヶ峰の身から重圧が霧のように消え失せる。

目を閉じたまま、眉を顰めて硬く口を閉ざしたまま微動だにしない。

その表情は過去に思いを馳せ、苦渋に満ちた悲しげな表情だった。

 

「………済まぬ。大規模侵攻を起こす星はアフトクラトルーーー近界最大級の軍事力を持つ星にして………命の生命を奪ったブラックトリガーがある星だ。トリガー使いは既に“殺して”いるが、ブラックトリガーは回収されてアフトクラトルに戻っている。今頃は新しいトリガー使いの手に渡っているだろう。そして、ヴィザ翁はその時に逃したトリガー使いだ」

「……そう、か。ならば、次の大規模侵攻では私も出よう。私もアフトクラトルとやらに物申そさねば気が済まない」

 

今日、会議室に集まった人は散々な目に遭った事だろう。霧ヶ峰から凄まじい殺気に当てられたかと思えば、次は忍田からの剣気に当てられ、生きた心地がしなかった。

忍田と霧ヶ峰は既にその手を汚している身であり、これからも生命を奪う事があったとしても躊躇いなどそこには存在しない。守るべき大切な者が背中にある限り。

此処に、大規模侵攻時、ボーダー最高戦力が初っ端から戦闘を開始する事が決まった。

 

 

 

■□■□■□■□

 

結局、霧ヶ峰のランクはA級に決まった、いや、決まってしまったというべきだろう。

霧ヶ峰は頑なとしてC級スタートを堅持していたが、このままでは平行線を辿る事になると判断した城戸が先ほど出て行った加古ら四人も呼び戻し、多数決でランクを決めたのだが、霧ヶ峰以外全員がA級に票を入れたのでさしもの霧ヶ峰も諦めざるを得なかった。

さらに、配属はまだ揉めに揉めまくっているため、保留という結果になり、一同は解散する事になった。旧ボーダーのメンバーは霧ヶ峰と久しぶりに会うことで話したいこともたくさんあるため、ゾロゾロと纏まって動いて、面白そうだと出水と米屋も付いてくる。

 

此処で霧ヶ峰にとって新たに知る事があり、ボーダー内には三つの派閥がある。

城戸率いる【近界民は絶対に許さない】という強硬派。

忍田率いる【近界民に恨みは無いけど、人や街を壊す奴は許さない】という中堅派。

林藤率いる【近界民にもいい奴いるから仲良くしよう】という親和派。

霧ヶ峰としては林藤派であるが、城戸や忍田にも恩があるため、即断する事が出来ない。

というか、城戸は元々は親和派だったのが強硬派になったのに驚いたくらいだ。

 

「全く……。ボーダーに帰ってきただけだというのにこれ程の騒ぎになるとはな」

「そう言ってやんないでよ。それだけ霧ヶ峰さんの存在が旧ボーダーでは大きいんでしょ」

「だがな、迅。今のボーダーなら俺は後輩も後輩だろう?」

「馬鹿なこと言うな、青藍。お前程ボーダーに貢献しているのは早々いないだろう。それにボーダー最高戦力であるお前が下にいるさなんぞ、俺たちが耐えられる訳が無い」

 

心底鬱陶しいと言わんばかりに顔を顰める霧ヶ峰だったが、迅と風間に切り捨てられる。

そして、それに頷く霧ヶ峰以外の全員。

 

「ちょっと待て。何故俺がボーダー最高戦力なんだ?………なんだ、その顔は」

 

はぁ?と思いっきり呆れたというような顔で埋め尽くされる。なにせ、この男は旧ボーダー時代の模擬戦で旧ボーダーダントツの90%以上の勝率を誇る、正に最強の肩書きをもつ男だ。時点で忍田と太刀川の70%程である事を考えればどれほど異様なのかわかるだろう。

むしろ、霧ヶ峰が負けたら、すわ、天変地異か!?と旧ボーダー内で大騒動が起きたり、霧ヶ峰の調子が悪いのか!?と医療室に運び込まれたり、と失礼なことが平然と横行するような事態になるのが常だった。

 

「……はぁ、謙遜も程々にしないと嫌味に捉われるわよ」

「そうよ。……あ、なんなら、今から模擬戦でもしてみる?」

「おお、小南にしてはいい案だな」

「ふふん、どうよ………って、ちょっと、迅!それってどういう意味よ!」

「はっはっはっ」

 

加古に溜息交じりに窘められ、小南が提案した事に迅が茶を濁し、それに憤慨した小南に追いかけられながらも陽気に笑ってのらりくらりと躱す迅。旧ボーダー時代でも良く見られた光景に思わず頬が緩む。

この時、小南はトリオン体ではなく、生身であり、迅はトリオン体であったため、小南が先に息切れしたことで鬼ごっこは終了した。

 

「ぜぇ……、ぜぇ……迅、……はぁ、後で……覚えて、なさいよ……!」

「全く、二人とも青藍が帰ってきたことが嬉しいのは分かるが、少しは落ち着けないのか。まぁ、模擬戦をするのは良い案だな」

 

落ち着いた筋肉こと、木崎レイジが呆れた表情を隠そうとせずに痛烈な言葉を浴びせかける。しかし、最後には小南の言葉に肯定するのが木崎である。

 

「そうだな。ここにはちょうど……12人いることだし、四人三組の混成部隊ができるな。出水、米屋の二人はどうだ?無理強いはしないが」

「俺は問題無いっすね」

「あ、すんません、おれ、また防衛任務に……」

「あ、おれもだったな。すんません、東さん、霧ヶ峰さん。それじゃ、また夜に」

「あ、おれも広告活動の時間になったので………」

「ああ、分かった。………ふむ、10人か。どうしたもんか」

 

弾バカこも出水はOKしたが、槍バカこと米屋と片桐が防衛任務と、嵐山が広告活動で抜けてしまい、頭数が合わず、頭を悩ませる東だったが、実は問題ない。

 

「いやいや、青藍がいるんだから問題無いでしょ。むしろ、青藍の隊にも四人いたら、俺たちが詰みます………いや青藍一人だけでも詰む?」

「………それもそうだな。じゃあ、青藍、誰をパートナーにするか選んでくれ」

 

太刀川が珍しく真剣な表情を浮かべて霧ヶ峰の隊を一番少なくすることを提案する。

つまり、4対4対2の構成になり、霧ヶ峰はもう一人しか選べないこととなる。

しかし、東も霧ヶ峰の実力を知っているため、反対することも無く、むしろ当然だとばかりに話を進める。そして、霧ヶ峰も反対することも無く、パートナーを考案する。

 

「ふむ、此処でパートナーに欲しいのは望か、匡貴か東さんかの三人だな。あ、そうだ。ブラックトリガーありでいくか?」

「いやー、それは流石に厳しいんじゃないのか?」

「いや、でも、青藍のブラックトリガー、気になるしな。………ん?忍田さんからメール?……特別に十本セットの最後だけ、霧ヶ峰対全員でやれ?霧ヶ峰と迅はブラックトリガーを使うことを許可する?因みに城戸さんも承認済みだ……だそうだ」

 

タイミングの良すぎるメールに一同の顔に疑いの芽が生える。すかさず、霧ヶ峰がサイドエフェクトで周囲の波紋や振動を感知しても、それらしきものが無いため、不審に思いながらも話を進める。

 

「………盗聴でもしてるのか?まぁ良い。9本もあるなら、望、匡貴、東さんの三人で3セットずつで交代で良いか?」

「私はそれで良いわよ。………よしっ」

「俺も問題無い」

「ああ、分かった」

「うへぇ、二宮さんと霧ヶ峰さんのコンビは凶悪すぎるわ。いや、加古さんと東さんの時も同じか」

 

顔を引きつらせた出水の声をスルーした旧ボーダーメンバーのうち、加古を除いた面子はジャンケンでメンバーを決めた。加古が小さくガッツポーズを決めたのには触れない方針で。

 

Aチーム 霧ヶ峰、加古。

Bチーム 太刀川、木崎、風間、東。

Cチーム 二宮、迅、小南、出水。

 

何とも豪華なメンバーである。

一行がランク戦のブースに到着すると、S級一人にA級七人にB級といえど個人総合No.2の二宮と【始まりの狙撃手】と謳われ、ベテランの東が入ってきたことで騒めきが大きくなる。やはり、霧ヶ峰はA級に入ることが決まったがまだ正式に入ったわけでは無いため、誰だ、この人。という視線を向けられる。ただ、その視線の中に驚愕を交えた視線が二人ほど居るのが意外である。二人いるオペレーターらしき少女の一人と観戦席から此方を窺い見る儚い印象の少女から。

 

「やっぱり、騒ぎになるかぁ」

「よし、部隊の入力は完了したが、オペレーターが居ないのが痛いな」

「あ、あの!」

「わ、私たちが……」

 

緊張気味に声をかけてきたのは二人の見た目麗しい少女。ボーダー内でも人気の高い美少女だ。東の方を向きながらもチラチラと霧ヶ峰の方に視線を向けるのが気になるところだ。それも一人は熱っぽい視線だった。

 

「お、三上、綾辻。即席だが、オペレーターやってくれるか?もう一人欲しいところだが………」

「ほいほーい、アタシがやるよー」

「何処から出てきた。宇佐美。何故此処にいる」

「たいちょー、そこは乙女の秘密なのですよー。そして、迅さんからの依頼ですー。あ、迅さん、どら焼きで!」

「分かった分かった。」

 

オペレーター二人揃い、もう一人欲しいなと東が呟けば、何処からとも無くにゅっと出てきた宇佐美。思わず風間が突っ込むが、女の子特有の盾を使われ、溜息を吐いて眉間に手を当てる。宇佐美は元々風間隊のオペレーターをやっていたため、気性は知っているがそれでも飄々した性格の彼女に苦労は絶えないようだった。

 

「よし。では、始めようか」

「東さん、なんか嬉しそうですね?」

「分かるか?いや、久しぶりに霧ヶ峰とやり合えるのが嬉しくてな」

「確かにそれはそうですね。あの難敵をどう下すかを考えるのは愉悦ですね」

「風間。落ち着け」

 

風間が突如、愉悦なんて言葉を使った事で東が風間もいつに無く高揚している事に気付く。いや、風間だけでは無く、ここにいる全員が気合入っているような表情だった。

オペレーターの三人娘も手を握り、ふんすと可愛らしく気合を込めている。そして、観戦席に座る少女から寂しげな視線が送られてくる。

旧ボーダーのメンバーなら分かるが、何故オペレーターの三人娘も気合を込めるのだろうかと、何故観戦席から寂しげな雰囲気が感じられるのだろうかと首を傾げる東だった。

 

 

 

 

■□■□■□

 

『ーーーまもなく、模擬戦が始まります!マップは平凡的なAマップの住宅街であり、目立った利点はほぼありません!さぁ、今日、この模擬戦を中継するのは、この私!武富 桜子です!そして、解説を務めていただけるのは、なんと忍田本部長と、攻撃手No.4の村上先輩!豪華な顔ぶれです!』

『よろしく頼む』

『よろしくお願いします』

 

元気のいい、はきはきした声がマイクを通して響く。何処からとも無く、この模擬戦の噂を聞きつけ、飛び入りで中継をする事になった武富だ。その武富は“偶々”を装って通り掛かった忍田と本当に偶々だった村上を捉え、解説席に引きずり込んだ。きょとんとする村上は兎も角、本部長の忍田を引きずり込めた武富の胆力を褒めるべきなのだろうか。

 

この豪華な模擬戦は偶々その場に居合わせた隊員によって拡散され、この模擬戦ブースの観戦席には相当人数が集まっている。

A級はもちろん、B級の隊員は防衛任務に駆り出されたメンバー以外はほぼ全員揃っていると言ってもおかしくない程見慣れた顔で埋め尽くされていた。珍しく、こういう場を嫌う影浦も舌打ちをしながらも、いる事でどれほど注目を浴びているのか分かるだろう。

 

『忍田本部長が直々に解説されるのは非常に珍しい事なのですが、何かあったのでしょうか!? そもそも、こんなに豪華なメンバーが一同に揃い、混成部隊での模擬戦を始めるのは非常に稀です!更に、Aチームに加古隊員と共にいる霧ヶ峰 青藍さんという謎の人物!しかも、Aチームの隊員はたったの二人のみです!此れはどういう事だ!?』

『忍田本部長、霧ヶ峰という人物、如何なる人物ですか?』

『そうだな。此処で説明しておこう。彼は霧ヶ峰 青藍。このボーダーが出来る前のボーダー…….旧ボーダー時代からのメンバーの一人であり、風間や太刀川たちと同期の人物だ』

 

ざわり、と観戦席が大きく騒めく。スクリーンには目を閉じて加古と打ち合わせをする霧ヶ峰の姿が映し出され、その端正な顔立ちに見惚れ、ほぅ……、と多くの女性隊員から色っぽい溜息が漏れる。

 

『なんと……!ですが、私たちは、彼の名前を今の今まで知らなかったのですが……』

『それもそうだろう。彼はつい今日まで極秘任務で“世界”を飛び回っていたから、このボーダーには五年間不在だった』

『極秘任務……ですか?』

『そうだ。ボーダーの活動に関わる重要な任務であり、欠かす事の出来ない事だった。詳しくは後日、城戸司令から説明があるだろうから私は此処までしか話せない』

『分かりました!では、忍田本部長からみた霧ヶ峰さんの強さはどうでしょうか?』

 

聞く人によっては世界の意味は二つの意味に分かれるのだが、この場に居るものの内、霧ヶ峰の過去を知るものはほんの一握りしか居らず、ほぼ全員がこの地球の世界を回っていたんだろうと判断した。

そして、忍田が霧ヶ峰の強さについてどのくらいの評価を下すのだろうかと真剣な表情で聞き入るA級、B級の顔ぶれ。

 

『一言で言えば、そうだな。ーーー過去、現在含めてボーダー最強』

『最強……!?』

『大きく出ましたね!忍田本部長。忍田本部長や太刀川さんよりも強いという事になってしまいますが……?』

『言葉通りだ。旧ボーダー時代の霧ヶ峰の模擬戦の戦績は96%の非常に高い勝率を誇る。次点で私と太刀川の78%だ』

『きゅう……!?そ、それって、ほぼ無敗じゃないですか!?今でも太刀川さんですら88%ですよ!?』

 

唖然とする観客。

96%なんて戦績、聞いた事も無い。これが忍田ではなければ、冗談だろうと笑い飛ばせたが、生憎、解説席に座るのは嘘を嫌う、清廉潔白な性格の忍田だ。冗談なんて望めない。

その言葉だけでも戦慄する。旧ボーダーは確かに今と比べても人は少ない。しかし、太刀川や風間たち、トップランカーや、現在のA級隊員クラスの実力を持つ猛者たちで構成された精鋭部隊なのが旧ボーダーだ。

そんな中で96%の勝率を誇る霧ヶ峰が異常なのだ。

そして、武富が挙げた太刀川の勝率88%は霧ヶ峰が不在の間の戦績であり、霧ヶ峰が復帰してしまえばぐっと勝率は下がるだろう。

というか、忍田さん、そんなに過去の情報をポロポロと零して良いのか、というのがブースに入っている旧ボーダーメンバーの思いだった。いつになく、饒舌な忍田。彼も冷静なように装っていても、内面は浮かれているのだろう。

 

『そうだ。それ故に旧ボーダー内での霧ヶ峰の呼び名は【単体戦略機動兵器】だ。当時は孤月とトリオンキューブの二つのみで今のA級全員に相当する戦闘力を発揮した』

『それはまた大層な呼び名ですね……』

『本当に人間なのかを疑いたくなるんですが……』

 

握り拳を握って霧ヶ峰の二つ名を熱弁する忍田。軽くキャラ崩壊していないかと心の中で一同に突っ込まれる。

しかし、忍田の信用は相当高いもので、疑り深い菊地原でもすんなりと受け入れるほど説得力があるものだったために、武富と村上も冷や汗を流してスクリーンに映る霧ヶ峰を凝視する。

 

「いや、村上先輩。あの人、もうバグっているから、人じゃないよ」

『バグ?』

「存在そのものがチートってやつだから。そもそも、人類に分類されんの?ってレベル」

 

チクリと毒を溢したのは、村上の近くに座る菊地原。何時もの毒よりも大人しめなのはどういう事なのだろうと隣に座る歌川の心配する視線を面倒くさそうにしながらも律儀に答えるのは彼の性分なのだろう。

 

『おっ、此方でごたごたしているうちに準備が出来たようです!ではでは、転送!模擬戦開始です!』

 

此処にボーダー屈指の戦力の衝突という夢のような模擬戦が行われる。

此れは観戦した者たちの意思に深い印象を与え、後々に大きな影響を残していく事となる。そして、霧ヶ峰 青藍という人物を強烈に刻み込んだ一戦だった。

 

 

 




おやおや、加古さんとオペレーターの何方かと儚い少女が如何にも怪しいですね(笑)

作中のキャラクターの絡みは私の想像も混ぜているので違和感あるかもしれません。

勝率。
これは例えば10本セットでの累計ではなく、10本セットを1勝とみなしての結果です。
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