ワールドトリガー■バグ級チートの歩む道■   作:霧のまほろば

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お久しぶりでございます。

太刀川たちのボーダー入隊に関するご質問がありましたので、此処で解説します。
原作では、大規模侵攻が起きた後に加入したという流れになっていますが、この作品では、霧ヶ峰が近界に旅立つことで出来る戦力の穴を埋めるためにスカウトをかけたところ、太刀川たちが六年前に加入する事となったという設定にしてあります。


第5話 模擬戦終了(ノーマルトリガー編)

ギャリィッッ!!

 

ガギィッッ!!

 

ザンッッ!!

 

ズドドドッッ!!

 

 

「なんなんだよ………。俺は、何を見ているんだ………?」

 

ポツリ、と観戦席に座る隊員の一人から呟きが漏れ出るが、反応する者は誰一人していなかった。

 

ただ、ただ。

目の前のモニターで繰り広げられる剣戟の応酬に呑まれていた。

圧倒的。武の極みというものはこういうことなのだろうか。

本当に自分らと同じ人間なのかを疑いたかった。

観戦席は異様なほどにまで沈黙に包まれ、響き渡るのは激しくぶつかり合う剣戟の音のみ。

 

 

其処にやって来たのは漸く広報活動の任務を終えた嵐山隊。

 

「なんだ?えらい静かだな……。霧ヶ峰たちが模擬戦をしているから急いで終わらせて戻ってきたんだが………」

「? あ、嵐山さん」

「おお、那須か」

「あ、那須さん」

 

ニコリ、と微笑んだのは那須だ。那須の姿を見つけた嵐山隊は那須の近くの席に座るが、誰一人とて反応せず、食い入るかのようにモニターを見つめていた。

 

「太刀川さんと霧ヶ峰の模擬戦か!うむ、丁度いいところに来たな。木虎、時枝。あれが旧ボーダー時代の最高戦力、霧ヶ峰青藍だ」

「な、なんですか……?アレは………」

 

呆然と木虎が呟くが、無理もなかった。

激しい、激流、又は暴嵐とでも言えるような災いの渦が其処にあった。

 

『一刀流ーー鎌鼬!』

 

霧ヶ峰の音速の壁を突破した証拠の衝撃波を生み出して振り下ろされる、それを斜めに構えた孤月で逸らす。すると、太刀川の背後に列なる住宅の三つ、四つが斜めに真っ二つに裂けて崩れ落ちる。

 

『旋空孤月ッ!』

 

反撃とばかりに二本の旋空孤月で霧ヶ峰を斬ろうとするも、軌道上に凄まじい剣圧を乗せた一閃で相殺されて体制を崩してしまう。

 

『二刀流ーー咎人!』

『くそっ!旋空ーー孤月ッッ!!』

 

十字のような斬撃が剣圧によって生み出され太刀川に向かって襲いかかる。

体制を崩されたことに悪態を吐くも直ぐにトリオンを消費して両手の孤月から巨大な斬撃を繰り出して相殺する。

二つの斬撃がぶつかり合ったことで、起きた衝撃波が瓦礫を吹き飛ばし、砂埃を舞い上げる。

 

『まだ終わっていないぞ、慶』

『望むところだ!』

 

ボフッと砂埃から飛び出してきた霧ヶ峰の一閃を二本の孤月で食い止める。

心底楽しそうに口角を釣り上げる霧ヶ峰に対し、冷や汗を流しつつも余裕を繕う太刀川。

 

『それにしても驚いたな。お前が此処まで強くなっているとは。そこそこ“殺り合い”甲斐がある』

『ちょっと待て、絶対やるの字が違うだろ!?何だ、その物騒な気合!っていうか、こっちは全力でやってんのにお前は全く本気じゃねぇだろ!?遊んでんだろ!』

『ほう、気づいていたか』

『五年前、旧東隊、忍田隊、最上隊とやり合った時と比べて重圧が弱い。それに、さっきの鎌鼬もその時と比べれば格段に小さいからな!』

 

唖然。

太刀川は何て言った?『遊んでんだろ』?

あの街を破壊するほどの激闘が遊び?

それを否定もせず、むしろ笑って肯定する霧ヶ峰。

 

「あ、アレで………遊んでいるんですか……?」

「そうだな、本気にも程遠いだろう。もし、本気でやっているんだったら、慶はさっきの二刀流からの居合で斬り捨てられていたはずだからな。明らかに手を抜いているな」

 

顔を青ざめて引き攣った表情を浮かべて隣に座る嵐山に問いかけた木虎。その隣に座る時枝も珍しく、無表情を崩して同じような表情をしていた。

得てその返答も無情。ますます、霧ヶ峰という人物の高みが霧に霞んで見えなくなってきた。目眩でも起こしそうである。

そこに追い討ちをかけたのは、嵐山の言葉を耳聡く聴き拾った忍田の言葉。

 

[うむ、そうだな。嵐山の言うように、霧ヶ峰は本気には遥か遠い。私とやっても本気を出させる事も出来るかどうか。むしろ、遊ばれている気もしないでない]

 

絶句。

太刀川と忍田は間違いなくボーダー最強格。

現在の隊員の認識として、忍田はノーマルトリガー最強の男として、太刀川の師匠でもある。

太刀川も個人総合一位。攻撃手としてでも一位。忍田とブラックトリガー使いの迅と天羽を除けば隊員中最強。

そんな二人が遊ばれると断言してしまっているのだから、霧ヶ峰の実力に底が知れない。

 

『久しぶりにやるか?【山撫で】』

『いっ!?それは勘弁しろ!トラウマモンだ!俺たちだけじゃなく、後輩たちにもトラウマ植え付ける気か!?』

『そうよー!青藍、それだけは勘弁してちょうだい!』

 

ニヤリ、と不気味な笑みを浮かべて剣技の一つを口に出せば、見てわかるほど太刀川が動揺する。周りを見れば、忍田、嵐山や模擬戦をやっている加古、風間たちも冷や汗をドッと流している。

そんなに危険な技なのだろうか?と思う観戦席に座る隊員の心情を察したかのように霧ヶ峰が孤月をクルクルと回して高らかに笑う。

そして、言い放つ。

 

『はっはっは。ーーーもう一度、心折っておけ。一刀流ーー山撫で』

『ちょ、おまーーー!?』

 

覇気、とでも言えば良いのだろうか。凄まじい圧迫感が霧ヶ峰の体から放たれ、その圧ごと何の気も無く、軽く孤月が振られる。撫でるかのように横に一閃。

太刀川とは遠く離れているというのに、必死の形相で回避行動を取る。

いや、加古や風間たちも必死に回避行動を取る。

そして、次の瞬間、凄まじい暴風が吹き荒れ、モニターにノイズが走り、画面が乱れる。

 

 

 

このマップは至って閑静な住宅街の真ん中に川が流れ、対岸に渡る唯一の道である橋が架かる、戦場が二分された地形だ。

模擬戦開始時、殆どの場合、ばらけて転送される事が多く、チームによって取る戦術が異なる。例えば、太刀川隊ならば、唯我を除く太刀川と出水は個人的な実力も抜きん出ている故に、個人プレーに傾き、ゆっくりと進路上にある敵を撃破しながら合流する、という比較的個人に頼った戦術を取る。

 

対峙的なのは風間隊だ。ばらけていたら、ひとまず合流を目指す。風間隊の戦術は基本、カメレオンによる隠密行動からの奇襲が多い。カメレオンが通じない相手でも連携による手数で圧倒して撃破する集団戦法を得意とする。

 

つまり、個人で突っ走るか、合流して連携して撃破するかという柔軟な対応が必要な癖のあるマップだ。まぁ、他のマップでもそれぞれの隊の特徴は現れるだろうが、このマップは特に顕著である。

 

しかし、バリバリの個人主義である霧ヶ峰には何の意味の無い事だ。

加古との連携?その場合わせで、遠慮なく撃てとしか言われていない。加古の表情こそ余裕の笑みであったが、内心は冷や汗ダラダラである。誤って霧ヶ峰を撃ち抜いたらどうしよう、というものだ。しかし、そんな心配も杞憂に終わった。

五年前以前にキレを増した韋駄天の機動に剣術に伝わる歩法による回避。今まで誰にもかわせなかった必殺法の鳥籠を余裕で躱されるとは思わなかった。

 

 

ーー山撫で。

嘗ての戦国時代。とある一派の豪傑が大刀を一振りすれば一つの山に生える木々が一本残らず切り倒されたという耳を疑うような逸話から生まれた奥義。

巻物にその奥義とでも言える技法が仔細に書かれていたが、それを成し遂げられた人物は300年という長い間未だ現れなかった。霧ヶ峰が現れるまで。

霧ヶ峰はこの山撫での技法を理解し、実際に実践してのけ、師範の腰を抜かしかけた事もあった。流石に山一つを潰すのは頂けなかったため、竹林でやったのだが、一振りで辺り一帯の竹が全て刈り取られていたというのだから。

 

山撫でを会得したのは僅か14歳。

それから六年の年月を経た今はさらなる高みに昇華されている。トリオン体の恩恵も得て。

ーーーすなわち。

 

 

『ふむ、まだ鍛錬が必要だな』

 

旋風が止み、モニターが漸く回復し、映る光景は見ている者の常識を打ち砕き、畏怖を植え付けた。

ーーー半径500mの住宅街の一軒一軒の基礎そのものから切断され、壁が基部から大幅にずれている。

一軒家も、3階建てのビルや電柱。地面から天に向かって伸びている、ありとあらゆるものが切断されていた。しかし、崩れ落ちずにズレただけで原型を留めているのは異様である。

ノーマルトリガーでは到底成し遂げられようが無い光景が広がっていた。こんな芸当ができるのは、ブラックトリガーでしか無い。しかし、霧ヶ峰の手にある刀を見る限り、孤月のままであった。

即ち、霧ヶ峰は霧ヶ峰自身の身体能力のみであの惨状を作り出したというのだ。

 

「………本当に規格外だな」

 

ボソリ、と嵐山がつぶやく。その目には諦観の表情が浮かぶ。しかし、何処かに懐かしそうな色も浮かぶ。

 

「………懐かしそうですね?嵐山さん」

「おお、分かるか?」

「ええ、何となくですが」

 

微笑を浮かべた時枝の言葉に自分の顔をペタペタと触って表情に出ていたか?と。

五年前に良く見た光景が再び映し出され、美しくも畏ろしい、煌めく剣の舞に魅入る。

あらゆる形で完成された一つの剣。そこに喰らいつくのは未熟ながらも剛の剣。

 

トリオンで作られた孤月がぶつかり合うたびに鋼がぶつかり合うような音が響き、欠けた孤月の欠片が火花のように煌めいて消えていく。

欠けた孤月も直ぐにトリオンで充填されて綺麗な刀身となって元に戻る。

 

美しき剣の舞と言える二人の剣戟の応酬。

完成された武の極みと言える二人の戦いは見るものを引きこみ、魅力し、畏怖を与える。何よりこの戦いを何時までも見ていたかった。傑作の芸術品のような何者にも抗い難い魔性とでも言える美しさに浸っていたかった。

観戦席もさっきまで騒がしかったのがいつしか静かになって全員がモニターに食い入るように前のめりになって見つめていた。

いつもならば騒がしく実況している武富ですら例外ではなく、手元にあったマイクはいつしか手元から離れ、マイクスタンドに収まる。

 

畏敬。畏れ、敬う。

長らく見ることのなかった戦闘に背筋が震え、感情が高揚していく。ゾクゾクと体が震える。

 

 

 

しかし、決着は直ぐに訪れた。呆気ないほど一気に膠着状態が覆っていく。ぶつかり合った孤月が離れ、次の衝突に備えようと太刀川が構えを崩して駆け出そうとした時のほんの僅かな気の緩みを突かれてしまう。

常人ならば気付くことも叶わぬ刹那の隙。弾かれた孤月を逆袈裟に構え体を落とし、足に力を込めた時に生じる硬直。時間にして0.1秒にも満たないだろうがそんな僅かな隙でさえ霧ヶ峰の前では無防備に見えた。

 

「一刀流ーー無拍子」

「しまっーーー」

 

コンマ秒の時間さえ置かない神速の居合抜きが放たれ、太刀川に襲いかかる。一足で10メートル程離れていた間合いを詰められ、太刀川の右手を簡単に斬り飛ばし、返す刃で右から胴体を逆袈裟斬りに切り裂く。トリオン体から黒い霧となってトリオンが噴き出す。

 

「中々に楽しめたぞ」

「くっそー、次は勝ってやる!【緊急脱出!】」

 

そう、捨ぜりふを残して一筋の光となって戦場を離脱していく太刀川。

 

『ーーっは!?お、おおーっと!太刀川隊長、ベイルアウト!真逆の太刀川隊長の敗北です!お二人の凄絶な剣戟の応酬、本当に見事なものでしたが真逆、太刀川隊長が敗北するとは誰が想像したでしょうか!?』

 

太刀川がベイルアウトしたことで、我に戻った武富がマイクにかじりついて叫ぶ。

その声に触発されて騒めく観戦席。真逆、あの太刀川がいとも容易く緊急脱出するとは。いや、霧ヶ峰は宛ら、太刀川も十分人外の領域に在る、謂わば人外VS人外と言えるような戦いである筈が人外中の人外、最早剣鬼、剣聖の域に到達している霧ヶ峰は桁が違いすぎる。

 

 

太刀川が離脱していくのを見届けるとサイドエフェクトで掴んでいる東が潜伏している5階建てのビルへグラスホッパーを使って空中を駆けていく。

 

「ーーーっく!?霧ヶ峰に狙撃ポイントが暴露た!悪いが、ベイルーーーく、間に合わないか!」

「東さん!?」

 

レシーバーから響く、珍しい東の憔悴しきった声。東と霧ヶ峰がいた距離は800m程離れた場所にある。しかし、霧ヶ峰は韋駄天とグラスホッパーを組み合わせた超高速機動に、更に一足飛びを発展させた八艘飛びを使って接近する。グラスホッパーと韋駄天の組み合わせに八艘飛びの技術は正に神速を生み出し、霧ヶ峰の姿は影すら残さず搔き消える。辛うじて霧ヶ峰の進む先を示すグラスホッパーの光が明滅するのが見えただけだ。

明滅する先を想定して狙撃することも東は考えたが、グラスホッパーが明滅するのはほんの0.5秒のみ。そんな僅かな時間で照準を調整し、狙撃するのは如何に東が熟練狙撃手であったとしても不可能であった。

 

そして、次の瞬間、気づけば霧ヶ峰は東が潜伏するビルの上空に飛び上がる。

飛び上がり、浮かぶ僅かな時間を東は見逃さなかった。二階のベランダから身を乗り出して上空に向けて、狙撃銃の中で最も連射性能に優れるライトニングで ワンマガジン分のトリオン弾ーー30発を10秒に満たない時間で全て撃ちきる。

地面から天に向かう逆雨のようにトリオン弾が尾を引きながら飛んでいく。

 

観戦席に座る者たちから見れば、このライトニングでの連射で勝負は決まったようなものだろうと判断し、白けた雰囲気を出していたが、それは誤りである。東の相手は太刀川や迅、小南を無傷で倒した怪物。

たかが30程度の弾で倒れる筈が無かった。

両の孤月で自身に当たるものだけを弾き、斬り落とし、グラスホッパーを使い、身を捻って作り出した空間の隙間に潜り込ませる。

 

バタバタと黒い外套が頭上にはためき、体が重力に従って落ちていく中、霧ヶ峰は頭上高くに孤月を構え、トリオンの量を微調整し、孤月の大きさを刀から大太刀の大きさへ変える。

 

「ーーーまずいっ!」

 

霧ヶ峰が繰り出そうとする技が何なのかを理解した東は冷や汗を流してビルを離脱しようとベランダの手摺に手をかけて身を乗り出したところで霧ヶ峰の技が炸裂した。

 

「一刀流ーー落天 対の縦」

 

静かに唱えて、体ごと空中で一回転し大太刀の大きさになった孤月を振り切る。それだけで東が先ほどまでいたベランダを中心に縦に裂け、大地にまで深い裂傷を残す。

そして、振り切った勢いを横に捻って軌道を変えることで別の技に変わる。

 

「ーー落天 対の横」

 

孤月を振り抜いた形のまま地面に着地すると、5階建てのビルが屋上から基礎ーー否、基礎の下の地面まで深く断ち斬られ、次の瞬間には基礎が斬り離され、更には一階ずつ斬り離され、ビルが宙に僅かな時間浮かぶ。

 

そんな非常識な光景は離れた所で戦っていた風間たちにもよく見え、思わず動きが止まってしまう。観戦席も同様に空気が凍り付く。

 

「ーーーは?」

『ーーーー』

 

言葉を発そうにも喉が詰まったかのように声が出ない。地に打ち上げられた魚のように口をパクパクと動かすことしかできなかった。

 

浮いたビルもやはり重力に引かれて縦に二つに割れて逆方向に崩れ落ちる。

そして同時に光る緊急脱出。

落天 対の横で基礎ごと東の胴体が切り裂かれ、脱出したのだ。

しかし、【始まりの狙撃手】と謳われる東の実力は伊達ではなく、切り裂かれながらライトニングを放ち、躱そうと身を捻る霧ヶ峰の脇腹を僅かに抉り、トリオンが線香の煙のように緩やかに漏れ出す。

 

『おおーっと!?此処で霧ヶ峰さん初めての負傷!流石は東隊長というべきなのでしょうか!?』

『東さんは霧ヶ峰さんに一矢報いたという形になりましたね。ですが、あの反射速度どうなっているんですか?あの距離でライトニングによる反撃に気づき、完全に躱すとまではいかなくても………いや、明らかにあの射線は致命的でしたがそれを擦り傷程度って……』

『霧ヶ峰はその人外染みた身体能力もさながら、特筆すべきなのは、その反射神経の伝達速度も常人の域には無い。一般人の反射神経はおよそ0.5秒程で反応出来るが、霧ヶ峰は0.1も掛からない』

 

獣染みた反射というべきなのだろうか。

人間は0.5秒の間には何の反応もできない。いや、反応はしているが、脳から筋肉へ信号を伝えるのにかかる時間が0.5秒という訳だが、霧ヶ峰はそんなタイムラグをほぼ無視して反応出来る、信号の伝達速度が凄まじい。

 

「望」

「ハッ!?バ、バイパー!」

 

無線を通して聞こえてきた霧ヶ峰の呼びかけで我に戻る加古の前には呆然としている風間と木崎。

この隙を逃す加古ではなく、すぐさま3×3×3のトリオンキューブを二つ展開し、風間と木崎に急襲を仕掛ける。

 

「ちっ!フルガード」

「エスクード!」

 

風間が前面をシールドでガードし、木崎が後方を巨大な壁でカバーし、鳥籠を防ぐ。

激しい音とともにシールドに着弾するも、頑強な守りの態勢に入った二人を抜くのはそうたやすい事では無い。

しかし、それでよかったのだ。

 

ーー“時間稼ぎ”だからだ。

 

フッといつの間にか姿を加古の隣に現す霧ヶ峰。今も尚、霧ヶ峰の脇腹からトリオンが漏れてるが、そもそも、莫大なトリオン量を持つ霧ヶ峰からすれば痛くも痒くもない。

 

逆に顔を顰めたのは風間と木崎。加古一人を落とすのに手間取っていた内に、気づけば、主戦力の太刀川とベテランの狙撃手の東を落とされ、窮地に追い込まれている。

辛うじて加古の片腕を斬り落として、腹部にも損傷を与えられたが、何故か執念めいた粘り強さを発揮して最強格の風間と木崎を相手に持ち堪えていた。ーーー想い人にカッコ悪いトコなんて見せられないじゃない、だそうで。

 

「望、ギムレットを作っておいてくれ」

「了解よ」

 

ニヤリ、と口角を吊り上げていたずらっぽく笑いかけてくる霧ヶ峰につられて加古の顔にも悪戯を思いついたような笑みが浮かぶ。

 

「ーーアステロイド」

 

莫大なトリオンの恩恵で巨大なトリオンキューブを生み出し、更に小さいものへ分割していく。

その数、20×20×20ーーー8000発。

 

キィイイ、と甲高い音を立ててゆっくりと分かれていくトリオンキューブを見て風間と木崎の顔が引き攣っていく。

 

「………不味いな」

「木崎、アレをお前のトリガーで相殺出来るか?」

「流石に一度となると厳しいな。ざっと見たところ20×20×20。アレが一度に来るとなれば、エスクードでも、フルアームズでも、どうしようもないだろう」

「………詰んだ、か」

 

溜息を吐いて降伏宣言をする風間と木崎。

実質、アレにはどう対応のしようがない。木崎のフルアームズも多数の弾丸を吐き出し、圧倒し、レイガスト並みの強固なシールドを常に二つ展開することで防御も高いレベルで熟るが、流石に8000発のアステロイドの嵐には対処のしようがないだろう。先手を打ってフルアームズで猛攻を加えたとしても、霧ヶ峰のことだから、まだまだ奥の手があるに違いないだろう。本当に底が見えないのが霧ヶ峰だ。

 

『ーー模擬戦、終了〜!!Aチーム、霧ヶ峰さんと加古さんの勝利です!』

 

その途端に沸き起こる歓声。誰もが手に汗握る激戦であり、A級の強さと、霧ヶ峰の圧倒的な戦力に血沸き肉踊る、そんな高揚感さえ感じ、誰もが興奮を止められなかった。

 

誰もが、この一戦に向上心を刺激され、技を磨き、技術を会得し。

ボーダーの戦力の底を基礎から上げていくこととなる。




一刀流ーー鎌鼬
横薙ぎの剣撃で三日月の斬撃を放つ。霧ヶ峰が使える技の中では比較的普通に使う技。軽く横に薙ぐだけで飛んでいき、剃刀も真っ青の斬れ味。

二刀流ーー咎人
十字架のような剣撃を放つ。何故この名前がついたかというと、この剣撃が命中したら、何故か磔にされたかのような姿になってしまうから。

一刀流ーー山撫で
何某海賊漫画の極秘組織のカクカクしたキリンが放つ最強の嵐脚『周断』。キリンのように廻って溜める必要も無く、隙が少ない。

一刀流ーー無拍子
0.1秒の空白の刹那に放たれる必殺の剣。何某格闘の地上最強の男でもこの刹那からは逃れられない。

一刀流ーー落天
縦と横の対の剣撃。大太刀ほどの大きさから放たれる剣撃は巨大な斬撃となって巨大な物体を切り裂く。


0.03秒の反射神経
これが霧ヶ峰を人外たらしめる要因の一つ。どれほど強靭な肉体があったとしても、それを扱える神経が無ければ宝の持ち腐れ。
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