グリザイアに射す陽光   作:a0o

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 前半はこれでお終いです。





区切り

 地元の病院で治療を終えた雄二は、事情聴取を先延ばしして貰ったと言って天音と一緒に倫也へ一連の経緯を尋ねていた。

 

「実は二人が山道に入って直ぐあのおじさんが入っていってさ。格好やら山に不釣合いな荷物持ってる姿が気になって、なんとなく嫌な予感がしたんだ」

 

 当初はこっそりと後を付けようと思ったのだが、万が一を考え一人では無謀だと考え近くに住んでいる農夫の男性に助力を願い一緒に山道に入った。そして、その万が一が起き、銃声が響いたのを聞いた倫也は銃と救急セットを持って現場に、農夫は引き返して警察と病院の手配の為に別れ、坂下が語っている場面に出くわした。

 

「あの銃はその人の物か、もしかしてその農夫って」

 

「ああ、あの時のキャベツ畑の持ち主だ」

 

「でもさ、怪我してるユージ君に頼るかな?」

 

 天音の非難するような口調に倫也は正直に答える。

 

「生憎と俺は銃を持った相手に立ち向かったり『狙うなら俺にしろ』って言う程、肝が据わってないんだよ。実際、見てるだけでも壮絶に怖かったよ」

 

「それが普通だ。しかし、あの作戦はどうしたんだ?よもやお前が考えた訳じゃあるまい?」

 

 雄二の問いに、どう答えるべきかと頭をかく。

 気になった際の呟きの後で、着信があり〝乗り物があるならナンバーを写せ〟との指示が来た。その後、地元の顔見知りから遺族と名乗る男に慰霊碑までの道を尋ねられたと訊いた時〝今から言うパターンの音を録音しろ〟と農夫への協力を指示され考える間もなく行動したのだが、今話していいものかと悩んでいると、

 

「また神様からのお告げか?」

 

 雄二の方から察したようで、頷くとそれ以上の追及はなかった。

 

「ねぇ、結局あれってなんだったの?」

 

 天音の問いに倫也ではなく雄二が答える。

 

「トンツー、モールス信号の方が分かりやすいか。ちなみに内容は〝注意逸らす。銃を使う返事、駄目なら逃げろ〟だ」

 

「そんな方法が分かるユージ君って何者なの?」

 

「話せる時が来たら話してやる。今はそれより最初の用件を済ませに行こう」

 

 立ち上がる雄二に天音は寄り添おうとするも左手で制し歩いていく。

それを見送った倫也の元に回収して置いた携帯に新たな着信が届いた。

 

〝これで、ようやくスタートラインに立てた。だから最終確認、今ならまだ引き返せる。命のやり取りに出くわすのも最初で最後にしたら?〟

 

「確かにこんな怖い思いは御免被りたい。でも、それでも、やっぱり俺は貴女に会いたい」

 

〝それって愛の告白?だとしたら、ごめんなさい〟

 

「違います。大きな花火・・可能性に目が眩んだ俗物の意見ですよ。奇跡の如く巡ってきたチャンス、それこそ最初で最後だ、逃すなんて出来ません」

 

〝ならば最早掛ける言葉は何もなし、来るのを待っている〟

 

 着信は途切れ携帯をしまい、待っていると雄二と天音が憑き物が多少は落ちたような顔で戻って来た。

 

「そちら()彼女の言葉は聴けたようだね」

 

(やっぱりワザとやってるのか?それとも珍しく選ぶ相手を間違えたのか?)

 

「ああ、実に一姫らしい言葉だった」

 

 雄二は目を細めるも追求はせずに肯定を示す。

 

「うん。一姫にはホント敵わないな。

 そして悔しいな、ユージの隣にはもう誰か居るって言うんだから」

 

 いつの間にか雄二を呼び捨てにしている天音に諦めのニュアンスは無く、それとなく警告する。

 

「言っておきますけど、遣り合うなら相手は相当手強いんで、覚悟は決めて置いて下さい」

 

「お~お~、それは怖い」

 

 しかしそれは逆効果だったようで嬉しそうに返す天音に一つ溜息をつき、雄二は思った。

 

(普通かどうかは分からないが、やはりこんな学園生活も悪くないな)

 

 

 ***

 

 

 

 二週間後、赤坂の本社で風見雄二は上司、春寺由莉亜(JB)に全快の報告をしていた。

 

「ご心配おかけしました、春寺三佐。風見雄二、ただ今を持って復帰します」

 

 右手で敬礼をする姿にJBも安心したように話しかける。

 

「電話で聞いた時は完治までまだ掛かると思ったけど、思いのほか軽症ですんで良かったわ」

 

 いつも通りのJBに社交辞令を終え楽な姿勢で同じくいつも通りに答える。

 

「急所は外れてたし、割と直ぐに応急処置できたからな。神様に感謝だな」

 

「・・・・変な物でも食べたの?」

 

 胡乱な目で聞いてくるJBに肩をすくめる。

 

「今のは受け売りだ。それより頼んでいた件だが」

 

「昇進試験の話しね、進めてるわよ。でも余りに突然だったんで驚いたわ、どういう風の吹き回し?」

 

「俺も将来の為に出来ることをやっておこうと思ってな」

 

 言い分そのものは真っ当だが長い付き合いからか意味が違う事を悟った。

 

「まぁ、そう言う事にしといてあげるわ。なんにしても長い話しだし、いずれゆっくりと聞かせて貰うとしましょう」

 

「では本日はこれで失礼します」

 

 再び敬礼し退室する雄二を微笑ましく見送り仕事に戻る。

 

 

 ***

 

 

 東京、銀座のとある料亭、周防天音の実家であり定休日であるその店に娘である天音と加藤恵が対面していた。

 

「あなたが加藤恵さんね。はじめまして」

 

「こちらこそ、はじめまして。わたしも雄二(・・)くんから大凡の話は伺ってます、周防天音さん」

 

 一見普通に挨拶を交わす二人だが、目に見えない黒い雰囲気が漂っていた(ちなみに恵の方が優勢であった)

 

「私、ユージのお姉さんからお願いされてて―――――」

 

「それも知ってます。でも今は雄二くんにはわたしが付いてますから」

 

 ただの話し合いの筈なのに真剣勝負を醸し出す重い空気は衰えることなく、どんどん重くなって行く。

 

 その時、恵の携帯に着信音が鳴り確認する。

 

「雄二くん、会社への報告が終わったから、こっちに向うそうです」

 

「そう」

 

「ええ」

 

 二人とも笑っているが計り知れない含みが込められていたが、この後来る人物によって・・・・あっさりと沈静化された。

 

 

 ***

 

 

「久しぶりだね。倫也君」

 

 やや大きめの荷物を持った倫也は自宅近くの坂道を下っていると、微妙に高めで透き通った男の声が響き振り向いた。

 

「三年ぶりだな、伊織。悪いけど再開を懐かしんでる時間は無いから、用件があるなら手短に頼む」

 

 普通に対応する倫也だが、自分が知っている面影が無い訳ではなく苦笑しながら会話を続ける。

 

「それじゃ」

 

 伊織は『rouge en rouge代表』の名刺を渡す。

 

「紅坂朱音のブランドか。自慢でもしに来たのか?」

 

「い~や、ちょっとした宣伝さ。実は今度の冬コミで新作ゲームを作っていてね、原画に『柏木エリ』、脚本を『霞詩子』が担当する壮大な作品を鋭意制作中なんだ」

 

 その説明に倫也は静かに驚いた。

 

「全然知らなかったよ。それにしてもよくあの大物売れっ子の二人を口説けたな」

 

「リアクション薄いね・・・・まぁ、彼女達とは利害が一致しただけだけど・・・実を結ぶは、まだ先になるかな」

 

「何を指して言っているのか知らないが、まぁ頑張れ。

 それにしても『あの二人』が組んで作るゲームか・・・プレイできないのが本当に残念だ」

 

「・・・・・どう言う意味?もしかしてお金の都合とかなら、昔のよしみで――――――」

 

 伊織は唖然に近い心境で言うも倫也は冷静に制す。

 

「そう云う事じゃない。これからしばらくアメリカに行かなきゃいけないから・・・簡単に言うと留学だ」

 

「留学って・・・・?」

 

 解せないと言う顔の伊織に簡潔に説明を始める。

 

「俺、これでも親戚受け良くてな。説得するのは難しくなかったし、向うには母方の叔母さんが一緒に行ってくれることになってるし、学園長を始めに教師陣を頷かせるモノも示したし、何より強力なスポンサーが居てな。そのお陰で結構スムーズに短期間で話しが纏まったんだよ」

 

「その事を澤村英梨々さんと霞ヶ丘詩羽さんには?」

 

「なんで其処まで知ってるのかは聞かないけど、二人には春先にお別れを済ました。今更言う義理は無いさ」

 

 倫也の態度に伊織は困惑しながら切り出す。

 

「出発はいつ?」

 

「今からだ。って言うか、もう空港に行かなきゃいけないから、これで」

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

「それじゃ、影ながら応援してるから、成功を祈る」

 

 慌てる伊織に構わずに倫也は歩いて呼んでおいたタクシーに乗り込み行ってしまった。

 

 

 ***

 

 

 報告を終えた風見雄二は恵と天音が待っている料亭に向う途中で、信号待ちをしているタクシーに乗っている安芸倫也を見つけ近づいて窓をノックする。

 

「すみません。少しだけ近くで待っててくれませんか」

 

 気付いた倫也はタクシーを降り、雄二と共に少し離れる。

 

「あ~、それじゃ行って来る」

 

 倫也は遠慮がちに切り出し、雄二がぶっきらぼうに応じる。

 

「何かあったらいつでも呼べ。出来る限り力を貸してやる」

 

「借りは返すってこと?」

 

「そうじゃない。姉ちゃんを取り返すまでは俺が困るからだ」

 

「成る程ね。じゃあ、これで」

 

 長話をする時間も無いので苦笑してタクシーに戻る倫也を見ながら、雄二は思った。

 

(ある意味、俺もお前に不貞を働いたからな。この後、何があっても恨むなよ)

 

 しかし、予想に反し倫也は何事も無く搭乗口でチケットを出した際に振り返るも見送る者はおらず一息ついて離陸を待った。

 

 

 ***

 

 

 

 国際空港の屋上で倫也の乗る飛行機を見送る二人の少女、霞ヶ丘詩羽と澤村・スペンサー・英梨々は共に悲しそうな目をしていた。特に英梨々は本当に涙を浮かべ手を口に当て嗚咽を漏らしていた。

 

「うぅ、倫也ぁ・・・」

 

「・・・・・泣くんだったら声くらい掛ければ良かったのに」

 

「倫也になんて説明するのよ・・・・うぅ・・それともアンタの所為にしていいの・・・うぅ・・・・・霞ヶ丘詩羽・・うぅうぅ・・・」

 

「今回ばかりは流石にゴメンね」

 

 詩羽は携帯の着信画面を呼び出すと〝これで最後だ〟と言うタイトルで倫也が留学する事と出発する日時が記されたメールを削除した。

 

「私も今の彼に掛ける言葉が思いつかない・・・いえ、どんな言葉を尽くしても水を刺すにもならないでしょうね」

 

「なによ、作家の癖に」

 

 落ち着きを取り戻してきた英梨々は噛み付き、詩羽は静かに続けようとするも少しずつ体を振るわせていく。

 

「それに今の倫理君を取り戻す為には、遥か先の彼方の更に彼方まで辿り着かなきゃ太刀打ちできないわ」

 

 詩羽は一週間前に腕を吊っていた雄二から聞かされた話と警告を思い浮かべる。

 

「なにが神よ、なにがお前たちでは絶対に無理よ。天才だろうが神童だろうが絶対に負けないだから・・・・・倫理君は渡さない!!」

 

「ちょ、ちょっと霞ヶ丘詩羽、落ち着きな――――――」

 

「あなたはどうなの、強大な敵を前にこのまま引き下がるの?」

 

 その言葉に英梨々は以前した決意を更に大きくした決意を発す。

 

「そんな訳無いでしょ!寧ろ、あんたなんかよりもずっと前から、あたしは〝あの女〟を超えるって決めてるんだから!!」

 

「そう、それは頼もしいわね。その気概、倫理・・倫也君を取り戻すまで(・・)は持たせなさいよ」

 

「までって何よ!言っとくけど、あんたにだって譲らないし、負けないだから!!」

 

「せいぜい寝首をかかれないよう気をつけなさい。私だって絶対に諦めないって決めたんだから」

 

 話しが落ち着いて来た頃には屋上には誰もおらず快晴の空からは強い陽光が照り付けていた。

 

 

 ***

 

 

 長い時間を掛けて目的地に到着した安芸倫也は降りて早々に荷物からの振動を察し探してみると見覚えの無い黒い携帯電話が出てきて、怪訝な顔で確認する。

 

〝辿り着いた先には更に先と過去がある。その時、貴方はどちらを選ぶ?〟

 

「どう言う意味?」

 

 今まで以上に解らない内容に首を傾げながらも、気を取り直して歩いて行った。

 

 

 

 




 と、まあ、こんな感じですが続きを書いても良いでしょうか?・・・・・それとも残さない方がいいでしょうか?

 ちなみに、迷宮編の雄二の過去は変えないので省略し、楽園編に『相当』するものを構想しています。
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