グリザイアに射す陽光   作:a0o

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 性格改変が加速します。




奇妙な再会

 緊張感が増す空気の中で間抜けな声が響いた。

 

「ふぁあ~」

 

 その主である安芸倫也はそれなりに精気を取り戻した表情で現状を見た。

 待ち人である風見雄二に銃を突きつけているスーツ姿の女、自分の直ぐ近くに居る加藤恵と周防天音は固まっており、パソコンを持った胡散臭そうな外国人の男は真面目な顔で二人を静観していた。

 

 ()()()()()()()()とは言え、流石に実銃を目の辺りする現状に冷や汗を流すが、この場の主役である雄二と女は構う事無く事を進める。

 

「私の名前〝グラハム〟に聞き覚えはありませんか?」

 

 虚偽は許さないと言外に込めてゾーイが問う。

 

「いや、すまないが」

 

 雄二の素直かつ短すぎる返答に天音が声を上げようとし倫也が制しようとするが、その前に恵が手をかざす。

 

「・・・・・・・・・」

 

「―――――――――」

 

(重さと度胸に磨きが掛かったのは風見の影響かな?)

 

 言葉の無い会話で大人しくする天音と恵を見て倫也は内心で呟く。

 

「では昔の話をしましょう」

 

 ゾーイの切り出しに全員が耳を傾ける。

 

「国際的テロリスト、ヒース・オスロを追う一人のフリージャーナリストが居ました。彼は誰も知らないオスロの情報を手に入れ原稿を書き、新聞社へ向う途中に一人の少女を撥ねてしまった。しかし少女はオスロの私兵であり病院に運ぼうとしていた男をボールペンで刺殺し、証拠諸共ご丁寧に車に火を放ち逃走しました。

 貴方に殺されたジャーナリストの名はポール・グラハム・・・私の父です」

 

 話しが見えて緊張が最高潮になっていく中で雄二は諦めに近いニュアンスで口を開く。

 

「俺は・・アンタの父親の仇と言う訳か」

 

「今・・・・この時の為に・・・私は色々なもの犠牲にして・・・・・やっと此処まで来た」

 

「すまないとは思っている。

 俺は人を殺しすぎた・・・こんな日が来る覚悟はしていた」

 

「謝ってほしくて、こんなことをしている訳では―――――――」

 

 話しが大詰めに入ろうとした時、いつの間にか加藤恵がボールペンを持ってゾーイに突き出していた。

 

「全然、気が付きませんでした。訓練していたとは思えませんし特技か何かですか?」

 

「わたしって昔からそう言う人なんです」

 

 話の主役が加藤恵に代わり、ゾーイは銃を雄二に向けたままで問いかける。

 

「それで〝わたしの男に手を出すな〟と言うことですか?」

 

「そんな事言いませんよ。さっきの話聞いて、引き金を引くななんて言えるほど、わたしは聖者じゃありません。

 でも・・・・・その引き金を引いたら・・・今度はわたしが貴女に復讐します。人殺し志望さん」

 

「・・・・・・流石にアナタの女だけありますね」

 

 ゾーイは銃を下ろし、恵もボールペンをしまい安堵の空気が訪れる。

 

「いや・・・流石に俺もドン引きだ」

 

 雄二の感想に一同が同じだと言わんばかりに肯く。

 

「出てきた時は〝父がそんな事を望むのか〟みたいな事を言うかと思いましたが」

 

 ゾーイの言葉に対し恵は(重い)本心を語る。

 

「わたしはアナタのお父さんを全く知らないし、知ったところで理解できる自信もありません。そんな人間が言う心にも無い言葉で引き下がってくれるんですか?」

 

「・・・・・・・・・」

 

 ゾーイは何も言えず、雄二も肩をすくめ、一番静かにしていた倫也は小声で天音に呟いた。

 

「この一年で黒さと重さに磨きが掛かりまくってますね」

 

「そっちもかなり平然としていたように見えたけど?」

 

「撃つ気が無いことは最初から知ってましたから・・・・それでも内心はビビッてましたよ」

 

 そう言って恵を見ると緊張の糸が切れなのか、足がふらつき倒れそうになるも雄二がすかさず抱き止める。

 

「無茶しすぎだ・・・・それと今の話を聞いても―――――」

 

「そこから先は言わないで・・・でもやっぱり今でも心臓が破裂寸前だよ」

 

 額に汗をにじませ息を整えている恵に雄二はゆっくりと座らせる。そこに倫也が水を持って差し出し、恵は少しずつ飲んでいく。

 

「それにしても陽気なメイドさんと憎悪に燃える復讐者、どっちが本性なんですか?」

 

 倫也の何気ないような疑問に恵と天音は改めてゾーイを見て驚愕する。

 

「ええー!!あ、あのメイドさん!?ウッソーッ、ど、同一人物なのー?!!」

 

 天音の叫びに今度はジミーが出て来る。

 

「ヘーイ!その通り、彼女は僕の嫁、麗しいコスプレメイドの――――――」

 

 そのまま調子に乗りそうなジミーをゾーイがお盆で叩き沈黙させ、雄二達に向き直る。

 

「改めて、合衆国中央情報局のゾーイ・グラハムです」

 

「ラングレーの人間だったのか。しかし、そんな人物の居るところまで呼び出して一体どうしたんだ・・・・と言うか、何が起こってるんだ?」

 

 雄二の視線は倫也に向かい吊られるように一同が注目する。

 

「正確には起こりそうになっているだ。だから、ワザワザ予定に無い帰国をすることになったんだよ」

 

「それで、例の物は?」

 

「ここに全部」

 

 ゾーイが倫也に近づきUSBメモリを受け取り、早足で奥の方に引っ込んでいく。その様子を見た雄二は再び問いかける。

 

「あれは?」

 

「国際的テロリスト、ヒース・オスロが近々日本に入るって情報の裏付け。ちなみに代替核を持ってという有り難くも無いオマケつきも含めてな」

 

 サラッととんでもない事を言うと雄二が驚愕に目を開いた。

 

「・・・オスロが・・日本に・・・・・本当・・なのか・・・・?」

 

「嘘や冗談を言う為に帰ってくるかよ。

 現時点でこの国の機関にある情報は可能性の段階で動けないが、アレがあれば重い腰を上げるに不足無いだそうだ(・・・・)

 

「そうだって・・・なんで、お前がそんな物を?」

 

「ミャンマーでとある軍医さんから預かっただけさ、詳しい内容は俺も知らん」

 

 軍医と聞いて雄二はかつての食えない上官を思い出しながら更に問う。

 

「運び屋もどきのバイトでも始めたのか?」

 

「使いっパシリだよ・・・と言っても唯の(・・)とは言い難いハードな内容を強いられたけど」

 

 何を思い出したのかゲンナリする倫也に追及は後にしようすると思い出したように言葉が続く。

 

「そうそう伝言があったんだ。軍医は出世が早いから今は少尉じゃなく大尉だそうだ」

 

「・・・・・オスロの目的は?」

 

 どうでもいい伝言を無視して話を進めようとする雄二にジミーが前に出てノートパソコンを見える位置に置いた。

 

「それは僕の方から説明しよう」

 

「彼の目的は大きく二つ、一つは君、ユーズリーの身柄」

 

「な、なんでテロリストがユージを?ってかどう言う関係なの?」

 

 慌てる天音にまだ体調が整わない恵も同じ目で問いかける。

 

「親が死んで師匠に引き取られるまでの間、俺はそいつの元に居たんだ・・・・さっきの話もその時の事だ」

 

 沈黙が増す中でジミーが説明を引き継ぐ。

 

「当時の彼は訓練と薬物実験などで出来上がった最高の素材(・・)でね。その遺伝子を複製し量産しようって言う計画案があり、その進行の為に取り戻したいのさ」

 

「解り易く言うとクローン兵士計画のサンプルを返せって、国に脅しをかけに来るってこと」

 

 倫也の表現にSFみたいだと感想を抱くが、誰も口には出さず話の続きを求める。

 

「まあ、それだけなら代替核を持ち込むリスクには見合わない。本命はもう一つの方、超法規的措置によって開発されたシギントシステム、その中核をなす〝半生体コンピュータ〟通称『タナトスシステム』さ」

 

「シギント?」

 

「通信傍受による諜報活動網、あらゆるシステムに侵入可能な超恐ろしいモノさ。

 ちなみに半生体ってのは、システムの核は〝ある少女〟の脳味噌を使われているからなんだって」

 

 天音の質問に答える形で出てきた話に不快な顔をする一同、そこから倫也が声を発す。

 

「気持ちの悪い話ではあるが、あくまで噂さ。それにその話は半分間違っている」

 

「どう言うことだ?」

 

 その言葉に雄二が食いつき更なる説明を求める。

 

「確かに脳が使われているってのは間違いじゃないけど、SFに出て来るみたいに脳に直接ケーブルが刺さっているわけじゃない。それだと維持にコストが掛かるからって背骨からの神経接続での同期であり、体そのものは無事だそうだ」

 

「何故そんな事を知っている?」

 

「聞いたからさ。彼女自身からね」

 

 倫也の目はジミーの持っているノートパソコンに移り、それに吊られるとコンピュータから電子音声が発せられる。

 

『漸く私の出番ね。待ちくたびれたわ』

 

「・・・・・まさか・・・?」

 

 雄二は倫也の話と〝彼女〟と言う言葉から古い記憶にある声を思い出し呆然とする。同じく天音も考え込むようにパソコンを見つめ、唯一人話しについていけない恵が遠慮がちに尋ねた。

 

「えーと、タナトスさん・・・でいいんですか?」

 

『ええ、はじめまして加藤恵さん。

 そして、久しぶりね。ユージ、天音、それにロビーと倫也君も』

 

「おいおいその男は死んだだろ、僕はあくまでジェームズ・岡田、ジミーさ」

 

「俺としてもしょっちゅう会話してたから久しぶりって気がしないな」

 

『そうだったわね。

では改めて、こんにちはタナトスです。その前は『風見一姫』と名乗ってました』

 

「一姫~~~」

 

 天音が涙目で近づこうとするが引き止められる。

 

「落ち着け。話を聞いただけで全て鵜呑みにするな」

 

 雄二は半信半疑の目でジミーと倫也とパソコンを見つめ、さも当然と言わん顔をしている二人と音声再生のみの画面に問いかける。

 

「今の話、信じるだけの裏付けは?」

 

「お前の姉ちゃん・・風見一姫本人に会った事の無いのに分かる訳ないだろ。

 寧ろ、それは今この場で弟であるお前が証明して欲しいんだけどな・・・風見雄二」

 

「いいだろう」

 

 倫也の期待とも挑発とも取れる返答を雄二は、あっさりと受け画面に質問を始める。

 

「俺が今、頭に何を思い浮かべたか分かるか?」

 

『それは有機物、無機物?』

 

「無機物だ」

 

『手に持つことが出来る物?』

 

「そうだ」

 

『素材はプラスチックで、電気で動く物?』

 

「そうだ」

 

『話しかけると返事をしたり時間が分かったりする?』

 

「いいや」

 

『それは口に入れる物?』

 

「そうだ」

 

『電動歯ブラシ?』

 

「正解だ。ちなみにこれで唯一、姉ちゃんを負かしたものは?」

 

『〝ガスの元栓〟でもアレは〝それは火をつける物〟の問いに屁理屈で〝いいえ〟と答えたからでしょ』

 

「ああ。〝火を付けるのはガスで元栓じゃない〟ないって言ったら、そう返された」

 

『懐かしい思い出ね』

 

「・・・・・・・・・」

 

 本人達しか知りえない情報の確認に周囲は微笑ましいに近い感情を持つが、当の雄二は未だに半信半疑から抜け出せない表情をしている。

 

『まだ信じられない?』

 

「・・・・好きな食べ物は?」

 

『ユージ』

 

「姉ちゃんだ」

 

「ええっ、それだけであっさり?と言うか何、その質問と返答!?」

 

 倫也の豪快な突っ込みに同意見の目を向ける一同だが、雄二は取り合わずに額に手を当てる。

 

「本気で混乱してきた・・・・」

 

『受け入れなさい』

 

「ねぇ。本当に一姫でなんだよね?」

 

「間違いない。俺が保証する」

 

「~~~~~~~!!」

 

「ストップ。積もる話はまた今度して」

 

 感涙が満ちて今にも飛びつきそうな天音を倫也が制し、ジミーはパソコンを非難させられるように手を添えている。

 

「・・・・・あのー、はじめまして。雄二くんとお付き合いさせて頂いてます加藤恵です。・・・ええっと・・それとなく話は伺っていたので・・こんな形であれお会いできて嬉しいです・・・」

 

 恵がお茶を濁すように遠慮がちに挨拶するとタナトスは気さくに雄二(・・)に言う。

 

『また私の預かり知らないところで、私の知らない女の子と・・・・・』

 

「・・・・・姉弟・・なんですよね?」

 

 姉とは思えない言葉に恵は唖然と尋ねるが答える者は居ない。

 

「それで、一体どうしてこうなったんだ?」

 

 雄二の切り出しにタナトスが説明を開始する。

 

『大抵の事は天音に残した手紙の通りよ。唯その後で救助が来た・・・その時の私は、とても酷い有様でね。更に運が悪いことに、その日は休日で受け入れ先が〝市ヶ谷〟の息がかかった病院だった』

 

 簡潔でありながらも何か配慮をした説明だと感じさせたが誰も口は挟まずに続きを聞く。

 

『なんとか一命を取りとめはしたけど、そこで資料を目にした医師が次世代情報統合防衛装置〝タナトスシステム〟の根幹を成す脳が見つかったとCIRFに連絡、起動まで三年、試験運用に一年、本格稼動するまで私は〝自分〟と言うモノを失っていた。だから私は〝ある研究員〟に交渉して〝私が誰か?〟を探す抜け道を作って貰った』

 

(なるほど、その研究員が)

 

 雄二がジミーを見つめ、ジミーも申し訳無さそうな目をして無言で肯定を示す。

 

『情報を集め、少しずつ自分である〝風見一姫〟を取り戻していった私には二人の男の子が頭に浮かんだ。

 一人は唯一残った肉親である弟、風見雄二。二人目はこうなる前の一番新しい記憶・・・空に浮かんでいく感覚の中で僅かな隙間から見えた私を見つめていた男の子』

 

「俺が豊ヶ崎に編入の許可が下りた時期と一致するな。やはり倫也の推測どおり偶然じゃなかったんだな」

 

 倫也は顔を逸らして心境を語る。

 

「・・・・・当時は地獄に叩き落され・・・いや引きずり込まれた気分だったよ」

 

『謝るつもりは無いわよ。首を突っ込んできたのはあくまでアナタの意思、引き返す道だって提示したんだから。それに一緒(・・)に出る道だって用意してるしね』

 

「当初の予定とは全く違う形になっちゃいましたけどね」

 

『世の中、ままならないモノよね』

 

 お互いに遠慮なく妙に息が合っている会話をしている様に何時の間にか場の空気が変わっていた。

 

「兎に角、もう(ケツ)に火が付いている状況だ。前置きはここまでにしましょう」

 

『そうね。このままオスロが来日したら、首の皮一枚の状況になってしまうものね。

 さて天音と加藤恵、今までの話を聞いて僅かでも引っ掛かりを感じたりしたのなら、今直ぐ立ち去って欲しいのだけれど?』

 

 突然話を振られた天音と恵は困惑しながら言う。

 

「出来る分けがないでしょ!寧ろ今直ぐに一姫に会いに行きたいよ!!」

 

「返していいんですか?」

 

『今の話を漏らしても頭のおかしい人と思われるだけだし、万が一にもこちら側(・・・・)に聞かれたらどうなるか解らない程、愚かじゃないでしょ』

 

「・・・・・ここに残って続きを聞きます」

 

 恵は座りなおして覚悟を決めたようだが、雄二は先ほどまでとこれからの話の重大さに改めさせようと口を開く。

 

「恵、俺は―――――」

 

「雄二くんの過去がどうであれ、春から過ごした一年以上の時間も間違いなく事実であり思い出だよ・・・これからだって」

 

『いい覚悟ね。じゃあ加藤恵、今直ぐにユージとスカイツリーでデートする約束をしてちょうだい』

 

「・・・・・へ?」

 

 恵は猛烈な肩透かしを食わされたと言うように顔が固まった。

 

 




 上記の理由としましては風見姉弟と共に過ごした一年は伊達ではなかったと言う事で・・・

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