グリザイアに射す陽光   作:a0o

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 今回、戦闘シーンがあります。拙いかも知れませんが楽しんでくれると幸いです。



夜が明ける前に

 簡易ベッドしかない殺風景な部屋に軟禁されている安芸倫也は、手錠を付けられている訳でもなく縛れている訳でもない状態で寝そべり、オスロに付けられたブレスレットを生気の無い目で見ていた。

 

神様(かのじょ)の予想通りに爆弾が取り付けられた・・・・・俺を宣伝の為の道具にする・・・・第一に商人であるって見立ては正しかった訳か・・・・・・・)

 

 ならば待っていれば助けが来る、何とかなると心の中で繰り返すことで自棄に陥らずにいたが、もしも手違いや思い違いで見捨てられたらと言うマイナス思考も同時にせめぎあっており、心の奥に押し込んだ未練が浮かび上がってくる。

 

(冬コミで英梨々と詩羽先輩が創ったゲーム、ぶっちぎりの一位だったって聞いたけど、どんなんだったんだろう?)

 

 どうせならプレイしとけば良かったかなと思いながら、今の仕事と現状に思いをはせる。

 

(それに今は大手で紅坂朱音と一緒にフィールズクロニクルの最新版に・・・・紅坂朱音って凄いけど・・・悪い評判も絶えないからな・・・・・泣いてなきゃいいけど・・・・)

 

 それでも『柏木エリ』と『霞詩子』は成功の道を歩んでいる。こんな戦々恐々とした血生臭い事に関わらせなくて良かったと思った・・・・・が、風見雄二と加藤恵を見ていたら本当に正しい・・否、幸せな道だったのかと迷いが生じる。

 

(違うな。こんなのは自分本位な言い訳だ、二人は成功しているんだ、巻き込んでいい筈絶対に無い・・・・・ハハハ・・・・俺はやっぱり別れたくなかったんだ・・・貴女もあの時こんな事を思ってたんですか?風見一姫さん・・・・)

 

 自分がこんな気持ちになるのも風見一姫(かのじょ)ならもしかして、そう思うと甘んじて受けられ何も怨まずに済む。そう思った時、風見雄二(ともだち)からの言葉が甦る。

 

『絶対に助ける。だから俺が行くまで恥も外聞もなく生き残れ、約束とは別に俺はお前を姉ちゃんに会わせなきゃいけないんだからな』

 

(そうだな、生きなきゃいけないよな。最低でもこの目で風見姉弟が揃うのを見なけりゃ死んでも死に切れない、だから信じるぞ)

 

 倫也は笑みを浮かべ起き上がり待つことにした。

 

 

 ***

 

 

 太平洋ミクロネシア海域、罠の可能性も考慮しタルタロス島は遠回りしながら航行して目指す国の領海に近づいて行く。甲板にはトラビス指揮の元に対空ミサイルを装備し周囲の警戒にあたる。

 領海には巡視船が警告を鳴らしており、今のところは空にヘリなどの配備は見られないが慎重を期し警戒も怠らない。

 

「空の方は俺の班が警戒を続ける。合図したら海の方に居る障害物を排除しろ、オスロさんから許可は得てるし、進入してしまえば後はどうとでもなる」

 

 指示の直後に配置に着き武器を構える構成員たち、トラビス自身も機械と目視で空を警戒しいつ現れても対処できるようにする。

 

(レーダーの反応からする接近する機体は七、だがこの国の軍備じゃタルタロスの敵じゃない。さっさと済ますか)

 

 トラビス自身も武器を構えて目標の接近を待ち、目標が射程内に入り引き金を引こうとした瞬間、小さな音と共に左肩から血が噴出した。

 

「・・・・な?・・・・・うあぁああ!!」

 

 直後に襲う激痛に武器を落とし崩れ落ちる。

 

 

 ***

 

 

 軍用ヘリの開いたハッチからライフルを構えていた風見雄二はインカムに成果を報告する。

 

「命中、第一陣は無力化した」

 

 そして数秒と断たずに折り返しの指示が入る。

 

『こちらでも確認した。敵は混乱している、反撃される前に一気に畳み掛けろ!!』

 

「ウッシャー!!!」

 

 アニエス・ギャレット大尉の命令に操縦士のミリエラ・スタンフィールド中尉(ミリー)が気合い充分な掛け声でヘリを安定速度から最高速度に飛ばし、それに残りのヘリも続き、ガトリング砲の嵐を甲板に振り撒く。

 

「この困難なんてレベルじゃない条件化で、流石ですね風見教官」

 

「半分以上は運だ。それに喜ぶのは終わってからだ」

 

 ヘリに同乗して居たエドワード・ウォーカー(エディ)の賞賛に冷静に返し降下の準備をし、それに小隊長であるジャスティン・マイクマイヤー大尉(J大尉)が同調する。

 

「風見の言う通りだ。事は一刻を争う・・・・色々な意味でな」

 

「例の協力者でありますか、大尉殿?」

 

「そうだ、彼がこうなっているのは私が預けたデータが原因でもある」

 

「命張ったのは女達の為だけどな」

 

「だったら女の怨みを買わない為にも絶対に死なせる訳にはいかないな」

 

 雄二の水を刺すような言葉にJ大尉が更に気前良く返す。

 

「制圧完了!何時でもいいよ」

 

 ミリーの掛け声にJ大尉が合図を送る。

 

「よし、降下」

 

 ヘリから制圧部隊が次々と降下し、編隊を組み指示を請う。

 

『いいか!この作戦に失敗は許されん!!肝に銘じろ!!出撃開始!!!!』

 

 ギャレット大尉の命令により武器を構え艦内に突入して行く。

 当然、敵も黙ってみている訳も無く応戦して来る。銃撃、爆発があちらこちらで響き渡る中でJBから通信が入る。

 

『ユージ、そこは敵のアジトよ。無理な特攻はしないで数で潰すことを念頭に動きなさい』

 

「了解、では敵の武装、数、戦闘場所の報告は随時行うから、詳細な指示を求める」

 

『今までになく素直だなカザミ、では早速足止めを喰らっている部隊の援護に行ってもらう。場所のデータを送るから側面から叩け!』

 

「アイ、マム」

 

 ギャレットからの命令も的確にこなし、銃撃を受けている味方が下がり追撃し様としたところを一斉射撃して無力化し、制圧完了の報告と共に次の支持が入り走り出す。銃撃と爆発は激しさを増していくが、雄二達は指示通り無理はせずに味方と連携して撃退していき、時間と共に激しさは収束していく。

 雄二は味方からの情報を確認しながら、まだ制圧出来ていない場所を検討し指揮官に要望を伝える。

 

「制圧されてない地点に赴く許可を」

 

『例の協力者か?だが話しによると――――』

 

「ああ、爆弾が取り付けられてる可能性があり、だが放っておけん」

 

『ふん。処理班と合流するまで迂闊なことするなよ』

 

「了解!」

 

「自分も同行します」

 

「私も行こう」

 

「ああ、助かる」

 

 エディとJ大尉の言葉に感謝を示し走り出し、目標地点が見えてきた所に白髪の一人の男が立っていた。背後には扉があり見張りにしては殺気立っており雄二を捕らえると愉快そうに口を開いた。

 

「はじめまして、兄さん」

 

「なんだ、オマエ?」

 

「想像はつくだろ?デザインソルジャ-ズプロジェクト、テュポーン計画被験体TP-427、ラングレー風に言うならET-02、兄さんの遺伝子を複製した人間さ。髪と目は姉さん似、陳腐だけど天才の遺伝子を持った証とでも言えばいいのかな」

 

 テュポーンは直後に踏み込みエディにナイフを刺し、銃を構えようとしたJ大尉に回し蹴りを喰らわせ吹っ飛ばす。

 

「グワッ!」

 

「ダァア!」

 

 その振り向きざまに雄二に斬撃を放つが今度は受け止められ、刃が鍔迫り合いながら言う。

 

「流石だよ。素面でこれなら薬を使えばどうなるか」

 

 互いに飛び退きながらテュポーンは注射入りのケースを投げ、雄二の足元に落ちる。

 

「使いなよ。兄さんが使ってたブースタードラッグ、いい加減優劣をハッキリさせたいんだ」

 

「必要ない」

 

 ケースを蹴り、ナイフを構える姿にやれやれという仕草で首を振り怒声を発す。

 

「俺を嘗め過ぎだよ。兄さん!」

 

 テュポーンは踏み込み、ナイフを刺しに来たが雄二はスウェーで交わすが、すかさず刺しから薙ぎに斜め上から振り下ろし、その全てに殺気を込めた斬撃に対し雄二は回避と防御に徹する。

 

「どうしたんだい?防戦一方じゃないか・・・・こんなもんじゃないだろう、攻めてきなよ!」

 

 斬撃が激しさを増し距離を取る雄二に腰の拳銃を抜き発砲、集中力を極限まで研ぎ澄ませ回避、雄二も銃を抜き互いに照準を合わせたまま膠着状態に入るが、程なくしてテュポーンが背後にある扉に目を向け口元を吊り上げる。

 

「ああ、兄さん。ひょっとして友達に残酷シーンを見せたくないとか思っちゃってる?」

 

「・・・・・・・・」

 

 何も答えない雄二に視線を戻しながら続ける。

 

「理解できない不必要な感情だ・・・・・そもそも国防なんてものを本気で憂いてる訳じゃないんだろう?そうまでしてオスロを倒して・・また使い潰され・・・・そんな価値が今の世にあるのかい?」

 

『それに関しちゃ、お前達の姉ちゃんから伝言があるぞ。ホントはオスロにでも言えって託されたのが』

 

 タイミングを見計らったように扉から安芸倫也の声が響く。

 

(聞き耳を立ててたのは当然として、そのままドア越し・・・・出てきて堂々と言えば格好が付くんだが・・・それを求めるのは酷だよな)

 

 雄二は理解を示しながら耳を傾ける。

 

『〝神ならざる人間(・・)の分際にそんなものを分かってたまるか、今の世の価値なんて後の世の歴史家か妄想に取り憑かれた狂人にでも語らせて置けばいい〟だそうだ。

 そして、ここからは俺の意思、どうせ命と人生賭けるなら真の天才が創る未来(ビジョン)の実現に俺は賭ける。だからさ、俺がお姉さんを日の当たる場所に引き上げるのを邪魔するな!』

 

 史上最高とも言えるプロデュースがしたいと語る声にテュポーンは怒りを顕わにして注射器を取り出す。

 

「決めたよ。姉さんを取り上げるってなら、キミは俺のこの手で殺す!」

 

 針を突き刺して体を震わせ、雄叫びを上げ突進してくるのを冷静に交わして立ち居地を入れ替え扉越しに居る友に語る。

 

「倫也、その賭け俺も乗った!

 生きてて面白そうだと思えたのは始めてだ、ありがとう」

 

「ウオォーーー!!死ねぇーー!!!」

 

 発砲しながらナイフを構え向ってくるテュポーン、その速度は雄二でも反応しきれず銃弾は体をかすめ体勢を崩しナイフが襲ってくるが側面からエディが猛烈な勢い体当たりし壁に激突する。

 

「!!どけー!!!」

 

 渾身の蹴りでぶっ飛ばし崩れ去るエディ、そして開いた視界には拳銃を構えたJ大尉がおり構うことなく全弾を打ち込む。

 

「グワァ!」

 

 テュポーンは倒れこみ雄二を睨みつけるが、あっさりとしたニュアンスで言葉を掛ける。

 

「油断したな。俺には信頼できる仲間が居るし、殺し合いで一対一に拘るほどガキじゃないんだよ」

 

 そのまま怨念に満ちた目で息絶えるテュポーンの瞼を閉じて更に言葉を掛ける。

 

「名乗り遅れたな・・・俺の名前は風見雄二・・・よく覚えて地獄に行けば通りもいいだろう」

 

 そして廊下を見るとエディの腹部を押さえ止血作業しているJ大尉に声を掛ける。

 

「エディは?」

 

「心配ない、傷は筋肉で止まってる。止血が済めば問題ない、それよりカザミは彼の方を」

 

「ああ、すまない」

 

 雄二は扉を開け直ぐ側でヘタリ込んでいる姿を目に軽口を叩く。

 

「さっきの台詞、出てきて堂々と言えば決まってたのに」

 

 対して倫也は辟易した顔で返す。

 

「これが俺の限界・・・・ってか、もうとっくに超えてるな・・・だから言えたんだな」

 

 肩をすくめながら腕のブレスレットを確認、嫌な予想通りの展開に舌打ちしたくもなるも手を貸して立ち上がらせ部屋を出ると応急処置を終えたJ大尉が話しかける。

 

「久しぶりって程じゃないか。それにしても随分無茶をしたものだ」

 

「・・・・・こんなのは二度とゴメンですよ・・・」

 

 倫也は憔悴した顔で飾らずに言ったところにJBに連絡を入れる。

 

「本部へ、人質及び爆弾を確保したので至急そちらに向う」

 

『それは朗報ね。でも不味い事になったわ、チームアルファが全滅してオスロを取り逃がした。奴は脱出して逃げおおせる気よ』

 

「この国とも連携して包囲してるんだろう、どうやって?」

 

『包囲網内の陸地に外ナンバーの車が待機してあるのを確認した、そのまま大使館にでも逃げ込まれたら手が出せない・・・・』

 

「こっちが動けるのはあくまで海の上、それでなくても・・・オスロもまたプロって事か・・・・安全確保は怠らない」

 

『高速艇を使えば十分と掛からず辿り着ける、直ぐに格納庫に向って・・辿り着かれたら終わりよ』

 

「了解」

 

 通信を切り皆の方を向く。

 

「そんな訳で倫也を頼む。俺は行く」

 

「・・・・武運を祈るよ」

 

 倫也は親指を立て、J大尉とエディは敬礼し雄二を見送った。

 

 

 ***

 

 日本から時差があるとは言え真夜中の時間帯であるにも関わらず、加藤恵の目は冴えており泊まっているホテルの一室で何時も通り携帯を弄る事もせずに、心配そうな顔でじっと座り込んでいた。

 

(雄二くん・・・安芸くん・・・・どうか・・・・)

 

 手を組み神に祈るような格好で、ただ時間が過ぎていくとノックの音が響いて扉を開けると天音が荷物を片手に挨拶した。

 

「お待たせ~、追いついたよ」

 

 声は明るいが半分は空元気に聞こえ、溜息を付くこともなく背後を見るとずっと会いたかった待ち人が笑みを浮かべて挨拶をした。

 

「こんばんは、タナトスです」

 

「お待ちしてました、どうぞ」

 

 恵は淡々と答え部屋に招き、少々意外な顔で二人は入って行く。

 天音は荷物を置いて整理を始め、タナトスは早々にソファーに座り込み話しかけた。

 

「その様子からすると、私が送った資料は見てないようね」

 

「雄二くんに許可を求めたら、自分の口から話すからと・・・」

 

「・・・そう・・・・思っていた以上の胆力ね」

 

 嬉しそうにするタナトスに恵は作り笑いで返す。

 

「はい。雄二くんのことはわたしが居ますから・・・・お義姉さん(・・・・・)は安芸くんに掛ける言葉だけを考えてください」

 

「・・・・・・まだ認めたわけじゃないわよ。それに倫也君に掛ける言葉を考えるなんて必要ないわ」

 

「もう考えてある・・・・考えるまでも無いってことですか?」

 

「いいえ。私が彼に言葉をかけるんじゃない、私は彼のずっと言いたかった事を聞き届けてあげるだけ、それで一先ずは決着よ。あとはユージと・・・貴女の出番でしょ」

 

 恵は作り笑いを止め、真剣な表情で続ける。

 

「〝風見一姫さん〟わたしは貴女のように全てを見通す神掛かりめいたモノはありませんが、それでも考えることがあります」

 

 タナトスも笑みを消し黙って続きを待つ。

 

「一姫さんが安芸くんに背負わせた苦しみによって狂った道・・・・それでもその先に行けば、きっと良かったと感じる事ができるんだと・・・・わたしはそう思いたい・・・だから―――――」

 

「残念だけど、それでも私は神様じゃないの未来(さき)のことなんて解らない」

 

 タナトスは言葉を遮り窓向く。

 

「でも、陽の光が射し込んで来る頃には、その答えの一端が見れるはずよ、だから待ちましょう」

 

「そうですね。信じましょう、わたし達の大切な人を」

 

 恵は理解するも納得仕切れない顔で同じく窓を見て、その時が来るのを願った。

 

 

 




 次あたりで決着を付けます。

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