グリザイアに射す陽光   作:a0o

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 ここから私の捏造が入ります。




変わってしまった日常

 

 

 

 日曜日、赤坂(・・)にある大手調査会社『アサヒリサーチ』に依頼を終えた倫也は図書館に向う道を歩いていた。

 

(もっと色々聞かれるかと思ったけど・・・意外を通り越して不気味なほどスムーズにいったな)

 

 訪ねて行った際に待っていましたと言わんばかりに案内され、簡単な事情説明と手続きを坦々と済ませ、更には報酬も依頼完了後で構わないと言う怪しさ満点の対応だったが、倫也は全く問題視していなかった。

 

 そうして図書館に着き、窓近くの席に座った倫也は六年前(・・・)の事故の資料を集めこれまで調べた情報を改めて検証した。

 

(やっぱり、俺が見た〝あの事〟に関する記述が何処にもない・・・・まぁ、解りきっていた事だけど、括った腹を更に締めて望まないとな)

 

 資料を閉じて戻した後、新たに様々な問題集や参考文献を集め勉強を開始する。傍目には勤勉な学生だが、それまでの彼が見ればギャップに目を疑う光景だった。

 

 そのギャップを現在進行形で感じている加藤恵はオズオズと倫也に近づき話しかけようか迷っていたとき、倫也の方から声が掛かる。

 

「立ってないで用があれば座ったらどうだ?」

 

「集中してるみたいだったのに・・・わたしのこと気付いてたの?」

 

「そこに薄っすらと写っただけだよ」

 

 何かの達人みたいだと言いたげな恵に倫也は窓を指す。

 

「それはそうと加藤も勉強か?使いたい本があるなら遠慮しなくていいぞ」

 

「ううん、人と待ち合わせしてるだけ・・・・それに、それ全部テストとかでする勉強に使うものじゃないよね」

 

 倫也が心境の変化は既知であったが、一般高校生のレベルでは収まらない勉強の量と質をこなす姿は、本来は感心しなければならない筈なのに何故か鬼気迫るように感じてしまう。

 

将来(これから)に備えてのものだ。行きたい大学・・・いや学びたい事は無茶苦茶に難しくて多岐にわたるからな」

 

「もしかして・・・・お医者さんとか・・・目指してるとか?」

 

 顔も上げずに話す倫也に、最早危うさを感じた恵は無難な推測を口にする。

 

「医学も学びたい分野の一つだな。

 ところで待ち合わせって風見じゃないのか?」

 

「うん、従兄弟の医大生。この後でご飯食べに行くんだけど、安芸くんもどうかな?」

 

「パス」

 

 一言で断り、勉強に没頭していく姿に居心地の悪さが限界に来た恵は軽く会釈して離れていった。

 

 

 

 ***

 

 

 翌、月曜日。

 参考書を開きながら登校する倫也に周囲は若干驚くが、その取り巻きの一人である澤村・スペンサー・英梨々は若干どころではなく、近づいて来る倫也に(色々な意味で)ビクリと反応し足がもつれてしまうが、倫也に手をつかまれ助けられる。

 

「あ・・ありが―――――」

 

「気を付けろよ」

 

 礼を言おうとするも素っ気無く返し、そのまま通り過ぎていく倫也に英梨々は嬉しさ以上に悲しさがこみ上げるが、今回は我慢した。そして周りに居た取り巻き達は得体の知れない怖気を感じて静まり返っていた。

 

 

 ***

 

 

 オタクから勤勉学生に変貌してしまった倫也の姿はそのまま続き、昼休みの図書室でも黙々と勉強している姿は周りから奇異に映り、見えない壁が有る状態が形成されつつあったが、学園一の才女にして暗黒美女である霞ヶ丘詩羽にはどうと言う事もなく、堂々と近づいて行き、いざ座ろうとした瞬間に倫也が立ち上がる。

 

「あ、使うんだったらどうぞ」

 

 倫也の視線は携帯に釘付けに去れており詩羽には気付いてさえいないようだ。荷物を手に早々に歩いて図書室を出て行く。

 

「―――――――」

 

 その姿に詩羽は屈辱も悔しさも哀しさもなく、虚しさだけが満ちて座り込むしか出来なかった。

 

 

 ***

 

 

 放課後の第二美術室、その主である澤村・スペンサー・英梨々とその隣に霞ヶ丘詩羽、彼女達の向かいには風見雄二とオドオドしながら周りを見る加藤恵が座っていた。

 

「で、一体どうしたんだ?」

 

 雄二が気負う事無く言葉を発すが、全く配慮のないニュアンスに対面の二人は我慢の限界が来た。

 

「うわああああ~~~~ん!!!」

 

「~~~~~~!!」

 

 英梨々は大泣きし、詩羽は顔を伏せて小刻みに震える。

 

「え~・・・あの~~・・・・・」

 

 部室の艶かしいスケッチに意識を奪われていた恵がなんとか宥めようとするが、気持ちがはち切れた二人は止まらない。

 

「いっ、一体なんなのよ~~!!どうして・・・ホントにさよならなの~~!嫌だよっ、こんな突然―――――」

 

「あなたなんて・・全然いい方よ・・・・私なんて視界にすら入らなかったんだから」

 

 倫也と英梨々の登校時の顛末はそれなりに噂になり雄二と恵の耳にも入っていたが、詩羽にまで同じ様な事をしていたとは知らず、さっさと帰ってしまったその〝当事者〟に対して感想を漏らす。

 

「本当なら、女の子を泣かせるなんて最低だって言わなきゃいけないんだろうけど・・・」

 

「一概にそうとも言えんだろ。アイツにも事情があるのは間違い無さそうだからな」

 

 恵と雄二の慰めにならない発言にまず英梨々が飛びつく。

 

「~~~、じ・・事情って~~何?」

 

「知らん。俺も聞きたいぐらいだ」

 

「でも、今日の様子や昨日の図書館での猛勉強を見ると、今日明日で片付けられる様な事じゃないのは確かだよね」

 

「昨日ってどういうこと?加藤さん、あなたまさか倫理君と――――」

 

 恵の発言に詩羽が詰め寄るも慌てて弁明する。

 

「偶々です。従兄弟と待ち合わせしてたら偶々、まぁ、居心地悪かったから直ぐに退散しましたけど」

 

「なんなのよ。人探しはどうなったの?」

 

 吐き捨てるように言う詩羽に雄二が答える。

 

「俺も気になって今朝それとなく聞いてみたら、興信所に依頼したと言っていたな」

 

 その言葉に詩羽は図書室での倫也の様子を思い出す。

 

「あの時確か、倫也君は携帯の画面に集中していた・・・まさか――――」

 

「依頼したのは昨日だと言っていた、いくらなんでも早すぎる」

 

 雄二の否定に詩羽は呪いでも唱えるかのごとくブツブツと独り言を始め、英梨々は一向に泣き止む気配がなく、この場での唯一の良心とも言える加藤恵は途方にくれるも切り出す。

 

「あの~、この一件にわたしは部外者で赤の他人だけど・・・・ううん、だからこそ安芸くんに、なんとか話をするように橋渡しを―――――」

 

「なによ、その今わたしは彼に一番近い女なんですみたいな台詞、とてもとてもムカつくんだけど」

 

 暗黒美女のオーラを出す詩羽に雄二が恵を庇うように声を掛ける。

 

「変に僻むな。みっともないぞ」

 

「そして今度は彼女を守る彼氏振りを見せ付けるなんて。

 ああ、きっとのこの後でお互いを労ってキスを交わし、挙句に―――――」

 

「あのそれは飛躍しすぎな上に失礼なんじゃ」

 

 詩羽のおかしな方向に妄想を進める姿に恵が引きながらも抗議するが、雄二は全く動じる事無く考え込み、爆弾(ことば)を投げる。

 

「もしかして霞ヶ丘、前に倫也にそういう事を迫って断られたのか?」

 

 詩羽の表情は固まり、英梨々は泣き止み、恵も面食らう。

 

「その顔は図星か」

 

「どどどどど、どういうことよ!?霞ヶ丘詩羽!!」

 

 英梨々は詩羽に掴みかかり揺さぶり、詩羽もされるがままになる。

 

「―――――――」

 

 詩羽は目を逸らし恥ずかしいような悲しいような表情を作る。

 修羅場になりかけている現状を雄二は注意深く観察し呟く。

 

倫也(おとこ)を取り合っての三角関係とは、やはり違うみたいだな」

 

「一体何がしたいの?!」

 

 恵は修羅場とその元凶を交互に見ながら声を上げる。

 

「俺も聞きたいな。澤村と霞ヶ丘がどうしたいのか?俺・・・いや倫也(想い人)にどうして欲しいのか?」

 

 雄二の言葉に静寂が起こる。

 

「・・・・・・どうしたい・・・?」

 

「・・・・・・・倫理君に・・どうして・・・?」

 

 英梨々と詩羽は先の倫也からの別れと、その前のすれ違いを思い出し再び気分が沈んでいく。

 

「それが解らなきゃ、俺だって何も出来ないぞ。が、今はまだ早いか」

 

 雄二は立ち上がり部屋を去り、恵が慌てて後を追いかける。

 残された二人は、やっと巡ってきた手掛かりに考えを進めていた。

 

 

 

 

 そして雄二と恵は一緒に並んで帰りながら先の出来事を話しあう。

 

「ねぇ、もうちょっと優しい言葉を掛けてあげても良かったんじゃ?」

 

 恵は雄二の言葉そのものは否定せずに、やんわりと切り出す。

 

「それでは弱い。あの二人を振るなんて決断、並みの覚悟じゃない・・・・そうせざる得ない事情は俺も知りたいが、最低でも己の心の在処をハッキリさせとかないと話しにもならんだろう」

 

「考える、ううん、自分と向き合う時間が必要って事?」

 

「そうだ。澤村・スペンサー・英梨々と霞ヶ丘詩羽、共に突然の宣告で心ここに在らずに近い状態になっている。それでは今の倫也には届かない・・・・・が、俺の想像の及ばない決断するかも知れない気もしなくもないが・・・」

 

 話の途中から雄二は考え込み、もと来た道を振り返る。

 

「どういう意味?」

 

「今更言うまでも無く、霞ヶ丘はラノベ作家であり、澤村はあの部屋をして同人を手がける兎に角、隠れオタクであることは間違いない」

 

「あ~、うん」

 

 美術とは程遠いイラストの数々が飾られた部屋を思い出し恵は頷く。

 

「その手の人種、創作家(クリエーター)なら普通に話しをすると言う選択をせずに、予想のつかない方法を取るんじゃないかと思ってな・・・・・よく考えたら失敗したかもしれないな」

 

「だとしても時既に遅しだよ」

 

 再び戻ろうか逡巡している雄二に恵は諦めるように諭し、取り敢えずおかしな事にならないように天に祈ることにした。

 

 

 





 さらにここからご都合主義も入ります。

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