「あーあ…。此処どこだよ…。」
ランガーオ山地の川辺の近くで焚き火にあたりながら頭を抱える鎧を着た男の人間が居た。
(俺、ゲームしてただけのハズなんだけどなぁ…。)
「はぁ…。」
溜息が止まらない。
朝野 孝一
26歳
無職
会社の経営難によりリストラされ、当てもなく3ヶ月ひたすらゲームをして遊んでいたある日、突然胸が苦しくなって意識を失ったのだ。
(心筋梗塞とかかな…、もしかして俺死んじゃった?)
改めて自分の装備を見てみる。
着ている鎧は鉄の様な鋼の様で、その鎧には古びてボロボロではあるが後ろに紋章が入った高貴そうなマントが付いていた。
右手には物干し竿と呼ばれる身の丈以上はある長い刀、左手には少し大きめの盾を持っていた、更に腰には短剣とベルの様な物を装備している。更に地面にはもう1つの物干し竿が転がっていた。
(ゲームのまんまの装備だよな?これ。)
意識を失う前にゲームの中でしていた装備と見た目全く一緒なのだ。
そして、そのゲームでキャラクタークリエイトした顔と全く一緒である事も…。
「はぁ…。」
(こんな事になるならイケメンにでも作っとくんだった。)
西洋風と言ったらおっさんだよな!などと狂った考えから生まれた顔は、40代辺りのちょっと白髪が混じった渋い顔だった。
周りを見渡すと、白い帽子を被った豚がのんびり歩き、白いウサギがぴょんぴょん跳ねている。そんなモンスターともいえる存在が至る所に居た。
(こいつらとこの風景、どっかで見た事あったんだよな〜。何処だったかな…。)
うーむ…などと首を傾げつつ、自分が装備している物干し竿に目をやる。
向こうのゲームの世界では耐久力というものが有って、使いすぎると壊れてしまったのだ。
特にこの物干し竿は細長い刀という事で、耐久力は他と比べて低かった。
(試し切りしたいけどもし耐久力が有るなら無駄切りは避けたい。だが周りのモンスターの強さも気になる。)
もしモンスターが自分より強かったら、のんびり此処でくつろいでる訳にもいかなくなる。
腰に付けた短剣であれば耐久力もそれなりに有るし問題ないだろう。
手頃なサイズの石つぶてを拾う。
(敵は一体ずつ誘き寄せるべしっと。)
寝ているウサギ辺りが良いだろう。
しっかり狙いを定める。
流石に寝ている敵には当てられるはずだ。
力を込め…投げる!
思った以上の豪速球が繰り出される!
(うおおおお!はええええええ!)
豪速球はウサギに直撃し、血飛沫が飛び出しそのまま横になり動かない。
(え…?死んだ…?)
そっと近寄り足で突ついてみるが反応は無い。
(よええええええ!そして俺つええええええ!)
(俺、この世界で強い方?)
など考えながら、倒したウサギはそのままにして満足げに焚き火に戻っていく。
しかし戻っている最中に、焚き火の向こう遠くから白いティラノサウルスの様なモンスターがやってくる。
しかも体格もそれなりに良い角の生えた生き物を口に咥えている。
(うわあああああ!調子乗ってすいませんでした!)
全力で逃げ出し岩陰に隠れるのだが、恐らくバレているだろう。
しかし真っ直ぐ向かって来ず、焚き火に近づき咥えていた生き物を側に落とすと、此方をチラ見して去って行った。
(案外友好的なモンスターかな?)
追いかけるか迷うが、置いていった者も気になる。
深追いは危険。
そう判断し、置いていった生き物をまじまじと観察する。
(待てよ…こいつってもしかして…。)
周りの雪の風景と生き物が頭の中で結びついていく。
(此処は…此処は、ドラゴンクエストⅩの世界だ!!)
そして目の前に転がっている種族はオーガ。
確か他にまだ色々な種族が居たはずだ。
とんでもない所に来たな。
でも、これからが楽しみだ。
と、2つの感情が渦巻く孝一であった。