鉄也のヒーローアカデミア 磁場鉄也:オリジン 作:そうちゃん
「 」
『死んだような顔ってどんな顔?」と聞かれたらこの顔の事だと説明すれば万人に分かるほど表情が死んでいる。頭の中をフラッシュバックするのは先程の爆豪との準決勝。瓦礫に足を取られ場外負けをした時の映像が何度も頭の中をループする。決して油断はしてなかった。決して不利な状況では無かった。決して負ける気など無かった。それでも接戦をした挙句に負けるのならまだ割り切れる。だがたった一つの事故。いや事故というのにも小さ過ぎる出来事で鉄也は負けた。
自分を鼓舞していた八百万、母との約束が今となっては鉄也の心に塩を塗る。
『それじゃあステージの修復も終わったし準決勝二回戦を始めようか!...え?その前にトイレ休憩だって⁉︎ナイスタイミング!俺もぶっちゃけ我慢の限界だったんだぜ!』プルプル
『我慢せずにいけよ。」
(...!)
マイクの放送で我に帰る。ここでクヨクヨしてもしょうがないと重い腰を上げA組の観客席へと向かう。
〜〜〜
「さっきトイレ行く途中で磁場とすれ違ったけど顔が死んでたぞ。」
「いや、誰だってあんな負け方したら落ち込むだろ。」
「やはり相当落ち込んでいますのね...」
「どうしよ、磁場にあったらなんて言えばいいか分からないよ私。」
「け、けど負け方はアレだったけどいい勝負だったし...」
「麗日さんそれ磁場君に言ったら絶対ダメだよ...」
「なんか俺胃が痛くなってきた...」
「...あ、磁場さん。お、お疲れ様です。」
((((⁉︎))))
「あぁ、ありがとう。」
「「「「.........」」」」
(き、気まずい⁉︎)
声、顔、動き、全てから『凹んでいる』オーラが出ている鉄也に皆かける声が見当たらずなんとも重い空気が漂う。この空気をなんとか晴らそうとクラスの盛り上げ担当の上鳴が試みる。
「ど、どうしたんだよ磁場!負けたのがそんなに悔しいのかよ!
アレだろ?爆轟の強張った顔で引きつってた俺らを笑わそうとワザと場外に出たんだろ?」
((((⁉︎))))
「あんた何最大級の爆弾投げ込んでんのよ!」ヒソヒソ
「だってこの空気を耐えられなくてよ!」ヒソヒソ
「だからって言葉選べよお前!磁場に殺されるぞ!」ヒソヒソ
「......」
「あ、これはダメだな上鳴。お前死んだな。」ヒソヒソ
「逆に何も言わないのが怖いよ...」ヒソヒソ
「何か磁場さんの頭上に黒い線が見える様ですわ...」ヒソヒソ
すると鉄也がゆっくりと顔を上げ無理に口角を上げ少し溜めた後。
「はは、そうだな...」
(怒ってくれないのが一番申し訳ない!)
「あら磁場ちゃん戻ってたのね。お疲れ様。」
とてつもなく重い空気の中手洗いから戻ってきた蛙吸が席へと戻ってきた。
「...あぁ、情けない結果で終わったけどな。」
(((とうとう自分から降ってきた⁉︎)))
「.....」
「.....」
(((そして何も言わないの⁉︎)))
「...そうかしら?」
「え?」
「確かに磁場ちゃんは負けてしまったわ。自分の納得がいく負け方をしなかったかも知れない。」
「...っ」
「けれどそれでも磁場ちゃんは頑張ったんでしょ?精一杯戦った磁場ちゃんを誰も情けないなんて思わないわ。もしそんな磁場ちゃんを情けないって思う人がいたら私が怒ってあげるわよ。」
「!」
死んでいた鉄也の表情が戻ってきた。その顔はまるで絶望の淵で女神にあったかの様な顔をしている。
「だからそんなに落ち込まないで磁場ちゃん。大丈夫よ磁場ちゃんカッコよかったもの。ちゃんと見てくれる人は居るはずよ。」
「あ、蛙吸...」
(((流石梅雨ちゃん!)))
「梅雨ちゃんと呼んで磁場ちゃん。」
「...梅雨...様。」
(((『様』⁉︎)))
「...?梅雨『ちゃん』と呼んで磁場ちゃん。」
〜〜〜
『さぁトイレ休憩も終わったことだし準決勝二回戦行こうかぁ!飯田天哉vs.轟 焦凍!レディィィィィィィ...スタァト‼︎』
準決勝二回戦、これで勝った生徒は決勝へと進み爆豪との戦いになる。先程まで果てし無く落ち込んでいた鉄也だが聖母梅雨ちゃんのお陰でメンタルは持ち直した。
「なんだかんだでもう準決勝なんだな。しかしこうもA組の奴が残ってた言うのはクラスメイトとしてなんか鼻が高いな。」
「お前はあいつらの親かよ。...それにしてこの試合どうなると思う?」
「やっぱり轟じゃね?飯田も弱くは無いんだろうけど飯田の個性だと轟の氷結に対応出来なさそうだしな。磁場は?」
「まぁ同じ考えだな。飯田の個性は単純に言えば『足が速い』だ。地に足が着いてないといけないのに轟はその地面を伝って攻撃して来るからな。俺や爆豪のみたいに空中機動が出来ない飯田には相性最悪だな。...けど勝ち目がないって訳ではないと思うけど。」
「氷結される前にかたをつけるって事か?」
「短期決戦って奴?」
「そ、けどそれは轟もわかってると思うから問題なのは...」
「『レシプロバースト』をどこで使うか、ですわね。」
「てことは飯田が『レシプロ』を使った所で勝負が決まるって事か?」
鉄也達が飯田達の戦いを考察していると動きがあった。轟の氷結を飯田が加速を用いた幅跳びで氷結と轟を飛び越えた。それを見逃す轟でも無く着地に合わせ氷結を行う。飯田の足が地面に近付くにつれ氷結も迫ってくる。二人には緊張が走りまるでスローモーションの様に時間が進む。そして飯田が地面に着地した。
(取った!)
轟自身も観客もそう思った。しかし氷結が飯田を捉える瞬間飯田と目があった。その目は飯田が轟にこう言っている様に見えた。
『まだだぞ轟君‼︎』
「っ⁉︎」
刹那、着地と共に飯田が轟の視界から消えた。そして轟は根拠もなく反射で身を屈めた。その瞬間に頭上を『ブォンッ』と重いものが高速で通り過ぎる風切り音が聞こえた。その音を捉えた瞬間に頭に強烈な痛みが走った。頭を蹴られたと理解する間もなく次には首根っこを掴まれ引っ張られている。一つ一つ自身に起きた現象を理解する前に次の現象が重なり思考が止まる様だ。一瞬の攻防の入れ替わりからの逆転。観客も『決まったか?』と思い始めた時急に飯田が失速した。
「⁉︎」ガクンッ
「派手なのばっかしてたからこういうのは抜けてただろ。」パキパキッ
脚を見るとふくらはぎのマフラーの排気口に氷が張っていて穴が塞がれていた。
「な⁉︎いつ氷結を⁉︎」
「頭けられた時だ。警戒してたけどやっぱ速ぇな。」
「ぐぅっ!」
すかさず飯田の体を氷結で動きを止め飯田の行動不能により轟の決勝戦進出が決まった。
「一瞬飯田の勝ちか?って思ったけどやっぱ轟かぁ。」
「けれど飯田さんも後もう一歩でしたわね。」
「個性の相性とかもあるけどさすが飯田だな。...これで決勝戦決まったな。」
「轟と爆豪か、どっちが勝つんだろうな。」
「やっぱ轟じゃね?いくら爆豪でもあの範囲攻撃はきついだろ。なぁ磁場?」
「けど爆豪には轟には無い機動力と空中機動があるからな。攻撃範囲では負けるけど機動力では買っている。火力は...轟が左を使い始めたら押し負けるだろうな。まぁ俺は機動力も範囲攻撃も火力もあるから爆豪より優位に戦えるけどな。」
(((やっぱりまだ根に持ってるんだ。)))
『10分休憩の後決勝戦始めるぜお前ら。試合途中にトイレ行かない様今のうちに行っとけよ!俺も行ってくるぜ!』
「っと、俺も行ってくるか。」
次の試合を見逃さない為にもトイレへと向かう。その途中で爆豪が向こうからやってくる。こっちに気付くと聞こえる大きさで舌打ちをし鉄也の横を通り過ぎた。
「...」
「...なぁ爆豪。」
「...あ”ぁ?」
「俺の分まで頑張ってくれよな。」
「誰がお前の分なんて背負うかよクソが!あんな試合勝っても意味ねぇだろ!俺が取るのは完膚無きまでの一位だ。あんな勝ち方まわりが認めても俺が認めねぇ!」
「じゃあ引き分けか?」
「なんで俺がお前と引き分けんだ!」
「じゃあ俺の勝ち「なんで俺がお前に負けんだよ‼︎」
「あんなクソ試合ノーカンだノーカン!」
そういうと爆豪は機嫌が悪そうに振り向きそのまま待合室へと向かう。
「.,.来年だ!」
「は?」
「来年の体育祭で全力で戦おう!そしてその時は俺が勝つ!」
「バカが、勝つのは俺だ!...次あんなダセェ負け方したらぶっ殺すからな!」
〜〜〜
『さぁ!なんだかだでもう決勝戦!この一戦で雄英一年の最強が決まるぞ!決勝戦‼︎ 轟 焦凍vs.爆豪 勝己!レディィィィィィィイスタァト‼︎』
その氷結が逆にスタートの合図かと思うほどにフライングじみた大氷結。その氷結に爆豪の姿が見えない。まさかもう勝負が決まったかと観客は思っただろう。しかし轟を含めA組はまるで『勝負はまだ終わっていない』と言わんばかりに爆豪がいた場所から目を離さない。
するとステージから『ドンッ』と小さく地鳴りの様な音が響いた。その音は一度では収まらず回数を重ねる毎に地鳴りは大きくなり氷山は揺れ始めた。ここで観客もまさかと地鳴りと共に揺れる氷山を見つめる。
ドン
ドォン
ドォン!
ドォォォン!
ドガァァアアアアアン!
爆発による爆風と氷から目を防ぎ『やっぱりか』という様な顔で次に備える。二人同時に走り出し爆豪は爆破で宙に浮き急速接近をする。轟もそれに反応し『右手』で応戦するが爆破で軌道を変えられ空振る。すれ違いざまに爆豪は轟の左側を掴み爆破を重ねて轟を場外に向け投げ飛ばす。何度か地面をバウンドし場外へ飛ばされて行くが氷を地面から壁の様に張り場外負けを免れる。
「...なんか轟の戦い方が雑になってるな。」
「雑?というと?」
「緑谷の時に比べて攻撃が単調になったと言うかなんというか。」
「確かになんか『上手さ』見たいのが緑谷戦の時に比べて見えないよな。」
「緑谷戦では『左側』使ったのに飯田、今の爆豪戦じゃ使ってないからな。かと言って温存してるようにも見えないし。」
爆豪は爆豪らしくガンガン攻めているが轟は氷結で牽制などどうにも攻めに転じられない様だ。先程から爆豪の接近を氷結で防ぎ爆豪が氷結を爆破。流石の爆豪もしびれを切らしたのか攻撃の手を止めて轟へ怒鳴り散らす。
「舐めてんのかこの半分野郎!俺が取るのは完膚無きまでの一位なんだよ!只でさええクソみてぇな結果で勝って納得してねぇのに手ぇ抜いたお前なんかに勝って取った一位なんか価値があるかぁ!やる気がねぇならここに立つなクソがぁ!」
その爆豪の言葉も届かないのか轟は両腕を下げ、まるで戦いを放棄したようにも見える。
「負けるな‼︎轟君‼︎」
ステージに向け爆破し爆豪は地面から離れて行く。轟は緑谷の言葉で何かを決心したのか『左側』に炎を灯す。それと同時に爆豪は空中で連続で爆破を起こし回転しながら轟に向け接近して行く。轟の炎も勢いが増し誰もが緑谷戦で見せた大爆発が起こると思い身構える。勢いが増す炎を見て爆豪は待ってたと言わんばかりに口角が上がる。炎の勢いが増す轟、回転とスピードが増す爆豪。
「『榴弾砲(ハウザー)』!」
爆豪の増して行く勢いに連れ轟も炎の勢いを増して行く。しかし炎の勢いが増して行くに連れ『父親の事』『母親の事』『緑谷の言葉』様々な感情、思いが困惑して炎が気持ちの揺れと重なり揺らめく。そして炎は消えた。
「『着火(インパクト)!』
まさに人間榴弾。ステージに爆弾が落下したと錯覚させるほどの爆発が起きた。吹き荒れる爆風と捲き上る爆煙、氷やコンクリート片でステージが見えない。ステージからは何かがパラパラと崩れる音しか聞こえず2人の状況が掴めない。やがて煙が止みステージ全体が見えるようになっていた。ステージ内端には爆豪が氷とステージの瓦礫の上に仰向けで倒れているが意識はあるように見える。しかしステージ上に轟の姿が見えない。何処かと見渡すとステージ外に自身の氷の残骸の上に気絶している轟がいた。
(...轟の奴最後炎を出さなかったのか?)
爆豪も轟の『最後』の事に腹を立て瓦礫を上を進んで轟に怒鳴る。何を言っているかここからでは聞こえないが怒っているのは分かる。ミッドナイトが『個性』を使い爆豪を眠らせたあと轟の状態を確認して爆豪の勝利が決まった。
〜〜〜
ステージ真ん中では今体育祭の上位3名が表彰台の上に3人違った表情で立っている。
「ん″ーーー‼︎」
1
「...........」 「はぁ...」
2 3
表彰台左側にいる3位の磁場は狙えたで有ろう1位を小さな事故で逃し納得のいかない表情だ
表彰台右側にいる2位の轟は今回の体育祭で様々な考えが困惑して今はまだそれを頭の中で整理している途中だ。しかしその表情は以前と比べ柔らかくなっている。
表彰台真ん中にいる1位の爆豪は特設の磔台に体と口を拘束されてまさに鬼の様な形相で左右にいる2位、3位に向かって何か叫んでいる。
「うわぁなんだよあれ。爆豪めっちゃ暴れてるよ。まるで重罪人の処刑前みたいだよ。」
「爆豪さんは1位という自覚がないのですか?」
「なんでも結果に納得がいかないからメダルは要らないって言ってたらしいよ。」
「あいつ折角の1位なのに贅沢だな。それに比べて磁場は表彰台に立ったらまた落ち込んでねぇか?」
「多分表彰台に立って試合の事思い出しちゃったのかな。」
「3位でも十分凄いのにな。轟はなんか浮かねぇ顔だしなんかトップ3締まらねぇな。」
「さっ! それではこれよりメダル授与式に移るわよ!」
叫ぶ爆豪をスルーしてミッドナイトは司会として式の進行を務める。
「そして今年のメダルを贈呈するのはもちろんこの人!」
「ハーハッハッハ!!」
盛り上げるようにミッドナイトが声色を上げ空に指差した瞬間、高らかな笑い声を上げながら姿を現す影。スタジアムの照明がある高所に仁王立ちとなる男は、手を腰に当て、そのV字に逆立つ髪の毛を風に靡かせつつ、徐に飛び上がった。
「私が、メダルを持って来ーー「我らがヒーロー、オールマイトォ!!」
「.......た」
((((えぇ...))))
見事なまでに台詞が被り自身の十八番の登場が台無しになった。煮え切らない様なのかプルプルと震えるオールマイト。その横では手を合わせペコペコと頭を下げるミッドナイト。どうも教師陣も締まらないようだ。
「さ、さぁ気を取り直してメダル授与に移るわ!まずは3位!A組 磁場 鉄也!本当は飯田君も同立で3位なんだけどお家の事情で早退しちゃったみたい。」
「おめでとう磁場少年‼︎やはり君の『個性』は万能だな!中でも騎馬戦での一戦は私も目を丸くしたよ!トーナメント戦では...その...うん...。すまない磁場少、年掛ける言葉見当たらない...」汗
「オールマイト。分かってるんでもういいです。」泣
「し、しかし!磁場少年!君の実力なら十分にここでもトップを狙えるはずだ!来年に期待しているぞ!」
「〜〜っ!任せてください!来年こそは1位とって金メダルをぶら下げてみせます!」
「続いて2位!A組 轟 焦凍!」
「おめでとう轟少年!決勝で自ら『左側』を使ったのには、ワケがあるのかな?」
「……緑谷戦でキッカケをもらって、わからくなってしまっていました」
これまで『右側』しか用いなかった轟の心境の変化をくみ取ったオールマイトは、あえてその理由を問いかける。すると轟は、ポツリポツリと器から溢れるように語り出す。
「思えば……今迄はずっと、自分の為だけに力を使っていました。強迫観念みたいに、自分を押し潰すように。でも、誰かの為に使おうと思ったらほんの少し心が軽くなった」
俯いていた顔を上げオールマイトへと語りかける。
「俺には清算しなきゃならないモノがあります。その一歩の為には、誰かの手を借りて前に進まなきゃダメだった。俺は弱いです。誰かを救けるっていう理由をこじつけて、対価に救けて貰おうとしなきゃ前に進めなかった。それでも……それだけ俺には大事な一歩だったんです」
「……顔が以前とは違う。だが、自分の弱さを認めることは決して悪い事ではないよ。ここは学校。級友と救け、救けられ合う場なのさ! 一人で乗り越えられぬ壁は友人と一緒に……超えた時、君は掛け替えのない物を手に入れられる筈だ。Plus Ultraだよ、轟少年!」
「……はい」
「そして1位! A組爆豪 勝己!」
「さて、爆豪少年! ……っと、こりゃあんまりだ」
ガッチャガッチャと鎖を鳴らす爆豪を見かねたオールマイトが、嵌められていた轡を取る。
「伏線回収とは凄いじゃないか、見事な成績だ! 次は―――」
「オールマイトォ……こんな順位、何の価値もねえんだよ!! こんなんで取った1位なんて俺が認めなきゃ全部ゴミみたいなもんなんだよォ!!」
異形型と見間違いそうなほどに目を歪ませる爆豪。それだけ、今回この様な結果で勝ち取った1位という順位に不服なようだ。元々、プライドの高い方であり、尚且つ完璧主義的な一面も存在する男。それが普段のストイックさに繋がっているという良い面もあれば、このような悪い面も存在すると言う訳だ。
「うむ! 相対評価に晒されるこの世界で、不変の絶対評価を持ち続けられる人間はそう多くない! 受け取っとけよ! 忘れぬよう!」
「要らねっつってんだろうが!!」
「まァまァ……セイッ」
頑なに金メダル授与を拒む爆豪であったが、悔恨と激怒に満ちている故に凄まじい咬合力を発揮する口を逆手にとられ、カミツキガメにわざと咬ませる要領で口に掛けられた。
「まぁまぁ爆豪。雄英体育祭で1位取るのはこれが最後なんだから今のうちに喜んどけって。来年からはそこ俺専用になるんだからさ。」
「んだとこのダサ場外野郎がぁ!来年も再来年も1位は俺だぁ‼︎」
「ダサ場外⁉︎てめぇ俺が場外負けじゃ無かったら俺とお前の位置変わってたんだぞ!そこんとこちゃんと理解して喋ろよ!」
「あんなダセェ負け方するよう奴の本気なんてたかが知れてんだよ!そもそもガチでやっても俺がお前なんかに負けるかよ!」
「じゃあもう一回やるか?次は『完膚無きまでに』ボコボコにしてるやるよ。」
「ハッ!笑わせんなクソが!なんで俺がお前ぇみたいなダセェ奴のリベンジを受けなきゃなんねぇんだよ!」
「ははぁ〜ん。お前俺に負けるのが怖いのか?」
「あ″ぁ⁉︎」
「確かにリベンジ受けて負けたらダサいもんな?」
「んだとこの砂鉄野郎!その安い挑発買ってやるよ!ミッドナイト!この拘束解いてくれ!」
「俺からも頼みます。ちょっくら爆竹野郎滅多打ちするんで。」
「いい度胸だなダサ砂鉄野郎ーー」
「次はお前負かしてやるからーー」
「「ーーステージに来い「はい、そこまでね。」フワァ
「「...スヤァ」」zzz
ミッドナイトの『個性』によって眠らされた2人を置いといて最後はオールマイトが締めてくれるそうだ。
「さァ!! 今回は彼等だった!! しかし、皆さん! この場の誰にもここに立つ可能性はあった!! ご覧いただいた通りだ! 競い! 高め合い! さらに先へと登っていくその姿!! 次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!!」
ヒーロー科だけでなく普通科やサポート科までもが決勝戦へ参加した。誰もがヒーローとしての資質を蓄え近い未来名を轟かれるよう牙を磨いている。
「てな感じで最後に一言!! 皆さん、ご唱和下さい!!」
拳を天高く掲げるオールマイト。
『このタイミングでの一言と言ったらアレしかない!』生徒の考えが一致し誰もがその時を待ちかねてウズウズと体を揺らす。
「せーの」
「「「プルス―――」」」
「おつかれさまでした!!!」
「ウル……えッ!?」
先程は被ったが次はズレた。オールマイトと観客が叫ぶ言葉の齟齬が生じ、グダグダな唱和となってしまった。
「そこはプルスウルトラでしょ、オールマイト!!」
「ああいや……疲れたろうなと思って……」
満場一致のブーイングが、平和の象徴へ遠慮なく向けられる。てっきり観客は、皆の母校である雄英の校訓『Plus Ultra』を叫ぶものだとばかり思っており、他でもない生徒もまた、その言葉を叫ぶべく身構えていた。結局、表彰式は終始締まらずに終わってしまった。
「...スヤァ」
「はぁ」 (騒がしい奴ら...) 「...スヤァ」
長った体育祭も終わりました。次は職場見学編です!