「おい、それはなんだ?」
ほんのひと時の休息時間。他愛のない雑談にも応じてくれるようになってしばらく、ずいぶん慣れたジェレイントが不意に声をかけてきた。「それ」と指さす先に触れてみれば、イヤリングに触れた。右耳のものを外して、ジェレイントに見やすいように手のひらの上に乗せた。
「それだそれ。なんとなく、私の力を感じるような……」
「『ジェレイントイヤリング』といいます。金竜の力を宿した優秀な装備ですよ」
「ふうん……って、許可を出した覚えはないぞ!」
「さあ、入手先は王国主催のイベントでしたし、目玉の景品のこれの許可は昔のジェレイントが出したのか、有名人のブロマイドでも作ったつもりの未許可なのか……とにかく、イヤリングの装備品でこれよりいいものはないので愛用しているんですよ」
これよりいいものはない。最大限の誉め言葉に目に見えて機嫌を良くしたジェレイントは胸を張る。背伸びをしている子どものような姿に、弟がいたことはないけれど、弟でもできたみたいに微笑ましく思う。
言ったことは事実。だけど、言っていないことがあるのも事実。
昔のジェレイント、つまり「六英雄ジェレイント」と比べられることを好まない彼には言わなくてもいいだろう。
そっと、こっそり胸に手を当てる。装備品としてではない、お守りのペンダントがある場所に。今も、そこにある得難き友の遺品に、服越しに触れる。
王国主催のイベント。依頼のついでに達成し、報酬をもらった時……初めて見たときには息が止まるかと思った。ジェレイントのペンダントにそっくりの形をして、彼の気配まで感じたようだったから。
高潔で孤高なドラゴンたち。
その身を差し出してしまう彼ら。
もう目の前にいる友を、ジェレイントを喪うことがないように。
友が、力を与えて笑顔で薄れていってしまう悲しみはもうたくさんで。
強くなりなさいといって消えていった彼女には二度と会えなくて。
神の手に落ちたドラゴンが愛する人の愛した世界に憂いなく戻れるように。
ペンダントに触れ、イヤリングを握りしめ、目の前の友を見て。
ひとり、決意を新たに。
しかし、彼/彼女の纏う防具や武器には今まで打倒してきたドラゴンからはぎ取ってきた材料で造られた装備であり、その指にはめられている指輪や装備品の方のネックレスも同様で。ジェレイントはこっそり、そんな装備では「昔の自分」の気配でなければ気づきもしなかっただろうと胸の内でつぶやいた。
彼/彼女は何も気づかず、無邪気に微笑んだ。