AD21XX/03/03、世界が動いた。
極東の海上に突如出現した艦娘。
彼女らは旧日本外軍の記憶と能力を保持し、深海棲艦と抗うために生まれたと当時海軍に保護、運用を求めた。
謎の生命体”妖精”と開発資材と呼ばれる正体不明の塊。
憑り代になる資材と特殊な個人によって現世に顕現する。
そしてその個人の下で彼女たちは力を振るうのだ。
特殊な個人は司令官、ないし提督と呼ばれる。
提督に必要な要素については詳しくは判っていない。
一説では命を背負うに足る――俗な言い方をすれば霊魂に対する容量を持つ人間という事らしいが……あくまで一説だ。
それまで戦場を支えてきた小型攻撃艇は艦娘の憑り代となるため尽くが解体され、今では数点が保存されるのみとなっている。
この小型艇には謎が多い。
現在に至っても再現することが出来ない装甲。
艦娘のものにも匹敵したという魚雷。
深海棲艦を貫く光の筋。
波を蹴立てる強力な砲撃。
極めつけはこの製造元が一切の記憶に残っていないということか。
海軍が調達していたというこの兵器は、データ・紙・人の記憶、全ての媒体に残されてはいない。軍事機密として処分されたのだろうか? それにしても有用性からみて封印するには惜しい気もするが……。
この技術が現代に残っていたのならば、人間と艦娘が共に戦う事が出来ただろうに。
まさか魔法でも使って掻き消えたとでも言うのか?
まこと、調べれば調べるほど不気味な話だ。
――とある新規着任提督の手記より
◆◇◆◇◆◇
「いやあ、艦娘なんて面白そうな素材が出てきたのにねぇ」
「我々はもう研究チームとしては解散されてしまいましたから。海軍の首脳陣には培養槽に浮かぶ人造深海棲艦は容認するに難しいものだったかと」
「おかしいよねぇ。連中、艦娘に人間としての尊厳を与えて運用するんだってさ」
「そうですね」
「艦娘も深海棲艦も、何が違うっていうのか」
「制御できる深海棲艦が艦娘、では?」
「海軍にとってはそうじゃないのさ。かつての軍艦、付喪神、友好的っていう要素はまるで神から伸ばされた腕に見えたんだろうね」
「それを言うなら、腕ではなく手です」
「アハハハハ、そうだっけ?」
◆◇◆◇◆◇
斯くして
人は艦娘と海を往く。
何れは、何れかはきっと、平和を取り戻すことだろう。
ただ――
「司令官?」
「……ああ、吹雪か」
「いつも夕焼けを見てますね? お好きなんですか?」
「ああ、いや。友人……戦友? のことを思い出していてな」
「ご友人、ですか」
その経緯に少しだけの爪跡を残して。
「きひひっ、たのしいたのしいかいはつのじかんですー」