深海棲艦。
どこから来たのか。
なにを目指しているのか。
いつから居るのか。
どうして戦うのか。
奴らは一体――何なのか。
ただ判ることがある。
人類が築きあげてきた『科学』という力の一切を、鼻で笑うようなデタラメさ。これだ。
深海棲艦には銃弾が効かない。
深海棲艦には魚雷が効かない。
深海棲艦には榴弾が効かない。
小口径が嘘のような威力の砲門を持ち。
原理不明の速度で海を泳ぎまわり。
速度の乗ったラムアタックですら理不尽にこちらが食われる始末。
それが軍人社会に浸透してきたとき、
この世界は緩やかな下り坂に入った。
◆◇◆◇◆◇
「ッケ、本当にこんな装備が役に立つのかよォ?」
第一次反抗作戦、現代科学の粋を集めた事実上の最終決戦。
一歩後ろは民間人。終わりのない状況下で戦っていた俺らの前に突きつけられたのは、見るも無残な敗北だった。
かろうじて船上から脱出できた俺みたいな人間が身を置くのがこの部隊だ。
「研究畑の、光線ねぇ。光線だろうが高専だろうがロクでもねェな……」
正直、もう二度と奴らと対面するなんざごめんだった。
稼いだ金を使って山奥でひっそりと暮らしたかった。
それも出来ないならいっそこの世から……。
「……ッち」
だがそれを許してくれないヤツらが居る。
攻撃の余波を受け、両足を真っ赤に染めながら死にたくないと叫ぶ声。
アサルトライフルの残弾も無いのにトリガーを引いて、ふざけるな弾が出ないクソ弾が出ない出ろと罵倒する奴。
バケモノの近くに居たからと、救助艇に乗せてやれなかったあいつ。
一面どこを見ても地獄絵図だった。
深海棲艦の出現で黒く染まっていた海も、あの時ばかりは赤く見えた。
そんな奴らが……まぶたの裏から離れない。
生き残ってしまうというのは呪いだ。
簡単に死ねる状況にあるからこそ性質が悪い。
生きていれば死ねと。
死にに行けば楽は許さないと。
記憶に囚われて苦しみ続ける。
「なぁ、これが終わったら……これで終われたら、もぉいいかい?」
そう言って、小型艇の始動キーを回した。
対深海棲艦武装試験運用部隊”R-9” 試験小型攻撃艇A。開発コードARROW-HEAD。
【HUBUKI】と船体にペイントされたそれが、そう遠くない未来に一つの奇跡を起こすのだが――それはまた別のお話。
◆◇◆◇◆◇
[返信済み] 求む! 新武装案!
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第1研の女神のおかげで深海棲艦細胞が攻勢に転用出来るということが判ってからそう日も経っていない。
いないが……。
聡明な対深海棲艦研究集団”光線”の皆たちなら良くわかっていると思うし、溢れ出る研究意欲が胸から飛び出してしまいそうなことだろう。
そこでだ。我々はスポンサーから軍事転用できる兵器の試作品を製作する――権利と資金を確保した!
さらに試験運用部隊もだ!
世界のために日々働く博愛なる諸君。
その輝かしい頭脳を持って作り上げたいものがあるなら、このメールに資料を添付して返信してくれたまえ!
第01本土研究所 所長 ■■■ ■■