対深海棲艦研究集団”光線”   作:生パスタ200g

7 / 14
切抜07:闇に光る目

一つの命は 一つの役割と 一つの慈愛を持った。

言葉は無くとも、彼女はヒトと共に。ヒトを友に。

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

糞ったれな試験運用部隊”R-9”に配属されてからもう半年も経ったか。

 

あれから俺は――いや、俺たちは試作兵器の運用という名目で海軍から来た依頼をこなし続けている。

待遇は悪くない。水平な寝床と温かい三食、衛生環境だって良好だ。

海で苦渋をなめさせられた深海棲艦を彼の世送りにだってしている。

 

だが、俺が死ぬことは無かった。

不思議と致命傷を負わない。敵魚雷が機能不全を起こして助かったこともある。

海上で意識を失った後、攻撃艇(HUBUKI)と一緒に浜に打ち上げられていたことすらあった。

 

――その一方で同じ部隊の奴らはお構い無しに沈んでいった。

 

海上での攻撃方法を得たとはいえ所詮は小型艇。安定性能や防御力には難がある。

深海棲艦は、人間を食っていた。船から落ちた場合の末路だ。小隊を組んで迎撃に当たった際によく見た光景。一週間もすればレア焼きのステーキも喉を通った。

上半身を食われて、その勢いで消化器官――あれは大腸か? まぁ大腸が下半身からまっすぐ伸びて浮いていた。出来の悪い粘土細工に針金でもブッ刺したらイメージがしやすいだろう。モツを食えるようになったのは3日だ。

至近弾を受け転覆した奴は運が良かったのか悪かったのか。ピクリともしないまま浮かんでいて、直後深海棲艦にひき潰された。ハンバーグは当日だ。

 

出撃すればするほど仲間が死んで、出撃すればするほど攻撃艇は性能を上げていった。どうやらこの試作兵器は評価段階ですらないらしく、コロコロ仕様と規格が変わる。

配属当初は2発だった魚雷が小型化し4発に。どうしたら大きさが半分になるんだ。

艦首機銃は10ミリから30ミリに。生身の人間が乗った小型艇に間違っても付けるモノじゃない。低速時に船体がバックしていったなんて笑ってた奴が居たぞ。

最高速と継続距離も大幅に上昇。その上やったことはエンジンの取替えのみとかもうなんといえば。

 

『ダンサー部隊。作戦領域、近いぞ。気を引き締めてかかれよ』

 

無線からの指示が飛ぶ。

今日は出現した駆逐イ級の討伐。加えて――

 

「ダンサー1了解。聞いたな、お前たち」

『ダンサー2了解』『ダンサー3了ぅ解っ!』『ダンサー4了解!』

『今日は別嬪さんのエスコートだ。張り切りすぎてカーペットなんかに躓くんじゃねぇぞ?』

攻撃艇(おてんば娘)の相手なら慣れているんだがな」

『会場にはタキシードに花束携えてかかりましょうや』

 

――あの”光線”からの新規実験兵器のデータ取りだ。

 

『ダンサー部隊、作戦を確認する。

君たちに課せられる任務は駆逐イ級の撃破だ。同時に試験兵器MIDNIGHT-EYEの実践試験でもある。

駆逐イ級の攻撃がMIDNIGHT-EYEに向かないよう援護しろ。見ての通りか弱い女性だからな』

 

試験有機偵察兵器 MIDNIGHT-EYE。

何のことはない、見た目は武装した軍用イルカだ。

コイツの一番の見所は、我々の攻撃艇へ情報をリンクする機能。俺たちからの物理的・電子的接触は一切を禁じられている。なんでもイルカの機能を深海棲艦由来の技術で強化したとか言う噂だが……止めよう、”光線”(キ○○イ)に念仏。

 

――ミッドナイト・アイが少し速度を緩めてこっちを見たような気がした。

キュイ、と一鳴きしてから奴は前を向く。

計器横のモニタには周囲のマップと赤い点、そしてその情報。偵察兵器の本領発揮といったところか。

 

「おいおい……大したレディじゃねーか」

『こりゃあダンスも踊りきらないと、愛想付かされますぜ』

『女って怖いからな』

『無駄口たたいてないで――ほら奴さんら、お目見えだ』

 

そうして俺たちは深海棲艦との交戦を開始した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。