皆さまの小説に影響され書いてみました……ゆるりとどうぞ!
「転校生の島村卯月です!皆さん、今日からよろしくお願いします!」
そう言い、茶髪の少女ーー島村卯月は2年C組のクラスメイト達に深く頭を下げた。
そしてそれに釣られるように、教室からは拍手が沸き上がる。俺もとりあえず倣っておく。
そして、次に顔を上げた彼女は、おそらく一生忘れられないであろう台詞、ひいては島村卯月という少女を代表する言葉を放った。
「はい!島村卯月、友達作り頑張ります!」
彼女の笑顔は、とても素晴らしい、百点満点の表情だったと追記しておく。
ーーこれが俺と島村卯月のファーストコンタクトだった。
☆
さて、季節は暦の上での梅雨だ。そろそろ本格的な夏が準備を整え、ギンギラ太陽様が降臨なさるだろう。それに伴って昆虫達もわんさかと出現する。俺はそれが堪らなく嫌いだ。蚊とか蟻とか蝉とかな。
しかし、今日も今日とて晴天なり。雲一つありゃしない。
あれ、梅雨どこ行った?これが梅雨の中休みってやつか?長くない?
そのおかげで、気温もぐんぐんと上昇。エアコンなんて付いてない教室は天然サウナと化していた。下敷きを団扇代わりに仰ぐも熱風が襲いかかってくるだけでダメ。このままでは、俺は蒸されて人肉まんになってしまう。
そう考えた俺は、昼休みから中庭の木陰に避難していた。
ほとんど人通りのない廊下の近くにあるからか、辺りには木々が風で擦れる様な音しか聞こえない。しかも、付近には幾つか木製ベンチまで設置してあるのだ。
もしかしたら、保護者やら他校の生徒やらが入り混じる行事用に置かれた物なのかもしれない。
そんなベンチに腰掛けて俺は購買の弁当(250円)を口へ運ぶ。中身は唐揚げとフライドポテトのオーソドックスなものだが、これがまたうまい。
「これが250円とは……流石購買って感じだよな、うん」
☆
そうしてしばらく食事を行っていると、ふと誰かの視線を感じた。
先ほど説明した通り、この辺りは滅多に人は立ち入らない。知ってるのなんて俺くらいなものだし、今まで誰とも会った事も見た事も無い。
はて誰だろうか、という疑問を抱きつつも視線の主へと目を向ける。
「あ、こんにちは!」
うわぁその満面の笑みがとても眩しいなぁ……転校生さんや。
言うまでもなくそこに居たのは朝、皆の前で笑顔を振り撒き、自己紹介をした島村卯月だった。
……一体何故、こんな辺鄙な所に来たのだろうか……。
☆
「へー……なら、お前はアイドルを目指しているのか」
「はいっ!皆を、笑顔にしたいんです!」
「そうか……俺もそろそろ夢持たないとなぁ……」
「佐城さんは何か興味あるものあるんですか?」
「んー……そうだな、しいて言うなら古本屋だな」
「本がお好きなんですか?」
「いや、古本の匂いが好きなんだ。だから小さい本屋でも経営しようかなと」
「へぇ……匂いなんてあるんですね」
「まぁな」
話を聞くと……どうやら昼休み中に校内を見て回りたかったらしい。まぁ、転校生にとったら新しい校舎なんて楽しみだからな。分からんでもない。
そして歩いてたら偶然この場所を発見、及び俺も視界に入った、との事。よく見つけられたものである。本人曰く、『結構広くて迷っちゃって……そしたらたまたま』らしい。
「あと、別に俺は同級生だし、敬語なんていらないぞ?」
「あ……えへへ、ごめんなさい。つい口癖で……」
「そうなのか……なら無理にとは言わないが」
うーん……口癖ならば、仕方ないな。敬語自体、別に迷惑をかける訳ではないのだし。もしかしたらこの子の個性なのかもな。
「いえっ!島村卯月頑張ります!」
「いや頑張らなくても大丈夫だぞ……?」
「むぅ……分かりました。あ……あと迷惑じゃなければ私も時々食事に来ていいですか?木陰が気持ちいいですし」
「おう、それならいいぞ。別に俺の所有地じゃないからな」
「本当ですか!ありがとうございます!」
そう言って恭しく頭を下げる少女に、俺は薄く苦笑いを浮かべる。
全く……感謝なんてしなくても良いのにな。
「……優しい、ですね」
「は?」
「ふぇ?!な、何でも無いです!」
お、おう……。俺は、その食い付きっぷりについ半身引いてしまった。
しかし、この反応に彼女はお気に召さなかったらしく、手をパタパタと大袈裟に振り、
「あ、あのわたし変な子じゃないですしアイドル目指してるだけなんですキャラとか言わないで下さいお願いしますそれにわたしはあなたが嫌いなわけじゃなくてあのその」
「落ち着け」
「……ぁっ、あうぅ……チョップはひどいですよぅ……」
「……それはすまん」
何か色々と言い始めたからな。止め方なんて分からない俺は、とりあえず軽くチョップをしてみたが……よく考えたらダメだよな。
今日初めて会った女子に成り行きとはいえ
「いえ、わたしこそ突然すみませんでした……」
「いや気にするな。だから、これはお互いに非があるって事にしておいてくれないか?」
「いやでも……」
「いいからいいから、な?」
「……ふふっ、分かりました」
そう言った彼女の微笑みはーーどこか慈愛に満ちていて、花瓶に生けられた儚い一輪の華のような、そんな雰囲気を漂わせている。
ーーやがてカサカサ、という木の葉が揺らめく音で、俺がその笑顔に見とれていた事を認識させた。当の彼女はそんな様子に少し不思議そうな顔をしていたが。
……あぁ、この子なら、将来間違いなくアイドルになれる。根拠など一切ないが、その笑顔が何よりの武器になるだろう。
「あ、そろそろ教室に戻りましょうか。昼休みが終わっちゃいますし」
「そうだな、はぁ……またあのサウナの中に帰らなきゃいけないのか……」
「あはは……」
こうして、初対面同士の俺と島村の昼休みお食事会は幕を下ろしたのだった。
どうでしょうか……まずは卯月から始めてみました。
大体数話でキャラを変える予定です。しばらくは卯月ルートかな?
何かありましたらコメントやらなんやらでどうぞ!