Fate/ Grand Order -南海偽曲奇譚- 作:遠井遠路
せっかくの海水浴だというのに、マシュは宝具展開による魔力切れ、清姫は牛若丸の異装に気圧されて、端の岩陰で仲良く見学状態となっていた。
「ぐぬぬ、旦那様とあんなに楽しそうに!」
「清姫さんも一緒に遊んできたらいいじゃないですか。荷物番は私に任せて下さい」
「で、でも人前であんな姿になるなんてっ……。旦那様だけの前でなら問題ないですが、こんなところだと誰がいつ覗きにくるか」
「あぁ、確かにそうですね」
この島にレイシフトして未だに他サーヴァントや魔獣の類は見かけていないが、現地人らしき姿は何度か見かけた。どうやら今いる場所は島の中心に近い場所ではあるのだが、行商路という訳でもなく、普段は滅多に人が通らないようである。一度人の集まる場所に赴いて情報収集をすることも案としてあがったが、僅かな反応が示す歪みの大本は、その中心地とは反対方向を指しているらしい。
その為、まずは異変が起きているところがないか、現地を確認している最中だったのだ。
「それにしても穏やかな海ですね。これまでも色んな海辺に立ち寄りましたが、こんなに落ち着いた場所は初めてです」
マシュの言葉通り、砂浜には心地よい潮騒が流れ、熱すぎる太陽も入道雲が隠してくれる。寄せ引く波も穏やかで、はしゃぐ二人の声をBGMに、時間がゆったりと過ぎてゆく。
心地よい睡魔に襲われて身も心もとろけそうになったマシュはいけないいけないと首を振り、思考を切り替えて現状を打破する方法を考え始める。が、手持ちの情報が少ないため、結局は歪みの原因を探すしか無い、という結論に至る堂々巡り。
そこで、やや視点を変えてみることにした。
「そいうえば清姫さん。清姫さんはこの土地に何か関わりがあるのですか?」
「いいえ? 見るのも聞くのも、もちろん来るのも初めてですが、突然どうしたんですか」
「これまでのことを振り返ると、サーヴァントが召喚される場合、その土地に関わりがある方か、すでに召喚されたサーヴァントと何かしら縁がある方が多いことを思い出したので」
もちろんそうでない場合もありますが、とマシュは続ける。
オルレアンの聖少女、ローマの皇帝達、大海の海賊、ロンドンの切り裂き魔、北米の発明王など、その土地に根ざす逸話伝説と関わりの深い存在がサーヴァントとして召喚される可能性は高い。
「でも私は縁もゆかりもない
「そう、ですよね。今回は清姫さんと牛若丸さんが召喚されていますが、他の方々より出自がまだ
ああでもない、こうでもないと首をひねってもいい考えは浮かばない。そうしている内に、高かった陽も西に落ち、夕方手前となっていた。
ようやく二人のもとに戻ってきた牛若丸は、飼い主に散々遊んでもらった子犬のように満足気な表情で、心なしか肌もつやつやとテカっている。対するぐだ男はやや疲れた表情を笑顔で隠し、マスターとしての余裕を見せようと頑張っているが、体力が尽きかけているのか足も腰もガクガクと震えている。
華奢に見えても鞍馬山で天狗に師事し、野山を身一つ駆けまわる腕白児にずっと付き合わされていたのだ。むしろここまで持ったほうが奇跡だろう。
「主どの、楽しかったですね!」
しかしどれだけ疲れていようが、満面の笑顔を向けられては笑顔を返さなければならぬ。ぐだ男はマスターである前に男の子としての意地があった。
「まぁ、旦那様ったらこんなにお疲れになって。今宵は私が
「元気になったので遠慮します!」
*
海岸を後にした一行は、Dr.ロマンの指示に従い歪みの反応が出ている地点へとやってきた。が、右を見ても左を見ても森と道が広がるばかりで、これといった異常もない。
「ドクター、本当にここであっているのですか?」
「うーん、反応はこの辺りなんだけど。どうもセンサーが安定しないんだよね。近づいたと思ったら遠ざかって、離れたと思ったら近くにいる。だから
「これも聖杯の影響なのでしょうか」
「このままだと夜になってしまうね。今日の調査はこのくらいにして、野営の準備をするか、さっき通りがかった宿にでも引き返し……待った! 反応が近づいてくる!」
Dr.ロマンの言葉に4人は気を引き締める。
油断は禁物、多くの戦場を駆け抜けてきた彼らは、その言葉の意味を十分に理解している。
「さ迷うようにこちらに近づいてくる。何かを追いかけてるみたいだけど」
その言葉に重ねる様に、草むらの影から小さな影が飛び出してきた。
「た、助けてください!」
つたない作品ですが600UAありがとうございます。
区切りのいいところか2000字程度かけたらガンガン投稿していこうと思います。