Fate/ Grand Order -南海偽曲奇譚-   作:遠井遠路

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サーヴァントは全員個性が強すぎて会話させるのが難しい……。


【04】どこかで聞いたような話

 

 

息も絶え絶え草むらから飛び出してのは、まだ年端もいかない少年だった。

仕立ての良い着物に足袋草鞋、手には花笠を持ち、ひと目で育ちの良さを感じさせる。火照った頬は紅く染まり、膝に手をつき息荒く方を上下させる様は、少年ながら色気を感じさせる程だ。

 

 

「うわぁ、アレキサンダーさん以外にもいるんですね、紅顔の美少年って」

 

「魔力は感じませんし、これは天性のものですね」

 

 

少年はようやく息を整え、正面にいたぐだ男へと話しかける。

 

 

「旅のお方でしょうか? 私は中城の若松と申します。実は妙な女に追いかけられていまして……。どうかお助け願えないでしょうか」

 

 

少年、若松の言葉に全員がピンとくる。

Dr.ロマンが言っていた「何かを追いかけながら近づいてくる反応」とは恐らくその女のことだろう。ようやく掴んだ手掛かりだ。マシュはぐだ男とアイコンタクトを交わし、少年に向き直る。

 

 

「分かりました。その女性は私たちが探している方かもしれません。微力ながら、力になりますよ。ねっ、先輩」

 

「何が来ようと任せとけっ!」

 

「おぉ、これは頼もしい。改めまして、私は中城若松。首里のお城にて給仕役の奉公をしている者です。今日はいつもより遅くなったので、途中で宿を借りようと思ったのですが、そこで思わぬ目にあってしまいまして……」

 

 

自信満々のぐだ男を見てようやくひと心地着いたのか、若松は背筋を正し改めて素性を名乗り、これまでの経緯を話し始めた。

 

遠方より城へ通う若松は、普段よりも帰りが遅くなってしまい途中で宿を借りようとした。しかし、その宿の娘が若松に一目惚れ、あれやこれやとアピールして迫ったきたらしい。なんでも若松の美貌は島中に広く知れ渡っており、年頃の少女たちから狙われることも多いとのことで、紅顔の美少年と同時に女難の相も持っていそうな有様である。

宿の娘の強引なアピールに耐えかねて、たまらず宿を飛び出したところ、その女も裸足で宿を飛び出し、鬼もかくやという表情で追ってきたという。

 

そこまで聞いたところで、ぐだ男、マシュ、牛若丸の視線は一斉に清姫へと向かった。

 

 

「どこかで聞いたことのある話ですね」

 

「デジャブというか、なんというか」

 

「再販は罪が重くなるよ?」

 

「何ですか皆して私を見て! 私は旦那様一筋です!」

 

「あぁぁああああっ!?」

 

 

いつもなら笑いが起きてマシュが謝りなだめに入るところだが、若松の悲鳴がその空気をかき消した。それまでぐだ男とマシュしか見ていなかった若松は、この時になってようやく清姫の顔をみたようだ。

見る見る間に顔が引きつり呼吸が乱れ、化物でも見たかのように狼狽し始めた。

 

 

「その顔、その髪! い、いつの間に追いついた!?」

 

「何ですの?」

 

「まさか貴方たちも女の仲間か? ひっ、に、逃げ……」

 

 

どうやら清姫を宿の女と勘違いしたようで、必死になって逃げ出そうとするも腰を抜かしてしまい、尻餅をついてその場でバタバタと後ずさる。

 

 

「落ち着いて下さい! 彼女は清姫さんといって、私たちの仲間です。今日は一日中一緒にいたから、若松さんとも初対面です」

 

「それに、私が貴方に懸想するなんてありえません。私は旦那様だけを愛していますから」

 

「うん、腕が痛いからちょっと離してほしいな」

 

 

抜け目なくぐだ男の腕に抱きついた清姫は「いけず」と言いながらも素直に離れる。その様子を見て気が抜けたのか、若松もやや大人しくなって状況の整理をし始めた。

 

 

「し、失礼。本当に……その、清姫さんと言いましたか。私とは初対面で?」

 

「えぇ、その通りよ」

 

「……確かによく見てみれば、似てはいるが別人、か? いや申し訳ない。突然のことで正気を失ってしまったようです」

 

「そんなに彼女と似てるのか。興味は尽きないけど……、反応が近い。直接見たほうが早そうだね」

 

 

Dr.ロマンが若松を混乱させないよう、4人にしか聞こえない大きさで警告を発する。

牛若丸も耳に手を当て、木々の向こうから何かが近づいてくる音を捉えていた。

 

 

「主どの、来ます!」

 

「戦闘態勢っ!」

 

 

マシュが先頭に立ち、中堅に牛若丸、最後尾に清姫と、即席ながら陣は上々。何ものが来ても受け止める、というマシュの強い意志が、牛若丸、清姫の負担を和らげる。

そして、先ほど若松が飛び出してきた草むらから新しい影が飛び出してきた。

 

粗末な着物に身を包み、足は裸足、前のめりに上体を屈め、顔だけは得物を見逃さぬよう不気味に正面を向いている。短く結んでいたであろう髪は解け、腰のあたりまで垂れている。土埃と汗で汚れた顔は、言われてみれば確かに、清姫にやや似ている。ぎょろぎょろと四方八方に動く眼球が、三人の後ろで控えていたぐだ男と若松に焦点を絞り、唇がニヤリと左右に引かれ、開口一言。

 

 

 

 

 

「み ぃ つ け た」

 

 

 

 

 

『でたぁーーーーー!』

 

「先輩っ!? お、落ち着いて。先輩、せんぱーい!」

 

何かのトラウマが刺激されたのか、この場で最も正気を失ったのは若松ではなくぐだ男であった。朝起きると部屋の花瓶に飾られる花が変わっており、昼は常に物陰から視線を感じる。夜にふと部屋のドアを開けた時、目の前に清姫(ストーカー)が微笑を浮かべて立っていた、など様々な心的外傷を抱えるぐだ男にとって、本物ではないにしろ清姫の狂気を想像させるその言葉に、我を忘れて逃げ出した。

またそれを見た若松も、パニックが感染したのかぐだ男の後を追いかけて一目散に走りだす。

 

 

「うぁ、もうめちゃくちゃだよ! マシュ、とりあえずこの先にお寺があるみたいだから、そこまで行って体勢を立て直そう。そこまでいけば結界も張れるかもしれないし、とりあえず落ち着けるだろう!」

 

「ドクター、了解しました!」

 

「おや、戦略的撤退ですか。分かりました、ここは一旦引きましょう」

 

「あぁ、お労しや旦那様。私がすぐに癒やしてあげますわ!」

 

「それが逆効果なんじゃ……」

 

 

走るぐだ男と逃げる若松、二人を追うサーヴァント。モニタ越しにその様子を見ていたロマンは、思わずため息をついて呟いた。

 

 

「どうしてこうなった……」

 

 




話が進まない……。元ネタを知ってる人なら次の展開はもう読めるはず。
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