超次元ゲイムネプテューヌ 光の量子を操りし者(凍結)   作:熾天 冥夢

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冥夢「今回は、前回の最後で言った通り、悠斗がマジギレします。しかし、悠斗のマジギレは…おっと、これ以上は言えません。後の伏線だと思ってください。それと、悠斗の過去が一部だけですが、明らかとなります。それでは、第七話、始まります」


第七話 其の怒りは、時に邪神、時に鬼神、時に狂神と化す

ここはルウィー教会。先ほど気を失った悠斗が運び込まれた所である。しかし、その悠斗は、“最悪の悪夢”に(さいな)まれていた。

 

 

 

 

 

―――――お前はこの友達が大切なんだろ?なんならもう少しは抗ってみろや

 

 

 

―――――へっへっへ…まぁ、そんなボロボロの体じゃ、抗いにも抗えないだろうけどなぁ!

 

 

 

―――――さぁ、どうするんだ?早くしねぇと、こいつがお陀仏になるぜ?

 

 

 

―――――私の事はいいから…早く逃げて…悠斗…

 

 

 

―――――おっと?もうお陀仏するって事を悟っちまったようだが?

 

 

 

―――――まぁいいぜ、おい、最後に言い残したい事はあるか?

 

 

 

―――――じゃあ…悠斗…今までありがとう…貴方が…“最高の友達”だったよ…

 

そう言い、目を閉じた瞬間…

 

 

 

 

 

―――――バァンッ!!

 

 

 

 

 

こめかみを銃弾で貫かれる。勿論、即死だった…

 

「あ…あぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

―――…うと…

 

誰かが俺を呼んでいる?

 

―――ゆうと…

 

俺を呼ぶなんて…誰かいたか…?友達を失った俺に…

 

「悠斗ってば!」

 

「……はっ!?」

 

「いきなり大声が聞こえてきて、来たら悠斗が(うな)されてたから…でもよかった~悠斗が起きてくれて」

 

「悪い…心配かけたな…」

 

「…悠斗?口調が…それに、目の色と髪の色が…」

 

口調?目の色?髪の色?まさか…

 

「もしかしてだが、俺の目の色で、左が光が消えた青、右が赤、髪の色が黒に染まってないか?」

 

「そのもしかしてですわ…一体どうしちゃったのかしら?」

 

「皆…この状態は…俺が本気で壊れる一歩手前だ…そして、解ってるとは思うが、この状態になると“一人称と口調が変わってしまう”んだ…なるべく、この状態は見せたくなかったんだがな…」

 

「それでも、悠斗は悠斗だよ!でも…動いて大丈夫?」

 

「大丈夫…と言いたい所だが、正直キツいな…だが、俺のせいでロムとラムが誘拐された…あぐぅっ!?」

 

傷だらけの体を無理矢理にでも動かすが、案の定激痛が襲い、倒れそうになる。が、寸での所で皆が支える。

 

「駄目だよ!今は無理に体を動かしちゃ!」

 

「そうよ!今は体を休めないと…それに、誘拐されたのは悠斗のせいでも、誰のせいでもないわ。だから無理しちゃだめよ!今の貴方はボロボロなんだから、ここは私たちに任せて」

 

「それでも…俺はやらなきゃいけないんだ…ロムとラムを助け出さなくては…」

 

もう一回、無理矢理にでも体を動かすが、痛みに勝てず、その場で(うずくま)ってしまう。皆に大慌てで支えられ、もう少し休むように言われるが、俺は痛みに堪えて立ち上がろうとする。

 

「はぁ…一人でやろうとしない。仲間を頼れって言ったのは誰よ」

 

「…ノワール?」

 

体の痛みに苦しみながら立ち上がろうとする俺に、ノワールが俺の肩を貸してくれた。何故か顔が赤いが、あの時のお返しなのか?

 

「いいのよ…“私を頼っていい”って言われたように、私も貴方を頼りたいし、頼られたいから…」

 

「そうか…」

 

そんな甘い雰囲気にネプテューヌは痺れを切らしたのか…

 

「む~!だったら私は右だよ!」

 

「ちょっ!?ネプテューヌ!?」

 

ネプテューヌが割り込んで右肩を強引に支えてくる。バランスを崩しそうになったが、なんとか持ちこたえる事ができた。肝心のネプテューヌは、勝ち誇った表情をしていて、鼻を鳴らしていた。

 

「ふふん!この方が楽でいいでしょ?」

 

「ははっ…ありがとうな、ネプテューヌ」

 

「どういたしまして♪」

 

何だかんだで心配してくれている二人に嬉しくなるのを感じた。俺は二人に支えられながらだが、ブランのいる部屋へとゆっくりと進んでいく。

 

途中、廊下でばったりと出会ったネプギアとユニに俺の状態を問われたが、軽く説明してブランの部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

    ☆    ☆    ☆       

 

 

 

 

 

「そうは言われましても、ブラン様からは誰も通すなとの事ですので…」

 

俺達はブランの部屋に辿り着く。だがメイドがドアの前に立ち塞がっている。どうやら、ブランが俺達を入れないようにとメイドに命じたようだ。

 

「え~!?私達女神仲間なんだからいいでしょ~?」

 

「いえ…女神様と言えど…」

 

「せめて詫びを入れさせてくれ!誘拐されたのは俺のせいなんだ!」

 

「二人が捕まったのは悠斗さんだけのせいではないです!」

 

「私だって…」

 

「既に警部兵を総動員させて捜索中なので…」

 

「それは知っているけど!」

 

俺達が必死の説得をしてるが、頑なに断るメイド。埒が明かない。どうすればいいのか…そう考えている時…

 

「帰って…」

 

部屋の中からブランの声が聞こえてくる。しかし、その声は悲しみ、苛立ちが混ざったような声だった。原因は間違いなく二人の事だろう…俺はドア越しにブランに話しかけた。

 

「ブラン!俺は…」

 

「ここにいられても迷惑よ…貴方達も…それに櫻井悠斗、縁もないただの赤の他人よ…それこそここにいられたら迷惑…」

 

ブランの言葉が心に突き刺さる。“赤の他人”と。はっきりとブランから発せられる。痛い。その言葉が物凄く痛く感じる。だがそれを必死に耐える。だってそうだろう?ブランは俺以上に心が痛い筈なのだから。

 

「ブラン!貴女、そんな言い方!」

 

「いいから…帰って…」

 

その言葉を最後に、ブランは口を閉ざしてしまう。こうなる事は薄々感じてはいたが、やはり俯いてしまう。

 

「ゆ…悠斗…その…」

 

「いいんだよネプテューヌ…家族を…仲間を誘拐されて、冷静でいられる筈なんてないんだからな…」

 

「悠斗…貴方…」

 

「ちょっと、外行って来る…」

 

今のブランには時間が必要だ…その時にもう一度行こう…ブランの所へ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブランside

 

「ロム…ラム…私の所為で…」

 

ふらふらと歩き出す私、ブランは自責の念でいっぱいだ。何故、あの時私はあの子達に着いて行かなかったの?一緒に行けば誘拐だって未然に防げたかもしれない…そんな気持ちでいっぱいだった。

 

だけど泣き言は許されない。今はロムとラムの救出する手立てを考えなければならない。

 

だが、ネプテューヌ達に酷い事を言ってしまった手前、協力して欲しいなんて、そんな虫のよすぎる話なんて…言える筈がない。特に櫻井悠斗…彼には酷い事を言ってしまった。

 

櫻井悠斗がロムとラムを助け出そうとしたのは報告で聞いている。傷だらけなのに何度も何度も助け出そうとした事も…それなのに、私は苛立ちをぶつけて“赤の他人”と言ってしまった…まるで“ロムとラムが誘拐されたのは全部貴方の所為”と、突き放すかのように…幾ら私が冷静ではなかったとはいえ、あんな事を言う物ではなかった。私は…最低だ…

 

「何とかしないと…私が…そうだ!あれを使えば!」

 

“兎に角自分で何とかしなくてはならない”と考えていると、ふととある事を思い出す。今現在進んでいるプロジェクト…あれを使えばロムとラムの居場所が解る筈。善は急げと思い、私は歩き出す。しかし…

 

「見~つけた!」

 

「っ!?」

 

突然ドアが開き、誰かがずかずかと入ってくる。頭にドクロのアクセサリーと大きなリボンを身に着け、ピンクのアマロリの様な服を着た女性。そしてその女性の背後には黒子のような人物が二人、カメラとマイクを持っていた。

 

「…誰?」

 

「私はアブネス!幼年幼女の味方よ!」

 

私は首を傾げる。アブネス?幼年幼女の味方?単語一つ一つに疑問を持つが、本当に疑問を持ったのは“私の許可がないと入れない筈なのに入ってきている”事だった。つまり彼女達は不法侵入をした事になる。私は警戒心を強めた。

 

「大人気ネット番組『アブネスちゃんねる』の看板レポーターよ!知らないの?まぁいいわ、さぁ今日も中継スタートよ!」

 

「…中継?」

 

彼女は怒り口調で叫びながら言った。中継?初めは何を言っているのか解らなかった。だが黒子達がカメラとマイクを回しているのを見て気付く。私はテレビ中継で映し出されている事に。それも、不法侵入した輩に…

 

「全世界の皆~!幼年幼女のアイドル!アブネスちゃんで~す☆今日はルウィーの幼女女神ブランちゃんの所に来ているぞ☆」

 

「てめぇ…いい加減に…」

 

私はアブネスに怒りを覚える。不法侵入され、勝手に中継までされているのだ。この人は“プライバシー”というのを知らないのだろうか?キレようとするが、彼女の次の一言で私は固まってしまった。

 

「ところで!妹のロムちゃんラムちゃんが誘拐されたって言う噂は本当なのかな?ブランちゃん?」

 

「っ!?どうしてそれを…」

 

ロムとラム、誘拐されて行方が解らない二人の名前が出されたからだ。何故アブネスがその情報を知っているのか解らないが、私は思わず声を上げてしまう。だがそれがいけなかった。その声に食いつくかのようにアブネスが私にマイクを向けてきたのだ。

 

「本当なんだ!アブネスちゃん心配…で!可愛い妹を誘拐された気分はどうですか?ブランちゃん?」

 

いつもだったら言い返していたが、それができなかった。妹二人が誘拐された事実、そして自分への罪悪感がそうさせたのだ。

 

更に、話したくない筈なのに、アブネスにぽつりぽつりと話してしまった。自分を責めるかのように、自分への戒めのように…

 

「つまり妹二人が誘拐されたのは、貴女の責任と言う事ですね!ブランちゃん?」

 

「っ…そ…それは…」

 

「見てください!幼女女神は何の釈明も出来ません!やっぱり幼女に女神なんて無理なんです!」

 

何も言い返せなかった…妹二人を守れない私に女神は無理なのでは…私は…何の為に…

 

「アブネスちゃんねるは幼女女神に断固h『ガッシャアアアアアン!!!』なっ!?何!?」

 

自己嫌悪に浸っている最中、何かが砕かれる音が私の耳を(つんざ)いた。はっとなり顔を上げると、ここにいる筈がない人物が一人いた。

 

「…………」

 

「ゆ…悠斗?」

 

櫻井悠斗…でも本当に彼なのか疑った。初めて出会った時の柔和な雰囲気とは正反対で、光がなくなった左の青目、妖しく光る右の赤目、銀髪から黒髪に染まっていて、ピリピリと伝わる怒気、最早隠していない殺気…女神である私でも戦慄した。まるで、“鬼を超える何か”になってアブネスを見下すように睨んでいたのだから。

 

ブランside out

 

 

 

 

 

悠斗side

 

「希望は薄いが、もう一度謝りに行くか…」

 

時間が経ち、ブランの様子が気になり戻る事にした。もう一度会ってちゃんと謝りたい。勿論、許して貰おうとは思っていない。

 

ブランの部屋に辿り着いた俺はドアをノックしようとするが、部屋の中から声が聞こえた。誰かと話をしているのだろうか?少しだけドアを開けて中の様子を見たその時…

 

「つまり妹二人が誘拐されたのは貴女の責任と言う事ですね!ブランちゃん?」

 

「…は?」

 

一瞬体が固まってしまったが、直ぐに頭を横に振り、思考を回復させる。気になった会話の内容…それはブランの妹であるロムとラムの誘拐事件の内容だった。

 

しかし、それよりも気になったのは、ブラン以外の女性の声。その声の主がブランに問いただしているようだった。ここで俺はドアを思いっきり開けそうになるが、抑える。

 

ブランは今カメラを回され、マイクを向けられてインタビューを受けている。そのブランの表情は“とても苦しそうで、泣きそうな”表情だった。俺はここであの女性に怒りを覚える。だが、それだけでは終わらず、その女性はブランに対して根掘り葉掘りと聞き出す。

 

あの女性はその情報を知っているのかは知らないが、誘拐されて傷心しているブランに対して何であんなにしつこく聞く必要がある?何であんなに心を踏み躙るような事が平然とできる?そんな思いの中、俺は自分の怒りが爆発しないように抑えた。しかし、次の一言でその思いは崩れる事となる。

 

「見てください!幼女女神は何の釈明も出来ません!やっぱり幼女に女神なんて無理なんです!」

 

…ナニヲイッテルンダアイツハ…キズツケルダケデナクブジョクマデスルノカ…モウゲンカイダ…

 

俺はドアを思いっきり開き、

 

「アブネスちゃんねるは幼女女神に断固h『ガッシャアアアアアン!!!』なっ!?何!?」

 

カメラを蹴り、踵落としをして破壊した。

 

「あ、あんた!何してくれてんのよ!カメラを壊して!」

 

「…言いたい事はそれだけか…?お前は家族を誘拐されて、傷心しているブランの心を、土足で踏み躙る事が趣味なのか?そんじゃとんだ悪趣味だな…?」

 

「な…何を言っているのよ…」

 

「質問を質問で返すんじゃねぇよ。それを人前ではするように教えられたのか?あぁ?」

 

「ひぃっ!?ゆ、誘拐された事は事実でしょ!?私はそれを証明しに来ただけよ!?それの何がいけないのよ!?」

 

「確かに、誘拐されたのは紛れも無い事実だ」

 

俺の言葉を聞いた女性は胸を張り、ふふんと鼻を鳴らす。勝ち誇ったような表情をしているが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あんまり調子に乗るんじゃねぇぞ…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうでしょそうでしょ!だから私は幼女に女神は無理だと言っているのよ!そんなことせずに幼女は幼女らしくお遊戯をして楽しく過ごしていれば…」

 

「だが、そんな事を言う権利はない。誘拐事件を出汁(ダシ)にして根掘り葉掘り聞き出すなんて…本当にとんだ悪趣味な奴だな?えぇ?」

 

「う…煩いわね!私はアブネスちゃんねるの…」

 

「てめぇがうるせぇんだよ。ちったぁ黙ってろ!!!それにな!」

 

こいつに話す隙を与えない。いや、与えてはならない。“与えてたまるか”という気持ちを心で思いながら続ける。

 

「お前の脳は腐ってんのか?ブランに女神は無理だって事は絶対に有り得ない。お前はこの国に来て何も思わなかったのか?この国は『笑顔』に溢れている。この国に来て何も知らない俺でも解るくらいのな!それは何故起こっているか解るか?そう、この国は『幸せ』で満たされているって事だ!その『幸せ』を造り上げたのは誰だ?紛れもなくお前が散々罵倒したブランだろ!女神は無理だって言葉、お前のような奴がヘラヘラ笑いながら使う言葉じゃねぇんだよ!!元々使ってはいけない言葉だけどな!!」

 

「ぐ、うう…」

 

「それにな、お前は責める相手を間違えている。真に責めるべき相手は、ブランではなく俺だ。俺のせいでロムとラムが誘拐されたからな」

 

俺はそれを戒めるかのように目を瞑る。

 

「はぁ!?えっ!?」

 

「え…!?ち、違う!貴方のせいじゃ…」

 

「何よ!貴方が悪いって事じゃない!?幼女女神に問いだして損したわ!まぁいいわ、カメラや私の事を含めてきっちりと貴方の事を…」

 

「ま、待って!?悠斗は関係ない!」

 

アブネスという女性の言葉に対して、ブランは俺を庇う様に叫んだ。だがそんな言葉を聞き入れる事をする筈もなく、女性は俺を睨みつける様にジリジリと近づいてくる。目を瞑っているのに何で解るのかって?勘で解る。

 

「何か言いなさいよ?まぁどうせ釈明の余地はないだろうけど」

 

「…家族が誘拐されるのは言い方が悪いが、まだ救いがある…だが、俺の場合は…」

 

 

 

 

 

 

 

「家族も仲間も、大切な人が全員失い、救いなんてないんだぜ?そんな気持ちや思い…お前には解るか…?」

 

 

 

 

 

 

 

悠斗side out

 

ブランside

 

「家族が誘拐されるのは言い方が悪いが、まだ救いがある…だが、俺の場合は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「家族も仲間も、大切な人が全員失い、救いなんてないんだぜ?そんな気持ちや思い…お前には解るか…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠斗はその言葉を言った瞬間、大きく目を見開く。だがその右の赤い目は、完全に紅く(・・)染まっていた。

 

「え…っ!?」

 

「ゆ…悠斗…?」

 

大切な人が全員失った?…彼の家族は…もう…

 

「俺には解る…解りすぎて今でも悪夢で(うな)されるくらいにな…家族は交通事故、友達は暴走族に“目の前で”殺され、俺は狂った…いや、“壊れた”って言った方が正しいか?俺は十人以上いる暴走族を全員ぶっ殺した…ぶっ殺してしまった…そのせいで他の友達には、“あの人を失った気持ちは解るが、もう人殺しとなんかは友達じゃない”と言われ、友達を一気に全員失った…」

 

「っ!?」

 

悠斗が人を殺した!?しかも、一人二人ではなく十人以上も!?一体彼に何があったの…

 

「…ロムもラムも俺のせいで誘拐されて…」

 

「そ、そうよ!貴方のせいで二人は誘拐されたのよ!だから…」

 

「そしてお前は俺の前から“また”大切な人を侮辱して馬鹿にして、最終的には殺して…奪っていくんだろう…?」

 

「な…何を…」

 

「そんな奴は消えてしまえばいい。寧ろ消えろ。」

 

「ひぃぃぃぃぃ!!??」

 

っ!?何この殺気!?本当に彼から出ているの!?彼女もあまりの恐怖で尻餅をついてしまい、立てなくなっている。

 

「だからお前をここで消してやるよ!!!出でよ“抜剣(カタナ)”『ヤミガラス』!!!」

 

悠斗はそう言い、立てなくなっているアブネスの首を掴み、浮かせた後『ヤミガラス』と呼ばれる“抜剣(カタナ)”という武器を呼び出した。すると悠斗の右手には淡い紫を象徴としている刀剣が逆手持ちで握られていて、腰の鞘には何かの尻尾を模した装飾が施されてあった。このままだと本当にアブネスを殺すつもりだ。彼を止めなくては!前世では十人以上殺したって言っていたけど、この世界で人殺しはさせない!

 

「止まって!悠斗!」

 

私はそう言って彼を抱きしめた。

 

「…ブラン?俺の邪魔をするな…だから退けよ」

 

「駄目よ…貴方がそんな事をしても誰も喜ばないわ…寧ろ皆を悲しめるだけよ…」

 

「……」

 

「お願い…悠斗…」

 

私は涙をしながら彼を止める。

 

「そうだな…前世では人殺しをしたせいで友達を失ったしな…ごめんな…ブラン…」

 

彼はそう言って殺気が収まり、武器を仕舞い、アブネスを下ろす。良かった…本当に良かった…安心したのか私はまた涙を流した。

 

「おい、お前ら、今の内に逃げておいた方がいいぞ?また俺が本気で消すかも知れねぇぜ?」

 

「こ、今回の事は見逃してあげるわ!!で、でも次はないんだから!!覚えておきなさいよ!!」

 

「そうかそうか、そんなに消されたいんだな?(ニッコリ)」

 

「ひぃいいいいいい!?!?」

 

冗談混じりに、笑顔で言うと女性達は一目散に逃げていった。俺はそれを遠目で見つめる。その時にふと、ドアの近くに目を向けた。すると、見知った人がいたが、一人はへたり込み、二人は抱き合いながらガタガタと震えていた。

 

「ね…ねぷぅ…」

 

「「はわわわわわわ…」」

 

「ネプテューヌ?ネプギア?ユニ?」

 

ネプテューヌ達がドアの外にいたのだ。何時の間に…それは兎も角、ネプテューヌは顔を青ざめていて、ノワールとベールは冷や汗を掻いている。ネプギアとユニに至っては涙目になっていた。原因は間違いなくさっきの事だろう。だが俺は敢えて聞いてみる。

 

「…どうかしたか?」

 

「ゆ…悠斗が…凄く怖かった…」

 

「…やっぱりな」

 

「いや、あれは無自覚の方が逆に恐ろしいわよ…」

 

それにしても、ネプテューヌ達がドン引きのレベルって…まぁ無理もないわな。殺気80

%、普段言わない言葉を平然と言ったりしてたしな。

 

「と、取り敢えず誰かヘルプ…」

 

え?腰が砕けるまで引いてた?マジかよ…それを見たノワールは溜め息をつきながら、ネプギアは慌てながらネプテューヌに肩を貸し、立ち上がらせる。そして俺の方はまだ怒りが治まっていないようで、紅く染まっていた目が赤い目に戻ったとはいえ、元の両青目、銀髪、口調が戻っていないようであり、溜め息をつく。するとベールが近づいて来て肩にポンと手を当て微笑みかけてくれた。

 

「まぁまぁ、悠ちゃん、溜め息は似合いませんわよ?」

 

「…ベール?」

 

「確かに、先程までの悠ちゃんはその…怖くて、今でも元の悠ちゃんとかけ離れていて本当に悠ちゃんだと疑ってしまいますが…それでもブランの為に怒ってくれて…やっぱり悠ちゃんなんだって実感しましたの…だから堂々としていていいのですよ?」

 

「そうね。ブランが悠斗にあんな事を言って、普通なら嫌われてもおかしくない筈よ。寧ろ悠斗はブランの為に怒ってくれたのよ?性格が逆転してしまったとはいえ、人の良さまでは逆転してないんだから、その人の良さに感謝しなさいよ?ブラン?」

 

「あ…う…」

 

ノワールの言葉に狼狽(うろた)える。しかし、その狼狽えは直ぐさま気絶に変わる。

 

「ブラン!?」

 

慌てて俺はブランを抱きとめる。その顔を覗き込むと、疲労困憊の顔で、息が心なしか上がっていたのだ。これ程にまで思い悩んでいたというのだろうか?

 

ネプテューヌ達もブランが心配になり、俺の周りを囲む様に集まった。ブランが倒れ込んだ原因は、誘拐事件か、はたまたさっきの事か。そう思う俺、するとネプギアがある事を口にした。

 

「ブラン…」

 

「今の番組をルウィーの国民が見て、シェアが一気に下がったからとか?」

 

「確か“シェアが少なくなると女神は力が出なくなる”って、イストワールさんから聞いたけど…」

 

さっきの連中がカメラを回していて、その様子がルウィー全域に広がり、中継を見ていた国民から信仰がなくなってしまった。そう考えていたが、ノワールがそれを打ち消す形で言葉を繋げる。

 

「幾らなんでもそれは早すぎよ」

 

「じゃあ、あいつに根掘り葉掘り聞かれた事や、さっきの俺に対する事などの“精神的疲労”って事か…」

 

可能性としては有り得なくもない。が、本当にそれが原因なのかは解らない。そう考えていると

 

「皆さん」

 

ベールが俺達に声をかけた。俺達はベールの方に視線を向けた。今のベールの表情は真剣その物だった。そんなベールが一呼吸置くと、俺達にとって朗報な言葉を口にする。

 

「方法があるんです、ロムちゃんとラムちゃんを見つける方法が」

 

それは、最高の転機であり、同時にある者(・・・)にとっては最悪の時間の幕開けだった…




冥夢「今回、ブラン以外の皆が悠斗の言葉を聞いて、問いただしていない理由は、悠斗がアブネスを消す寸前にブランの部屋に着いたからです。つまり前半部分は聞いてすらありません。そして、夢に出てきた“友達”ってのは誰なのかはまだ明かしません。ですが性別は男です。言ってしまうと悠斗と同じ性格です。それと最後の言葉の“ある者”とは?それは次回明らかとなります。…まぁ、勘の良い人は既に解っているかもしれませんが。そして次回は『悠斗の怒り “ルナティックモード”』となります。次回もお見逃しなく。」
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