はいこす~ハイスクール・コーストガード~   作:栄人

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はるぐもの中でピンチ!

 エリスははるぐもの船室へ、彩智のいる部屋へと入った。

 

「邪魔するぞ、船長」

 

「…………」

 

「そこは邪魔するなら帰って、だろ」

 

 関西ではお約束のやり取りだ。だが、彩智は顔を上げなかった。

 

「まったく電気ぐらいつけたらどうだ」

 

「別にいいよ」

 

 エリスは彩智の言葉を無視して電燈のスイッチを入れた。彩智は船室のソファの上でうずくまっていた。

 

「あー、その、だな」

 

 エリスはきまり悪そうに視線を泳がして、彩智の隣に座った。

 

「ありがとう。おかげで助かった」

 

 彩智がはっと顔を上げた。

 

「あの状況は、本当にまずかった。船長が来て着れなきゃ相手の要求を呑んで制圧に失敗してるところだった。……それに、すまない。私も頭に血が上っていた」

 

「でも……」

 

「ま、お互い未熟者だったってことにしよう」

 

 彩智は再び、視線を落とす。

 

「私、本気であの子を殺そうとしてた」

 

「ふふっ。高圧の消火ホースをあの距離からぶっ放そうとしてたんだ。かなり危なかったぞ」

 

 エリスは茶化すように笑う。

 

「うん、敵だったもん。私の仲間を危ない目に合わせた敵。だから殺してもいいんだって思った。じゃないと、なごちゃんを助けられないって」

 

「…………」

 

「でも、結果はそうじゃなくて、みんな助かって。あの子、ミーナちゃんも、普通の子で笑ってて、なのに私……。でも、そう考えたら私があの時殺した」

 

「紅」

 

 震えている彩智の手を、エリスはそっと包み込んだ。

 

「お前が昔何をしたか、私は知っている。だけどそのうえで言わせてもらうぞ」

 

 エリスはまっすぐ、彩智の瞳を見つめる。

 

「今はみんな助かったんだ。誰も死ななかった。作戦は成功した。それでいいじゃないか」

 

「えりちゃん…………」

 

「みんなお前のおかげだ。そこは誇っていい。はるぐもの七人も、晴風の乗員も、みんなお前が助けたんだ。過程や想いがどうであれ、その事実に変わりはないさ」

 

 そしてポケットから棒付きキャンディーを二つ取り出した。包みをはがして一つを彩智の口に突っ込む。

 

「ふむっ!?」

 

「暴れた後にはこれが一番だ」

 

 二つともいちご味だった。甘いにおいが船室に漂う。

 

「そうだ、晴風の艦長がお前に会いたがってたぞ。なんでも今後のほう方針を確認したい、とかで。それに、北たちが騒動の原因を調べている。もうすぐ調査結果を報告してくれるそうだ」

 

「わかった。すぐ行くよ」

 

 すくっと立ち上がった彩智にエリスは苦笑いしていった。

 

「おいおい、飴なめながら話をするつもりか? ちょっと落ち着け」

 

――――――――――――

おまけ「河童が河童たる理由」

 

 沿岸警備局。海の治安を守り、海上交通を律するための組織だ。だが市民には「河童」などと陰口をたたかれている。

 

 ある日ある時の横須賀。ブルーマーメイド横須賀基地に、一隻の沿海戦闘艦が停泊していた。名は弁天。宗谷真冬が艦長を務めている。

 

「ひっさしぶっりのよっこすっかだー」

 

 と自作の歌を歌いながら意気揚々と艦を降りる真冬。やっと回ってきた休暇だ。

 

「実家に帰ってー、ましろに気合い入れてやんなきゃなー」

 

 気合の入れ方はここでは言及しないがら、真冬はかなりの上機嫌である。制服も脱がぬまま、入港前にしたためた外泊許可証を司令部にたたきつけ、スキッパー停泊場にむかう。

 

「わがバットウーマン三世! 久しぶりだな!」

 

 黒い羽根を広げたようにも見える、自分のスキッパーに語り掛ける。各所に改造が施してあるオリジナル車だ。この時点でかなり危ない人にも見えるが、横須賀基地では日常なので誰も気にしない。

 

「さあ! しゅっぱーつ」

 

 そのまま飛び乗り、基地の外へと全速力で飛びだした瞬間に、

 

『沿岸警備局です! 黒いスキッパー、止まりなさい!』

 

「げっ」

 

 沿岸警備局の検問(ナマコ狩り)に引っかかったのだった。

 

「あんた安全具は? つけてない? しかもスピード違反じゃん。え、もしかして改造? うちに届け出してる? してないの! そりゃ不味いよ~。違法じゃない違法。あんた海上安全整備局の人でしょ? 自分の安全も整備できないのに海上の安全なんか守れるの?」

 

 それから真冬は、おっさん沿岸警備官の嫌味を聞かされ、免許は減点され、あげく騒ぎを聞きつけた直属の上司(実の姉)により一週間の上陸禁止処分を言い渡されてしまうのだった。

 

「あんの河童めぇ。いつか狩りつくしてやるぅ」

 

 それからしばらく、そんな恨み言が、謹慎中の館長室の中から聞こえてきたという。

 




雛「お久しぶりですー」

鈴「いや、ホントかなり久しぶりですね」

雛「前回はー、あんまりにシリアスだったから自粛しちゃったもんねー」

鈴「それだけじゃなく、作者が実生活も忙しいのに新シリーズを始めたりししたので」

雛「こっちからしたら迷惑な話だよねー」

鈴「そのうえかなり短いですしね。だからおまけがつきましたけど。まあ台本によれば、次回はそれなりに長いみたいですが」

雛「台本なんて言っちゃだめだよー」

鈴「次回、かなり出番ありますよ」

雛「え!? 本当―!?」

鈴「ええ。次回「沿岸警備局がピンチ」お楽しみに」
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