はいこす~ハイスクール・コーストガード~   作:栄人

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晴風がピンチ

「では出席者がそろったようですので対策会議を再開します」

 

 間もなく日付が変わるころ、臨時政府対策会議が再び幕明けた。

 

「外務省からです。先ほどジュネーブから緊急入電がありました。……国連総会が臨時招集されたそうです」

 

「最終勧告か!?」

 

「はい。遅くても夜明けまでには可決される見通しが高いかと」

 

「どうにかならんのか!?」

 

「いや、待て。いっそ国連軍に手を貸してもらうという方法はどうだ?」

 

「ウイルスの情報を渡すのか!? そうなれば事態収拾後に日本は国連管理下に……。我々だって逮捕されるかもしれんのだぞ!」

 

「だがそれ以外に方法があるのか!」

 

「何も言わずに対処すれば、国連軍からウイルスが拡散するかもしれんぞ!!」

 

 開始早々紛糾する議場。真霜はその様子をしばらく見つめ、自分の手に握られた資料を読み返す。

 

 たった今出来上がった作戦計画書。白峰ら特高とともに練り上げたものだ。

 

 ちらりと白峰を見ると、彼は真霜を促すようにうなずいた。真霜は一度大きく息を吸って立ち上がった。

 

「海上安全整備局から報告と提案があります」

 

 海で鍛えた真霜の声は、騒然とした室内にしっかり響く。

 

「……どうぞ、宗谷局長代行」

 

 議長が発言を促し、場はいったん静まった。

 

「まず、晴風からの事情聴取から得られた情報と、このたびの状況から鑑みた結果、敵の本拠地とみられる施設の特定に至りました」

 

「なんだと!?」

 

「そ、それは本当かね!?」

 

 真霜は後ろに控えていた部下に指示し、日本のEEZの地図を広げさせる。

 

「ネズミが散布されたのはオーシャンモール四国沖店の配送拠点施設からです。ここを利用したという事は敵拠点はオーシャンモールの近くであるという事。さらに、盗まれたネズミを全国にばらまけるほど繁殖させるためにはそれなりの規模の設備が必要です。以上のことから……」

 

 真霜は室戸岬の沖合にあった赤い印を指さした。

 

「旧アクアシティリゾートではないかと結論付けました」

 

 アクアシティリゾート。バブル期に建造された人工島複合リゾート施設だ。しかし運営会社が破産し、十年ほど前に閉鎖されている。人工島は沈降以前の旧小豆島と同じ面積を持つ超巨大フロートで、発電設備なども完備されていた。オーシャンモールからの距離的にも、十分条件にあてはまる。

 

「登記上、現在はアメリカの不動産会社が保有していることになっています。おそらくダミー会社でしょうが……」

 

「何か証拠はあるのかね。オーシャンモールとの距離以外に」

 

「……いえ。決定的な物はありません」

 

 真霜は首を横に振る。

 

「しかし、敵の拠点とみられるものに見当がついたことは大きな一歩です。Ratsの女王ネズミも、この施設で管理されているものと推測されます」

 

 Ratsウイルスの特性上、「群れ」のトップである女王ネズミが存在する。

 

「この女王ネズミを排除すれば、Ratsの指揮系統は破壊されます。そうすれば、我々の勝ちです」

 

 真霜は手を握りしめた。女王ネズミの件を含め、何一つ確証はない。すべて推論である。だが今は、その推論にかけるしかないのだ。

 

「どうするつもりだ?」

 

「アクアシティに制圧部隊を派遣します。現在国民の避難誘導にあたっている陸上保安局、残存したブルーマーメイド。沿岸警備局。すべてです」

 

「国民の保護はどうなる!? 無防備にさらしだすつもりか!?」

 

「はい」

 

 真霜は冷徹に言い切った。予想外の反応にざわめきが起きる。

 

「すでに残された手札は少ないです。出し惜しんでいる余裕はありません」

 

「そのような作戦は容認できんっ!」

 

 出席者の一人が机をたたいた。

 

「すべて証拠のない推理にすぎんだろう! そんなものに全兵力を費やせるか!! もし空振りに終われば今度こそ終わりだぞ!!」

 

「そうだ、もはや国民保護に注力し事態の対処は国連に委任するしか」

 

「だから国連に任せれば日本はその後国連統治下におかれると言ってるだろう! 政府上層部は根こそぎ国際裁判にかけられるぞ!」

 

「みなさん、内務省から提案よろしいでしょうか?」

 

「え?」

 

 会議は再びふっそうし始めた時、白峰が口を開いた。真霜は慌てて白峰を見る。事前の打ち合わせに、この「提案」のことは出てきていない。 

 

「偵察隊を派遣してはいかがですか?」

 

「偵察? しかし、それに割く人員も船もないぞ」

 

「一隻あるでしょう。元々頭数に入っていなかった航洋艦が」

 

 白峰の発言の真意を理解した時、真霜は反射的に立ち上がっていた。

 

「晴風を送り込む気ですか!?」

 

「正確には晴風に乗せた沿岸警備官7人をね」

 

 白峰は我が意を得たりと唇を上げる。

 

「晴風の損傷と、沿岸警備官の装備補充のため、工作艦「朝日」を手配しています。作戦結構の許可が出ればすぐにでも「朝日」を派遣できますよ。海上で補修を受けさせれば、明日昼までには作戦を開始できるでしょう」

 

「沿岸警備官も晴風乗員もみな学生です!! 子供を敵の中枢に……、戦場に向かわせるのですか!」

 

「勘違いしないでいただきたい、宗谷局長代行。もうここは戦場です」

 

 白峰の言葉が鞭のように真霜を打った。

 

「あなたはすでに晴風制圧作戦に彼女たちを派遣しているでしょう。それと何か変わりがあるのですか?」

 

「………」

 

「彼女たちの偵察の結果我々の予想が当たっていれば、すぐさま増援を送りましょう。外れていればそれまでです。最もリスクが少なく効果的であると思うのですが、いかがですか? みなさん」

 

「……採決を取りましょう。賛成のものは挙手を」

 

 賛成多数で、アクアシティへの偵察隊派遣が決定した。




鈴「どうも、お久しぶりです。お忘れでしょうが、巡視艇「はるぐも」航海士、北鈴です」
雛「同じく砲術士の加久藤雛ですー」
鈴「いや、結構まずいことになってますね。久しぶりに顔を出したら」
雛「また戦いのフラグが立ったねー、久しぶりに登場したらー」
鈴「まあ何はともあれ、やっと物語は最終局面にうごけそうです」
雛「長かったねー」
鈴「さて、せっかく久しぶりんコーナーですから、ちょっとメタいことでもやってみますか?」
雛「メタいっていうか痛いんじゃないー?」
鈴「オリキャラ二次創作なんてやってる時点で結構いたいですよ。全身打撲に内蔵損傷が加わるぐらいです」
雛「致命傷だよー」
鈴「ま、キャラの名前の由来とかどうですか?」
雛「オーソドックスだねー。何かあるのー?」
鈴「ええ。覚えやすさとインパクトが命名の第一基準だったみたいですよ。例えば紅彩智さん」
雛「紅って一文字だもんねー。書きだしたらわかりやすいかなー?」
鈴「私の名前、北鈴も同様です。フルネームで漢字二文字」
雛「私はー?」
鈴「『加久藤』は南九州の地名ですね。三文字姓にしたかったみたいです」
雛「他の人はーって、行きたいけどー」
鈴「もう時間ですね。加久藤さん、タイトルコールを」
雛「はいー。次回「偵察作戦がピンチ」」
鈴「次回更新はいつになることやら……」
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