はいこす~ハイスクール・コーストガード~   作:栄人

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更新が遅れ気味で……。
次は急ぎたいと思います。


偵察作戦がピンチ

「……その命令は、ほんまもんでっしゃろな?」

 

 三条朋美は固い顔で彩智を見つめた。

 

「うん。そのための機材も、いま工作艦「朝日」が積み込んでる。戒厳司令部発令の正式な命令だよ」

 

 彩智は朋美の黒い瞳から目をそらした。

 

『はるぐも乗員は、晴風による移送の後、本動乱を主導したと推測される敵組織本部の偵察に向かえ』

 

 無線を通して告げられた命令は、このようなものだった。

 

「うちらに、できるんか……?」

 

 春子が弱音を吐く。

 

「テロリストの本拠地かー」

 

「……どんなことになるか、想像もつかないですね」

 

 雛と鈴も重苦しい空気をまとって、うつむいた。

 

「大丈夫。まだアクアシティリゾートが敵のアジトだって決まったわけじゃないから。それを確認するのが私たちの仕事だし……。それに、もし何か攻撃を受けたら、自分たちの安全を優先していいって、宗谷監督官が」

 

「だとしても、だ」

 

 不安そうな面持ちのメンバーを励まそうとしていた彩智に、エリスは言った。

 

「これは、日本の存亡をかけた重大な任務になる。それを私たちが果たせるのか、みんな不安なんだ」

 

「エリちゃん……」

 

「もちろん私もな。……情けないことだが」

 

 エリスは自嘲気味に笑った。

 

――――――――――――

 

「これが?」

 

 晴風制圧戦の際破壊したスキッパーの代わりに数機の機体が搭載された。それを見上げたエリスは、思わず感嘆の声を上げる。

 

「すごいーっ!! 本物を扱えるなんてー!」

 

「ゼロ戦に、一〇〇式司偵ですか……」

 

 雛と鈴も興奮したように、それを見つめていた。

 

 零式戦闘艇。そして一〇〇式司令部偵察艇。どちらも海上安全整備局が運用する軍用スキッパーだ。

 

 両機ともその性能の高さで名が知られている。今回この作戦に引っ張りだされたのも、その重要性をかんがみてのことだろう。

 

 狭い晴風の甲板に押し込むように一人乗りのゼロ戦二機と、二人乗りの一〇〇式司偵が二機積み込まれた。

 

 そして応急処置を終えた晴風は、目的地へと動き出す。

 

ーーーーーーーー

 

 晴風、教室。

 

「作戦を説明します」

 

 彩智は机上にアクアシティリゾートの地図を広げた。

 この場には、はるぐもの7人のほかに晴風側から明乃が参加している。

 アクアシティはかじりかけのドーナツのような形だ。北から島をくりぬいたような丸い湾内に入ることができる。

 面積は旧小豆島と同じぐらい。はるぐもの人数で探索を行うにはかなり広い。

 

 彩智は小さなマグネットを4つ図上に置く。

 

「ゼロ戦に乗るのはエリちゃんとなごちゃん」

 

 エリスと雛がうなずいた。

 

「一〇〇式司偵には私と雛ちゃん、それに鈴ちゃんと朋ちゃん。はるねえは晴風に残って通信でサポートしてほしい」

 

「了解や」

 

 彩智は明乃の方を見つめる。

 

「岬艦長。晴風は、島の東方一キロで待機していてください。万が一の際には、援護をお願いします」

 

「わかりました」

 

 晴風による援護とは、砲撃による支援に他ならない。

 

 彩智は地図上に、晴風の位置を示す大きな赤いマグネットを置いた。そして、指示棒でそれを指し示す。

 

「ここからまず、岸まで500メートルほど接近してから、その位置を保って島を一周しようと思うの。異常がなければ、湾内にあるふ頭から上陸。島内の施設、特に、中央部にあるクォータータワーを中心に捜索する」

 

 クォータータワーは、アクアシティリゾートの施設全体を管理していた施設だ。通信設備をはじめとした各種設備がそろっており、本拠地とするならここを司令部にしている可能性が高いと思われていた。

 

「島内に武装したテロリストがいた場合に備えて、上陸隊には小銃の携行許可が出てる。ただ、会敵時はできる限り戦闘を避け、速やかに撤退する」

 

「小銃か……。訓練で使ったきりじゃん。大丈夫かな~」

 

 和水が頭を抱えた。

 

「沿警にはそんな訓練もあるんですか?」

 

 明乃が目を丸くして尋ねる。

 

「うん、うちらの仕事は結構荒事が多いからさ、射撃訓練は必修なんだよね。わたしはあんま出来が良くなかったケド」

 

 15年前、領海内を荒らしまわっていた武装船団をブルーマーメイドに鎮圧されたことがあった。完全にお株を奪われた沿岸警備局はその後、強硬手段を用いて事態を対処することに特化するようになる。水晶号事件は軍事的発展を遂げた沿岸警備局が活躍した典型的な事例だ。

 

「でもさ」

 

 和水が明乃から彩智に視線を移す。

 

「あのウイルスは海水で何とかなるんでしょ? 小銃を使う必要、あんの?」

 

「これは、司令部でも意見が分かれてるんだけど……」

 

 彩智はそう前置きして、

 

「テロ組織の司令塔っていう性質上、テロリストが残っていた場合、そいつはウイルスには感染していないと思われてるの。Ratsウイルスは感染者の正常な判断力と意思を奪うから」

 

「だから実力で対処するってことねぇ」

 

 和水は渋い顔で腕を組んだ。銃を持って突入するという事は、戦闘になった時人を殺すことになるかもしれない、という事だ。すぐにそれを受け入れられる覚悟は、和水も、そしてほかのメンバーもなかった。紅彩智を除いて。

 

『こちら艦橋。あと30分で作戦海域に到着します』

 

 ましろの声が、伝声管から伝わってきた。

 

「総員、突入の用意。0600に作戦を決行する」

 

 彩智の指示で、皆席を立つ。

 

 エリスは自分の腕時計を見る。現在午前5時15分過ぎ。『開戦』まで、あと45分。

 

 空はすでに白みだしている。夜空が終わりを告げていた。

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