ハイスクールD×D~転生せし守り手~   作:bridge

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Life.10~救出、それは己の信念の為に…~

 

 

 

 

――パン!!!

 

 

 

部室内に乾いた音が響く。

 

俺はあの後、教会にではなく、一度部室へと向かった。アーシアを救出に行くと部長に告げるためだ。告げた直後、部長から平手をもらった。

 

「前にも言ったでしょう? あのシスターの救出は認められないわ」

 

部長は顔を険しくして言う。

 

まあ、そう言われるのは分かりきったことだ。

 

「話しは以上です。それでは失礼します」

 

俺は踵を返し、部室を出ようとした。

 

「待ちなさい!」

 

部長の大きな声が響く。

 

「あなたの行動が私や他の部員にも多大なる影響を及ぼすのよ! あなたのグレモリー眷属の悪魔なの! それを自覚しなさい!」

 

「俺の行動が迷惑だと言うなら俺を眷属から外してくれて構いません」

 

「そんなことができるはずがないでしょう!」

 

部長が激昂する。俺は振り返り…。

 

「アーシアはシスター、悪魔の敵だ。けど、俺の友達だ。友達は命を懸けて守る。俺のこの力は、いつでも、大切な何かを守る為に振るってきた。それはこれからも変わらない。変える気もない」

 

俺がそう告げると、部長はふぅっと息を吐き…。

 

「あなたは本当にバカなの? あなたがしようとしていることは、悪魔全体の問題になるかもしれないのよ? 敵であるシスターと全ての悪魔。こんなの、天秤にかけるまでもないことよ。それが分からないあなたではないでしょう?」

 

まあ、確かにそうだな、理屈ではな。

 

「知った事ではないですよ」

 

「えっ?」

 

「悪魔だの、堕天使だの、俺にはそんな細かい理屈はどうだっていい。今、俺にあるのは、友達が苦しんでいるという事実だけだ! 俺がこれからしようとしていることがバカなことくらい分かる。けど、友達を見捨てることが賢いって言うなら俺はバカで構わない。クズに成り下がるくらいなら俺はバカでいい」

 

俺がそう言い放つと、部長は言葉を止めた。

 

「俺はもともと、ここには許可を取りに来たわけじゃない。アーシアを救出に行くと告げにきただけだ」

 

始めはそのまま教会に突入することも考えた。けど、それでは部長達に迷惑がかかる。本当に戦争になった場合、その原因を作った下僕の主である部長がどんな責任を取らされるか…。主が下僕を制止したが、それを聞かず、下僕がそれを無視して強行した、という事実を作り、後に自分が責任を持ってその下僕を討てば部長の面目もある程度立つだろう。

 

「俺の行動が迷惑だと言うなら、俺を眷属から外すか……、俺をこの場で消し飛ばしてください」

 

「…」

 

俺の言葉で部長は黙り込んだ。

 

「では…」

 

俺は改めて扉へと向かった。振り返る瞬間、朱乃さんが部長に歩み寄り、何やら耳打ちをしたが、俺は気にせず扉に向かった。俺がドアノブに手を掛けた時…。

 

「待って」

 

部長に呼び止められた。俺はドアノブに手を掛けたまま止まる。

 

「あなたに言っておくことがあるわ。あなたは兵士『ポーン』を捨て駒か何かと思っていない?」

 

俺はその質問に少し考え、頷いた。

 

「確かに、実際にチェスにおいてはそういう使われ方もされるわ。でもね、悪魔の駒『イーヴィル・ピース』においては違うわ。あなたは兵士『ポーン』の駒の特殊能力は知ってる?」

 

「…プロモーションの事ですか?」

 

チェスの兵士『ポーン』には、そういう特殊なルールがある。他にも戦車『ルーク』のキャスリングもそうだ。

 

「ええ、そうよ。一応説明するけど、実際にチェスと同様に、兵士『ポーン』は相手の陣地、私が敵の陣地と認めた場所の一番重要なところへ足を踏み入れた時、あなたは王『キング』以外の駒に昇格することができるのよ」

 

「…」

 

俺は振り返り、部長の言葉を黙って聞いた。

 

「昴、悪魔において…、いえ、私においてはどの駒も捨て駒なんて存在しないわ。あなたは全てを背負い込む気でいるみたいだけど、それだけは忘れないで」

 

部長はそう俺に告げると、朱乃さんと共に魔方陣で何処かへジャンプしていった。俺がしばし部長の言葉をかみしめていると…。

 

「行くのかい?」

 

木場が俺に話しかけた。

 

「もちろん」

 

「……覚悟の上みたいだね」

 

「当然だろ?」

 

「ふぅ、それなら僕も付き合うよ」

 

「良いのか? 一応遠回しだが、部長が許可を出してくれたみたいだが、正直、木場が俺に付き合う義理はないだろ?」

 

「アーシアさんのことはよく知らないけれど、君は僕の仲間だ。部長はああおっしゃったけど、僕は君の意思を尊重したいと思う部分もある。それに堕天使や神父は好きじゃないんだ。憎いほどにね」

 

木場がそう言うと、木場の瞳が一瞬鋭く、そして、暗い闇が覆った。その瞳は…。

 

「…」

 

 

――怨嗟か…。

 

 

木場の過去には何か深い闇があるのだろう。だが今は…。

 

「恩に着る」

 

俺のわがままに過ぎない行為に助力してくれる木場に素直に感謝した。

 

「当然でしょ? 僕達は仲間なんだから。部長も僕にフォローさせるつもりでああ言ったんだろうしね」

 

ポンっと俺の肩を叩いた。

 

ありがたい限りだ。

 

「…私も行きます」

 

小猫ちゃんが俺達の前に来てポツリと言った。

 

「2人だけでは不安です」

 

「…ありがとう、小猫ちゃん」

 

俺はポンポンと頭を撫でた。小猫ちゃんは気持ちいいやら何やら複雑そうな顔をした。

 

「それじゃあ行こう。アーシアを助け出す」

 

俺達は教会へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

俺達はすぐさま教会に向かった。教会に着いた頃にはもう日は沈み、辺りは暗闇に包まれていた。

 

「これ、図面」

 

木場が教会の建物の見取り図を広げた。

 

「用意がいいな」

 

「まあ、相手陣地に攻め込むときのセオリーだよね」

 

木場がいつものスマイルで言った。

 

…ありがたい。

 

俺は図面に目を通した。俺は図面と建物を交互に見て…。

 

「アーシアがいるのは…聖堂だな。聖堂の方向からアーシアの気配がする」

 

「そこで間違いないだろうね。この手のはぐれエクソシストの組織は決まって聖堂に細工を施しているんだ。聖堂の地下で怪しげな儀式を行うものなんだよ」

 

…なるほどね。

 

「しかし分からないな。堕天使もはぐれエクソシストも、神や教会から追放された身だろ? なんで教会を根城にするんだ?」

 

「だからこそだよ。今まで敬っていた聖なる場所、そこで神を否定する行為をすることで、自己満足、神への冒涜に酔いしれるのさ」

 

「…くだらないな。つくづく救えない奴等なんだな」

 

…早い話、逆恨みじゃねぇか。

 

「まあいい、ここから聖堂まではたいして距離はない。さっさと向かおう」

 

「そうだね。あまりも時間もないだろうから、急ごう」

 

木場が先頭に立ち、聖堂へ向かおうとし、小猫もそれに続く。

 

「っ!」

 

そんな2人を、俺が手で制して止める。

 

「昴君? いったい――」

 

「…来ます」

 

小猫ちゃんがいち早く気付く、木場も、すぐさま気付いた。

 

「よもや、悪魔がこれほどまでに愚かな存在だったとは。…ここまで来れば、もはや、失笑に値する」

 

聖堂の方角から、男の声が届く。

 

「…この臭い、堕天使」

 

小猫ちゃんがポツリと呟く。

 

 

――この声…、聞き覚えがある声だ…。

 

 

声の主が月影から現れると、そこには、2度もの顔合わせをした堕天使が現れた。

 

「またお前か……、確か、ドーナシークだったか?」

 

俺は、レイナーレと呼ばれた女堕天使が1度だけ呟いた名を思い出しながら尋ねた。

 

「貴様ごときに名乗った覚えはない。我が名を口にするな、下賤の輩が」

 

名を言われたのが不快だったのか、表情を歪ませるドーナシーク。

 

「…で? 何しに来たんだ? 俺達は先を急いでいる。用がないならさっさと消えてくれるか?」

 

「…ふん。用はある。…お前がここに来ると推察出来たのでな。ここで張らせてもらった」

 

「…」

 

「本来なら、貴様のような下級悪魔など、あのはぐれ悪魔祓い(エクソシスト)で充分なのだが、貴様には借りがある。この身に屈辱を与えられた大きな借りが…!」

 

ドーナシークの表情がどんどん歪んでいく。

 

「この屈辱! 払拭せねば、我がプライドが許さん! この場で貴様を屠り、あの失態がただの不幸の事故であったことを証明しようぞ!」

 

ついには激昂しながら俺に敵意をぶつけてきた。そして、視線を俺から木場や小猫に移す。

 

「ふてぶてしくもこの街を根城にしている蝙蝠どもが目障りに感じていたところだ。その男を葬った後、その首を貴様らの主の前に並べて――」

 

俺は言い終わる前に動いていた。俺は瞬時にドーナシークの後方に回り込んだ。

 

「…話が長ぇーんだよ。こっちは急いでるって言っただろうが」

 

俺は、指を揃えて伸ばしていた右手を払った。

 

「くだらねぇな。お前の言葉もプライドも、何かもがくだらない。戦場で御託を並べるな。仕掛けるなら不意を突いてでも殺せ。糞の役にも立たないプライドなんぞ捨てろ。俺を殺りたいんならな」

 

そして、右手を下す。

 

「…ま、もう、理解出来ないだろうがな」

 

 

――プシャッ!!!

 

 

その場で凍り付いたかのように停止していたドーナシークの首が突如ズルリと落ち、落ちてなくなった首筋から血が噴き出した。

 

そしてそのまま、残った身体も、崩れるようにその場で倒れこんだ。

 

「…時間を食った。急ごう」

 

俺は木場と小猫ちゃんに一言告げ、聖堂に向かって走り出した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

木場side

 

昴君が聖堂へと向かっていった。

 

「…小猫ちゃん。今の、見えたかい?」

 

「……いえ、全く見えませんでした」

 

小猫ちゃんは首を横に振った。

 

「…」

 

 

――速い…。

 

 

今の昴君の動き、僕もほとんど捉えることが出来なかった。

 

「…」

 

ドーナシークの飛ばされた首に視線を移す。そこには、首が飛ぶ瞬間と変わることのない表情だった。それはつまり、当の本人すらも、殺されたことに気付くこともなく死んだことを意味する。

 

「…」

 

僕は、改めて昴君に視線を戻す。

 

…これが、昴君の実力…。

 

未だ、彼の実力を測ることは出来ないが、それでも、彼の底がとてつもなく深いことだけは理解出来た。

 

「…祐斗先輩、急ぎましょう」

 

小猫ちゃんに促され、僕は、昴君の後を追っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

駆け足で聖堂に向かうと、すぐに聖堂に着いた。

 

「…行くぞ」

 

俺が2人にそう促すと、2人はコクリと頷いた。

 

 

――ドン!!!

 

 

俺は聖堂の扉を蹴った。両開きの扉は勢いよく開き、大きな音が鳴った。目立ってしまう行為だが、どのみち気付かれているので慎重に行こうが派手に行こうがあまり変わらない。

 

聖堂内は、聖人の首だけが取れた彫刻がいくつか並んでいた。

 

 

――パチパチパチパチ…。

 

 

突如、聖堂の奥から拍手が鳴り響く。

 

「ご対面! 再会だねぇ! 感動的だねぇ!」

 

物陰から人が現れた。

 

「クソガキ神父か…」

 

現れたのは以前に俺の依頼主を惨殺したフリードと呼ばれたはぐれエクソシストだ。

 

…ま、先ほどの三下堕天使の言動で薄々予想は付いていたが…。

 

「俺としては二度会う悪魔はいないってことになってんだけどさ! ほら、俺、メチャクチャ強いんで悪魔なんて初見でチョンパな訳ですよ! 一度会ったらその場で解t…『お前とのおしゃべりに付き合うつもりはない』あん?」

 

俺はペラペラしゃべるフリードの言葉の途中で俺の言葉を割り込ませた。

 

「アーシア・アルジェントは何処にいる?」

 

「あーはいはい、悪魔に魅入られたクソシスターね。アーシアたんならそこの祭壇の下に地下への階段が隠されてございます。そこから儀式が行われている祭儀場へ行けますぞ」

 

フリードはあっさりしゃべった。

 

「…随分あっさり教えてくれるんだな?」

 

俺がそう言うとフリードは懐から光が出る剣と銃を取り出し…。

 

「いえいえ、知られたところでどうせあなた方はこの場でチョンパですので、全くノープロブレムなんです…『そうか』えっ?」

 

俺は言い終える前にフリードの懐に飛び込んだ。

 

「アーシアの居場所さえ分かればお前に用はない。とっとと…」

 

 

 

――バキィッ!!!

 

 

 

「がふっ!」

 

「消え失せろ」

 

俺はフリード頭部に蹴りを食らわせた。フリードは縦に回転しながら…。

 

 

 

――ドコォォォン!!!

 

 

 

聖堂の壁にぶつかり、壁をぶち破りながら外へと吹き飛んでいった。

 

俺は吹き飛んだフリードには目もくれず、祭壇に歩み寄り…。

 

 

 

――ドォン!!!

 

 

 

祭壇にかかと落としをして粉々にした。すると祭壇の下から地下への階段が現れた。

 

「あいつの言うとおり、階段があったな」

 

俺は階段を降ろうとした。

 

「み、御剣君」

 

「どうした、木場?」

 

「気付かなかったけど、君はいつの間にプロモーションをしたんだい?」

 

木場がおずおずと尋ねた。

 

「いや、プロモーションはしてないぞ? するまでもなかったからな」

 

「「!?」」

 

木場と小猫ちゃんが驚愕の表情を浮かべる。

 

「(前のはぐれ悪魔の時より……プロモーション抜きで僕以上のスピード…。君は何処まで底が知れないんだ)」

 

「(…あの一撃、私のより重いかも)」

 

2人が呆気に取られている。

 

「話しは後だ。急ごう」

 

俺は階段を降りた。木場と小猫ちゃんも俺に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

 

――タッタッタッタッ…。

 

 

地下への階段を降り、奥へ続く1本道を進んで行く。その道中、俺は1人考えていた。

 

あの堕天使達がアーシアにこだわる理由。

 

 

――奴等は何故アーシアにこだわる…。

 

 

アーシアの特筆した能力。やはりあの神器(セイクリッド・ギア)による治癒能力だ。奴らの目当てはあれだろう。ならばあれをどう利用する? アーシアは奴等に嫌悪感を抱いてる。いくら頼まれようと奴らのためにあの力は使わないだろう。たとえ拷問されようとも…。

 

それに、あのレイナーレとかいう堕天使が去り際に言った『儀式』という言葉。俺の予想が正しければ奴らはアーシアの…。

 

通路をアーシアの気配頼りに進んでいくと、大きな扉が見えてきた。

 

 

――あそこにアーシアが…。

 

 

「いやぁぁぁぁぁっ!!!」

 

突如、扉の奥から悲鳴が響いた。

 

この声は、アーシア!

 

 

 

――ドン!!!

 

 

 

俺は扉を蹴り、強引に開けた。

 

中に入ると、部屋中に大量の神父がいた。その奥にレイナーレと呼ばれた堕天使と、十字架に磔にされていたアーシアの姿が。

 

「いらっしゃい。悪魔の皆さん。遅かったわね」

 

レイナーレがこちらに嘲笑を浮かべる。

 

すると、大きな光を帯びた何かがレイナーレの手に降りてきた。俺には見覚えがあった。それは以前、アーシアが傷を癒した際に指に現れた指輪だった。

 

「残念だけど、儀式は今、終わったわ」

 

レイナーレがその指輪を掴むと、アーシアはまるで生気が抜けたようにぐったりした。

 

「アーシアァァァァッ!!!」

 

俺は、アーシアの名を叫んだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




少々追加しました。

感想で、昴の弱体化が指摘されましたが、確かに、ブランクによる弱体化はあるんですが、それ以上に、この世界に住人が強いと言うのもあります。何せ、人間ではないので…(^-^;)

そこのところを考慮していただけると幸いです。

感想、アドバイスお待ちしています。

それではまた!
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