ハイスクールD×D~転生せし守り手~   作:bridge

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投稿します!

投稿は、忘れた頃に、やってくる。

遅くなりましたが、この二次の記念すべき100話目の投稿です!

それではどうぞ!



Life.100~取り戻す絆、最後の眷属~

 

 

 

「…ふぅ」

 

俺は手頃な岩に腰掛けながら一息吐く。

 

三大勢力と北欧神話の和平の会談を阻止を企む悪神ロキの野望を辛くも阻止した俺達。今では戦火の後始末をしている。

 

ロキは俺がありったけの奥義を叩き込んだ結果、そのダメージによって虫の息となった。ロスヴァイセが幾重に封印魔術をかけ、拘束し、アースガルズへと転送した。

 

「他に痛む所はありますか?」

 

「ありがとう。もう充分だ」

 

トワイライトヒーリングで俺を癒しながら尋ねるアーシアに、俺は手で制しながら答えた。

 

部長を含めた、俺以外の者達が戦後処理をしている中、俺はアーシアの治療を受けていた。確かに疲弊はしていたが、動けない程ではなかったので俺も参加しようとしたのだが…。

 

『あなたはアーシアの治療を受けながら休んでちょうだい。あなたにばかり負担をかけてしまったのだから、後は私達に任せなさい』

 

と言われてしまい、俺はその言葉に従った。

 

…部長達もフェンリル達や量産型ミドガルズオルム達を相手にしてかなり疲弊しているはずなのに…。

 

俺は確かにロキを倒したが、それは部長が露払いをしてくれた結果だ。どれだけそれに助けられたか…。

 

朱乃さんはバラキエル様が介抱している。依然として意識は戻っていないが、命には別条ない。ティアマットは戦いが終わるとそのまま帰っていった。

 

「…あいつらも、何処に行ったのやら」

 

気が付けば、ヴァーリチームの黒歌、美猴、アーサーの姿がなかった。結局、奴等の目的は何だったのやら…。

 

俺はその場でスッと立ち上がる。

 

「スバルさん、何処へ行くんですか?」

 

「アーシアのおかげで怪我は治ったし、体力も回復出来た。俺も部長達の手伝いに行くよ」

 

そうアーシアに告げ、足を進めようとする。すると、アーシアが俺の手を掴んだ。

 

「無理はしないで下さい。スバルさんの傷は決して軽いものではなかったんですから」

 

心配そうに俺を覗き込みながら言う。

 

「大袈裟だよ。別に戦いに行くわけじゃないんだ。戦後処理の手伝いくらいどうってこと――」

 

「――くっ!」

 

「――こいつ、まだ!」

 

その時、少し離れた場所から木場とゼノヴィアの声が聞こえてきた。

 

「何だ?」

 

俺はすぐさま声がした方角に視線を向ける。声は、俺が彗星爆撃・廻によって出来たクレーターからしたようなので、ここからでは状況が把握出来ない。

 

「…何かあったみたいだな。アーシアはここにいろ。俺が様子を見てくる」

 

そう告げ、俺は声のした方角に駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「部長、どうかしましたか?」

 

「昴。…あれよ」

 

部長がとある方向を指差す。

 

『グルルルルル…!』

 

そこには、喉を鳴らしながら威嚇をしている子フェンリル、スコルとハティがいた。

 

「子フェンリルの2匹か…」

 

「捕縛をしようとした瞬間、意識を取り戻してみたいで…」

 

2匹を警戒しながら俺に状況を説明をする部長。木場とゼノヴィアも聖魔剣、デュランダルを構えながら2匹を警戒している。

 

「? …何処かさっきまで様子が違うような…」

 

スコルとハティは満身創痍ながら、こちらに敵意を向けてはいるのだが、さっきまでとは圧倒的に敵意が薄い。どちらかというと、警戒の色が強いくらいだ。

 

「恐らく、ロキの意識が失った事であの2匹の意識を支配していた魔術が解けただと思います」

 

ロスヴァイセが俺達にそう説明する。

 

…なるほど、やたら敵意が薄いのはそういう事か。あの野郎、偉そうに語っときながら、結局魔術で縛ってやがったのか。

 

「幸い、私達の一斉攻撃が効いているようですので威嚇するだけ精一杯みたいね。…けど、また暴れられては面倒ね」

 

「はい。子供とは言え、2匹の牙は神を屠る程の威力があります。あわよくばロキと共に捕縛しておきたかったところですが、ロキ以外にあの2匹を操る事は出来ませんし、連れ帰っても持て余すだけでしょう。見た所、もう暴れる力はないようですので、この場で――」

 

北欧魔術を構築しようとしたロスヴァイセを俺は手で制した。

 

「…昴?」

 

「…ロキの支配下を離れたなら、殺す事もないでしょう」

 

「ですが、生かしておくにはあまりにも危険です。おそらく、北欧の神々達も処分を決定するはずです。どのみちあの2匹の結末は…」

 

言い終える前に俺は2匹に近づいていった。

 

「昴、何をしているの!?」

 

「離れて下さい、危険です!」

 

俺の行動に部長とロスヴァイセが必死に止める。それでも俺は足を止めなかった。

 

例えどんな過程、用途で産みだされたしても、危険と言う理由だけで、俺達の勝手なエゴでその命を摘み取るのは気が引ける。どうしようもなければ殺す事も俺は辞さない。だが、もし、別の道があるのなら…。

 

『グルルルル…!』

 

近づく俺に2匹が更に喉を鳴らす。

 

「俺はお前達に何をするつもりはない。だから――」

 

次の瞬間、スコルが俺の右肩に、ハティが俺の左脚に噛みついた。

 

「ぐっ!」

 

俺の右肩と左脚に激痛が走る。

 

「昴!? 皆、昴を助けなさい!」

 

噛みつかれた俺を目の当たりにして部長が咄嗟に指示を飛ばす。

 

「動くな!」

 

『っ!?』

 

俺が声を張り上げながら皆を止める。

 

「ぐっ……頼む、まだ、動かないでくれ…」

 

激痛に耐えながら俺が皆に懇願する。俺はスコルとハティの頭を撫でた。

 

「すまなかったな。勝手な都合でお前達を振り回しちまってよ」

 

俺は2匹の頭を撫でまわし続けながら言葉を続ける。

 

「怯えなくていい。もうお前達を縛るものは何もない。だから…」

 

地面に鮮血が滝のように溢れる。徐々に俺の身体から力が抜けていく。俺の意識も薄れていく。それでも俺は、2匹の頭を撫で続けた。

 

『…』

 

腕の感覚がなくなり、だらりと2匹の頭から手が落ちる。すると、右肩と左脚に刺さった牙が抜けた。

 

「…ありがとな」

 

俺が一言礼を言うと、スコルとハティが傷口を舐め始めた。

 

「…あっ、やっべ」

 

遂に全身の力がなくなり、その場で前のめりに倒れた。

 

「昴ーっ!!!」

 

部長の悲鳴とも言える声が薄れゆく俺の耳に届く。

 

…血を流し過ぎた。せっかくアーシアに治療してもらったのになぁ。

 

そんな事を考えながら俺は意識を手放したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「全く、心配かけさせるんだから…」

 

「いやー、ホント申し訳ないです」

 

口を尖らせながら俺に言う部長。俺は頭を掻きながら頭を下げる。

 

あの後、俺はすぐさま転移魔方陣で医療施設に搬送された。そこで偶然滞在していたレイヴェルが持っていたフェニックスの涙によって傷は癒された。

 

「ったく、呆れてモノが言えないぜ。あの2匹が満身創痍だったから良かったものの。後、フェニックスの涙が運よくなかったら死んでたぞお前」

 

呆れながら俺に告げるアザゼル先生。

 

「面目ないです。…それで、会談の方は――」

 

「無事、話は纏まったよ。お前らと、ティアマット、後はヴァーリ達のおかげでな」

 

ウィンクをしながらアザゼル先生は言った。

 

…そうか。なら良かった。

 

「あ、そういえば、スコルとハティは…」

 

「フェンリル程ではないとは言え、あの2匹の牙も神を充分屠れる代物だ。野放しには出来ねえ。厳重に処分するという意見が多数を占めた」

 

「っ!?」

 

…まさか、もう既に…!

 

俺の頭の中に最悪のシナリオが流れる。

 

「…だったんだが、今回の1番の功労者であるお前が命懸けで守った事もあって、条件付きで経過を見守る事になった。…ほら」

 

そう言って、アザゼル先生が親指で一角を指差す。するとそこには…。

 

「「グゴゴゴゴ…」」

 

スコルとハティが重なり合いながら眠っていた。ふと見ると、身体のサイズが大きめの大型犬程にまで縮まっていた。

 

「幸い、お前とアーシアには懐いているみたいだからな。幾重に力を抑える封印魔術をかけて、手に負えなくなったり、騒ぎを起こさなければこのままお前の家に置いておける事で話は纏まった。感謝しておけよ? リアスがサーゼクスに掛け合ったからこの寛大な処置がされたんだ。本来なら良くて封印、悪けりゃ処分だ」

 

「そうですか…。部長、ありがとうございます」

 

俺は横に立っている部長に頭を下げた。

 

「処分をしてしまっては、命を懸けたあなたの行動が無駄になってしまうもの。あなたやアーシアに懐いているから、将来はどちらかの使い魔にも出来るかもしれないしね」

 

照れながら部長が俺に言った。

 

「ほっほっほ、身体の方はどうじゃ、赤龍帝の小僧よ」

 

そこへ、オーディン様とロスヴァイセがやってきた。部長が片膝を付いて出迎える。俺もベッドから降りようとすると…。

 

「よいよい。そのままで構わん」

 

手で制され、俺はそのまま出迎えた。

 

「此度、ロキを止め、会談を成功させてくれた事、礼を言うぞ」

 

「いえ、私は魔王サーゼクス様の妹として当然の事をしたまでです」

 

「同じく、この会談が三大勢力と北欧神話の未来の為になると信じておりましたから、その為ならこの程度…」

 

礼の言葉を述べたオーディン様。会談が成功すればまた1つ世界が纏まる。当然の事だ。

 

「これ、お返しします」

 

俺が懐からミョルニルのレプリカを取り出し、差し出すと、オーディン様は手で制し、首を横に振った。

 

「とっておけ。再びそれが必要になる時が来よう」

 

と言って、返却を拒否した。

 

「オーディン様、よろしいのですか?」

 

「構わん。儂が持っていても宝の持ち腐れじゃ。この者達なら間違った使い方はせんじゃろう」

 

「はぁ、そういう事であるなら…」

 

ミョルニルのレプリカを俺達の預ける事にロスヴァイセが難色を示した。ある程度、納得したものの、まだ不満があるかのような表情だ。

 

「不満そうじゃのう。ならば、ロスヴァイセ、お主がこの者達がそれを正しく使用出来るか否か、傍で見定めればよい」

 

「えっ?」

 

突然のオーディン様の申し出に、ロスヴァイセは目を丸くする。

 

「フェンリルの子であるスコルとハティの監視と交渉役を兼ねた要員をこちらから手配する話があってのう。それをお主に命ずる」

 

「で、ですが、私にはオーディン様の護衛の任務が…!」

 

「その事なら他にいくらでもあてがえるわい。周りを見渡して、1番適任なのがお主しかおらんのじゃ。引き受けてくれるな?」

 

「…」

 

オーディン様にそう命じられ、考え込むロスヴァイセ。顎に手を当て暫し思案し…。

 

「分かりました。オーディン様の御指名とあらば、このロスヴァイセ、務めさせていただきます」

 

この話を受け入れた。

 

「そういう事ですので。リアス殿、よろしくお願いします」

 

「ええ。こちらこそ、よろしく頼むわ」

 

手を差し出したロスヴァイセ。部長はその手を取った。

 

「頼むのう。では儂はここでお暇させてもらうかのう。重ね重ね、此度の件、助かったぞ」

 

そう言って、オーディン様は部屋を後にした。

 

「私もこれで。それでは後日、窺いますので…」

 

続いてロスヴァイセが頭を下げ、オーディン様の後を追っていった。

 

「…ふぅ」

 

オーディン様が退室すると、俺はベッドに横になった。

 

「まだ事後処理が終わっていないから、私も行くわ。昴は今日はこのまま休んでいなさい。…絶対安静よ?」

 

そう釘を刺して、部屋を後にしていった。

 

「…やれやれ、ようやくひと段落したか。お前もご苦労だったな。ゆっくり休め」

 

アザゼル先生がそう俺に告げ、部屋を後にしようとした。

 

「待って下さい」

 

「あん?」

 

部屋を出ようとしたアザゼル先生を俺は呼び止める。

 

「…1つ、頼みごとをしてもいいですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「うふふ♪ 次はあの店に寄ってみない?」

 

俺の腕に自らの腕を絡ませながら朱乃さんが提案する。

 

ロキとの戦いから数日が経った。幸いとして、俺の身体は一晩安静したら問題なく完治した。対して朱乃さんも同様に翌日には歩き回れるまで回復した。

 

互いに退院し、自宅に戻ると俺は…。

 

『朱乃さん。以前に中断となってしまったデートの続き、明日にでも行きませんか?』

 

俺はそう言って朱乃さんを誘った。すると朱乃さんは満面の笑みを浮かべ…。

 

『喜んで行かせてもらうわ♪』

 

二つ返事で受けてくれた。

 

朱乃さんは以前とはデザインが違うワンピースに袖を通して待ち合わせ場所に現れた。一言二言感想を伝え、デートを開始した。

 

始めは水族館に行って珍しい魚等を鑑賞し、一通り見回った後、現在は近所のデパートで買い物をしている。服を見て回ったり、朱乃さんが気に入ったアクセサリーをプレゼントしたり、どこにでもいるカップルのように俺達はデートをした。

 

「さて…、良い時間ですし、そろそろ昼食を取らないか?」

 

「ええ、そうしましょう」

 

時刻は正午を少し回った所。俺が提案すると、朱乃さんは了承した。

 

「リクエストのものは?」

 

「もちろん、用意してあるわ♪」

 

リクエストのもの、それは、お弁当だ。デートに際して、俺は朱乃さんにお弁当を提案していた。デパートのフードコートや近所の評判の店に寄るのもいいが、お弁当の方がデートっぽいと思ったからだ。

 

「では、デパートから少し歩いた所に公園があるから、そこで食べないか?」

 

「いいわね。そこで食べましょう♪」

 

俺達は公園に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

公園に着き、持ってきたレジャーシートを敷いてそこに上がると、朱乃さんがお弁当を広げる。お弁当は和食がメインで、所々細かく手が加えられており、食べずとも美味しさが伝わってくる。

 

「あら? 困ったわ…」

 

朱乃さんが頬に手を当てながら困り顔をする。

 

「どうした?」

 

「いえ、うっかり飲み物を忘れてしまったわ。ちゃんと確認したはずだったのだけれど…」

 

手荷物を探すが、飲み物は見つからない。

 

「少し歩いた所に自販機があったから、そこで何か買ってくるよ」

 

「だったら私が――」

 

「わざわざリクエストのお弁当まで用意してもらったんだからここは俺が行くよ。お茶でいい?」

 

俺は朱乃さんを手で制し、靴を履く。

 

「ええ。ごめんなさいね」

 

「構わないよ。それじゃ、行ってくる」

 

そう言って、俺はその場を離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

朱乃side

 

「遅いわね…」

 

昴君が自販機に向かってから15分が過ぎようとしている。自販機はそれほど遠くはないはずなのに…。

 

「もしかして、ここが分からなくなってしまったのかしら?」

 

ここから自販機まで迷う程離れている訳ではないけれど、目当ての物がなくて探し回っているのなら、それもあり得ない事ではないわ。

 

「…電話してみようかしら」

 

ハンドバックから携帯を取り出して昴君と連絡を取ろうとすると…。

 

 

――ザッ…。

 

 

私の背後から足音が聞こえた。

 

「…遠くまで買い物させてしまってごめんなさ――えっ?」

 

振り返ると、そこには昴君ではなく…。

 

「…」

 

「……お父…様」

 

そこには、私の父、バラキエルの姿があった。

 

「…どうして、ここへ…?」

 

「…う、うむ、総督と近くに買い出しに来ていてな。その帰り、はぐれてしまって、それでここにいると…」

 

私が尋ねると、父は罰が悪そうな表情でそう言った。

 

「み、見た所、彼とデートの途中だったようだな。邪魔をしてスマン。私は去るとしよう」

 

そう言った後、父はその場を後にしていった。

 

「…」

 

父が少しずつこの場を離れていく。

 

…お父様には言いたい事、伝えたい事がたくさんあったはずなのに…。

 

にもかかわらず、私はそれを言葉にする事が出来ない。

 

…呼び止めないと…!

 

暫くお父様と会う機会はない。ここで伝えなければ、恐らくもう伝える事は出来ない。けれど、その言葉が出ない。今日まで彼を散々遠ざけてきた。一方的に厳しい言葉で。その事実が、躊躇いを生んでしまう。今更、どんな顔で話せばいいのか、それが分からない。

 

…早く…、早くお父様を呼び止めないと…!

 

懸命に臨むが、その言葉が出せない。その勇気が、出せない。もし、お父様に拒絶をされてしまったら…。そう考えてしまうと萎縮してしまう。その時…。

 

 

――ピリリ…!

 

 

私が先ほど取り出した携帯が鳴った。反射的に携帯に視線を移すとそこには…。

 

「…っ」

 

それを見た瞬間、私の中にあった恐怖と躊躇いがなくなった。私は右手で掴んだ携帯を胸に抱き、1度深呼吸をして…。

 

「待って!」

 

父を…お父様を呼び止めた。

 

「朱乃?」

 

その声にお父様が振り返った。

 

「…良かったら、一緒にお昼でもどうかしら?」

 

「……良いのか?」

 

私が提案すると、申し訳なさそうに聞き返す。

 

「ええ。少し作り過ぎてしまったから。残してしまうのはもったいないわ」

 

咄嗟にそうお父様に返した。

 

「…うむ、そうか」

 

そう返事をすると、お父様は踵を返してこちらへ戻り、レジャーシートに座った。

 

「…」

 

「…」

 

向かい合って互いに座る。けれど、私達に間に会話がない。気まずい空気が流れる中、私はそれを紛らわせる為にお弁当からおかずをよそい、箸を添えてお父様に渡す。

 

「スマンな。ではいただこう」

 

そう言って、箸でおかずをつまみ、口に運ぶ。

 

「っ!? こ、これは…!?」

 

口に運ぶと、突然、目を見開いて驚く。かと思ったら俯き出し、震え出した。

 

「……朱璃…、この肉じゃが、この味…、朱璃の……朱璃の味だ…!」

 

そう言って、目元を手で覆った。

 

…お父様が今食べた肉じゃがは、生前、母様が得意であった料理だ。

 

「…またこの肉じゃがを食べられる日が来るとは…!」

 

そう言ってまた肉じゃがを口に運ぶ。その瞳から涙を溢れさせながら…。

 

 

――そうか、私だけではなかったのね…。

 

 

これまでずっと、私は母様を失った悲しみで苦しんできた。自分だけが辛いんだと思ってた。…けど、違った。お父様もずっと苦しんでいたんだ。

 

それなのに、私は自分の心を守る為にお父様を憎んで…。お父様だって、辛かったはずなのに…。

 

私はお父様の背後に回り、後ろからお父様を抱きしめた。

 

「お父様、ごめんなさい」

 

私は心の底からお父様に謝った。

 

「…あのね、私――」

 

私はお父様に伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――これまで、私がお父様に言えなかった事を…。私の、本当の気持ちを…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

昴side

 

「…ふぅ」

 

俺はベンチの一角に腰掛け、一息吐き、携帯電話をポケットにしまい、横に置いた水筒を口にした。

 

「よう」

 

声が聞こえ、振り返ると、そこにはアザゼル先生が立っていた。

 

「アザゼル先生」

 

「成功だ。今頃、家族水入らずで弁当食ってるところだろうよ」

 

「そうですか」

 

それなら一安心だ。

 

今回のデート。朱乃とバラキエルさんを仲直りさせるが俺の狙いだ。先の戦いの折、朱乃がバラキエルさんを想っている事は理解出来た。だから、俺はアザゼル先生に今回のセッティングの協力を頼んだ。

 

アザゼル先生の話では、バラキエルさんは再び多忙の身になり、暫く朱乃に会えなくなるらしい。時間が経ってしまえば、あの時の想いが風化してしまう。だから俺は、バラキエルさんがこっちにいられる内に今回の計画を進めた。

 

正直、だまし討ちみたいで気が引けたのだが、それが2人のわだかまりを解くきっかけになると信じて強硬した。

 

「ありがとよ」

 

「礼を言われる事の程ではありませんよ。俺はただ、きっかけを作っただけですから。遅かれ早かれ、2人はああなっていましたよ」

 

「…俺は2人に対して何もしてやれなかった。2人から愛する家族を奪っておきながら何も出来なかった」

 

いつもの表情ではなく、いたく悲痛の表情で吐露する。

 

ロキとの戦いの前にアザゼル先生から話を聞いた。朱乃の母は、アザゼル先生が急用でバラキエルさんを呼び出した隙に堕天使の敵対している者達の手によって殺められてしまったと。このヒトもまた、朱乃やバラキエルさんと同じく十字架を抱えていたのだ。

 

「でも、あなたはずっと、朱乃を見守っていたのでしょう?」

 

アザゼル先生は、母親を失い、父親を拒絶して旅をしていた朱乃をずっと人知れず見守っていた。もし、アザゼル先生がそうしなかったら、朱乃はとっくに命を失っていた事だろう。

 

「失ったものはもう戻らない。けど、あなたがずっと2人を見守っていたから、こうして2人の絆を結び直す事が出来た。今日という日を迎える事が出来たのは、アザゼル先生のおかげですよ」

 

「…っ、そう言ってもらえるなら、俺も、少しは罪滅ぼしが出来たのかもな」

 

フッと笑みを浮かべると、アザゼル先生は空を見上げた。

 

「……雨が降ってきた。俺は帰るぜ。それじゃあな」

 

右手で目元を拭うと、アザゼル先生はその場を後にしていった。

 

「……上手くいって良かった」

 

俺は空を見上げた。

 

そこには、晴天が広がっていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

その後、朱乃とバラキエルさんはお弁当を食べながら長年で出来た穴を埋めるように語り合ったらしい。

 

『昴君もヒトが悪いわ』

 

帰ってきた朱乃から唇を尖らせながら文句を言われてしまった。俺は誠心誠意頭を下げ倒して朱乃に謝り倒し、最後には許してもらった。

 

北欧神話との会談と、それを阻むロキの撃退。全てが犠牲者を出す事無く終わり。一安心……だったのだが…。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

 

ロスヴァイセが両膝を床に付き、床を叩きながら号泣していた。

 

理由を聞くと、あの後、一度北欧に戻り、正式に辞令を受けて駒王町にやってきた。だが…。

 

「あのクソジジイィィィィッ! もっともらしい事言っておいて! 要は私はお払い箱だったのねぇっ!!!」

 

絶叫するロスヴァイセ。

 

辞令を受けてから北欧を発つ当日、横に新しいヴァルキリーを侍らせているオーディン様を目撃したらしい。詳しく話を聞いた所、そのヴァルキリーは前々からオーディン様がお付きとして口説いていたヴァルキリーだったらしい。

 

要は、ロスヴァイセの異動はそのヴァルキリーを新しくお付きにする為の口実だったらしい。

 

「うぅ、お払い箱になって左遷されるだなんて、今頃、向こう(北欧)では笑い者だわ。私はこれからどうしたらいいの…」

 

おいおいと涙を流しながら悲観するロスヴァイセ。そこへ部長が歩み寄り、ロスヴァイセの肩に手を置いた。

 

「――」

 

「――」

 

部長とロスヴァイセが何やら話をしている。部長が取り出した書類をロスヴァイセに渡しながら何やら説明している。涙目だったロスヴァイセが書類を読みながら説明を受けると、何やら考え出す。迷った素振りをするロスヴァイセに部長が畳みかける。すると、ロスヴァイセは深く考え、そして頷いた。

 

そして…。

 

「元ヴァルキリーのロスヴァイセ。本日付でグレモリーさんの眷属となりました! 以後、よろしくお願いします!」

 

こうして、紆余曲折?の末、ロスヴァイセが戦車『ルーク』、グレモリー眷属の最後の眷属になったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





という訳で、原作7巻、この二次の第八章は終了となります。

いやー、長かった…(^-^;)

第八章を投稿し始めたのが約2年と5ヶ月前。更新が滞ってしまい、申し訳ございませんでした…m(_ _)m

投稿を再開し、後1話八章完結の所で再び止まっていたので、とりあえず無事?新年度を迎えましたので、平成が終わる前に投稿です。

一部、原作と変えました。特に、ロスヴァイセがグレモリー眷属入りするところとか、不自然かもしれませんが、ご了承を…(^-^;)

これからも、ちょくちょく投稿出来たらと良いなぁ…。

感想、アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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