投稿します!
番外的な話の言わば後編です。
それではどうぞ!
冥界のグレモリー領の一角にある遺跡にて突如始まった3つの試練。それを乗り越えると、サタンレッドと昴との戦いが始まった。
「くっ!」
その場から真横に飛ぶ昴。すると、先程昴が立っていた所に丸い球体のようなものが飛来する。
――ギュパァァァァン!!!
落下した地面一帯が消し飛んだ。
戦いが始まって約10分。両者は一定の距離を保ちながら戦いを繰り広げていた。
「ほう。あいつを相手によく戦っている」
いつの間にか最奥部にやってきていたサタンブルーこと、アジュカ・ベルゼブブが2人の戦いを観戦していた。
「けど、あの距離じゃサーゼ…じゃなかった、サタンレッドの方が有利よ? あのままじゃいずれ負けちゃうんじゃない?」
サタンピンクことセラフォルー・レヴィアタンが同じく観戦をしている。
「赤龍帝君は懐に飛び込みたくても飛び込めないみたいだねー」
同じく、サタングリーンことファルビウム・アスモデウスが観戦している。
※ ちなみに、3人とも既にマスクを脱いで変装を解いています。
昴は何度かサタンレッドの懐に飛び込もうと試みているが、サタンレッドが操る球体に阻まれ、断念している。
「でもでも! それでもあそこまで戦えるのはすごいよね!」
興奮しながらセラフォルーが言う。
「確か、御剣昴君はカテレア・レヴィアタンとの戦闘経験があったね」
「あーそういえば、彼女の戦い方って、似てたねー」
かつて戦ったカテレア・レヴィアタンとサタンレッドの戦い方はかなり酷似している。その為、昴はすぐにサタンレッドの戦いに対応出来ただが…。
「っ!?」
昴は咄嗟にその場で倒れこみ、正面からやってきた球体をかわす。
単純な数で言えばカテレアの方が多かった。だが、サタンレッドの球体は数こそ少ないが、スピードは速く、精密な動きをしていた。だが、1番厄介なのが、球体1つ1つが滅びの力を有しており、触れればたちまち消滅してしまう。歯を食い縛れば何発か耐えられたカテレアと違い、完全にかわしきらなければならない。
「…ちぃっ!」
――ゴォォォォォォォォッ!!!
隙を付いてやや上方から赤龍砲を放つが…。
――ギュパァァァァン!!!
避けられてしまうか滅びの球体によって消し飛ばされてしまう。
「っ!?」
ふと気が付くと、昴の周囲を滅びの球体が包囲していた。そして、包囲していた球体が一斉に昴に襲い掛かる。
「…くっ!」
身体を小刻みに動かしながらその球体をかわす。隙を付いて地面に急降下、着地と同時にバク転を繰り返しながら球体をかわしていき、最後のバク転で大きく距離を取って着地する。
「…ふう」
距離を取って攻勢をやり過ごし、一息吐く。
「(兎にも角にも、懐に飛び込まなければ埒が明かない。とは言え、今の俺では正攻法では難しい…)」
一部の隙も無いサタンレッドの魔力の操作技術の前に、現状がジリ貧である事を理解する。
「(…あまりやりたくはないが、これしかないか…)部長、そして、他の魔王の御三方。これから少々荒っぽい事を致しますので、ご容赦ください」
そう告げ、昴は二天を両手に発現させ…。
――ドォンドォンドォンドォンドォン!!!
四方八方に赤龍砲を斉射し始めた。赤龍砲はあらゆる所に着弾し、爆発。武舞台と見物席一帯が爆煙と砂埃で包まれる。
「きゃっ!」
爆発を受けてリアスが右腕を顔を庇いながら小さく悲鳴を上げる。
「失礼致します」
サタンイエロー……いつの間にかマスクと衣装を脱いでいたグレイフィアがリアスの肩に手を置き、その場から転移、他の3人の魔王の傍まで移動した。
「(目くらましか…)」
サタンレッドは瞬時に昴の意図に気付いた。
「忘れてはいないかい? ここは室内空間ではなく、天井のない武舞台であることを…」
その場から上昇し、煙が立ち上る空間の外に移動した。
「さて、ここから何を仕掛けてくるのかな?」
次に昴がどのように仕掛けてくるか、期待に胸を膨らませながら待ち受けるサタンレッド。
――ゴォォォォォォォォッ!!!
「むっ?」
その時、煙の中から一筋の赤龍砲が飛んできた。
「おっと」
だが、サタンレッドはすぐさまその場から移動し、それをかわす。するとそれに合わせて赤龍砲をかわすサタンレッドに追いかけるように次々と斉射されていく。
「なるほど、煙で姿を隠しながらのこの砲撃。出所とタイミングを計れないこの状況では有効的ではある。だが…」
――ギュパァァァァン!!!
「これだけ離れていれば、例え出所とタイミングを計れずとも、防ぐ事は容易いよ」
斉射された赤龍砲に滅びの球体をぶつけ、消し飛ばした。その後も、かわせるものはかわし、かわしきれないものは消し飛ばしながら赤龍砲をやり過ごすサタンレッド。
「さてさて、このままそれを続けても私は捉えられ――」
ここでサタンレッドは言葉を止める。
「(おかしい…)」
ここで1つの違和感を覚えた。このまま砂煙に隠れて赤龍砲の斉射続けた所を続けた所で無駄だと言う事に昴が気付かないはずがない。
「(それに、この砲撃も妙だ。確かに場所を変えて斉射をしているが、何処か単調。そして何より、当てようと言う意志を感じない…)」
ならば、昴の狙いは何か…。
「っ!?」
ここでサタンレッドは何かに気付き、ハッと頭上に視線を向ける。すると、そこには拳を構え、今まさにそれを振り下ろそうとする昴の姿があった。
昴は赤龍砲の斉射で武舞台一帯を煙で包み込んだのと同時にサタンレッドより先に上空へと飛んでいた。雲に姿を隠し、予め武舞台の各所に配置しておいたブレイブハートに指令を出して上空のサタンレッドに砲撃をし、その意識を真下の武舞台に向けさせ、機を見てサタンレッドに仕掛けた。
「ハァッ!」
気合いを込めながら昴が右拳を振りぬく。
――チッ…。
振りぬいた右拳は僅かにマスクに掠り、僅かにマスクが千切れる。
「ちぃっ! これもかわしますか!」
「いやいや、今の本当に危なかった。さすがの私もヒヤッとしたよ」
マスクの中で冷や汗を掻くサタンレッド。
「…では、次はこれならどうです?」
――チャリン…。
昴は、左手の鎖のような物を力強く引っ張った。
「むっ?」
すると、鎖はサタンレッドに銅を縛るように巻き付いた。
この鎖は、昴のブレイブハートの1つの岩打武反魔の鎖であり、仕掛ける際に第2の仕掛けとして予め発現させておいたものである。
鎖がサタンレッドに巻き付いたのを確認すると、昴はそのまま拳を振るった勢いのまま急降下し、サタンレッドを未だ煙が舞う武舞台へと引きずり込んだ。
「…っと」
何とか態勢を整え、武舞台に着地をするサタンレッド。周囲は砂煙に包まれており、1メートル先の景色も満足に見えない。
「(さてどうするか…)」
自身に縛り上げていた鎖を外し、思案するサタンレッド。
「(再び上空へ? …いや、狙い撃ちにされる可能性がある。ならば、このまま昴君を攻撃……なるほど、さすがにこの状況で居場所を晒す程愚かではないか…)」
昴の気配を探ったが、巧みに気配を消している為、捉える事は出来なかった。
「(…ならば、まずは辺りを覆っているこの煙を何とかしようか)」
サタンレッドが両腕を広げ、滅びの球体を複数発現させ、周囲に展開させる。すると、その球体が次々と砂煙を消し飛ばし始める。やがて、全ての砂煙を消し飛ばし、武舞台一帯の見晴らしが良好となった。
「さあ、どこから来るのかな?」
何処から何を仕掛けるか、周囲を警戒するサタンレッド。
――ガバァッ!!!
昴が現れたのは、真上からでもなく、赤龍砲の斉射で崩壊した武舞台の瓦礫でもなく、サタンレッドの足元、地中からであった。
「っ!?」
下からの攻撃は予想外であった為、サタンレッドは不意を突かれてしまう。
「(地に引きずり込んだ時点で地面に潜っていたのか! だが、まだ間に合う!)」
サタンレッドは不意を突かれながらも滅びの球体を自身と昴の拳の間に割り込ませる。
「(よし、間に合――)」
――バキィッ!!!
だが、昴の拳はその滅びの球体が割り込んでもお構いなしに突き上げた右拳を振りぬいた。拳は、滅びの球体を打ち砕きながらサタンレッドの顎を捉えた。拳の直撃を受けたサタンレッドはそのまま真上へと跳ね上がった。
「まだまだ!」
昴はそのままサタンレッドと同じ高さまで上がると、身体を横回転させながら右足を構え…。
――ゴッ!!!
そのままサタンレッドの腹目掛けて振りぬいた。
――ドォォォォォン!!!
蹴りを食らったサタンレッドは身体をくの字の曲げながら瓦礫まで吹っ飛んでいった。
「うそっ!? 攻撃を当てちゃった!?」
一連の戦いを観戦していたセラフォルーが思わず立ち上がった。
「すごーい。本当に一撃…いや、二撃も当てちゃったよ。すごいねー」
言葉から分かりづらいが、ファルビウムも内心でこの事実に驚いていた。
「……これはさすがの私も驚いた。あいつに一撃当てた者など、先の旧魔王との戦い、天使と堕天使との戦争を遡っても数える程しかいなかったはずだ」
苦笑しながら昴の偉業を称えるアジュカ。
瓦礫に埋もれたサタンレッド。瓦礫を手で除けながら立ち上がった。
「攻撃を受けてやるとは、随分と気前がいいのだな」
アジュカが皮肉を込めながら言い放つ。
「いやいや、そのつもりはさらさらなかったよ。…っ」
立ち上がったサタンレッドだったが、ダメージが残っており、僅かによろけた。
「それにしても、私の滅びの力に触れても消し飛ばないどころか、逆に打ち砕いてしまうとは…、それは、ブーステッド・ギアではないね?」
サタンレッドは昴の右拳……明らかにブーステッド・ギアのカラーの赤ではなく、白銀の籠手が装着されていた。
「ええ。これは俺のブレイブハートの武器の1つである閻王。この神器の特徴は、絶対に壊れない、つまりは頑丈な事です」
「…だが、保証があった訳ではないだろう? もし、目論見が外れれば…」
「その時は拳が消し飛んでいたでしょう。ですが、当たれば大きいです。初見であれば不意のさらに不意を突けますし、事実、こうして一撃撃ち込めた訳ですし」
「ハッハッハッ! 確かにね」
昴の回答に満足したのか、サタンレッドは笑った。
「さて…、腕試しという事なら、今ので充分合格なのだが…、このまま終えてしまってはね。……グレイフィア」
「はい」
「リアスを連れて、この遺跡の外まで移動してくれないか?」
「えっ?」
唐突にそんな頼みごとをするサタンレッド。とうのリアスは突然の事に思わず声が出る。
「? …それはいったいどういう…っ!? まさか…!」
突然の提案にグレイフィアは一瞬疑問を抱いたが、すぐにその意図を理解した。
「頼まれてくれるかい?」
「……ハァ、仕方ありませんね」
溜め息を吐きながらそれを了承し、見物席から立ちあがると、リアスの傍まで移動した。
「…2つ、言わせていただきます。1つは、ほどほどに。2つ目は、後のお説教はいつもの倍させていただきます」
「ちょっとグレイフィア、いったい何を――」
依然として状況が理解出来ないリアス。言葉を言い終える前にその場から転移していった。
「アジュカ、セラフォルー、ファルビウム。強力な結界を張ってほしい。どれだけ力を行使して壊れず、力が外に漏れない強力な結界を…」
「…ねえ、本気なの?」
「やめときなよー」
これから何をしようとするのか理解しているセラフォルーは躊躇い、ファルビウムは止めようと説得する。
「いいのを貰ってプライドに障ったか?」
「それもないとは言わないが、それ以上に、私も本気で戦ってみたくなったのだよ。彼にお披露目するいい機会でもあるし、たまには『あれ』になっておかないと、いざという時に錆びついてしまっていては困るからね」
皮肉を交えるアジュカ。サタンレッド……サーゼクスは薄い笑みを浮かべながら答えた。
「そうか。……セラフォルー、ファルビウム」
「……もう、私知らないんだからね☆」
「僕は止めたからねー」
3人の魔王が手を上に翳すと、そこから魔方陣が現れた。すると、幕のようなものが現れ、遺跡一帯を覆った。
「準備は出来た。これで力が漏れる事も、外から何人もこの遺跡には入ってこれない」
「すまない、ありがとう」
結界を張り終え、報告すると、サーゼクスは礼を言った。
「昴君。これから見せるのは、本気で戦うと決めた相手に見せる真の姿だ。私が何故ルシファーの名を冠する事が出来たのか…、その答えがこれだ」
そう言うと、サーゼクスは静かに魔力を高め始めた。すると、滅びの魔力がサーゼクスの身体から発生し、身体を紅く染め始めていった。
「っ!?」
すると、遺跡全体が震動を始めた。武舞台や見物席の壁や床にヒビが入り始めた。
「…ぐっ!」
次の瞬間、昴の身体が重くなる。だが、昴はすぐさま理解した。これは、何か特殊な魔術や神器で身体を重くされているのではなく、サーゼクスから放たれる魔力の波動とプレッシャーによるものであると。
やがて、滅びの魔力がサーゼクスを包み込むと、膨大な魔力が辺り一帯を包み込んだ。
「……っ! これは…!」
震動が収まり、静寂が訪れると、昴は目を見開く。昴の目の前にいたのは、まるで膨大な滅びの魔力を人型に押し込めた存在であった。
『フフッ、驚かせてしまったようだね。これが私の全力で戦う時の姿だ。この状態になると、私の意志とは関係なしに滅びの魔力を周囲に拡散してしまう。その為、特殊なフィールドか特殊な結界を用意しなければならないのだが、今回は都合よく魔王が3人もいたのでね、この姿を見せる事が出来た』
「…っ」
淡々と言葉を放つ滅びの力そのもの言えるサーゼクス。だが、彼が一言発する度に昴の全身から冷や汗が滴った。そして昴はすぐさま理解した。
――目の前の相手は、自分を遙かに凌駕した存在であり、万が一、億が一の勝機もない相手であると…。
「……スー…ハー…」
昴は1度目を瞑りながら大きく深呼吸をし…。
――スッ…。
目を開け、構えを取った。
『ほう、その目、覚悟が出来たみたいだね。何か突破口でも見つけたのかな?』
「…いえ、何も。正直、倒す術などないのではと思っている程です」
サーゼクスの問いに、昴は自嘲気味に笑みを浮かべながら答えた。
『ほう。…ならば、未だ戦意を保っていられるのは何故なんだい? 例え逃げの選択をしても、君を咎める者も嘲笑う者もここにはいない。いや、冷静に考えるならその選択肢しかないと思うのだが?』
既に、試練の合格は言い渡されている。この戦いは何かを守る戦いでもなければ、目の前の相手は憎き仇でもなければ討つべき敵でもない。勝てないと分かっている戦いを続ける理由がない。
「そうですね。理由を言うなら、わざわざ本気の姿になっていただいたのに、一度も拳を交えずして退くのは失礼と思ったというのが1つ。もう1つは、例え、目の前の相手が僅かな勝機すらない相手だからと言って、戦いをやめる理由にはならない、と言うのが理由です」
真剣な表情と眼差しで昴は言い放った。
『フッフッフッ、ハッハッハッ!』
回答を聞いてサーゼクスは大きな笑い声を上げた。
『いやすまない。断っておくが、これは君を馬鹿にしての笑いではないからね』
1つ謝罪をしながらサーゼクスは昴に向き直る。
『実に満足のいく答えだった。君のような者がリアスの眷属で良かった。これからも末永くリアスの傍にいてほしい』
「仰せのままに」
『…っと、結界が張ってあるとは言え、あまり時間はかけられない。…では、始めよう』
「はい!」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!』
昴は返事と同時に限界まで自身の倍化を始めた。
『相棒、そこまで一気に倍化しては数分ともたんぞ? これでは先のロキとの一戦の二の舞になるぞ』
目一杯限界まで倍化させた昴に対し、ドライグが懸念を示す。
「百も承知だ。だが、ドライグも分かっているだろう? サーゼクス様は余力を残して戦える相手ではないと言う事を」
『むぅ』
「こうなったら当たって砕けろだ。この数分に全てを賭けるぞ」
『フッ、そこまで覚悟しているのなら何も言わん。存分にやるといい』
覚悟を決めた昴を見て、ドライグも覚悟を決めた。
「行くぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!!」
地を蹴り、昴はサーゼクスへと向かっていった。
『存分にかかってくるといい。未来の我が義弟。そして、未来の――』
※ ※ ※
「ハァ…ハァ…!」
リアスが遺跡の最深部を目指して必死に走っている。
グレイフィアによって遺跡の外に転移させられたリアス。直後、遺跡を幕で包み込むような結界が張られ、侵入はおろか、中の様子すら分からなくなってしまった。グレイフィアに結界の解除を頼んだが、曰く、これはかなり特殊で高度な結界である為、グレイフィアでも解除はおろか、中に入る事も出来ないとの事で、結界の外で昴の心配をしながら待っていた。
遺跡の外に転移させられて10分程経つと、遺跡を覆っていた結界が解かれ、リアスはすぐさま遺跡の最深部へと向かった。
「昴!」
最深部に辿り着くと、そこは至る所に破壊や消滅の後が残り、最初に足を踏み入れた時に景色の面影はなかった。
「っ!?」
そして、かつて武舞台のあった中央にて、仰向けで倒れている昴の姿を見つけた。
「昴、大丈夫!? しっかりして!」
慌てて昴の傍まで駆け寄ったリアスは昴の上半身を抱き上げ、必死に声を掛ける。
「うっ…」
リアスが声を掛けると、昴は僅かに声を漏らしながらそっと目を開けた。
「ぶ…部長…?」
「良かった…、目を覚ましてくれて…」
目を開け、自分を呼んだ昴に安堵したリアスはその目に涙を浮かべながら昴を抱きしめた。
「~~っ!」
身体を動かそうとした昴。だが、その瞬間、身体に激痛が走り、顔を歪める。
「どうしたの!? 何処か怪我でもしているの? すぐにアーシアを…」
「…いえ、大丈夫です。限界まで倍化して戦った反動がきただけですから」
そう言って、昴はゆっくり身体を起こした。
「そう? …それにしても、とても激しい戦いだったみたいね」
辺りの惨状を見てリアスが言う。
「ええ。全力の全力で戦わなければならない相手でした」
「あなたがそこまで言うなんて。…それで、戦いはどうなったの?」
そう尋ねると、昴は肩を竦め…。
「俺の負けです。言い訳が入り込む余地のない、完全な敗北です」
そう答えた。
「…そう」
昴の答えを聞き、残念そうな表情をするリアス。
「…それにしても、サタンレッドと言ったかしら。何者なのかしら? 滅びの力を使った所を見ると、バアル家の出だとは思うのだけれど…」
「いや、部長、あの方は……ま、いいか」
相変わらずサタンレッドの正体に気付かないリアス。昴は教えようとしたが、やめた。
「(…それにしても、あれが魔王か、今の俺では歯が立たなかった。だが、もし、またこのような機会があるなら、その時までにもっと腕を磨いておこう…)」
昴は、自分と魔王との力の差を実感しつつ、また次の再戦を望むのであった。
※ ※ ※
「戯れが過ぎたな」
場所はサーゼクスの住まう一室。アジュカがワイングラスにワインを注いだ。
グレモリー領の遺跡での試練が終わり、最後、昴とサーゼクスの戦いが終わると、リアスが遺跡の最深部にやってきたのを確認して4人の魔王はそれぞれ転移していった。
「あの力は、冥界が危機に瀕した時にのみ使うと決めていたはずだ」
「グレイフィアにもこってり叱られてしまったよ。…だが、あの姿にならなければ、勝てたとしてもかなり苦戦を強いられていただろう」
アジュカがワインを注ぐと、サーゼクスがアジュカのワイングラスにワインを注いだ。
「だからと言って、あの力を使う事はないだろう。……しかし」
「ああ。昴君はあの姿の私を前にしても1歩も引かず、あそこまで食い下がって見せた」
1口ワインを口にし、サーゼクスは思い出すように語った。
「決着も、彼の時間切れによるものであったらな。…もっとも、例え、あの力をもっと長い時間使い続けられたとしても、お前の勝利は揺るがなかっただろうがな」
そう言って、アジュカもワインを口にした。
「彼の実力もそうだが、それ以上にあの洞察力と判断力はかなりのものだ。歴代最強の白龍皇を退け、悪心ロキを倒したと言うのも頷ける。後10年…いや、5年もあれば、追い抜かれてしまうかもな」
「ハハッ、かもしれないな」
「そうなれば、お前の立場も危ういな。無論、この俺もだがな」
微笑を浮かべながらアジュカはワインを口にした。
「彼が私より力を付け、さらには民衆が彼を魔王に望んだのなら、彼が魔王になるだけさ」
「ほう。転生悪魔が魔王となったなら、異例中の異例だな」
「今更だろう。我々とて、魔王の血筋ではないのにも関わらず、魔王を名乗っているのだから」
「違いない」
再び2人は談笑し、ワインを口にした。
「…さて、今回の試練、趣旨は少し変わってしまったが、2人は問題なくクリアした。そう遠くない内に、2人の晴れ姿を見たいものだな」
サーゼクスはワイングラスを掲げ、ワイングラスに昴とリアスの未来を写し、乾杯したのだった……。
続く
勢いのまま、連続投稿です。
何気なくランキングを覗いたらこの二次が日間ランキングに載っていてビビりました…(;^ω^)
おかげでテンションを維持したまま連続投稿出来ました…(^-^)
…まあ、そもそも最後に投稿したのが今年の年始で、半年以上も放置していたのは本当にすみませんでした…m(_ _)m
次回の投稿は未定ですが、今年中に必ず投稿出来るよう精進致します!
感想、アドバイスお待ちしております。
それではまた!