ハイスクールD×D~転生せし守り手~   作:bridge

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投稿します!

アイスが美味い…(´▽`*)

それではどうぞ!



Life.118~八坂姫の救出、終わる修学旅行~

 

 

 

「ゴホッゴホッ!」

 

京都の疑似空間から脱出した曹操達。直後、曹操が吐血する。

 

「大丈夫か、曹操!?」

 

その姿を見たジークフリートが心配そうに尋ねる。

 

「良いのを2発も喰らってしまったからな。何とか外したが、1発目の腹への一撃が重症だな。折れた肋骨が肺に突き刺さっている」

 

「すぐに治療をしよう。今、回復系の神器(セイクリッドギア)使いを呼ぶ」

 

重症と見たゲオルクがすぐさま治療班の手配に回った。

 

「にしても、とんでもねえ強さだったな、赤龍帝」

 

「ホント。強い事は知っていたけど、まさかあそこまでとはねえ。私なんて曹操がいなかったら死んでたわ。よくあんなのと1人で戦えたわね」

 

昴の強さを体感したヘラクレスとジャンヌダルクが肩を竦めた。

 

「ああ。過去に1度倒した事もあって、どこか彼を軽視していたようだ。結果この様だ。俺は戦いでも戦略でも敗北した。言い訳の入り込む余地がない」

 

完全に敗北を認めた曹操は、両手をお手上げとばかりに上げた。

 

「今後も赤龍帝は僕達の邪魔をしてくる事は明白だろう」

 

「間違いなくな。全く、あれと再び相対しなければならないとはな。…恐ろしい限りだ」

 

「まさか、心が折れただなんて、言わないよね?」

 

弱きとも取れる言葉を吐く曹操にジークフリートが詰め寄る。

 

「まさか。…意地でも彼を倒してみたくなったよ」

 

曹操はギラついた目付きでニヤリと笑みを浮かべたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

戦いが終わり、残されたのは昴達と初代孫悟空。英雄派との戦いは昴達の勝利で終わり、八坂姫も無事救出……したはずだったが…。

 

「母上! 目を開けて下され!」

 

未だ、九尾の狐の姿のまま、目を覚まさない八坂姫に泣きながら声を掛ける九重。

 

「ロスヴァイセ」

 

「…魔方陣を壊す事で、八坂様を支配する魔法は解除出来ました。ですが、八坂様自身にかけられた魔法がまだ解除出来てないようです」

 

ロスヴァイセに様子を尋ねた昴。返ってきたのはそんな言葉だった。

 

「むぅ。厄介なもの(魔法)を残していきおったのぉ。儂の仙術で邪な気を解くか、はたまたかけた張本人をとっ捕まえて解かせるか、いずれにしても時間がかかるのぉ」

 

初代から見ても早々に解決出来る手段を持ち得てはいなかった。

 

「(病魔なら俺の治癒術で何とか出来るが、これは病魔ではない…)」

 

昴が前世で会得した五斗米道の医術。氣さえ足りればどんな病魔でもたちどころに消し飛ばせるが、魔法には効果がない。

 

「母上…。もう我が儘は言いませぬ。嫌いなお魚も食べます。勉強だって励みます。ですから、目を覚まして下され…!」

 

嗚咽しながら懇願する九重。

 

『…っ』

 

そんな九重を見て心苦しくなる昴達。目の前で泣き崩れる彼女を救ってあげたい。だが、その解決方法が思い付かない。

 

『何やらお困りのようだねぇ』

 

「っ!?」

 

その時、昂の内側から何かが話しかけてきた。ドライグの声ではない。その正体は…。

 

「刃か…」

 

『あの霧使い、なかなかに面倒な魔法を残していったみたいだねぇ』

 

昴の身の内に居座っている刃だった。

 

「何の用かは知らないが、今はお前に構っている暇はない」

 

この場の空気にそぐわないテンションで語り掛けて来る刃に、鬱陶し気にあしらう昴。

 

『やれやれ、そんな口の利き方していいのかい? 折角、この狐を助ける手助けをしてあげようと言うのに…』

 

薄く笑いながら助力をすると口にする刃。

 

「っ!? …どういう風の吹き回しだ」

 

『ただの気まぐれだよ。表にも全く出れないし、要するに暇なのさ。…ま、君の身体と神器(セイクリッドギア)に住まう宿代、とでも思ってくれればいいよ』

 

「…」

 

そんな感じに軽い口調で答える刃。正直、昴は刃を完全に信用している訳ではない。だが、今この場で打てる手段もないのも事実。

 

「…分かった。お前の力、貸してもらうぞ」

 

『そうこなくちゃ♪』

 

渋々であるが、昴は刃の力を借りる事とした。

 

「それで、どうすれば八坂姫を助けられる?」

 

『方法はそこの孫悟空の言った通り、外部から強引に解術するか、術者を連れて来て解かせるか…』

 

「…」

 

『それが叶わないなら、この狐の内部に潜り込んで原因の元を直接取り除けばいいのさ』

 

「内部に潜り込んで?」

 

3つ目の方法を聞かされた昴が詳細を聞き返す。

 

『外部から手が出せない魔法でも、内部からなら解決出来る。もちろん、ものによってはそれでも対処出来ないものもあるが、あのゲオルク(小僧)にそんな高度な魔法はまだ使えないだろうから、それで解決出来るだろう』

 

具体的な説明を始めた。

 

「どうやって八坂姫の内部に入るんだ?」

 

『俺が送り込んでやるさ』

 

「お前が?」

 

『俺が魔法でお前の魂をこの狐の内部に送り込んであげるよ。中に入ったら君が原因の元を駆除すればいい』

 

次に内部への侵入方法を尋ねる昴。刃は自らが行うと言った。

 

「ドライグ」

 

『ふむ、確かに理に適った方法ではある』

 

話を聞いていたドライグに意見を求めると、ドライグも一理ありと頷いていた。

 

『ただし、この方法にはリスクが1つだけある。原因の元である魔法は当然、取り除かれる事を拒み、攻撃してくる。肉体と違って魂は言わば、剝き出しの状態だ。現実では掠り傷程度の傷でも致命傷になり得る可能性がある』

 

「…」

 

『つまり、下手をすれば魂が消滅…なんて事にも成りかねないって事さ』

 

刃はこの方法を行う事のリスクを説明する。

 

「…フッ、要するに、大した問題ではないって事だな」

 

それを聞いて昴は一笑の下、頷いた。

 

『大した覚悟だ。相変わらず……いや、それが君と言う男か…』

 

そんな昴を見て刃も一笑した。

 

「決まりだな。ならすぐにでも準備を始めろ。…皆、聞いてくれ!」

 

話が決まった昴は今までの刃とのやり取りを皆に説明をした。

 

「…うむ。話は分かったが、奴を信用出来るのか?」

 

同じく刃に不信感があるゼノヴィアが怪訝そうに尋ねる。

 

「信じる他はない。…ま、奴もここで何かを企む事はしないだろう」

 

「面白い方法を思い付いたもんじゃ。そんな方法、普通思い付かんぜぃ」

 

初代もこの方法論に感心していた。

 

『準備が出来た。始めるよ?』

 

「頼む」

 

「スバルさん、頑張って下さい!」

 

声援を贈るアーシア。その声が耳に届くと同時に昴の意識が遠くなっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

「……ん、ここは?」

 

気が付くと、昴は大きな屋敷の廊下のような所に立っていた。

 

『どうやら、無事、入り込めたようだね』

 

同時に刃からの声が聞こえた。

 

『そこは九尾の狐の内部。周囲の景色はその内部を具現化したものだよ』

 

昴の前方には人1人がすれ違える程度の広さが廊下が続いていて、各所に障子の襖があった。

 

「…」

 

目の前の1つの襖を昴は開けてみた。

 

『母上ー!』

 

襖を開けると、今より僅かに幼い九重が毬のような物で、人の姿の八坂姫と遊んでいる姿があった。

 

『それは九尾の狐の記憶の一部だ。今立っている所は内部の中でも比較的浅い所、もっと深奥に進めばこの狐を縛る魔法の大本があるよ』

 

「分かった」

 

その言葉を聞き、昴は襖を閉め、奥へと進んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

奥へ奥へと足を進める昴。

 

「……あれか」

 

やがて辿り着いたのは、今まで見た襖とは違って異様な雰囲気を醸し出している襖があった。襖の至る所に札のような物が張られており、如何にも厳重にこの襖を厳守しているのが分かる。

 

 

――バチッ!!!

 

 

「…っ」

 

襖を開けようとした昴だったが、襖に触れた瞬間、激しい電流のようなものがその手に走った。

 

「…やはり、簡単には通らせてはくれないか」

 

そう呟き、昴は村雨を発現させた。

 

『止めておきな。言っただろう? ここは九尾の狐の内部を具現化した所。何て事ないものでも迂闊に壊せば本体に影響が出かねない。しかも、深奥の扉となれば猶更だ』

 

「…だったら、どうすりゃいいんだよ?」

 

『…ハァ、やれやれ、どうして君は魔法の適性がないのかねぇ』

 

呆れる刃。

 

「ないものねだりしても始まらないだろう。…仕方ねえ、無理やりこじ開けるか」

 

覚悟を決めた昴は再び襖に手を伸ばす。

 

『止めておけぃ』

 

その直前、昴の耳に初代の言葉が聞こえた。

 

『今のお前さんは魂が剥き出しの状態じゃぜぃ? 下手に傷を受ければ致命傷になりかねんわい。…待っとれ、その程度の扉なら儂が外から開けてやるわい』

 

そう言って、初代は何やら詠唱のような始める。それが唱え終わると…。

 

 

――スー…。

 

 

そっと自動的に襖が左右に開いたのだった。

 

「ありがとうございます。初代様」

 

感謝の言葉を述べた昴は中へと足を踏み入れた。

 

「…」

 

襖の中は薄暗く、何やら異空間のようなものが広がっていた。

 

「…あれか」

 

暫し中を歩くと、前方に八坂姫を発見した。

 

八坂姫は背後には蜘蛛の糸のようなものがあり、それに貼り付けにされていた。

 

「…っ」

 

すぐさま八坂姫の拘束を解こうとした昴だったが…。

 

 

――ガチィッ!!!

 

 

咄嗟に昴は村雨を真上に振り上げる。そこには、全長3メートルを超えるであろう大きな蜘蛛が、昴に噛み付こうしていた。

 

『ギギギギッ!!!』

 

噛み付きを阻まれると、蜘蛛が奇声を上げながら、素早く脚を動かして昴から離れていく。

 

『それが九尾の狐を縛る魔法を具現化した姿だ』

 

「つまりこいつを始末すれば良いんだな?」

 

昴は村雨を構えた。

 

『ギギギギッ…』

 

警戒する蜘蛛。おもむろに、昴に向かって糸を吐き出した。

 

「こんなもの…っ!?」

 

斬り払おうとした昴だったが、糸は村雨の刃が当たるとビヨンと伸びた。

 

「…ちっ!」

 

糸はそのまま昴の全身に拘束するように絡みついた。

 

『馬鹿だねえ。蜘蛛の糸は強度もそうだが、伸縮する性質を持ち合わせているから、生半可な力で手を出せばそうなる』

 

呆れ口調で言う刃。

 

『ギギッ!』

 

動きを封じた蜘蛛は、周囲をカサカサと動き回りながら昴に近付いて来る。

 

『ギギギィ!』

 

やがて昴目掛けて大きな口を開けて飛び掛かった。

 

「おぉぉぉぉー--っ!!!」

 

 

――ブチブチブチ!!!

 

 

咆哮を上げながら昴が村雨を持った右腕を振るうと、拘束していた蜘蛛の糸はブチブチと音を立てながら破れるに切れていった。

 

 

――ズシャァッ!!!

 

 

『ッ!? ギィィィィッ!!!』

 

糸が切れると、無防備に飛び掛かった蜘蛛の胴体を斬り裂いた。

 

「蜘蛛の糸ごときで俺が縛れるか」

 

そう言って自身を拘束する残りの蜘蛛の糸も切っていった。

 

『ギィッ!?』

 

その姿に恐れをなした蜘蛛は我先にと昴から逃げていく。

 

「逃がすかよ」

 

 

――ズババババッ!!!

 

 

逃げる蜘蛛に瞬時に距離を詰めた昴は村雨を無数に振るい、蜘蛛を細切れにする。

 

「消えろ」

 

 

――ゴォォォォォッ!!!

 

 

細切れにした蜘蛛を最後、赤龍砲で塵一つ残さない程に消し飛ばした。

 

「…ふぅ」

 

八坂姫を縛る魔法の大本を片付けた昴は一息吐くと、八坂姫を拘束する糸を斬り、その身体を抱き上げた。

 

「むっ、むぅ…」

 

昴の腕の中の八坂姫が目を覚ました。

 

「…お、主は…?」

 

「お救いに上がりました、八坂姫。詳しい話は外にてさせていただきます」

 

そう語りかけ、昴はその部屋を後にしたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「母上!」

 

気が付くと、昴は表に戻っていた。

 

「く、…の、う」

 

八坂姫は既に人間の姿に戻っており、目を覚ましていた。

 

「母上…! 良かった…、良かったのじゃ…!」

 

無事、目を覚ました母親の姿を見て、九重は母の手を握りながら涙を零していた。

 

「うぅ…! 良かったですぅ…」

 

その姿に感動したアーシアも涙を流していた。

 

「これで万事解決じゃ。よーやった、赤龍帝」

 

初代が昴に声を掛ける。

 

「……ふぅ、今度こそ、終わったか」

 

疲労困憊とばかりに昴は大きな安堵の溜息を吐いた。

 

今度こそ、全て解決したのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

全てを終えた昴達は元の世界へと帰還すると、宿泊しているホテルの屋上に立っていた。

 

「戻ってきたな。よくやったお前ら。救護班! グレモリー眷属とイリナ、匙の治療だ!」

 

アザゼルが矢継ぎ早にスタッフに指示を出していく。

 

「元ちゃん、大丈夫!?」

 

「元士郎、怪我はない!?」

 

屋上で待機していたシトリー眷属達が匙の下に駆け寄る。

 

「見ての通り、無事だよ。ただ、もうヘトヘトだ…」

 

その場で座り込みながら心配するシトリー眷属達に笑顔で応える匙。

 

「…」

 

問診を終えた昴が周囲を見渡すと、木場は救護スタッフの問診を受けており、アーシア、ゼノヴィア、イリナの教会トリオはそれぞれ疲労困憊の表情を浮かべるも笑顔を浮かべながら話をしている。

 

「それでは――」

 

ロスヴァイセは戦後処理の状況確認をしていた。

 

「ご苦労さん」

 

昴にアザゼルが肩に手を置きながら、労いの言葉をかける。

 

「リアス不在中、よく(キング)を務めあげた」

 

「…リーダーの曹操を始め、幹部連中を捕縛はおろか、討ち取る事も出来ませんでした」

 

「高望みし過ぎだ。元より不在のメンバーが多いんだ。そんな中、誰1人欠ける事無く、九尾の御大将を救い出し、英雄派の連中を撃退出来た。それだけでも充分過ぎる戦果だ」

 

「そう…ですか…」

 

曹操達を取り逃がした事に悔しさを覚える昴だったが、アザゼルは充分だと励ます。

 

「後の処理は俺達に任せろ。お前はもう休め」

 

そう言って昴の肩から手を放し、アザゼルは再び指揮を執り始めた。

 

「…」

 

昴はそっと踵を返し、ホテル内へと足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…」

 

ホテルの階段を降る昴。

 

「…っ」

 

階段を降りて暫し通路を歩いていると、突如、壁にもたれ掛かると、その場で壁を背に座り込んでしまった。

 

「やっべ、もう足に力が入らねえ…」

 

足だけでなく、全身に力が入らなくなった昴はその場で項垂れながら呟く。

 

「スバル君!」

 

「おいおい。大丈夫か!?」

 

そこへ、木場と匙がそんな昴を発見し、慌てて声を掛けながら駆け寄ってきた。

 

「……ああ、木場に、匙か」

 

声に気付いた昴が気怠そうに顔を上げた。

 

「…ダメだ。もう1歩動けねえ」

 

「…聖槍の影響だね。あれは肉体のダメージもそうだけど、精神にも大きなダメージを与えると言う話だから」

 

傷は既に完全に癒えている。だが、全身の気怠さと失った体力は戻らなかったのだ。

 

「もう…限界…だ。どっちでも…いい。部屋まで……運んで…」

 

そう言い残し、昴はその場で突っ伏した。

 

「おい!?」

 

その姿を見て匙が慌てて詰め寄る。

 

「スー…スー…」

 

様子を伺うと、昴は寝息を立てていた。

 

「…どうやら、眠ってしまったみたいだね。…っと、部屋まで運ばないと」

 

「任せな!」

 

昴の様子を確認をした木場が運ぼうとすると、匙がその役を引き受け、昴を背中に背負った。

 

「完全に爆睡してやがるぜこいつ」

 

熟睡状態の昴を背負いながら歩く匙。

 

「…それだけ彼に負担をかけてしまったと言う事だね」

 

普段、眠っていても警戒態勢は常に敷いている昴がここまで疲弊させてしまった事に、表情を暗くする木場。

 

「1人で無茶し過ぎなんだよ」

 

背中で眠る昴に抗議する匙。

 

「だけど、スバル君が立てた作戦以上のものを、僕には思いつかない」

 

「うーん、俺もそういうのはからっきしだわ。会長なら何か思い付くんだろうけど…」

 

「今の僕には彼の負担を減らす為の力も知恵も無い。今日ほど自分が不甲斐ないって思った事はないよ」

 

今回の戦いで大きな怪我も負わず、体力は消耗したものの、こうして歩く程度は全く問題ない木場。それだけに、1人で満足に歩けない程に負担を押し付けてしまった昴に対し、罪悪感と無力感が拭えないでいた。

 

「目一杯力を付けて、会長の立てた作戦を正確にこなせればそれでいいって思ってたけど、きっとそれだけじゃダメなんだろうな」

 

匙も思う所があり、これまでの認識を改め始めた。

 

「もっと強くなる。部長の為なのはもちろん、スバル君1人に負担を背負わせない為に…!」

 

「俺もだな。もっと修業も勉強もして、こいつ()に負けねえくらい強くなってやらぁ!」

 

背中で眠る昴に、木場と匙は誓ったのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…フー」

 

3人の様子を物陰から窺っていた初代が煙管を吹かす。

 

「こんな所にいやがったか」

 

そこへ、初代を探していたアザゼルがやってきた。

 

「赤龍帝…、大した奴じゃのう。あの白龍皇を退けたと言うのも納得じゃわい」

 

運ばれている昴を見て初代が褒め称える。

 

「頭もキレるようじゃし、肝も腹も据わっとる。あ奴ほどの者がおるなら、わざわざ儂を呼ぶ必要はあったんかい?」

 

「そう言うな。お前さんが来なかったら犠牲が出ていた可能性もあったんだ」

 

事実、初代が現れる直前まで曹操は退く気は一切なく、もし、初代が現れなければ乱戦となり、犠牲が出ていた可能性が大いにあったのだ。

 

「…ま、儂も天帝からの使者として九尾の姫さん会談の予定じゃったから、構わんかったがのう」

 

再び初代は煙管を吹かした。

 

「…しかし、危ういのう」

 

「危うい?」

 

「白龍皇とは違った意味で危うい。ありゃ、何れどっちかに行き着く(・・・・・・・・・)やもしれん。儂の杞憂ならよいがのう」

 

「…」

 

初代が昴に対して抱いた危惧。その言葉の意味を理解したアザゼルは眉を顰めたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「……ん? ここは…」

 

気が付くと、昴は白い空間内にいた。

 

「あれー…、確か、ホテルに戻って、その途中で力尽きて…」

 

直前の記憶を辿っていく。

 

『やっほー♪』

 

突如、昴の背後から声が聞こえた。

 

「…エルシャ? それと…」

 

振り返ると、そこにはにこやかに手を振るエルシャ。それともう1人、身に覚えのない男が立っていた。

 

『紹介がまだだったわね。彼はベルザード。疲れてる所、ごめんなさいね。夢を介してあなたを呼ばせてもらったわ』

 

横の男を紹介すると、舌をペロッと出したエルシャ。

 

「それは別に構わないが…、ベルザード…ああ、確か、最強の赤龍帝だったか。…で、いったいどういった用向きだ」

 

聞き覚えのあった名を聞いた昴は過去の記憶を辿ってその名を思い出した。

 

『最後の挨拶をしようと思ってね』

 

「最後?」

 

その言葉を怪訝そうに口に出す昴。

 

『ええ。私…、それとベルザードは、神器(セイクリッドギア)から解放されようと思うの』

 

「…それはつまり、逝くと言う事か?」

 

言葉の意味を察した昴が真剣な表情で尋ねた。

 

『そう言う事。と言っても、本当の私達はとっくに死んでいて、ここにいるのは記憶の断片に過ぎないから、あるべき姿に戻るだけなのだけれどね』

 

「…俺の生き様を見届けるんじゃなかったのか?」

 

『始めはそのつもりだったわ。けど、先の戦いを見て、理解したわ。あなたは私…いえ、過去の赤龍帝(私達)とは違うって…』

 

そう言って、エルシャは薄く微笑んだ。

 

『あなたは決して力に飲まれたり溺れたりはしない。何より、あなたは1人じゃない。あなたには、あなたを支えてくれるたくさんの仲間がいる。だから、もう見届ける必要はないわ』

 

「エルシャ…」

 

『まぁ、ホントはあなたを見続けていたら嫉妬しちゃいそうだからってのが、本音なんだけどね』

 

ウィンクをし、意地悪そうに微笑むエルシャ。

 

『ありがとう。私の意識が完全になくなる前に、あなたに会えて良かった。あなたと言う可能性に会えて、良かったわ』

 

感謝の言葉をエルシャは続けた。

 

『ベルザード、あなたも最後に何か語り掛けてあげて』

 

そう促されると、ベルザードは、天を仰ぎ、右拳を突き上げ…。

 

『さらば、友よ』

 

そう一言呟いた。その後、視線を昴に移すと、突き上げた拳を昴に突き出した。

 

「…」

 

「…ベルザード」

 

突き出された拳に、昴は自身の拳をコツンとぶつけた。

 

「…」

 

拳を突き合わせると、ベルザードは満足気に微笑みながら消えていった。

 

『彼も満足したみたいね。…改めて、あなたに会えて良かったわ。ありがとう、御剣昴』

 

その言葉と同時にエルシャの姿が少しずつ薄くなっていった。

 

『…ドライグ』

 

ドライグの名を呼び、エルシャは顔を上げた。

 

『決して満足出来る最後ではなかったけど、あなた共に駆けた赤龍帝としての日々は、かけがえのないものであったわ。あなた共に在れて、幸せだったわ。…ありがとう――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――愛しているわ、ドライグ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉と共にエルシャは消えていった。

 

「…」

 

その場にただ1人残された昴。

 

『相変わらず変わり者達だ。友だの愛だの、全く…』

 

呆れ口調のドライグ。

 

『馬鹿者…共め…!』

 

何処か、震えた声でドライグが言った。

 

「泣いたって良いんだぜ? ここには俺とお前しかいないのだから」

 

『馬鹿者め、俺にはそのような感情は持ち合わせてなどいない』

 

「……そうかい」

 

昴はそれ以上、ドライグに言葉をかける事はしなかった。

 

「(じゃあな、エルシャ、ベルザード。来世では幸せに暮らしてくれ)」

 

上を見上げた昴は、2人の冥福を祈ったのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

修学旅行も最終日。土産屋で京都土産を巡り、遂に京都を離れる時がやってきた。

 

「赤龍帝!」

 

京都駅のホームにて帰りの新幹線を待っていると、九重が母である八坂姫と共に見送りにやってきた。

 

「九重。わざわざ見送りに来てくれたのか?」

 

「当然じゃ! そなたにはたくさん世話になったからのう」

 

「そうか。ありがとな」

 

そう言って、昴は九重の頭を撫でた。

 

「// …また、京都に来てくれるか?」

 

「もちろん。その時はまた京都や、裏京都も案内してくれ」

 

「うむ! 待っておるからな!」

 

返事を聞くと、昴は九重の頭を再び撫でた。

 

「赤龍帝殿」

 

九重との話を終えると、後ろで控えていた八坂姫が昴に話しかけた。

 

「わらわを救ってくれたそなた達には感謝の言葉しかない」

 

「当然の事をしたまでです。全ては三大勢力とあなた方、妖怪達との協力態勢の為、ひいては世界の調和の為…」

 

感謝の言葉を贈る八坂姫に対し、胸に手を当てながら返事をする昴。

 

「無論、そなた達とは協力態勢を敷くつもりじゃ。2度とこの京都を恐怖に包まぬ為にも、この後の魔王レヴィアタン殿と闘戦勝仏殿との会談で、良き関係を築くつもりじゃ」

 

「そうですか。迅速なる御英断に感謝致します」

 

良い方向に話が進み、昴は胸を撫で下ろした。

 

「それと九重の事も…」

 

「?」

 

「数日、顔を合わせなかっただけなのにも関わらず、顔付きが変わっておった。勉学や稽古事にも一層励むようになったのじゃ。聞けばそなたの事を嬉しそうに話すものでな。甘えただった我が娘を良き方向に導いてくれた事、感謝するぞ」

 

「は、母上//」

 

恥ずかしそうに顔を赤らめる九重。

 

「恐縮です。京都を束ねる妖怪の御大将の御息女に対し、出過ぎた真似をしてしまい、申し訳ありません」

 

立場を逸脱した行為である事を自覚していた昴は頭を下げた。

 

「頭を下げずとも構わぬ。…所で赤龍帝殿」

 

「何でしょう?」

 

「子持ちの女には興味はあるかのう?」

 

「?」

 

質問の意味が理解出来なかった昴。

 

「九重に寂しい思いをさせないようにしてきたつもりじゃったが、やはり、時に厳しく、時に優しく接する父親の存在が必要かと思うてのう」

 

「はぁ…」

 

「そこでじゃ、お主、わらわと夫婦の契りを結び、九重の父とならぬか?」

 

「……えっ!?」

 

とんでもない爆弾を落とされた昴が思わず声を上げる。

 

「この通り、九重もそなたに懐いておるようじゃし、わらわ自身も、これまで妖怪達を束ねる事に尽力してきたが、やはり殿方に甘えたくなる事もあってのう。昨日、そなたの腕に抱かれた時、わらわの中の女の部分が高鳴った」

 

「は、はぁ」

 

「齢こそ重ねておるが、この身体はまだまだ男を喜ばせる事は出来ると自負しておるが、如何かのう?」

 

艶っぽい表情と仕草で昴の胸元にそっと触れる八坂姫。

 

「こ、光栄なお話ですが、私はまだ人間で言えば成人すら迎えていない学生の身。何より、下級悪魔の身分でありますので、つまらぬ遺恨を生む結果となります故…」

 

もっともらしい事を理由に断ろうとする昴。

 

「そんな事、つまらぬ些事じゃ。ひと昔前であればそなたの年齢ならとっくに元服。身分にしても、そなたならそう遠くない内に相応の身分に成り上がるじゃろうから問題にはなるまい?」

 

1つずつ逃げ道を塞がれていく。

 

「良いんじゃねえか? 三大勢力と妖怪達との結束を強める為にもよ、一肌脱いでやったらどうだ?」

 

横で話を聞いていたアザゼルがニヤニヤしながら面白半分で背中を押してくる。

 

「(この野郎、他人事だと思いやがって…!)」

 

内心でアザゼルに憤る昴。

 

「は、母上! ななな何を言うておるのじゃ!? ととと突然、ふふ夫婦などと!?」

 

九重が顔を真っ赤にしながら反対してきた。

 

「良いであろう? 九重もかねてより弟か妹が欲しいとせがんでおったではないか?」

 

「た、確かに言いましたが、しかし! いくらなんでも突然過ぎるのじゃ! 何より、夫婦となってしもうたらわらわと赤龍帝が…」

 

顔を赤らめ、チラチラと昴を見つめる九重。

 

カオスな状況となったがここで、新幹線到着のアナウンスが入った。

 

「どうやら時間がきちまったみたいだ。その話はおいおいするとしようぜ」

 

アザゼルが強引に話を切り上げた。

 

「(感謝しろよ?)」

 

「(絶対しねえ)」

 

含みのあるウィンクをしたアザゼルに対し、怒り交じりに目線を逸らした。

 

「それではこれで失礼致します。この後の会談が、我らにとって良き方向に進む事を願っております」

 

そう挨拶をし、昴を荷物を持って到着した新幹線に乗り込んだ。

 

「赤龍帝!」

 

乗車する直前、九重が昴に話しかけた。

 

「絶対また来るのじゃぞ! 絶対じゃぞ!」

 

「約束する。…それと、次からは俺の事は昴と呼んでくれて構わないぜ」

 

「っ!? うむ! またなのじゃ、昴!」

 

その言葉を聞いて顔を綻ばせる九重。同時にドアが閉まり、昴は九重に手を振った。

 

「またなのじゃー!」

 

九重は走って新幹線を追いかけ、やがてその新幹線が見えなくなるまでその新幹線に手を振りながら見送った。

 

「九重」

 

新幹線が見えなくなって尚、その方向を見つめている九重に八坂姫が声をかける。

 

「…帰ろう、母上」

 

「そうか。…せっかく京都駅に来たのじゃ。何処か買い物にでも寄って行くか?」

 

「……いえ、今はもっと勉強がしたいのじゃ」

 

振り返る九重。

 

「此度の事で、わらわが如何に無力な子供であるかを思い知ったのじゃ。また、今回のような事があるやもしれぬ。じゃから、いつでも母上を支えられるように…、時に母上に代わって妖怪達の指揮が執れるように、今は勉強がしたいのじゃ」

 

「……そうか。では、帰るとするかのう」

 

「うむ!」

 

返事をし、九重は歩き始めた。

 

「(まだ子供かと思うていた九重がここまで。…赤龍帝殿。我が娘、九重を良き方向に導いてくれた事、改めて感謝致すぞ)」

 

八坂姫は既に姿が見えない新幹線が向かった方向に一礼をし、九重の後を追っていったのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

こうして、3泊4日の激動の修学旅行が終わった。

 

未だ、取れない戦いでの疲労を抱えながら皆が待つ家へと戻る昴達。

 

「お帰りなさい、あなた達!」

 

自宅へ辿り着くと、リアスを始めとする、グレモリー眷属達が玄関の前でその帰りを待っていた。

 

僅か数日、顔を合わせなかっただけなのだが、まるで数年間、顔を合わせなかったかのように再会を喜び合うリアスとその眷属達。

 

「荷物を置いたらリビングに集まってちょうだい。聞きたい事と、お・は・な・しする事が山ほどあるから」

 

表情は笑顔なれど、決して笑ってない目付きで昴達に告げるリアス。

 

何が起こるか理解した昴は一人、家を抜け出して逃げ出したのだった…。

 

そして、逃げ出した事と、アザゼルの口から八坂姫とのやり取りの一部始終を聞かされたリアスを始めとする女性陣が、怒りと嫉妬を爆発させた事はご愛敬…。

 

昴達の、修学旅行は終わったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





と言う訳で、修学旅行はパンデモニウム編がこれにて一端の区切りを迎えました。何気にこの章に突入したのが3年半前。如何にこの二次の投稿をサボっていたのかが窺えますね…(;^ω^)

良い感じに執筆意欲が湧いたので、この章だけは書き終えて、もうそろそろ投稿が止まっているメインの二次に戻ろうかと思ったのですが、依然としてネタが思うように浮かばず、こっちのモチベーションが高いので、さて、どうしたものか…(>_<)

何と言うか、あまりに時間を空けるといろいろ考えてしまうせいか、事前に創り上げたプロットを変えたくなったりしてきたので、あまり投稿間隔をあけてしまうものではないなと、思うこの頃です…。

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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