ハイスクールD×D~転生せし守り手~   作:bridge

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投稿します!

新章の開幕です…(^_^)/

それではどうぞ!



第十章 ~学園祭のライオンハート~
Life.119~解放、後悔と悲しみ~


 

 

 

修学旅行から帰宅して1週間程経ったある日の事…。

 

「…」

 

昴は神器(セイクリッドギア)の中に潜っていた。そこは以前と変わらず、広がった白い空間の中にテーブルと椅子が並び、各椅子に歴代の赤龍帝達の記憶の集合体が虚ろな目をしながら座っていた。

 

「……さて、始めるか」

 

肩を回し、首を鳴らしながら昴が意気込む。

 

『今日も来たんだね』

 

そこへ、いつの間にかそこへ立っていた刃が昴に話しかける。

 

「当然だ。…さあ、早く始めてくれ」

 

昴は振り返る事無く返事をし、催促する。

 

『君のそのお人好しぶりにはもはや呆れを通り越して笑いが込み上げてくるよ。…あーはいはい、すぐに始めるから少し待ってな』

 

そう言うと、刃は詠唱のようなものを唱え始めた。

 

普段、昴は余程の用事がなければ刃に会う事はないのだが、今回、昴は自発的に刃を呼び寄せている。その理由は、数日前に遡る…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

数日前のある日…。

 

「…刃、出て来い」

 

歴代の赤龍帝達が並ぶ白い空間に精神を潜らせた昴が刃を呼ぶ。

 

『おや? 君が俺を呼ぶとは珍しい』

 

呼ばれた刃は昴の前に姿を現した。

 

「お前に聞きたい事がある」

 

『なんだい?』

 

「京都で八坂姫の中に俺の魂を潜らせたお前の魔法。その魔法は、ここにいる歴代の赤龍帝達にも有効か?」

 

そう、刃に尋ねた。

 

『…仮に、有効だったとして、何をする気だい?』

 

薄く笑みを浮かべていた表情を改めた刃は、その問いに答える事無く問いかけた。

 

「質問に質問を返すな。答えろ」

 

その問いに答える事無く、昴は返す。

 

『……ハァ、そうだね。既に死して肉体はなく、記憶の集合体のような状態ではあるが、有効、だろうねえ』

 

肩を竦めながら刃は答えた。

 

「そうか。だったら、俺が指名した過去の赤龍帝の中に俺の魂を送り込んでくれ」

 

昴が刃に頼んだ。

 

『何をするつもり……って、聞くだけ野暮か。以前にここを去った赤龍帝達を見てつまらない同情心に絆されでもしたのかい?』

 

からかうように刃が尋ねる。

 

「いつまでもここに縛り付けておくのも気が引けるからな。それに、ピンチの状況で覇龍(ジャガーノート・ドライブ)を暴発させられても困るってのも理由の1つだ」

 

ドライグ曰く、過去の赤龍帝の中には危機的状況に陥った際に、怒りと怨嗟に呼び起された歴代の赤龍帝達が当代の赤龍帝の精神を侵食して強制的に覇龍(ジャガーノート・ドライブ)を発動させた事例があったと言う話を聞いていたのだ。

 

『なるほど、打算も込められていると言う事か。確かに、君ではある程度、覇龍(ジャガーノート・ドライブ)の発動を跳ね除ける事は出来るだろうが、ひとたび発動してしまえば、高確率で命を削り切ってしまうだろうねぇ』

 

愉快そうに笑う刃。

 

「そう言う事だ。分かったら力を貸してくれ」

 

『クックックッ。良いだろう。面白そうだからその頼み、聞いてあげるよ』

 

問いに満足したのか、刃は快くその提案を聞き入れた。

 

『ただ1つ忠告すると、内部に入り込めば、今の状態と違って、話は出来るかもしれないが、以前の九尾の狐の時とは違い、まず間違いなく、友好的ではないだろうねえ』

 

「…」

 

『外部からの魔法(異物)の時とはその抵抗は訳が違う。その者自身が全力で君に襲い掛かって来る。九尾の狐の時に見て来たと思うけど、内部はその者の精神を具現化した世界になっている。怒りや後悔、憎しみに支配された彼らの内部は、地獄と言っても差し支えないだろう。ある種、彼らに都合の良い世界にもなっているから、ただ単純に赤龍帝と戦うより質が悪い事この上ない』

 

「別に、戦いに行くわけじゃねえ。話が出来るなら問題ない」

 

『以前に解放された2人のようにすんなり行くとは思わない事だ。あれは例外中の例外も良い所だ。話は出来ても、話を聞くとは限らないよ?』

 

「何度でも問いかけるさ。俺の話を聞いてくれるまでな」

 

ニヤリとしながら昴は返した。

 

『……忠告はしたよ。君が何処まで泣き言を言わずにいられるか、見させてもらうよ』

 

呆れ半分に刃は溜息を漏らしながら詠唱を始めたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

以上の事から、昴は歴代の赤龍帝達の神器(セイクリッドギア)解放を目指して日々、奮闘していた。

 

『準備は出来たよ。今日は誰の中に入るんだい?』

 

詠唱し終えた刃が昴に尋ねる。

 

「……この子で頼む」

 

昴が指名したのは過去の赤龍帝で1番年若い、小猫より僅かに大きい程度の少年であった。

 

『そ奴か…』

 

その時、ドライグの声が聞こえて来た。

 

「この少年は?」

 

『歴代で、比較的若く力に目覚めた赤龍帝だ。才能もあった。…だが、結末は哀れなものであったよ』

 

僅かにトーンの落として語るドライグ。

 

「……そうか。刃、やってくれ」

 

『了解。精々、気を付ける事だね。君に死なれると俺も困るからね』

 

そんな刃の言葉と同時に昴の意識が遠くなっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「……むっ、着いたな」

 

眼を開けると、指名した少年の内部に入り込めた事を理解した昴。

 

「……酷いな」

 

周囲の景色を見て、昴は眉を顰める。

 

一言で言えば、廃墟。都市部で大規模な戦争でも行った後のように建物やビルは朽ち果てていた。

 

「…あっちか」

 

視線の先に気配を感じた昴は、そこを目指して歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「……むっ」

 

しばらく廃墟の街並みを歩いていると、爆心地の中心かのように建物やビルが綺麗に吹き飛んだ箇所の中心に先程の少年がいた。

 

「…」

 

少年は体育座りで両膝を抱え込み、顔を埋めながら座り込んでいた。

 

「君――」

 

その少年に歩み寄り、話しかけたその時!

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

――ゴォッ!!!

 

 

「っ!?」

 

突然、顔を上げた少年は、絶叫のような叫び声を上げたの同時に昴に対し、オーラの圧力を飛ばしてきた。

 

「…くっ!」

 

その圧力に吹き飛ばされた昴は、咄嗟に地面に手を突いて体勢を立て直し、着地した。

 

「また僕を殺しに来たんだな!?」

 

殺意に満ちた表情で昴を睨み付ける少年。

 

「みんなみんな、殺してやる!!!」

 

そう叫ぶのと同時に少年の身体が深紅の鎧に包まれていった。

 

「っ!? 禁手化(バランスブレイク)か!?」

 

鎧を身に纏うのと同時に少年から発せられる圧力が増した事で昴は少年が禁手化(バランスブレイク)した事を理解する。

 

「待て! 俺は君と戦う為に来た訳では――」

 

 

――ドォッ!!!

 

 

少年が両手を広げて昴の立つ方へ向けると、両手から昴の赤龍砲のようなものが発射された。

 

「ちぃっ!」

 

迎撃するのは危険と見た昴は横っ飛びで赤龍砲をかわす。

 

『JET!』

 

かわした昴に対し、少年は背中の噴出口を吹かせ、一気に加速し、かわした昴に突っ込む。

 

 

――ブォン!!!

 

 

「…っ」

 

ブーストでの加速の勢いを利用しながら放った拳を昴をかわす。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁー----っ!!!」

 

そこから両の拳を連打し、追撃をかける。

 

「(身体が小さい分、小猫のように小回りが利くし上に回転も速い。しかも、禁手化(バランスブレイク)の影響もあって1発1発に威力がある…!)」

 

幼い少年と言えど赤龍帝であるには違いなく、侮れない。…しかし、昴からすれば威力が大きいだけの一撃を繰り出し続けるだけで脅威ではない…のだが。

 

「…っ」

 

だがそれは、『敵』として相対した場合の話である。昴はこの少年を倒したい訳ではなく、話をして少年を神器(セイクリッドギア)から解放するのが目的である為、安易に手を出せない。

 

「閻王!」

 

いつまでもかわし続けるのは困難と見て、昴は英雄の器(ブレイブハート)から籠手の閻王を発現させ、攻撃を避けるだけでなく、弾き始めた。

 

 

――スッ…。

 

 

右拳の一撃を掴み取り、そのまま腕を背中に捻り上げながら地面に倒し、制圧した。

 

「話を聞いてくれ。俺は君と戦いたいわけじゃない」

 

「放せ! お前も一緒だ! どうせ最後には僕を裏切るくせに!!!」

 

やはり聞く耳を持たず、もがき暴れる少年。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!』

 

「っ!?」

 

少年が急速な倍化を始める。

 

「あぁっ!!!」

 

倍化によって急激にパワーアップした少年は昴の拘束を振り解く。

 

「…くっ!」

 

拘束を解かれた昴は少年から距離を取った。

 

「みんな僕を殺そうとする! 僕を利用するだけ利用して! お前だってそうだ! みんな殺してやる!!!」

 

怨嗟の籠った目で昴を睨み付ける少年。

 

『お前も禁手化(バランスブレイク)しろ! 本来ならあそこまで倍化すれば早々に体力が尽くだろうが、既に死しているあ奴はこの空間内では体力切れと言う概念がない。このままでは圧倒的な力で押し切られるぞ!』

 

ドライグが忠告する。

 

「…」

 

しかし、昴は禁手化(バランスブレイク)しなかった。…いや出来なかった。少年は変わらず怨嗟の籠った目を昴に向けているが…。

 

 

――その両の目からは涙が流れていたからだ…。

 

 

少年の下へ向かう道中、ドライグが昴に話をしていた。この少年が赤龍帝になってから死ぬまでの事を…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

この少年は、僅か、7歳と言う幼さで赤龍帝の力に目覚めた。これは過去の赤龍帝に比べて類を見ない若さである。

 

当初は力を持て余したが、この少年のセンスもあってか、すぐにある程度力を御する事が出来た。

 

少年はこの力を自身の両親に見せる事にした。少年からすれば、従来の子供に見られる、覚えた特技や知識を披露する程度の認識であった。これを見せれば両親は驚いてくれる。そして、褒めてくれる。少年はそう思っていた。

 

『――えっ?』

 

力を披露した少年に対し、両親が少年に向けていたのは……恐怖だった。これまで少年に対して惜しみない愛を注いでいた父と母だったが、それが一転、少年を化け物を見るかのように恐怖と侮蔑が入り混じった視線をぶつけた。

 

…そして、少年は両親に捨てられた。

 

ここから少年にとって、地獄のような日々が始まった。

 

如何に力を持っていようと、これまで両親の庇護の中で生活していた僅か7歳の少年には生きる為の術がない。空腹を満たす為には食料がいる。食料を得る為には金がいる。だが、その金を得る為の術を知らない。

 

少年は残飯を荒らし、盗みに手を染め、それでも生にしがみ付いた。生きる為に…。

 

時折、少年に手を差し伸べる者もいた。だが、それは大半が少年を下僕にしたいが為の上級悪魔や、のし上がる為に少年からブーステッド・ギアを奪おうとする堕天使ばかりであり、ごく稀に人間が手を差し伸べて来ても、悪魔か堕天使に唆され、あるいは脅された悪魔か堕天使の息がかかった人間ばかりであった。

 

このような日々を過ごす内に徐々にあらゆる者に対し不信感が増していき、誰も信じられなくなっていった。

 

不信へとなっていった少年の中に、それでも最後に残っていたのは、両親への愛であった。力に目覚めるまでの両親は確かに少年に愛を注いでおり、少年も両親を愛していた。その思い出と想いだけは、少年は忘れる事は出来なかった。

 

少年は最後の希望に縋り、久しぶりに両親の下へ戻った。

 

両親の下を尋ねると、両親は笑顔で少年を出迎えてくれた。

 

少年と父と母は少年を抱きしめながら告げた。少年に心無い言葉を浴びせてしまった事。そして、捨ててしまった事。その事を少年に詫びた。

 

久しく忘れかけていた両親の愛を思い出した少年は両親を許し、再び両親の下へ戻った。また以前のような、楽しかった日々が戻る。…そう思っていた。

 

『っ!?』

 

少年が目を覚ますと、自身が大きな十字架に拘束されている事に気付いた。そこから見下ろすと、かつて、自分を殺してブーステッド・ギアを奪おうとした堕天使と、両親の姿があった。両親は、その堕天使にペコペコとしながら金銭のようなものを受け取っていた。

 

『どう…して…』

 

その光景を見て、少年は察してしまった。両親が自分に大好物の食事を用意してくれて、それを食べた後からの記憶がない。その食事に、何か眠り薬が仕込まれていた事に…。

 

目を覚ました少年に気付いた両親は、先程までの優しい表情から一転、侮蔑の籠った表情に変わり、口々に少年を罵り始めた。途中から嬉々として金の為に売り飛ばした事すらも口にした。

 

『パパ! ママ!』

 

少年は叫んだ。自身の中に僅かに残っている愛の結晶である両親を…。

 

だが、両親はそんな少年の心からの叫びに耳を貸す事はなく、最後に2人が見せたのは、汚物でも見ているかのような嫌悪の視線であった。

 

『――』

 

両親はその場から去っていった。

 

残った堕天使が何かを少年に言っているが、それが何なのか、今の少年には届いていない。

 

少年の中に残っていた、最後の良心。希望、愛が消えてなくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――そして少年は、覇龍(ジャガーノート・ドライブ)を発動した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後は、堕天使も、命乞いをする両親も無慈悲に消し飛ばし、本能の赴くまま、目に付くもの、動くもの動かない者を手当たり次第に消し飛ばし、暴れ回った。

 

そこへ、当時の聖槍使いがやってきた。その者は、ミカエルの命で少年を保護する為にやってきたのだが、一足遅かったのだ。

 

もはや、言葉は通じず、目に付く物を所構わず破壊し尽くす、かつて、少年であった存在。このまま放置すれば、被害が広がってしまう。聖槍使いは、やむを得ず、その場で少年を殺害した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

少年から、怒りや憎しみ以上に、悲しみが溢れている事に昴には理解していた。その為、昴は少年を攻撃する事は出来なかった。

 

「あの少年の心から溢れているのは、悲しみばかりだ」

 

望んだ訳ではない。にもかかわらず、手に余る力を手に入れてしまい、その結果、大切なものを失ってしまった。孤独と悪意に苛まれた結果、少年は自分すらも失ってしまった…。

 

「だからこそ、例え、記憶だけの存在だとしても、あの少年をいつまでもこんな所で1人ぼっちにしてはおけない」

 

昴はそう言って、少年に近付き始めた。

 

『よせ! もはやお前の言葉は届かん。攻撃出来ぬと言うならこの空間から離れるんだ!』

 

ドライグがそう促すが、昴は聞かず、少年へと足を進めていく。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁー----っ!!!」

 

少年が昴に向けて砲弾を放つ。

 

 

――ジッ…。

 

 

砲弾が昴の肩を掠める。苦痛が昴を襲うが、お構いなしに進んで行く。

 

「死ね、死ね死ね死ねぇっ!!!」

 

続けて昴に向けて砲弾を弾幕を張るように放ち続ける。

 

 

――ドォッ!!!

 

 

「…っ」

 

砲弾の嵐が昴を襲う。昴は両腕を盾のようにしてその砲弾を受けながら進み続ける。

 

「来るな! 来るなぁぁぁぁぁぁー--っ!!!」

 

少年の目の前まで進んだ昴。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!』

 

 

――ゴォッ!!!

 

 

目一杯倍化させてオーラを増幅させ、その力で少年は昴の胸を全力で殴りつけた。

 

「がはっ!!!」

 

昴の口から鮮血が吹き出す。

 

『昴!!!』

 

極限まで倍化した状態での一撃。如何に少年と言えど、その威力は計り知れない。思わずドライグが叫ぶ。

 

 

――スッ…。

 

 

「――えっ?」

 

昴は少年を抱きしめると、少年は茫然とした表情で声を上げた。

 

「もういい。もういいんだ」

 

少年の強く抱き寄せながら昴は諭すように告げる。

 

「同じ赤龍帝である為なのか、俺には君の胸の内がよく分かる。君が今も尚、この神器(セイクリッドギア)の中に囚われているのは、裏切られた憎しみや捨てられて孤独になった事よる悲しみではないって事が…」

 

そう言って尚、昴は少年をきつく抱きしめる。

 

「君は、自分が許せないんだろう? 大好きだった両親をその手で殺めてしまった事が…」

 

「…っ」

 

その言葉に、少年は身体をビクつかせる。

 

「ドライグは君の両親に裏切られた事で良心も心も失ったと言ったが、本当は違う。君は両親への愛だけは残っていた。にもかかわらず、その場の怒りや憎しみでその両親の命を奪ってしまった自分自身が許せなかった。その罪悪感と後悔から、君は神器(セイクリッドギア)に囚われ続けた」

 

「…」

 

「死しても尚、ずっと1人ぼっちで辛かったな。けど、もういいんだ」

 

優しく背中を擦りながらそっと語り掛ける昴、すると少年から力が抜けていき、着衣していた鎧が解除された。

 

「パパも…、ママも、優しかった。そんな2人が…大好きだった。僕があんな力を……見せたのが…悪かったのに…、なのに、僕が…! 僕のせいで…!」

 

昴の腕の中で、少年が涙を流しながら胸の内を語り始めた。

 

「ごめんなさい…! ごめんなさい…!」

 

そこからただひたすらに、少年は謝り続けた。

 

「君は優しい子だ。もう、こんな寂しい所で1人で自分を責め続けなくてもいい。君も誰も、悪くないんだから」

 

「……ホント?」

 

「ああ。もう逝くんだ。そこで君の両親も待ってる」

 

身体を放し、少年を見つめながら優しく語り掛ける昴。

 

「パパと…ママが…」

 

そう呟くと同時に少年が身体が光り出し、足元から少しずつ光の粒子のなる少年。

 

「…うん、分かった。パパとママの所に行くよ。例え、許してくれなくても、それでも僕は、パパとママにごめんなさいし続けるよ」

 

優しく笑顔を見せながら少年が言う。

 

「きっと許してくれるさ」

 

同じく笑顔で返す昴。

 

「…ありがとう、お兄ちゃん」

 

その言葉と共に徐々に光となって消えていく少年。

 

「俺は昴。御剣昴だ。最後に、君の名前を聞かせてくれ」

 

「リンクス、だよ。…僕は幸せになれなかったけど、昴の兄ちゃんは、幸せになってね」

 

その言葉を最後に、少年は光となって消え失せた。その光は、空高く舞い上がっていったのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「……ここは」

 

気が付くと、昴は元の白い空間に戻っていた。

 

『全く、お前の行動には肝を冷やされるぞ』

 

その直後、ドライグの声が聞こえる。

 

「リンクスは?」

 

『お前がこちらに戻る少し前に神器(セイクリッドギア)から解放されていったぞ』

 

振り返ると、先程まで少年が座っていた席が空席になっていた。

 

『解放される直前、お前に一言だけ残していったぞ。『ありがとう』とな…』

 

「……そうか」

 

無事、神器(セイクリッドギア)からも、自身の罪悪感からも解放された事を知って安堵した昴。

 

『しかしな、精神世界では確かに直接的に肉体に影響はない。だが、魂へのダメージは精神に大きく影響を与える。下手をすれば、寿命を大きく削りかねないのだぞ? 初代からも言われただろう』

 

ドライグが昴を窘めるように告げる。

 

「ま、いいじゃねえか。悪魔の寿命は長いんだ。ちょっとくらい削れてもさ」

 

特に悪びれる事無く昴は他人事にように返す。

 

『全く、お前と言う奴は…』

 

そんな昴に呆れるドライグ。

 

『何を言っても無駄さ。それがこの男なのだから。せいぜい、彼が死なないように祈る事だね』

 

2人のやり取りを茶化すように刃が口を挟む。

 

『やれやれ…。何はともあれ、今日はこの辺しておけ。あまり立て続けに潜り続ければ、それこそお前の身がもたんだろうからな』

 

「分かっているよ。って言うか、八坂姫の時もそうだったが、他の内部に潜ると、疲労が尋常じゃないから。焦らず、ゆっくり1人ずつ解放していくつもりさ」

 

『分かっているならよい。…もう休め。この空間にしても、あまり長居すると身体に障るぞ』

 

そう言って、ドライグの声は聞こえなくなった。

 

「……ふぅ」

 

ここで昴は一息吐く。

 

『相変わらず、君の生き方、在り方はクレイジーだ。良くも悪くも常軌を逸している。…その生き方、いつまで貫き通せるかな?』

 

含みのある笑みを浮かべながら刃はその言葉を最後にその場から消えていった。

 

「いつまで…か。んなもん、死ぬまでに決まってんだろ」

 

いなくなった刃に向けて、昴は宣言したのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

神器(セイクリッドギア)の中から出て来た昴は現実世界に戻った。

 

「…っ、身体じゃなくて、とてつもなく気が重い。ドライグの言う通り、やっぱり無茶は出来ねえな」

 

戻ると同時に心労のようなものが昴を襲い、思わず表情を曇らせる。

 

「さて、明日の準備をして、もう寝るとするか」

 

軽く身体を伸ばすと、昴は明日の学校の準備を始める。

 

「…ん?」

 

教科書等を鞄に詰めていると、1枚のプリントが目が映る。

 

 

――学園祭の案内

 

 

プリントには、もうすぐ駒王学園催される、学園祭の案内が記されていた。

 

「…そうか、もうすぐか」

 

昴にとって、2回目の学園祭が、間もなく始まる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





少々、湿っぽい話となってしまいました…(;^ω^)

過去の赤龍帝と向き合うと言うのはやっておきたかったので、ここでする事としました。

正直、この二次の設定上、1度この世界から離れていた関係で、白龍皇程、人数は少ないんですが、それでも結構な人数に及ぶので、1人1人やっているとかなりの話数になるのと、話を考えるのが大変なので、大半は気が付いたら解放されていると思います…(>_<)

さてさて、新しいストーリーを構築するとしますかね。…まあ、大半が原作に沿ると思いますが…(・ω・)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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