ハイスクールD×D~転生せし守り手~   作:bridge

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投稿します!

今の時期が年間で1番過ごしやすい…(;^ω^)

それではどうぞ!



Life.128~女王(クイーン)同士の激突、備えと奥の手~

 

 

 

続く、サイラオーグとのレーティングゲーム。

 

リアスチームが第2戦、第3戦を勝利した。

 

だが、その勝利と引き換えに、第2戦ではロスヴァイセが、第3戦ではギャスパーが撃破(テイク)されてしまう。

 

試合は、終盤(エンドゲーム)へと、移行していく…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「…っ」

 

戦いが終わり、ゼノヴィアが1人、自陣へと戻って来る。その表情は、悔しさと悲哀が入り混じっている。

 

「……すまない」

 

無言で皆の前までやってきたゼノヴィアは、ただそう口にした。

 

「…あなたはよくやったわ。今は、後悔するより、勝つ事を考えるわよ」

 

リアスは謝罪するゼノヴィアの肩に手を置き、そっと首を横に振り、表情を改め、ダイスのある台座へと向かった。

 

「スバル、この試合が終わったら、1から私を鍛え直してくれないか?」

 

「お前から頼まれずともそのつもりだ。とりあえず、その前にこのレーティングゲームに勝つぞ。勝って吉報をロスヴァイセとギャスパーに届けるぞ」

 

「…っ、ああ、もちろんだ!」

 

昴の言葉に、ゼノヴィアは表情を改めたのだった。

 

 

『さあ、試合も第3戦が終わり、リアス・グレモリー選手は残り7名、サイラオーグ・バアル選手は残り3名。グレモリーチームが人数的には優位に立っています。しかし、バアルチームの残った選手もまた強力。ここからの巻き返しも充分あり得るでしょう!』

 

実況が大いに会場を盛り上げる中、ダイスが振られる。サイラオーグチーム側の残った選手の数字の関係上、何度か振り直しになる中、4回目のダイスが振られると、出た目の合計は9となった。

 

 

「向こうは残り3人。その中で今回、出て来られるのは、女王(クイーン)兵士(ポーン)の2人だけれど…」

 

「恐らく、兵士(ポーン)は出てこないでしょうね」

 

昴はそう断言する。

 

「どうしてそう思うんですか?」

 

断言する昴に、アーシアが尋ねる。

 

「出すチャンスはたくさんあったからだよ。ここまでの3戦、出してもいい場面はいくらでもあった。それなのに出してこなかったと言う事は…」

 

「ええ。サイラオーグは出来る限り、あの兵士(ポーン)は使いたくないのよ。どれだけ情報を探しても、あの兵士(ポーン)の情報だけは何1つ掴めなかった。ここまで徹底して情報規制している事から、間違いないわ」

 

リアスが昴に続いて説明をした。

 

「…となると、次の試合、向こうが出てくるのは」

 

女王(クイーン)か…」

 

小猫とゼノヴィアがそう呟く。

 

番外の悪魔(エキストラ・デーモン)、アバドン家のクイーシャ・アバドン。相当の手練れよ」

 

現政府から一定の距離を置き、ひっそりと暮らす悪魔の一族だが、現状のレーティングゲームの第3位がアバドン家の者であり、その力は強力なのは間違いない。

 

「では、私が行かせてもらいますわ」

 

朱乃がそっと手を上げながら立ち上がる。

 

「…率直に、分が悪いですよ。何なら俺が――」

 

昴が代わりに出ようとすると、朱乃はそっと首を横に振った。

 

「ダメよ。ここまで来たなら、あなたは然るべく場面まで出るべきではないわ」

 

「…」

 

「大丈夫、そんな顔をしないで。無茶は承知。後ろに祐斗君やゼノヴィアちゃん、小猫ちゃん。そしてに部長に、あなたが控えているから、私は無茶が出来るのよ」

 

心配する昴に対し、朱乃はいつもの笑顔でそう続ける。

 

「…っ」

 

決意を固めた朱乃の表情を見て、昴は何も言えなくなってしまう。

 

「…分かったわ。朱乃、頼むわよ」

 

「ええ。勝ちましょう。皆で」

 

そう言い、朱乃は転移魔方陣の方へと向かって行った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…」

 

朱乃が転移するとそこは、無数の巨大な石造りの塔が並ぶバトルフィールドであり、朱乃はその塔のてっぺんに立っていた。

 

「やはりあなたが来ましたか、雷光の巫女」

 

朱乃がバトルフィールドの把握の為に周囲を窺っていると、朱乃と同じように塔のてっぺんに金髪の女性、クイーシャ・アバドンが立っていた。

 

「ご機嫌よう、不束者ではありますが、よろしく御願い致しますわ」

 

クイーシャに対し、朱乃はただ不敵に挨拶を交わした。

 

 

『第4試合、開始して下さい!』

 

審判(アービター)が現れると、試合開始の合図が為された。

 

 

「「…っ」」

 

合図と同時に朱乃とクイーシャは翼を羽ばたかせ、空中へと飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――ドォン!!!

 

 

遂に始まった第4戦。

 

共に女王(クイーン)であり、遠距離からの魔法攻撃を得意とするウィザードタイプである両者による、魔力の撃ち合いによって戦いの火蓋が切って落とされた。

 

一方が炎の魔力を放てば氷の魔力で、水の魔力を放てば風の魔力で相殺し、周囲の塔を崩壊させながら双方、魔力を撃ち合っている。

 

「この程度ですか? さっさと雷光を放ってはどうです?」

 

魔力を撃ち合いながらクイーシャが不敵な笑みを浮かべながら告げる。

 

「その言葉、そっくりそのままお返し致しますわ」

 

対して朱乃も、同様に返す。

 

朱乃は雷光、クイーシャは(ホール)と、互いに切り札を切らずに戦っている。

 

「フフッ、今のままなら、使わずともあなたを撃破(テイク)するのはそう難しい事ではないもの。わざわざ使うまでもないわ」

 

そのクイーシャの言葉と同時に互いに手を止める。

 

「…」

 

朱乃は思考する。クイーシャの言葉はハッタリでも挑発でもなく、事実であり、それは手を合わせた朱乃自身がよく理解出来ている。今は互いに様子見をしている為、均衡を保っているが、もし、クイーシャが本気になれば、それは容易に崩れてしまう。

 

「…では、リクエストにお応えしますわ」

 

そう言って朱乃が右手を上げると、上空に暗雲が作り出された。

 

「雷光よ!」

 

周囲が閃光が轟くのと同時に雷光がクイーシャを襲う。

 

「フフッ」

 

微動だにせず、ただ薄く笑みを浮かべるクイーシャ。すると…。

 

「…来ましたわね」

 

雷光がクイーシャを捉える直前、空間が歪むのと同時に穴が空き、雷光を飲み込んだ。

 

「これなら、どう!?」

 

朱乃はさらに魔力を込め、大質量かつ幾重に増やした雷光をクイーシャに放つ。

 

「無駄よ」

 

そう呟くと、先程発生させた(ホール)が広がり、全ての雷光を飲み込んで行った。

 

「どれだけ数を増やそうと、私の前では意味を為さないわ。あなたがどれだけ雷光を放ってもこのように、その数だけ(ホール)を出現させる事が出来る」

 

「…っ」

 

「そしてもう1つ。私の(ホール)は、こういう事も出来るのよ」

 

クイーシャがそう言うのと同時に、朱乃の周囲に無数の(ホール)が出現した。

 

「っ!?」

 

自身を取り囲むように出現した(ホール)に目を見開く朱乃。

 

「さよなら。雷光の巫女」

 

 

――ビィィィィィィィィィッ!!!

 

 

その言葉と同時に朱乃の周囲の(ホール)から、朱乃に向けて光の帯が放たれた。

 

「私の(ホール)はただ吸い込むだけではなく、吸い込んだもの分解し、放つ事も出来るのですよ。今のように、雷光から雷を抜いて光だけを放ったように…」

 

煙に包まれる朱乃に対し、解説をするクイーシャ。

 

「…フッ」

 

勝利を確信したクイーシャは笑みを浮かべ、踵を返した。

 

 

『おーっと!? 雷光が姫島選手自身に!!! これは決まったか!?』

 

同様に、クイーシャの勝利を確信した実況。

 

 

「何処へ行くのかしら?」

 

「っ!?」

 

踵を返したクイーシャだったが、朱乃の声が聞こえると、ハッとしながら振り返った。徐々に煙が晴れると、そこには朱乃の姿がなかった。

 

「っ!? 何処に…」

 

姿を消した朱乃の姿を探すクイーシャ。

 

「こっちですわ」

 

声のした方角に振り返るとそこには、五体満足の朱乃が塔の頂点に立っていた。

 

「何故…」

 

「あらあら、避けたからに決まっていますわ。さすがに自分の攻撃で負ける訳には行きませんから」

 

「そんな事を聞いているのではないわ。私が聞きたいのは、あのタイミングでは、(ホール)の全容を知り得ない(・・・・・)限り、避けようがないはずよ」

 

クイーシャ及び、サイラオーグ・バアル陣営は、ある程度、情報を公開しつつも、ある程度、秘匿にしている情報もある。その1つがクイーシャの(ホール)である。今日のこの日まで、人目のある所では1度も見せた事はないので、朱乃が知っているはずがない。だが、先程の(ホール)のカウンターは、タイミングは完璧だった。あのタイミングでは、(ホール)の全容を知っていなければやり過ごすのは不可能。

 

「まさに今あなたがおっしゃった通りですわ。知っていた(・・・・・)から避ける事が出来たのですわ」

 

「…っ、あり得ないわ。あなた方が手に出来る情報で、私の能力を特定出来るものなど――」

 

「充分でしたわ。手に入れた情報だけで、あなたの能力を特定する事は。何せ、こちらには、優秀な参謀(・・・・・)がおりますから」

 

「優秀な参謀?」

 

その言葉に、クイーシャは思考を巡らせる。

 

「(あの物言いから、リアス様の事ではない。ではいったい――)…なるほど」

 

少し考え、答えに至った。

 

「赤龍帝ですか」

 

その言葉に、朱乃は敢えて答え合わせをせず、ニコリと笑った。

 

「優れた武芸者である事は先程の戦いぶりを見てからも重々承知しておりましたが、先見の明がある程に頭脳も明晰でありましたか…」

 

クイーシャ自身、昴の事は今日のレーティングゲームの前に何度も映像で見ているし、過去に手合わせをしたサイラオーグからも話は聞いていた。その印象は、典型的な武人肌、と言うものであった。戦術ならいざ知らず、戦略にまで長けているとは思わなかった。

 

「なるほど、戦闘力に優れ、頭脳に優れ、さらに美形となれば、リアス様を始め、あなた方がご執心なのも頷けるわ」

 

「うふふ、もっとも、私達が惹かれたのは、彼の内面ですけれど…」

 

頬を赤らめる朱乃。

 

「…やれやれ、あなたの事は高く評価していましたが、それでも、初見であれば、苦も無く降せると踏んでいたのですが、一筋縄では行きませんか。ですが、問題ありません。多少、過程が変わるだけで、結果が変わる事はないのですから」

 

「どうしてそう言い切れるのかしら?」

 

「それは、あなた自身が良く理解しているでしょう?」

 

朱乃の疑問に、クイーシャは逆に問い掛けた。

 

確かに、朱乃は事前の研究の成果もあり、クイーシャの(ホール)によるカウンターはやり過ごす事が出来た。しかし、(ホール)を攻略出来た訳ではない。

 

「雷光を使えば、それは自分自身の首を絞める結果にしかならない。かと言って、雷光を使わないあなた等、恐れる理由がないわ」

 

「…」

 

押し黙る朱乃。クイーシャの言葉は決して強がりでもなければ挑発でもない、れっきとした事実。

 

「さあ、どうしますか? 雷光の巫女」

 

不敵な笑みを浮かべ、朱乃を挑発するように尋ねるクイーシャ。

 

「そんなの決まってますわ。私には、雷光(これ)しかありませんもの。…雷光よ!」

 

 

――ビガガガガガガガッ!!!

 

 

そう返答した朱乃は、雷光を放った。

 

「やはり、心中する道を選びましたか。ですが、何度も試みようと、私には――っ!?」

 

(ホール)で迎撃しようとしたクイーシャだったが、ここで目の前で起きた出来事を目の当たりにし、驚愕した。朱乃は、雷光をクイーシャにではなく、自分自身に落としたからだ。

 

「いったい何の真似を…」

 

朱乃の行動が理解出来ず、思わず真意を問うクイーシャ。やがて雷光が落ちた事によって発生した煙が晴れ、朱乃が姿が現れると…。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

そこには、両手をバチバチと青白いを走らせていた。

 

「…っ、それは、両手に雷光を留めているのですか?」

 

「ご名答」

 

クイーシャの問いに、朱乃は薄く笑みを浮かべながら解答。

 

「それで、そこから何をするつもりなのかしら?」

 

「こうするのよ…!」

 

そう返すのと同時に朱乃はクイーシャとの距離を一気に詰め、雷光を帯びた右手を掌打のように構え、打ち込んだ。

 

「っ!?」

 

突然の接近戦に、クイーシャは驚きつつも身体を逸らして朱乃の掌打をかわす。

 

「…っ」

 

掌打をかわし、距離を取ったクイーシャ。右手で右の頬を触れる。そこには、僅かに火傷の痕のようなものがあった。掌打は確かにかわしたのだが、右手に迸る雷光が僅かに触れていたのだ。

 

「…なるほど、両手に雷光を宿らせた状態での接近戦ですか」

 

「ええ。これなら、接近戦を得意としない私でも、十二分に戦う事が出来ますわ」

 

朱乃は女王(クイーン)の駒を有してはいるが、朱乃自身がウィザードタイプである為、近接戦闘はあまり得意としていない。だが、両手に雷光を帯びた状態であれば、相手が悪魔であれば、効果的は抜群である。

 

「ゆくゆくは全身に雷光を留めたい所ではありますが、今はこれが精一杯。もちろん、例え、雷光が悪魔に絶大な効果を及ぼすとは言え、私達の祐斗君や、そちらの騎士(ナイト)、フールカス殿のような相手に接近戦を挑むのは無謀の極み。ですが、私と同じ、ウィザードタイプであるあなたであるなら、話は別。あなたの代名詞でもある(ホール)も、接近戦では使い辛いのではなくて?」

 

「…っ」

 

その指摘に、クイーシャは僅かに表情を曇らせる。

 

「お話はここまでですわ。後ろに主役が控えておりますもの。ここで決めさせていただきますわ!」

 

話を切り上げ、再び朱乃はクイーシャに対し、接近戦を試みる。

 

「…くっ!」

 

左右の手による掌打の連打を、何とかクイーシャは避けていく。触れるだけでも致命的なダメージを負いかねない雷光を帯びた左右の手による掌打。まともに触れる事が出来ない為、クイーシャは両手に触れずに防ぐか、後はかわすしかない。

 

「(姫島朱乃は私と同じ、ウィザードタイプだったはず。なのにどうしてここまで洗練された接近戦を行える!?)」

 

クイーシャは防戦一方となり、驚いていた。無論、クイーシャとて、接近戦を挑まれた際の対処法はいくつか心得ている。相手が接近戦を主戦とする猛者ないざ知らず、自分と同じ、ウィザードタイプによる付け焼き刃の接近戦であるなら、対処は容易く出来るはず。

 

「(これほどの接近戦。集めたデータの中にはなかった。隠していたとも思えない。私達とのレーティングゲームが決まってから今日のこの日までに、ここまで練度を上げる事など、武芸に長けた(・・・・・・)者の師事でも受けなければ――そういう事ですか!)」

 

ここでクイーシャは気付く。それが出来る者がリアスの眷属の中にいる事に。

 

「(サイラオーグ様があそこまで意識される理由が良く理解出来ました。…本当に厄介ですね。赤龍帝!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「ここまでは事前に立てた予定通りね!」

 

クイーシャを圧倒する朱乃を見て、満足そうに頷くリアス。

 

「昴。あなたがいてくれて本当に助かったわ。あなたのおかげで、クイーシャ・アバドンのカウンターにハマらずに済んだわ」

 

「部長が集めてくれたデータのおかげですよ。…まあ、雷光から雷だけを分解して放出なんて事まで出来るのは予想外でしたが…」

 

苦笑する昴。

 

昴はリアスの集めたサイラオーグチームのレーティングゲームのデータを研究していた折、ある事に違和感を覚えた。それは、とあるゲームで、クイーシャに対し、騎士(ナイト)女王(クイーン)の2人が戦いを挑んで来た場面があったのだが、サイラオーグは、その内の騎士(ナイト)には、早急に援護の人員を割いたのに対し、もう1人の女王(クイーン)に対しては、一切、その素振りを見せなかったのだ。騎士(ナイト)は近接武器を用いての接近戦を主戦とする、云わば、木場ようなタイプ。女王(クイーン)は、朱乃と同じ、魔力を用いて遠距離から仕掛けるウィザードタイプ。タイプの違いはあれど、手強いのは圧倒的に女王(クイーン)の方であった為、これに昴は違和感を拭えなかった。

 

ここで昴はある仮説を立てた。クイーシャ・アバドン。その代名詞はアバドン家のお家芸とも言える(ホール)(ホール)はあらゆるものを吸い込む事は確認出来ていたが、もし、その吸い込んだもの放出出来たとしたら。その仮説が正しければ、近接戦闘を得意とする騎士(ナイト)に人員を割いた事に対し、女王(クイーン)に対しては人員を割かなかったサイラオーグの判断も頷ける。この仮説を立証する為に、昴はリアスに現ランキング3位である、ビィディゼ・アバドンのレーティングゲームの資料映像を集めてもらった。同じアバドン家の悪魔。例え、同族であっても、全く同じとは限らないが、もし、ビィディゼの(ホール)に今立てた仮説ような現象を起こしていたのなら、間接的にであるが、昴の仮説が立証される。結果、昴の仮説は当たっていた。

 

この事実から、クイーシャの(ホール)は、吸収だけではなく、放出も出来る事を前提に対策を立てた。

 

「朱乃の体術も良い感じね。これも昴の指導のおかげだわ」

 

「光栄です」

 

対策を立てる際、朱乃に対し、昴は雷光を近接戦闘に代用出来ないかを提案した。(ホール)は遠距離からの魔法攻撃には効果的だが、接近戦には使い辛そうに見えたからだ。この提案に、朱乃は苦労しながらも、修練の末、両手にのみ、雷光を帯びさせる事に成功させた。後は、昴が朱乃に合った体術の指導を行い、今のスタイルを確立させた。

 

「これで形勢逆転よ。行けるわ。この戦い」

 

「はい。このまま――っ!」

 

勝利を確信するリアス。昴も同様の感想を持ったが、瞬間、ハッとした表情をする。

 

「…」

 

「? 先輩、どうかしましたか?」

 

口元に手を当て、神妙な表情で考え込む昴。そんな昴を見て怪訝そうに声を掛ける小猫。

 

「(謎が多かった(ホール)の対策は確かに成功した。その弱点が接近戦である事も見抜けた。だが、サイラオーグさんが、何よりクイーシャ本人がその弱点に対し、何の対策も立てていない(・・・・・・・・・・・)事なんて、あり得るのか?)」

 

自身の最大の武器に対し、その弱点が自分では分からないと言う事はままある事。だが、他の傲慢な悪魔ならいざ知らず、サイラオーグが選び、サイラオーグを選んだクイーシャがその弱点に気づかなかったり、気付いていながら何の対抗策を立てない事なんて、果たしてあるのか…。

 

「(今から止めるか? だが、止めた所で…)」

 

昴がよぎった懸念も、根拠は全くない。何より、雷光による接近戦を止めてしまえば、それこそ朱乃に勝機はなくなる。

 

「(頼むぜ、考え過ぎであってくれ…!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

その後も朱乃はクイーシャに対し、雷光を帯びた掌打を絶えず、繰り出し続けている。

 

「フッ!」

 

気合いと共に朱乃がクイーシャの胸に掌打を打ち込む。

 

「…ちっ!」

 

かわしきれないと悟ったクイーシャはその掌打を右腕で払いのけ、距離を取ろうとする。

 

「…っ!」

 

しかし、払った腕が僅かに雷光に触れてしまい、その激痛で表情が僅かに歪む。

 

「そこ!」

 

 

――ドス!!!

 

 

「ぐぅっ!」

 

距離を取ろうとしたクイーシャに対し、朱乃は右足で腹部に蹴りを入れる。クイーシャは苦悶の表情を浮かべる。

 

「両手ばかり警戒し過ぎですわよ」

 

「…くっ!」

 

クイーシャは腹部に手を当てながら朱乃から距離を取る。

 

「逃がしませんわ!」

 

それを許さず、朱乃が再び一気に距離を詰める。

 

「これで終わりよ!」

 

逃げるクイーシャより、追う朱乃の方が早く、その距離は瞬く間に縮まる。朱乃はクイーシャの胸に右手で掌打を撃ち込んだ。

 

 

『おーっと!? 姫島朱乃選手の右手がクイーシャ・アバドン選手の胸を貫いたぁ!!! これは決まったか!?』

 

実況が思わず立ち上がりながら実況をする。

 

 

「っ!?」

 

ここで朱乃が目を見開きながら驚愕する。

 

一見すると、朱乃の右手がクイーシャの胸を貫いているように見える。しかし、実際には、朱乃の右手は、クイーシャの胸の辺りに展開された(ホール)にその右手が差し込まれていた。

 

「まさか、これまで(・・・・)使う事になるとは思わなかったわ」

 

クイーシャが、朱乃の右手が突っ込んだまま展開した(ホール)を閉じた。

 

「っ!? …くっ!」

 

朱乃が右手を引き抜こうとしたが、(ホール)が閉じた事で右手が引っ掛かり、抜けなくなってしまう。

 

「私の(ホール)は吸収と放出以外にも、相手が(ホール)に手を突っ込んだタイミングで閉じる事で、このように拘束に使う事も出来るのですよ。これであなたは、身動きが出来ない」

 

「くっ!?」

 

朱乃は何とか右手を抜こうとするが、引っ掛かった右手を引き抜く事が出来ずにいる。

 

(ホール)の仕組みに気付き、あまつさえ、その弱点である近接戦闘を仕掛けたあなた達の手腕に脱帽するわ。けれど、あなたが自身の雷光に対し、対策を立てているように、私も同様に、(ホール)の弱点である近接戦闘に対し、このような対策を講じているのよ」

 

「…っ」

 

思わず絶句をする朱乃。

 

「それともう1つ。先程あなたに返した雷光。あれは全部ではありませんよ。まだ残っています。それを今、全てお返しするわ」

 

そう言うと、再び朱乃の周囲を包囲するように(ホール)が現れ、そこから朱乃が雷光の光が放出されようとしていた。

 

「くっ! だったら!」

 

意を決して朱乃は左手を手刀に構え、(ホール)に突っ込んだ右手を切り離そうと振りぬいた。

 

「ダメよ」

 

しかし、左手を振りぬこうとした瞬間、その左手をクイーシャが掴んだ。

 

「っ!?」

 

距離のあるクイーシャが朱乃の左手を掴む事は出来ないはず。朱乃は思わず自身の左手に視線を向ける。そこには、自身の傍で(ホール)を開き、朱乃の傍で繋いだ(ホール)からクイーシャの手が出ており、その手が朱乃の左手を掴んでいた。

 

「即座に右手を斬り落とそうとするあなたの胆力は見事だけれど、せっかく捕まえたあなたをみすみす逃がすつもりはないわ」

 

クイーシャは掴んだ左手をグッと引っ張ると、自身の手が出て来た(ホール)に左手を引き摺りこみ、右手と同様に左手も拘束した。

 

「これでもう、逃げる事は出来ない。今度こそ、さよなら」

 

その言葉と同時に、朱乃を囲う(ホール)から、光が放出された。

 

「(ごめんなさい、リアス。昴君――)」

 

朱乃は、悪魔にとって猛毒である光に包み込まれた。

 

『リアス・グレモリー選手の女王(クイーン)、リタイヤです』

 

審判(アービター)による無情のコールがされたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

(ホール)に、あんな使い方まであるなんて…」

 

リタイヤの光に包まれる朱乃の姿を見届けた後、木場がポツリと呟く。

 

「…っ!」

 

この結果を受け、昴は思わず拳ときつく握りしめ、歯をギュッと噛みしめた。

 

「…昴の責任ではないわ。むしろ、昴がいなかったら、最初のカウンターで朱乃は負けていたわ」

 

責任を感じている昴の姿を悟ったリアスがフォローする。

 

「切り替えるわよ。まもなく終盤(エンドゲーム)。ここからが本番なのだから」

 

リアスが眷属達に喝を入れ、ダイスを振りに向かう。

 

『…』

 

気落ちするグレモリー眷属達だが、リアスの言葉通り、何とか切り替えようとする。

 

 

『おぉーっと!!!』

 

その時、実況が驚きの声を上げる。

 

『遂に出ました! ダイスの最大数である12が出ました! それはつまり!!!』

 

 

実況の言葉の後に、相手陣地にいるサイラオーグが上着を脱ぎ、その身体を露にした。

 

『…っ』

 

ある程度、離れた位置にいるリアス達にも分かる、サイラオーグの鍛え抜かれた肉体。そして、気持ちを戦いに切り替えたサイラオーグの殺気を帯びた視線を受けられる。

 

「…遂に来たわね。こっちは――」

 

リアスが出場させる選手を指名しようとしたその時!

 

 

――ゴキッ!!!

 

 

陣地内に異様な音が響き渡る。骨を鳴らす音が…。

 

『っ!?』

 

リアスの前に集まっていた眷属達が音の方向に振り返るとそこには、椅子に座ったまま、顔の前でゆっくりと右手の指をゆっくりと音を鳴らしながら1本1本握っていく昴の姿があった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

激突した両チームの女王(クイーン)

 

序盤は牽制し合い、同時に出される切り札。

 

事前に対策を講じていた朱乃が戦いを優位に進めているように見えた。

 

しかし、クイーシャは、さらなる切り札を抜き、結果、朱乃は敗北した。

 

失意の中、次に振られたダイスの数字は12。

 

遂に、サイラオーグの出番がやってくる。

 

出場選手を模索するリアスだったが、昴が、その殺気を身体中から漲らせたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





原作での朱乃があっさりと負けてしまった事が納得出来なかったので、だいぶ盛りました…(^-^)

クイーシャ・アバドンの(ホール)に関しては、個人的に、『こういう使い方したら有効的なのでは?』と言う思い付きから出した捏造です。さらに個人的な話をすれば、朱乃を勝たせてあげたかったですが、それをすると後の展開が大きく崩れるので、止む無く過程だけの変更です…(>_<)

今年も後、2ヶ月弱か…。

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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