ハイスクールD×D~転生せし守り手~   作:bridge

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投稿します!

一気に冷えてきたー(>_<)

それではどうぞ!



Life.129~圧倒的な力、Entrust~

 

 

 

激突した両チームの女王(クイーン)

 

両者探り合いの末、互いに同時に切り札を切るも、一時は事前に対策を施していた朱乃が優位に戦いを進めた。

 

しかし、戦いは朱乃の勝利で終わると思った直前、クイーシャの(ホール)の、思わぬ使用方法により、朱乃は敗北した。

 

失意の中、次に出たダイスの目は12。

 

遂に、サイラオーグが動き出したのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

――ゴキッ!!!

 

 

ダイスの目の合計が12となり、サイラオーグが戦いに身を乗り出す。同時に、静かに腰掛けていた昴が眼前で右手の骨を鳴らした。

 

『…っ』

 

その光景を目の当たりにしたリアスを始めとするグレモリー眷属達は息を飲んだ。これまで、極力、平静を保っていた昴から、溢れんばかりの殺気が溢れていたからだ。

 

スッと昴が立ち上がると、そのまま転移魔方陣の方へ無言で足を進めた。

 

「…っ、昴、待ちなさ――」

 

「待った。君の出番はまだだよ」

 

制止をかけようとするリアス。しかし、それより早く、木場が昴の肩を掴み、止める。

 

「ここは、僕とゼノヴィアと小猫ちゃんが行く」

 

「必要ない。ここで俺が決めてしまえばそれで終わる話だ」

 

昴は足を止めると、殺気交じりの視線を木場に向け、告げる。

 

「ダメだ。ここで君を行かせる訳には行かない」

 

殺気を正面から受け止めつつ、木場は返す。

 

「俺が信用出来ないか?」

 

「しているさ。誰よりも。…けど、君も分かっているはずだ」

 

木場は肩に置いた手の力をさらに強める。

 

「初戦からここまでの戦い、その全てで、昴君が当初にしていた想定を遙かに超えている事に…」

 

「…」

 

「それはきっと、サイラオーグ・バアルだって例外じゃない。このまま君が戦っても勝てるかもしれない。けど、そうじゃないかもしれない」

 

「…」

 

「だから、僕達が戦う。少しでも彼の情報を引き出す為に、そして、消耗させる為に。…ゼノヴィア、小猫ちゃんも、付き合ってくれるよね?」

 

木場が2人に尋ねる。

 

「無論だ。己の失態を挽回する、またとないチャンスだからな」

 

「勿論です。ここで私の全てをぶつけて、先輩達に繋げます」

 

ゼノヴィアと小猫は、覚悟を決めながら頷いた。

 

「…」

 

3人の覚悟に満ちた表情を受け止める昴。

 

「……分かった」

 

そう言うと、そっと殺気を抑え込んだ。

 

「ありがとう」

 

木場は笑顔で礼を言う

 

「だが、どうせ戦うなら、捨て石になるんじゃなくて、ここで終わらせるつもりで行って来いよ」

 

フッと笑みを浮かべながら木場に告げる昴。

 

「ああ。もちろんさ」

 

「当然だ。お前に出番は回さん」

 

「全力で行きます。私を庇ってくれたロスヴァイセさんの分まで」

 

昴の檄に、3人は笑顔で応えた。

 

「部長、構いませんね?」

 

許可を貰うべく、木場がリアスに尋ねる。

 

「…っ」

 

躊躇うリアス。当初、考えていた、昴と木場を出す代案を提案しようとするも、引っ込める。それは勝利の為の策でなく、ただこれ以上、自身の眷属を傷つけられたくないと言うだけのただの私情であり、甘えだからだ。

 

「「「…」」」

 

3人の覚悟の決まった顔。勝利の為に戦おうとしている3人を表情を見て、リアスも覚悟を決めた。

 

「…ええ。お願いするわ。少しでもサイラオーグを疲弊させてちょうだい」

 

「ありがとうございます。では、行ってきます」

 

許可を出してくれたリアスに木場は礼を言い、3人は転移魔方陣の方へと進み、バトルフィールドへと向かった。

 

「…ダメね。覚悟を決めてこのゲームに臨んだはずなのに、まだ、甘さが捨てきれないみたい」

 

自嘲気味に呟くリアス。

 

「そんな部長だからこそ、俺達は全てを賭けて戦えるんです」

 

「そうです! 優しいお姉様だから、私達は信じる事が出来るんです」

 

そんなリアスに対し、昴とアーシアがフォローする。

 

「…ありがとう」

 

2人に対し、リアスは心から感謝を述べたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

転移するとそこは、湖の湖畔だった。3人の目の前には、既にサイラオーグが腕組みをして待機していた。

 

「ほう? そう来たか」

 

現れた3人を見て、サイラオーグがそう呟く。

 

「2つ程、尋ねる。この選択は、リアスの案か?」

 

サイラオーグが尋ねると、3人は敢えて答える事はせず、ただただ覚悟を決めた表情をする。その表情を見て、サイラオーグは満足気に口角を上げる。

 

「なるほど、リアスはまた一皮剥けたようだな。何よりだ」

 

そう言って、胸の前で組んでいた腕を下ろす。

 

「もう1つ。お前達に勝機はない。それでも戦うか?」

 

「無論です。ですが、捨て石のつもりもありません。最高の状態で赤龍帝に繋げます」

 

2つ目の質問に木場が答えると、サイラオーグは、その覚悟の決まった表情を見て、武者震いを起こす。

 

「良い覚悟だ。ならばこちらも、その覚悟に応えねばならないな」

 

『第5試合、開始して下さい!』

 

同時に、審判(アービター)から試合開始の合図がされる。その合図と同時に、サイラオーグの四肢に奇妙な紋様が現れる。

 

「これは、俺の身体に負荷をかける、言わば枷だ。お前達の覚悟に応える為、こちらもこれを外し、全力で戦おう」

 

淡い光がサイラオーグの四肢を包むと、紋様が消える。

 

 

――ドォッ!!!

 

 

同時に、サイラオーグの足元が陥没し、サイラオーグを中心に周囲が弾ける。

 

『っ!?』

 

発生した衝撃波と風圧を受け、3人は僅かに押され、後退りしてしまう。

 

「…っ! あれは、仙術の類か!?」

 

衝撃波を浴びたゼノヴィアが疑問を口にする。

 

「…っ、いえ、私の扱う仙術とは別物です」

 

仙術を使う小猫が両腕で衝撃波を庇いながらそれを否定する。

 

 

『ほう、あれは闘気か。それも、可視化出来る程の濃厚な…』

 

解説のアザゼルがサイラオーグを見て思わず感心する。

 

『ええ。純粋に体術を鍛え、パワーを追求した果てに目覚めた闘気。彼の余りある活力と生命力が噴出し、可視化したものです』

 

続くようにディハウザーが解説した。

 

 

「行くぞ。お前達は取られる覚悟をしつつも、俺を全力で仕留める覚悟を決めた戦士。遠慮はせんぞ!」

 

 

――ドォン!!!

 

 

宣言と同時に、サイラオーグが地を蹴り、その場から消え失せる。

 

「来るよ!」

 

「分かっている!」

 

同時に木場とゼノヴィアも動き出す。

 

「…っ」

 

サイラオーグが動き出すのと同時に木場とゼノヴィアの姿も消え失せると、小猫はすぐさま猫又モードレベル2となり、身構える。

 

「そこ!」

 

「オォッ!」

 

真っ直ぐ突っ込むサイラオーグに対し、木場がゼノヴィアがサイラオーグの左右からそれぞれ聖魔剣、デュランダルを振り下ろす。

 

 

――ガギィン!!!

 

 

「「っ!?」」

 

左右から振り下ろした2本の剣。聖魔剣は砕け散り、デュランダルは、ゼノヴィアが仰け反る程に弾かれてしまう。

 

「(来る!)」

 

3人のスピードに付いていけない小猫ではあったが、サイラオーグが真っ直ぐ自分に突っ込んで来る事は感じ取れた。

 

「(仙術を纏ったおかげで、サイラオーグさんの動きに付いては行けませんが、察知は出来ます。真っ直ぐ私に向かってくるのならば、カウンターを合わせます!)」

 

構えを取る小猫。

 

「(今です!)」

 

動きを察知した小猫は正面から来るであろうサイラオーグに対し、カウンターの一撃の拳を振るう。

 

「ダメだ、小猫ちゃん!!!」

 

小猫の行動を理解した木場が思わず叫ぶ。

 

「っ!?」

 

木場の言葉が耳に届くのと同時に、小猫の表情が驚愕に染まる。そこには、大柄の体格のサイラオーグが、小柄の小猫に対し、地面スレスレにまで下ろした右拳を振り上げ、まさに小猫の胴に突き刺さろうとしていたからだ。

 

「(そんな!? 踏み込みが速過ぎ――)」

 

 

――ゴッ!!!

 

 

サイラオーグの右拳が小猫の腹に突き刺さると…。

 

「ふん!」

 

掛け声と同時にサイラオーグは右拳を振りぬく。

 

「ぐっ!」

 

小猫は苦悶の声を上げるのと同時に湖の遙か彼方に吹っ飛ばされてしまう。

 

「「っ!?」」

 

それを目の当たりにした木場とゼノヴィアの表情が曇る。

 

「まずは1人目。…次は――」

 

「…っ」

 

振り上げた拳を下ろし、視線をゼノヴィアに向けると…。

 

「お前だ」

 

宣言と同時にサイラオーグの姿が再び消え失せる。

 

「っ!?」

 

瞬間、ゼノヴィアは反射的に上半身を前方に大きく倒す。

 

 

――ブォン!!!

 

 

同時に、その頭上を、大きな風切り音が走る。先程まで、ゼノヴィアの顔があった箇所を、サイラオーグの蹴りが通過したのだ。

 

「くっ!」

 

すぐさまゼノヴィアはその場から飛び退き、サイラオーグから距離を取る。

 

「…っ」

 

背中に冷たいものが滴る感覚が走るゼノヴィア。咄嗟に屈んで蹴りをかわしたが、その風圧を背中越しに感じていた。もし、あの蹴りが直撃していたら、まず間違いなく撃破(テイク)されていた。…いや、首ごと刈られていたかもしれない。

 

「…デタラメなパワーとスピードだ。少しでも集中を切らせば、その瞬間やられる…!」

 

「分かっている。全てを出し切るんだ。全身全霊を以てぶつかる。そうでなければ、まともに相手にする事すら出来ない!」

 

そう言うと、2人の全身からオーラが迸り始めた。

 

「いいぞ、それでこそ、拳の振るい甲斐があると言うものだ!」

 

サイラオーグは満足気に笑みを浮かべると、再び勢いよく地を蹴り、飛び出した。

 

「…っ」

 

真っ直ぐ木場へと突っ込むサイラオーグ。対して、木場は聖魔剣を自身の前方に幾重に重ねて壁を作る。

 

「そんな脆い盾で俺の拳を止められるか!」

 

サイラオーグはお構いなしに聖魔剣の壁に拳を撃ち込む。聖魔剣の壁は難なく貫かれ、その奥にいる木場へと突き刺さる。

 

「むっ!?」

 

拳を撃ち込んだサイラオーグだったが、違和感を覚え、思わず声を上げる。目の前の聖魔剣が砕け散り、その先が明らかになると、自身の拳には木場ではなく、ドラゴンの兜を被った甲冑を纏った騎士だった。

 

「これは!?」

 

突然、現れた甲冑騎士に戸惑いの声を上げるサイラオーグ。

 

禁手(バランスブレイク)聖覇の龍騎士団(グローリィ・ドラグ・トルーパー)…」

 

聖魔剣で壁を作った後、すぐさまその場を離れて距離を取った木場がボソリと呟く。

 

「お前の禁手(バランスブレイク)双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)のはず……そうか、これは聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)か」

 

一瞬、事前に得た情報の違いに困惑するも、すぐに答えに辿り着いたサイラオーグ。

 

「そのとおりです。昴君との修業の果てに身に付けた、僕の新たな力です。…そして、これで終わりではありません」

 

そう言うと、飛び散った聖魔剣が龍騎士の姿へと変わり、一斉にサイラオーグに斬りかかった。

 

「1人だけではありません。その名のとおり、騎士団が一斉に僕の命令で襲い掛かる」

 

「なるほど、見事だ。だが、これで俺が止められるか!」

 

サイラオーグは拳を先程撃ち込んだ龍騎士から引き抜くと、自身へと向かって来る騎士団に撃ち込む。

 

 

――ガシャン!!!

 

 

次々襲い掛かる龍の騎士団。しかし、サイラオーグはその拳で、蹴りで次々と屠っていく。

 

「数も多く、速さもある。だが、俺を相手にするには、脆すぎる!」

 

サイラオーグは自身に襲い掛かる龍騎士団を全てその拳と蹴りで破壊し尽くした。

 

「…っ、掠り傷1つ付けられませんか。ですが、構いません。元より、これは攻撃ではありませんから」

 

「なに? …っ!」

 

木場の言葉に返事をした後、ハッと頭上を見上げるサイラオーグ。そこには…。

 

「聖魔剣でダメならば、デュランダル(これ)ならどうだ!」

 

両手で構えるデュランダル。その剣からは複数の波動が生み出されている。

 

龍の騎士団による攻撃は、ダメージを与える事が目的ではなく、サイラオーグに隙を作り出す事が最大の目的だった。

 

「おぉっ!!!」

 

気合いと共に渾身一撃をサイラオーグに振るうゼノヴィア。

 

 

――ゴウッ!!!

 

 

サイラオーグは闘気の質を上げ、ゼノヴィアの渾身のデュランダルの一振りを右腕で受け止めた。

 

「なっ!?」

 

この結果にゼノヴィアは驚愕する。デュランダルを受けたその腕には傷1つ付ける事が出来なかったらだ。

 

「いい波動だ。以前の俺であれば、無傷では済まなかっただろうが、今の俺には、足りん!」

 

 

――ギィン!!!

 

 

「くっ!」

 

サイラオーグはデュランダルを受けた右腕を振り払い、ゼノヴィアを弾き飛ばす。

 

 

――ドォン!!!

 

 

同時に地を蹴り、仰け反りながら宙を舞うゼノヴィアとの距離を一気に詰めた。

 

「っ!?」

 

「次はお前だ」

 

そう言って、サイラオーグはゼノヴィア目掛けて拳を振るった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――させません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――バギィッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、突如として現れた小猫がサイラオーグの横っ面に拳を打ち込んだ。

 

 

――ドゴォッ!!!

 

 

殴られたサイラオーグはその勢いのまま地面に叩きつけられた。

 

「小猫ちゃん! 無事だったんだね!」

 

小猫に駆け寄った木場は、撃破(テイク)されていなかった小猫の姿を目の前に喜ぶ。

 

「はい。裕斗先輩が声を掛けてくれたおかげで、直撃の瞬間に後ろに飛んで威力をいなす事が出来ました」

 

先程、サイラオーグにカウンターを入れようとして失敗し、殴り飛ばされた小猫。木場が声掛けのおかげでカウンターを中断し、咄嗟に回避行動に移る事が出来、結果、ダメージを最小限に抑える事が出来た。

 

「助かったぞ。お前がいなければ、私は今頃撃破(テイク)されていた」

 

ギリギリで命を拾ったゼノヴィアが、小猫に傍に寄って礼を言う。

 

「小猫ちゃん、あのヒトのオーラと内部を乱す事が出来たかい?」

 

視線をサイラオーグに移した木場が尋ねる。

 

「…ダメです。殴った瞬間に仙術を体内に送り込もうとしましたが、あの闘気に阻まれました」

 

同じくサイラオーグに視線を移した小猫は、表情を曇らせた。やがて、地面に叩きつけられた際に舞い上がった煙が晴れると、今しがた、殴られた事がなかったかのように立ち尽くすサイラオーグが現れた。

 

「まだ健在なのは分かっていた。拳に手応えがなかったからな」

 

そう言って、サイラオーグは口元に滲んだ血を右拳で拭い、そしてニヤリと笑う。

 

「見事だ。ただただ俺の攻撃を凌ぎ切るだけではなく、ここまで手を焼かされるとはな。さすが、リアスが選んだだけの事はある」

 

3人に称賛の言葉を贈るサイラオーグ。

 

『…っ』

 

しかし、3人はその称賛の言葉を聞いても、表情は晴れるどころか曇るだけであった。

 

現状、何とか無傷でやり過ごせている木場とゼノヴィア。しかし、それは数度と使えない手札を切った事と運が絡んでの事。小猫も、咄嗟にサイラオーグの拳をいなす事が出来たが、それは偶然、タイミングがあっただけの事であり、次、やれと言われても成功する可能性は低い。何より、いなしても尚、ダメージは相当なものであった為、ここまで戦線復帰する事が出来なかったのだ。

 

「そんなお前達に敬意を表し、こちらも手札を切らせてもらおう」

 

笑みを浮かべていた表情を改め、拳をゆっくり引くと、これまで全身に展開していた闘気を拳に集中させた。すると、右腕が盛り上がる。

 

『っ!?』

 

その異様な気配を感じ取った3人はすぐさまその場から退避、サイラオーグから距離を取った。

 

 

――ドォッ!!!

 

 

右足を引き、腰を落としたサイラオーグが地面を蹴ると、一瞬で小猫の眼前まで移動した。

 

「っ!?」

 

あまりの速さに目を見開く小猫。サイラオーグは事前に引いていた右腕を小猫に向け、振りぬいた。

 

 

――ドオオオォォォォォッ!!!

 

 

次の瞬間、拳を振りぬいたその先が、大きな振動と同時に遙か先まで大きく抉れた。

 

『リアス・グレモリー選手の戦車(ルーク)1名、リタイヤです』

 

同時に、小猫のリタイヤがコールされた。

 

「「っ!?」」

 

あまりの破壊力、その直前の、一瞬で小猫の懐まで飛び込んだ速さに全身に冷たいものが滴る木場とゼノヴィア。

 

「今のは、掠っただけで致命傷を与える拳打だ。生半可な力では止める事は出来ん」

 

振りぬいたままの体勢だったサイラオーグがそう言いながら拳を下ろした。

 

「これは、以前から持っていた力だ。ここから見せるのは、お前達も見ていた、御剣昴との手合わせの後に身に付けたものだ」

 

再び構えを取るサイラオーグ。だが、先程とは何処か違う雰囲気を醸し出していた。

 

「「っ!?」」

 

身構える2人。サイラオーグの次の1手に対応する為、集中力を全開にする。

 

 

――ドォン!!!

 

 

地を蹴り、高速で先程の小猫の時と同様、木場の眼前まで一瞬で移動し、木場に拳を振りぬく。

 

「くっ!」

 

何とか反応出来た木場はその拳をかわす。しかし…。

 

「(2撃目!?)」

 

初撃をかわした直後、すぐさま眼前に2撃目の拳打が迫っていた。

 

「…っ」

 

これも何とかかわした木場だったが…。

 

「(だ…ダメだ…!)」

 

すぐさま3撃目が迫っており、先の2発で大きく体勢を崩されていた木場はかろうじて反応は出来たものの対応出来ず…。

 

 

――ドゴッ!!!

 

 

「がはっ!」

 

その拳を腹に受け、苦悶の声と共に殴り飛ばされた。

 

「おぉっ!!!」

 

直後、サイラオーグの後方からゼノヴィアがデュランダルで斬りかかる。が、やはり、デュランダルは闘気に阻まれ、その身に傷すら付ける事は出来ない。

 

「今度は横槍は入らんぞ」

 

そう呟き、ゼノヴィアに拳打を振るう。

 

「っ!?」

 

ゼノヴィアの目の前に広がる無数の拳打。

 

「(数が…速過ぎ――)」

 

 

――ドドドッ!!!

 

 

ゼノヴィアの身体に数発の拳が直撃する。

 

「ガッ!」

 

吐血しながら苦悶の声を上げるゼノヴィア。

 

「ふん!」

 

拳を当てた後、ゼノヴィアの足を掴んだサイラオーグは木場の吹っ飛んだ方向にゼノヴィアを勢いよくぶん投げた。

 

 

――ドォッ!!!

 

 

ゼノヴィアは大きな岩に勢いよくぶつかった。

 

「俺はこれまで、一撃の強さを追求した。どんな相手であろうと、一撃で仕留める為に」

 

2人が吹っ飛んでいった方向に身体を向けるサイラオーグ。

 

「だが、御剣昴相手には、一撃もまともに当てる事は出来なかった」

 

拳を自身の眼前まで持って行き、ギュッと力を込めた。

 

「どんな強大な一撃も、当たらなければ無意味。俺は今日までこの拳を確実に当てる技術を模索した」

 

かつて、サーゼクスの提案の下、昴とサイラオーグは手合わせをした。その際、サイラオーグの振るった拳は昴にほぼほぼ当てる事は出来なかった。相打ち狙いをしても尚だ。そこでサイラオーグは、これまでの一撃必殺のスタイルから、一撃の威力を犠牲にし、小さく鋭く、手数と回転の速さを意識したスタイルを追求したのだ。

 

「これがその修練の成果だ。御剣昴を倒す為に身に付けた俺の力だ!」

 

ブン! っと、腕を振るった。

 

「っ…!」

 

岩が砕けた事による砂塵が舞う中、木場がよろよろと立ち上がる。

 

「まだ立ち上がるか。一撃の威力は落ちていたとは言え、決して頑丈ではない騎士(ナイト)のお前が大したものだ」

 

何とか立ち上がり、未だ、戦意を失っていない木場に賛辞の言葉を贈るサイラオーグ。

 

「あの猫又に感謝するんだな。あの娘がいなければ、お前は今頃、撃破(テイク)されていた」

 

おもむろに小猫の存在を口にするサイラオーグ。

 

「俺の拳が当たる瞬間、あの猫又は防ぐでもかわすでもなく、俺の右腕に拳を撃ち込み、仙術を送り込んだ。そのせいもあって、俺の右腕だけは、闘気が充分に纏わせる事は出来なかった」

 

小猫は、かわす事は勿論、耐えきる事も出来ないと悟り、直撃の瞬間にサイラオーグの右腕の手首にありったけの仙術を振り絞り、打ち込んでいたのだ。

 

「だが、もうそれももう時間切れだ。今度こそ、次はない」

 

僅かに右腕に注ぎ込んだ仙術の効果もなくなった。サイラオーグはゆっくりと木場の方へと歩き出す。

 

「…っ」

 

得物を構える木場。

 

 

――ドォッ!!!

 

 

数歩、歩いた後、サイラオーグが木場との距離を詰める。

 

「…っ」

 

木場はサイラオーグから逃げるように横へと駆けだす。

 

「だいぶスピードが落ちているな。俺が相手では、止まっているのと同じ」

 

しかし、逃げる木場をサイラオーグは一瞬で回り込み、逃げ道を塞ぐ。

 

 

――ガッ!!!

 

 

サイラオーグは木場の首を掴み、動きを止め、自身の眼前に持ち上げる。

 

「終わりだ」

 

 

――ドゴッ!!!

 

 

身動きの出来ない木場に、サイラオーグの拳が無慈悲に突き刺さった。

 

「さらばだ、木場裕斗」

 

リタイヤの光に包まれ始めている木場に対し健闘を称え、サイラオーグは賛辞の言葉を贈った。

 

「がはっ! ……木場祐斗? ……そうか、お前には、()が木場祐斗に見えるんだな」

 

ニヤリとする木場。

 

「むっ!?」

 

その言葉に違和感を覚えたサイラオーグが思わず声を上げる。すると、木場の姿が、みるみるゼノヴィアの姿へと変わっていった。

 

擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)。…どう…やら、騙す事に…成功した…よう…だな…」

 

「貴様は、ゼノヴィアか!」

 

「デュラ…ンダルで、…傷1つ…付けられないなら…、私は、役…立たず…だからな。ならばせめて…、木場が、僅かでも…回復する時間を…稼ぐ、まで…」

 

すると、先程2人が吹き飛んだ場所で、木場が立ち上がっていた。

 

 

 

 

『私が時間を稼ぐ。お前は少しでも身体を回復させ、一矢報いる方法を考えていろ』

 

 

 

 

先程、砂塵でまだ姿が見えなかった時に、ゼノヴィアが木場にかけた言葉。

 

「私は…ここまでだ。…後は、任せた――」

 

『リアス・グレモリー選手の騎士(ナイト)、リタイヤです』

 

審判(アービター)からのコールがされ、ゼノヴィアはいなくなった。

 

「ありがとう、ゼノヴィア。君の作り出してくれた時間は決して無駄にしないよ」

 

空高く昇っていくゼノヴィアのリタイヤの光に感謝の言葉を贈る木場。

 

「…全く、お前達は揃いも揃って、俺を何度驚かせれば気が済むのだ」

 

本心の言葉を呟くサイラオーグ。

 

「仲間2人が命懸けでお前の為に繋いだ。お前はそれにどう応える。木場祐斗!」

 

そう叫び、サイラオーグが木場へと突進する。

 

「…っ」

 

木場は、サイラオーグが距離を詰めたのと同時に振るった拳をかわす。その後も、追撃の拳を木場に対し、どんどん振るっていく。

 

「…っ!」

 

何とか紙一重でサイラオーグの拳をかわし続ける木場。だが、それで精一杯だった。

 

ゼノヴィアが時間を稼いでくれたは言え、あの僅かな時間では当然ながら回復する訳はなく、そのダメージは確実に木場を蝕んでいる。普段の昴との手合わせの経験が1番多い木場。試合の直前では、仮想サイラオーグを想定し、打撃での手合わせを中心で行っていた為、その経験が功を奏し、何とか凌げていた。

 

「(このままでは防戦一方だ。遠からず捕まってしまう。何とか、しなければ…!)」

 

小猫とゼノヴィアが繋いでくれたおかで木場は今、こうして立っていられる。その2人の想いに応える為に…何より、後に戦う昴やリアスの為に…。

 

「(……あった! 1つだけ、ただ粘るだけじゃない。サイラオーグさんの戦力を削ぐ方法が!)」

 

妙案を思い付いた木場。

 

 

――ブン!!!

 

 

木場に対し、サイラオーグが右の拳を打ち下ろす。

 

「むっ?」

 

その拳を跳躍してかわす木場。サイラオーグが顔を上げると、これまで打撃をかわす事だけに徹していた木場が始めて攻撃態勢に入っていた。

 

「はぁっ!」

 

気合いと共に木場が聖魔剣をサイラオーグに振り下ろした。

 

 

――ガギィン!!!

 

 

しかし、その1撃は、サイラオーグの腕に当たるのと同時に聖魔剣と共に砕け散ってしまう。

 

「デュランダルでも俺の身体には傷1つ付けられなかった。お前の聖魔剣でも結果は変わらん」

 

拳をギュッと力を込めるサイラオーグ。

 

「今度こそ、終わりだ」

 

空中で聖魔剣を振るい、無防備の木場に、サイラオーグは容赦なく拳を打ち込んだ。

 

 

――ゴッ!!!

 

 

「がはっ!」

 

直撃と同時に吐血する木場。

 

「……この、瞬…間を、待っていました…」

 

口元を血で汚しながら口角を上げる木場。

 

「むぅっ!?」

 

次の瞬間、驚きと苦悶の声を上げるサイラオーグ。

 

「勝利を…確信した、…1撃を…打ち込む瞬間こそ……、最大の…隙が…出来る…」

 

意識も絶え絶えながらも言葉を紡ぐ木場。

 

拳が腹に突き刺さりながらも右手を伸ばす木場。その手には、聖魔剣が握られており、その聖魔剣の切っ先は、サイラオーグの右目(・・・・・・・・・)に突き刺さっていた。

 

「いくら…あなたが頑丈…でも、(そこ)だけは、…鍛えようが…ない…でしょう?」

 

 

――カシャン!!!

 

 

右手から力が抜け、聖魔剣が地面へと音を立てながら落ちる。同時に、木場がリタイヤの光に包まれ始める。

 

「僕の…役目は……果たし…ました。…後は託し…ます。僕の、主…と…、僕の、1番…の、親友…であり、尊敬…する、彼に――」

 

『リアス・グレモリーチームの騎士(ナイト)、リタイヤです』

 

審判(アービター)のコールと共に、木場は消えていった。

 

「これで、俺はフェニックスの涙を使わざるを得なくなった。隻眼で戦える程、御剣昴は甘い相手ではないからな」

 

潰れた右目を抑えるサイラオーグ。

 

「…もはや、見事と言う言葉すら、お前達に贈るには陳腐な言葉になってしまうな。お前達と戦えた事は、一生、俺の記憶に留めておくだろう。…感謝する」

 

心からの賛辞の言葉と礼を、サイラオーグは今、戦った3人に向けて、贈ったのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

ダイスの目が12を出し、遂に重い腰を上げたサイラオーグ。

 

連携を駆使し、戦う木場、ゼノヴィア、小猫を、サイラオーグはその圧倒的な力で粉砕していった。

 

後に繋ぐ為、小猫、ゼノヴィアは木場に託し、バトンを受け取った木場はその身を以てサイラオーグに一矢報いた。

 

レーティングゲームは、最後の戦いへと、向かっていくのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





気が付けば2024年も2ヶ月切ったか…。

何と言うか、今年に入って完全に執筆速度が落ちていると我ながら自覚しています…(;^ω^)

多分、この二次が完結まで書きあげられたらガチに引退しそう…(>_<)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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