ハイスクールD×D~転生せし守り手~   作:bridge

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投稿します!

遂に2024年も残り1ヶ月切ったか…、早い…(>_<)

それではどうぞ!



Life.131~激突、赤き龍と気高き獅子~

 

 

 

サイラオーグの提案により始まった、リアス・グレモリー、サイラオーグ・バアル、両チームの残った選手による団体戦。

 

リアスがレグルスとぶつかる一方、昴とサイラオーグは一切動きを見せなかった。

 

試合開始から2分が経過し、痺れを切らしたサイラオーグが仕掛けようとしたその時、先んじて昴が動き、その動きに対応しようとしたサイラオーグに渾身のカウンターを打ち込み、戦いの火蓋が切られたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「始まったにゃ!」

 

観客席でここまでの試合を観戦していたライザーとその眷属達。突如して昴とサイラオーグが動き、ニィが声を上げる。

 

「2人共全く動かなかったと思ったら、昴様が突然動きましたね」

 

ライザーの眷属の1人であるミラが試合を注視しながら呟く。

 

「試合が始まった当初は、少なくとも、サイラオーグ様は迎え撃つ姿勢だった。しかし、昴が動かなった事で当てが外れ、サイラオーグ様は自ら仕掛けよう1歩踏み出そうとした瞬間、昴がこれに合わせて懐に飛び込み、出足を止めた」

 

『…』

 

解説を始めるイザベラ。他の眷属達が耳を傾ける。

 

「これまで動きを見せなかった相手が突然、自身の懐に飛び込んでくれば、どれだけ平静を保とうとも動揺する。横へ逃げた昴への一撃に対し振るった一撃に、渾身のカウンター」

 

「…ここからでも分かります。受けたのが私だったら、確実に撃破(テイク)されています」

 

「その程度で済むものか。首から上がなくなってもおかしくない一撃だったぞ」

 

サイラオーグがぐらつく程の一撃、雪蘭の感想に、カーラマインが被せるように続ける。

 

「スバル様の表情が変わりました」

 

昴の表情の変化に気付いた美南風(みはえ)

 

「リアス様に似て、昴も仲間想いだ。腹に据えかねていたのだろう。…始まるぞ。ここからが本当の戦いだ」

 

イザベルが静かに呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…」

 

「…」

 

昴の最初の一撃が決まり、両者の戦いが始まった。

 

 

――ドン!!!

 

 

再び昴が動き、一瞬でサイラオーグの懐に飛び込む。

 

 

――バチィッ!!!

 

 

サイラオーグの顔面に右拳を打ち込む。その後も、追撃をかけるように左右の拳を交互に打ち込んでいく。

 

 

――バチィン!!!

 

 

5つ目の拳を打ち込もうとした時、サイラオーグが昴の拳を左腕で払い飛ばす。

 

「ぬん!」

 

直後に昴に対し右拳を打ち込む。

 

 

――ブォン!!!

 

 

昴はバックステップで距離を取り、サイラオーグの拳をかわした。

 

 

『剛腕から繰り出される身の毛もよだつサイラオーグ選手の一撃! 昴選手、紙一重でかわし――いや、かわしきれなかったか!?』

 

サイラオーグの一撃をかわしたように見えたが、昴の眉間部分からツーっと血が滴った。

 

『避けはしたんだがな。おーおー、大した破壊力だ』

 

感心するアザゼル。昴は紙一重でかわしたが、その拳の風圧で僅かに眉間部分を傷つけてしまったのだ。

 

 

「…」

 

「…」

 

一定の距離を保って対峙する2人。

 

「(速いな。女王(クイーン)昇格(プロモーション)した事により、以前に手合わせした時とは比較にならん)」

 

既に女王(クイーン)昇格(プロモーション)している昴。その持ち前のスピードはさらに増していた。

 

「(一撃の破壊力もしかりだ。迂闊に受け続ければカウンターでなくともやられかねんな)」

 

当然、攻撃力も増しており、一撃の威力も上がっている。

 

「…」

 

 

――ドン!!!

 

 

再び昴が加速、今度は前にではなく、右方向へ。正面からではなく、左右から仕掛ける。

 

「(さらにスピードを上げたか! だが…!)」

 

 

――ドン!!!

 

 

「追い付けないスピードではない」

 

直後にサイラオーグも動き、昴の進路を先回りして塞ぐ。

 

 

――ドン!!!

 

 

昴は急停止し、左方向に動き、加速する。

 

 

――ドン!!!

 

 

同時にサイラオーグも追走、再び回り込み、昴の進路を塞いだ。

 

 

――スッ…。

 

 

進路を塞がれるのと同時に昴は左右の拳を弾幕のように打ち込む。複数の打撃がサイラオーグの身体に突き刺さる。

 

 

――ブォン!!!

 

 

しかし、サイラオーグは打撃を食らってもお構いなしに渾身の一撃を昴目掛けて振るう。昴はこれをかわす。

 

「今度は逃がさん!」

 

すぐさまサイラオーグは追撃。今度はサイラオーグが左右の連打を振るう。

 

「…」

 

左右の連打を昴は全て避け、サイドステップでサイラオーグの拳の射程外に移動する。

 

「これをかわすか! ならば、もっとギアを上げよう!」

 

スーッと、サイラオーグは大きく息を吸い、肺に酸素を取り込む。

 

 

――ドン!!!

 

 

その直後、射程外に逃げる昴に追撃をかけ、先程よりさらに回転の速い左右の連打を絶え間なく繰り出す。

 

「(あの手合わせ以降、俺が今日まで行って来たのは、単純なフィジカルアップに体力アップ、後はより手数を増やす為の戦闘フォームの改造。全ては今日、お前に勝つ為だ。この拳がお前を捉えるまで、打ち続けるのみ!)」

 

尚もサイラオーグは機関銃のような左右の連打を打ち続ける。

 

「…っ」

 

昴の表情が変わる。サイラオーグの左右の拳の暴風雨が一向に収まる気配がないのだ。こうも手数もスピードもあっては、射程外に逃げる事もままならない。かと言って攻勢に転じようにも万が一、相打ちになってしまえばそこからこの連打の餌食になってしまう。昴はひたすらにサイラオーグの拳を避け続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…っ」

 

再び観客席の雪蘭。凄まじい程のサイラオーグの攻撃に言葉を失う。

 

「にゃあー!? 逃げてスバルー!」

 

これにリィも悲鳴のような声を上げる。

 

「逃げ場などない。何処に逃げても追撃されるだけだ」

 

カーラマインが険しい表情で答える。

 

「…っ、イザベル様ならどう凌ぎますか?」

 

同様にサイラオーグの攻勢に背筋に冷たいものを感じながらミラが尋ねる。

 

「…ああもラッシュを纏められては、迂闊に反撃出来ん。相打ちにでもなれば目も当てられんからな。今はここを何とか凌ぐしかない。如何にサイラオーグ様と言えど、いつかはラッシュの限界が来る。それまで凌ぎ、手が止まった所で――」

 

 

――バチィッ!!!

 

 

その時、昴がラッシュの中の1つ、左の拳をかわしながら交差するように左の拳を打ち込んだ。

 

「っ!?」

 

これに、イザベルが目を見開きながら驚く。

 

 

――バチィッ!!!

 

 

その後も、昴はサイラオーグの拳の弾幕の隙間を縫いながら要所要所で拳を打ち込んでいく。

 

「……凄い」

 

言葉を失っていた雪蘭。ようやく絞り出した言葉がこれだった。

 

「…正気の沙汰とは思えんな」

 

引き攣った表情のカーラマイン。

 

「同感だ。奴には恐怖がないのか? それとも、奴にはあれが止まって見えるとでも言うのか?」

 

同様に、イザベラも表情を引き攣らせたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…」

 

一方のリアスとレグルス。当初はリアスが滅びの力を打ち続けていたが、昴とサイラオーグの戦いが始まってからは、2人の戦いを見守っていた。

 

『…あれほどか、申し訳ありませんサイラオーグ様。邪魔だてしないように命令されておりましたが…』

 

独り言をした後、レグルスが被っていた仮面を外した。

 

『お二人の決着が付くまでやり過ごすつもりだったが、事情が変わった。覚悟していただきます』

 

「何を――っ!?」

 

突然、仮面を外し、何やら呟き始めたレグルスに戸惑うリアス。次の瞬間、レグルスの変化に目を見開くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

激しい打ち合いをする昴とサイラオーグ。激しい弾幕のように拳を振るい続けるサイラオーグ。昴はその拳を全て避け、合間に自身の拳を打ち込んでいく。

 

 

――バチィッ!!!

 

 

何発目かの昴の一撃。

 

「…っ」

 

これまで反撃を受けてもお構いなしに拳を打ち続けていたサイラオーグの動きがここで僅かに止まる。

 

「まだまだ――っ!?」

 

すぐに体勢を立て直し、反撃をしようとしたサイラオーグだったが、昴はその時既に眼前にはいなかった。

 

「…」

 

後ろへと振り返るサイラオーグ。自身から5メートル程離れた位置に、昴は立っていた。

 

「…やるな」

 

表情変えずに佇む昴に、サイラオーグは賛辞の言葉を贈った。

 

「…」

 

「…」

 

再び距離を取って睨み合う2人。

 

 

――ボコッ!!! ベキッ!!!

 

 

その時、異様な異音が響き渡る。

 

「…っ」

 

音のする方角に昴が視線を向けると、その先にはレグルス。レグルスの身体が盛り上がり始め、徐々に膨れ上がっていき、さらには、全身から金毛が生え始める。同時に腕と足も逞しく膨れ上がり、口から鋭い牙が生え、尻尾が生え、金毛が首の周囲に揃い始めた。

 

 

――ガゴォォォォォォォン!!!

 

 

やがて、額に宝玉のようなものが現れる。そして、変貌を終えたレグルスが、一帯を震わせる程の咆哮を上げる。全長は先程の一般的なヒトのサイズから、5メートルを超える巨体へと変え、その姿は巨大なライオンを思わせる姿だった。

 

「ライオン…いや、獅子か?」

 

昴が変貌を遂げたレグルスを見て呟く。

 

 

『おいおいおい、ありゃ、ネメアの獅子じゃねえか!』

 

獅子に姿を変えたレグルスを見て、アザゼルが興奮気味に声を上げる。

 

続けて、アザゼルが解説を始める。目の前の獅子は、元々ヘラクレスの試練の相手であり、聖書の神によって、神器(セイクリッドギア)に封じられた存在。今では、13ある神滅具(ロンギヌス)の1つに数えられ、極めれば、一振りで大地を割る事も出来、敵に放った飛び道具から所有者を守ったり、果ては獅子に変化する事も出来たりする。その名は、獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)

 

『所有者共々行方不明になって所在不明だったんだが、まさか、バアル眷属の兵士(ポーン)になってやがったか! かー! 興味が尽きねえ! 是非とも研究してーなー!』

 

好奇心旺盛なアザゼルは興奮を隠せずにいたのだった。

 

 

「所有者は既に死んでいる。怪しげな集団に殺されてな。本来ならば、戦斧(バトル・アックス)も消滅するはずなのだろうが、そうはならず、あろう事か、所有者を殺した集団を皆殺しにしていた」

 

正体が明らかになると、サイラオーグが事の経緯を説明し始める。

 

「そこで俺が眷属にした。何か縁を感じたのでな」

 

「…」

 

説明に耳を傾ける。

 

「ここまで情報を伏し、出さなかったのは、未だ力が不安定だったからだ。最悪、暴走状態になって敵味方問わず、襲い掛かりかねん。故に、俺と組めるこの状況になるまで出せなかった」

 

「…」

 

説明を聞き終えた昴は思考する。

 

考えるのは、あの獅子と対峙するリアスの事。リアスが撃破(テイク)されればこのゲームは負け。元が神滅具(ロンギヌス)ともなれば、その力もかなり強大と見て差し支えないだろう。

 

「…」

 

試合の行方とリアスの安否を考えるなら、先んじてレグルスの獅子を撃破(テイク)しておくべきなのだが、サイラオーグがそれを許すはずがない。先のベルーガ・フールカス、コリアナ・アンドレアルフス戦の時のように、片手間で撃破(テイク)するのも恐らく不可能。

 

「(なら、俺が取るべきは…)」

 

意を決した昴は身体を前傾姿勢、前足に体重を掛ける。これまでの回避最優先のカウンター主体の後の先を取る構えから、自らが仕掛ける攻撃主体の構えにシフトチェンジした。先に撃破(テイク)する事も、隙を見て撃破(テイク)する事も出来ないなら、早々にサイラオーグ(キング)撃破(テイク)してしまえばいい。

 

「ほう」

 

それを見たサイラオーグの口角が上がる。

 

構えの変化に即座に気付いたサイラオーグ。当然、あの前傾姿勢の構えの意味にも気付いている。

 

「そう来なくてはな。ならば、こっちはさらにギアを上げて行くぞ!」

 

 

――ドン!!!

 

 

先にサイラオーグが地を蹴り、昴との距離を一気に縮める。

 

 

――ブォン!!!

 

 

射程内に飛び込むと、サイラオーグはすぐさま左右の拳を昴目掛けて打ち込む。

 

「…」

 

これを昴は身体を振って避ける。しかし、これでサイラオーグの攻撃は止まらない。

 

「…っ」

 

構えを攻撃にシフトした事で、打撃のかわし方が紙一重になり、時折、風圧で僅かに皮膚を裂いていく。

 

 

――ザッ!!!

 

 

昴はサイラオーグの拳の暴風雨を掻い潜り、懐へと飛び込んだ。

 

「(構えを攻撃体勢にしてもこうもかわすか!)…ならば、さらにギアを上げるまでだ!」

 

 

――ブォン!!!

 

 

地面から頭上へ突き上げる拳。昴は上半身を上げて避ける。その際、髪の毛が数本舞い散る。

 

「…っ」

 

言葉通り、サイラオーグの手数、スピードが更に増す。それでも昴は紙一重でかわす。

 

 

『おーっと! さらに激しさを増すサイラオーグ選手の攻撃! 昴選手は避けるだけで精一杯か!?』

 

思わず立ち上がる実況。

 

 

「どうした! 逃げ回っていては俺は倒せんぞ!」

 

挑発の言葉をかけるサイラオーグ。

 

「…」

 

弾幕のようなサイラオーグの猛攻撃を避け続ける昴。

 

「(木場、ゼノヴィア、小猫。お前達のおかげだ。お前達が身体を張って情報を引き出してくれたおかげで――)」

 

 

――スッ…。

 

 

「っ!?」

 

「(俺はこうやって射程距離に踏み込める!)」

 

サイラオーグの繰り出した右拳の一撃を掻い潜り、一瞬で懐に飛び込んだ昴。

 

「…っ」

 

咄嗟に薙ぎ払うように左拳を振るうサイラオーグ。

 

 

――バチィッ!!!

 

 

それをかわしながら同時に昴は左拳をサイラオーグにぶつける。

 

「…」

 

カウンターを貰うもサイラオーグはお構いなしに昴に追撃をかける。

 

 

――バチィッ!!!

 

 

3発の拳を繰り出すも、1、2発目を避け、3発目に再びカウンターの拳を合わせた。

 

「…っ」

 

今度は僅かに顔を歪めるも、それでもサイラオーグは手を出すのを止めない。しかし…。

 

 

――バチィッ!!!

 

 

この拳にも昴はカウンターの拳を合わせる。

 

「…っ!」

 

これが効いたのか、ここまでずっと手を出し続けていたサイラオーグも手を止めてしまう。

 

「…」

 

好機と見た昴はサイラオーグに拳を打ち込む。

 

「おぉっ!!!」

 

それだけで終わらず、昴はサイラオーグに追撃の拳を打ち込む。5発、6発、7発、8発…。

 

「…っ」

 

遂に棒立ちになるサイラオーグ。

 

 

――バキィィィィッ!!!

 

 

そこに、身体を回転させながら右足をサイラオーグの顎に蹴り込む。サイラオーグは宙高く舞い上がった。

 

 

――スッ…。

 

 

ある程度高く舞い上がった所でサイラオーグは宙返りをしながら体勢を立て直し、着地した。

 

「…」

 

「…」

 

右足を下ろした昴と、再び口元から血を滴らすサイラオーグが睨み合う。

 

「…っ!」

 

表情を歪めたサイラオーグの膝が折れ、片膝を地面に付けてしまう。

 

 

『サイラオーグの選手の膝が折れた!? 遂に昴選手がサイラオーグ選手の牙城を崩したぁっ!!!』

 

思わず熱の入った実況が入る。

 

 

「(この機は逃さ――)」

 

「キャッ!?」

 

追撃をかけようと、1歩踏み出したその時、昴の耳に悲鳴が届く。

 

「…っ」

 

瞬時に状況を理解した昴は追撃を止め、動く。

 

昴の視界の先、そこには、自身の身を血で染めたリアスの姿が。そんなリアスの前にレグルスが立ち塞がっていた。

 

「…」

 

レグルスは昴が迫って来るとすぐさまその場を離れた。昴は距離を取ったレグルスには目もくれず、リアスを抱きかかえるとサイラオーグ、レグルスから距離を取った。

 

「…」

 

警戒しながら昴がリアスの容体を確認する。

 

「…これを使います」

 

昴は懐からフェニックスの涙を取り出した。リアスの傷は軽くなく、放っておけば程なくして撃破(テイク)判定となってしまう程の手傷を負っていたからだ。

 

「ごめん…なさい。私があなたの足を引っ張って…」

 

手助け所か、足枷になってしまった事を恥じてか、悔しさで顔を歪ませるリアス。フェニックスの涙を振りかけると、リアスの傷はみるみる塞がっていった。

 

「レグルス…」

 

『御命令に逆らってしまい、申し訳ありません。罰は如何様にも…』

 

当初、サイラオーグは思う存分、昴との戦いに没頭する為、レグルスにはリアスの足止めのみを命じていた。しかし、レグルスは状況を鑑みて、リアスチームの切り札であるフェニックスの涙を使わせ、後顧の憂いを断つ為、リアスをリタイヤ寸前まで負傷させた。

 

「…いやいい。それをしてしまえば、俺の(キング)としての資質を問われてしまうからな。何より、お前はこの試合の勝利の為に動いた事。罰など与えて良い訳がない」

 

サイラオーグは、レグルスの行動が忠誠心とこの試合の勝利の為の行動である事を理解していた。何よりレグルスにも決して軽くはないダメージがある事が見て取れたので、咎める事はしなかった。

 

「だが、これ以上は自重しろ。この試合は、俺と赤龍帝の戦いを以てケリを付けなければ意味がないのだからな」

 

ただこのレーティングゲームに勝利をするだけなら話は簡単。レグルスに昴の足止めをさせ、自身がリアスを撃破(テイク)してしまえばいい。ほんの1分…いや、30秒あればサイラオーグの実力ならば、リアスを撃破(テイク)するには充分な時間であるし、レグルスであればそれも可能だろう。だが、そんな結末でこのレーティングゲームを終わらせても、一部の上役は喜ぶだろうが、このレーティングゲームを見ている観客は望まない。何より、サイラオーグ自身が1番望んでいない。

 

「部長、下がっていて下さい。サイラオーグさんの性格を考えれば、これ以上、あの獅子に横槍は入れさせないでしょうが、万が一の事もあります」

 

「……ええ、その方が良いでしょうね」

 

リアスにとってはある種、非情な昴の言葉。しかし、リアスはこれを聞き入れた。現状、そうするしかないからだ。リアスが後ろへ下がると、昴は前に出た。

 

フェニックスの涙を失ったが、極端に昴が不利になった訳でもなければ、サイラオーグが有利となった訳ではない。

 

「下がっていろ」

 

昴に呼応するようにサイラオーグも前に出る。

 

『サイラオーグ様、不躾ながら、具申致します! 私をその身にお纏い下さい! あの禁手(バランスブレイク)ならば、あの赤龍帝をも圧倒出来ましょう! この試合の勝利の為、何卒――』

 

「口を慎め! あの力は冥界が危機に瀕した時のみ使うと言っただろう! この戦い、俺の力のみで戦い、勝利しなければその勝利に価値などない!」

 

ここまでレグルスの行動に寛容だったサイラオーグが遂に激昂する。

 

「分かったのならそこで見ていろ。必ず俺がこの手で――」

 

「――使って下さい」

 

話を強引に切り上げようとするサイラオーグに、昴が口を割り込ませた。

 

「話は理解しました。察するに、その獅子の力を使えば、あなたはさらに強くなるのでしょう? ならば、使って下さい」

 

「…っ」

 

そう促されるも、サイラオーグは難色を示す。

 

「余力を残したあなたに勝ったとて、その勝利に何の価値がある? あなたにとって、自身の力だけで戦うのが誇りと言うなら、俺にとっては侮辱でしかない。あなたが今、用いる最大の力と戦った上での勝利こそ、この戦いの最大の意義がある」

 

サイラオーグから全力を引き出すべく、昴は続ける。

 

「あなたの全力を見せてくれ。あなたが俺の立場なら、同じ事を言ったはずだ。だから、あなたの全てを見せてくれ。あなたの全力をも俺は超えて見せよう!」

 

宣言する昴。

 

「…全く、あなたってヒトは」

 

みすみす自身の勝率を減らす行為。同じ二天龍であるヴァーリ程ではないにしろ、昴もまた、戦いに誇りを重んじる性格である事を知っているリアスは、苦笑しながら自嘲気味に呟いた。

 

「……お前の言う通りだ。俺は自分のつまらない誇りの為にお前を…この戦いを侮辱してしまった。すまなかった」

 

昴の言葉に感化されたサイラオーグが謝罪を口にする。

 

「例えゲームであろうとも、俺達にとっては全てを賭け、ぶつけ合う戦い。持てる力を全て出さねば、無粋と言うもの!」

 

 

――ドゥッ!!!

 

 

次の瞬間、サイラオーグの身を覆うオーラが一際膨れ上がった。

 

「レグルスゥッ!!!」

 

『ハッ!』

 

レグルスを呼ぶと、サイラオーグの横に並びながらその声に応えるレグルス。

 

「前言撤回する。共に戦い、この目の前の最高の男を全力で倒す!」

 

『っ! そのお言葉を待っておりました!!!』

 

待ち望んだサイラオーグの言葉を受け、レグルスは歓喜し、その全身が黄金の輝き始め、その光がサイラオーグを包み始めた。

 

「我が獅子よ! ネメアの王よ! 獅子王と呼ばれた汝よ! 我が猛りの応じ、衣と化せぇぇぇぇぇッ!!!」

 

 

――ドォォォォォッ!!!

 

 

その叫びと同時に、フィールド全体が大きく揺るぎ出し、サイラオーグの周辺が風景が吹き飛び始めた。やがてそれが治まり、束の間の静寂が訪れると…。

 

禁手(バランスブレイク)!!!」

 

禁手(バランスブレイク)!!!』

 

 

――カッ!!!

 

 

サイラオーグとレグルスが同時に叫び、その瞬間、辺り一帯を眩い閃光が照らし出した。ひとしきり閃光を照らし、収まるとそこには…。

 

「…っ」

 

眩い閃光をその腕で覆っていたリアスが腕を下ろし、その後に目に飛び込んで来た光景に目を見開く。

 

金色の獅子の全身鎧(プレート・アーマー)に身を包んだサイラオーグが、頭部の兜の金毛のたてがみを靡かせながら立っていた。

 

獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)禁手(バランスブレイカー)獅子王の剛皮(レグルス・レイ・レザー・レックス)。これが今の俺が持ち得る全力の姿だ」

 

「…っ」

 

サイラオーグが発せられるプレッシャーをその身に感じ、僅かに表情を顰める昴。

 

 

――スッ…。

 

 

昴は無言で構えを取り…。

 

 

――ドン!!!

 

 

激しく地を蹴り、サイラオーグ目掛けて真っ正面から飛び込む。

 

「…っ!」

 

右拳を握り込みながら射程内の踏み込むと、サイラオーグの顔面目掛け、その右拳を打ち込んだ。

 

「…」

 

サイラオーグは動じる事無く左手を前へ突き出し、その右手を受け止めようとする。

 

 

――スッ…。

 

 

その瞬間、昴の姿がサイラオーグの目の前から消え失せる。

 

「…っ」

 

背後に回り込んだ昴が改めてサイラオーグに右拳を打ち込んだ。

 

 

――ゴッ!!!

 

 

拳が直撃する瞬間、振り返ったサイラオーグ。しかし右拳はそのままサイラオーグの頬に突き刺さった。

 

「っ!?」

 

大きく目を見開いた昴が衝動的にバックステップをし、距離を取る。

 

「相変わらず、良い一撃だ。気迫と想いが込められた重い拳だ。この状態の俺でなければ、確実に効かされていただろう」

 

全体重を乗せ、全力の力を込めた一撃。直撃に瞬間、拳には確かな手応えがあった。しかし、当のサイラオーグは微動だにせず、平然としていた。

 

「この姿になってしまえば、今まで以上に手加減は出来ん。殺してしまっても恨むなよ、御剣昴」

 

サイラオーグは静かに告げたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

遂に始まった最終戦…。

 

昴とサイラオーグがぶつかり合い、圧倒的なパワーとスピードで襲い掛かるサイラオーグを、昴はいなし、確実にダメージを与えていた。

 

しかし、別で戦っていたリアスがレグルスに手傷を負わされ、フェニックスの涙を使わされてしまう。

 

その後、レグルスの力を拒むサイラオーグに、昴が檄を飛ばし、サイラオーグは全力で戦う事を決意する。

 

全力の一撃を平然と受け止めるサイラオーグ。

 

最終戦は、佳境を迎えるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





この戦い、長くなりそうだな…(;^ω^)

と言うか、今年中にこの章を終わらせたかったのですが、行けんのかなこれ。ちょっと不安になってきた…(>_<)

闘いの描写は、某人気ボクシング漫画を参考にしております。自身は軽く武道を齧ったのみで、格闘技は未経験なのですが、正直、蹴り…特に頭部を狙ったハイキックってそう簡単には当たらないなと思うのは自分だけですかね。だからほとんでパンチの描写が多くなっています…((+_+))

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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