ハイスクールD×D~転生せし守り手~   作:bridge

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投稿します!

気が付けば、お気に入りが1000を超えてた…(´▽`*)

それではどうぞ!



Life.143~急行、窮地~

 

 

 

進級試験終了後…。

 

ホテルに戻った昴、木場、朱乃は、リアスが貸し切ったホテルのレストランにて、慰労を兼ねた食事会に参加した。

 

その最中、不審な人物を見つけた昴がこれを追跡、その結果、襲撃をかけてきた曹操を始めとした英雄派によって、昴とリアス達は分断されてしまう。

 

曹操の野望を阻止する為、昴はリアス達の下へ向かうべく、次元の狭間へと飛び込んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「ここが、次元の狭間か…」

 

アザゼルとカッシュによって開かれた入り口に飛び込み、次元の狭間へと足を踏み入れた昴。周囲には、様々な色が交じり合った、言わば万華鏡のような景色が広がっていた。

 

「不思議な所だ……っと、早く、リアスの下へ向かわないと…」

 

始めて踏み入った次元の狭間に圧倒されるも、すぐさま目的を思い出した昴は目を瞑り、意識を集中させ、気配探知を始める。絶霧(ディメンション・ロスト)で創られた空間に入った誰かしらの気配を探知出来れば、後はその方向へ向かうだけ…。

 

「………見つけた!」

 

探知に成功した昴は目を開け、その方向へ視線を向ける。

 

『捉えたか!?』

 

「ああ。あっちの方向に、僅かだが、オーフィスのオーラを探知した」

 

ドライグの問いに、その方角を指差す昴。

 

「結構、距離があるな」

 

そう呟き、昴は足元にブーステッド・ギア・スカイボードを展開させた。

 

「時間が惜しい。全速力でかっ飛ばす」

 

その言葉と同時にゴォッ! と言う轟音と共に足元のボードがバーニアを吹かせると急加速し、高速で進み始めた。

 

「頼む、俺が付くまで無事でいてくれよ!」

 

そう願いながら、昴は目的の場所まで向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「……っ!?」

 

出発してから10分程が経過したその時、高速で移動中の昴の表情が変わる。

 

『どうかしたか?』

 

それに気付いたドライグが声をかける。

 

「オーフィスのオーラが消えた…」

 

『何だと!?』

 

この回答に、ドライグが驚きの声を上げる。

 

「…いや、正確には、オーフィスのオーラがどんどん小さくなっていっている」

 

探知したオーフィスのオーラが突如として、小さくなり始めたのだ。

 

『むぅ、となると、やはりサマエルか! しかし、あのオーフィスですら、抗えんとは…』

 

「大雑把な位置は掴んでいるが、このまま小さくなり続けると面倒だ。完全に探知出来なくなる前にもっと近づかないと…!」

 

そう言い、禁手化して軽鎧を纏うと、昴はボードに膝を付け、左手をボードに翳した。

 

「曹操とやり合う前に消耗したくはなかったが、この際、やむを得ない。俺がさらにこのボードにオーラを注ぎ込み、さらに加速させる」

 

『これ以上の加速は、ボードの方が持たぬぞ?』

 

「目的地まで持てばいい。…スマンが、壊れたら後で修理は頼む」

 

謝罪と共にオーラを注ぎ込むと、ボードはさらに加速、そのスピードを上げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「……気配はこの辺りからしたはずだが…、あれか?」

 

あれからさらに15分程進むと、オーラを探知した付近に辿り着いた。すると前方に、大きな何かを覆うように霧のようなものが漂っていた。

 

「ごきげんよう…」

 

その時、前方から何やら声が発せられた。声の先には、先程、昴を誘き寄せた外套を纏った者が佇んでいた。

 

「良くここを見つけた。残念だが、ここは通さな――」

 

 

――ドゴォォォォォッ!!!

 

 

言い切る前に昴はボードから飛び降り、ボードだけを外套の者にぶつけた。ぶつかるのと同時にボードは大きな爆発を起こし、外套の者は黒焦げになり、ブスブスと煙を上げながら落下していった。

 

『馬鹿者! もっと大切に扱わんか! 誰があれを修理すると思ってるんだ!?』

 

ぞんざいなボードの扱いに、ドライグが抗議をする。

 

「しょうがないだろ。加速し過ぎて急停止出来なかったんだから」

 

頬を掻きながら言い訳をする昴。

 

「何より、ゲオルクに通信を入れられて、場所を移されるなり、侵入を困難にされちまったらその方が一大事だ」

 

『…むぅ』

 

続けてされた説明に、ドライグは渋々納得した。

 

「とは言え、ご丁寧に見張りを立てていた所を見るに、ここで間違いなさそうだ。何より、目と鼻の先に、オーフィスのオーラを感じる。それだけじゃない、リアスや他の皆のオーラを感じる。…ん? ヴァ―リのオーラも感じるな」

 

次元の狭間へと飛び込んだ直後は、距離があり過ぎた為、強大なオーフィスのオーラしか探知出来なかったが、今では距離が近い為か、それ以外の者ののオーラ…それこそ、アーシアのオーラすら探知出来る程であった。

 

「後は、どうやって中に入るかだが…」

 

場所を特定に成功し、次の課題は、侵入方法…。

 

『あの霧のてっぺんに向かいな』

 

その時、ドライグではなく、刃の声で指示が飛んだ。

 

『あの絶霧(ディメンション・ロスト)で創られた空間を結界で覆っているようだが、天井部分が脆くなっているみたいだ。あの小僧が未熟なのか、意図して脆くしているのか、それとも、別の事で手が塞がっている(・・・・・・・・・・・・)のか、定かではないけど』

 

「…分かった」

 

その言葉を信じ、昴は頭頂部へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

その頃、別空間に飛ばされたリアス達は…。

 

「…くっ!」

 

苦悶の声を上げているのは木場。

 

「なかなかやるじゃないか」

 

その木場と対峙しているのは、槍を肩にかける曹操。

 

「(強い! 昴君との戦いを見て、ある程度、イメージは出来ていたつもりだったけど、甘かった…!)」

 

苦々しい表情で曹操を睨み付ける木場。

 

曹操達が現れ、間もなくして、リアス達と曹操達の戦いは始まった。しかし、瞬く間に味方戦力は無力化されてしまった。

 

「ゼノヴィアさん! しっかりして下さい!」

 

涙目になりながら治療を施すアーシア。

 

「ぐっ…!」

 

その目の前には、腹部を押さえながら倒れ伏しているゼノヴィアが…。

 

「姉様…! 姉様…!」

 

少し離れた所で、身体から血を吹き出し、節々で煙を上げながら倒れている黒歌と、そんな黒歌に縋りつくようにしている小猫がいた。

 

「くっそ…!」

 

さらに離れた所で、同じく身体中が血塗れとなっているヴァーリが苦痛でその表情を歪めていた。

 

「「…っ」」

 

別の場所では、リアスと朱乃が、歯をきつく噛みしめていた。木場の援護をしたいのだが、出来ずにいた。

 

『…』

 

さらに別の場所では、黒い塊のようなものと、その塊から触手のようなものが伸び、その先には、十字架に張り付けにされた、異形の形のドラゴンのような生き物がいた。

 

絶霧(ディメンション・ロスト)で創られた空間にて、リアス達の前に現れた曹操達。そのすぐ後に、黒歌とルフェイの手によって、フェンリルと入れ替わるようにヴァーリがこの空間に現れた。ヴァ―リが現れると、曹操達はこの空間に十字架に張り付けられた異形の生き物、龍喰者(ドラゴン・イーター)サマエルを召喚し、瞬く間にオーフィスをかの黒い塊で拘束した。拘束されたオーフィスを救い出そうと試みたが、全てが無駄に終わった。

 

オーフィスを拘束すると、曹操が改めて宣戦布告をした後、自身の持つ聖槍、黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)禁手化(バランス・ブレイク)し、自身の7つの球体のような物を取り囲む、極夜なる天輪聖王(ポーラーナイト)の輝廻槍(・ロンギヌス・チャクラヴァルティン)を披露。7つの球体の内の1つで、最初にゼノヴィアの持つエクス・デュランダルを破壊し、直後にゼノヴィアの腹部を貫き、ゼノヴィアを無力化。

 

次に、別の球体をリアスと朱乃の下に飛ばし、2人の異能を封じ、リアスと朱乃を無力化した。

 

直後、ヴァーリが曹操と対峙し、強大な魔力の一撃を撃ち込むと、曹操はまた別の球体を飛ばし、その強大な魔力の一撃を別の者、小猫へと受け流した。これに反応出来ていたなかった小猫だったが、これを察知した黒歌が小猫の前に立ちはだかり自らを盾に小猫を守り、自らは重傷を負った。これにより、黒歌を無力化した。

 

これに激昂したヴァーリが覇龍(ジャガーノート・ドライブ)を発動させ、一気に勝負を決めようとしたが、その反動でこの空間を崩壊させてしまう事を危惧したゲオルクがサマエルを操り、ヴァーリを攻撃、究極の龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)をその身で受けたヴァーリは身体中から大量の血を吹き出しながら倒れ、ヴァーリを無力化した。

 

1対多数の戦いだったが、曹操は、自身の力をサマエルの力で、リアス及びグレモリー眷属と、ヴァーリとその仲間の大半を無力化。残りの戦力は、木場、小猫、イリナ、アーシア、ルフェイの5人。しかし、アーシアはそもそもこの場において戦闘力は皆無に等しいし、小猫は自身の姉である、黒歌が自身を身を呈して守り、倒れた事で戦意を失った。イリナとルフェイにしても、曹操の圧倒的な力の前に動きが取れないでいた。

 

もはや、曹操とまともに斬り結べるのは木場だけとなってしまった。

 

「木場祐斗。君もまた、かなりの逸材だ。赤龍帝を除けば、グレモリー眷属の中で君が唯一俺とまともに戦えるのは君だけだろうと評価していたが、ここまでやれるとは思っていなかった。良く鍛えられているよ」

 

木場と数合やり合った曹操が木場を称賛する。

 

「生憎と、僕には皮肉を言われているようにしか聞こえないよ」

 

とうの木場は嫌味のようにしか聞こえず、苦々しい表情で返す。

 

「本心さ。純粋な技量だけなら、ジークフリートをも上回っているかもしれない。君自身の才能によるものなのだろうが、…ふふっ、普段から良い稽古相手(・・・・・・)がいるのが大きいのかもな」

 

「…」

 

木場は聖魔剣を構えながら次の一手を模索する。

 

「さて、次はどう打って出る? 残念だが、時間は有限だ。こっちもいつまでもは待てないぞ」

 

「待たせるつもりない。…行くよ!」

 

そう叫ぶと、木場の周囲に龍の騎士団が現れる。

 

「新しい禁手(バランス・ブレイカー)。ようやくお披露目してくれたか。実を言うと、聖魔剣より、そっちの方が興味があったんだ」

 

木場のもう1つの神器(セイクリッドギア)聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)禁手(バランス・ブレイカー)聖覇の龍騎士団(グローリィ・ドラグ・トルーパー)を目の当たりにし、目を輝かせる曹操。

 

「存分に見ればいい!」

 

木場が檄と共に龍の騎士団が曹操に向けて動き出す。

 

「なるほど、速度は申し分ない。…だが」

 

 

――バキィィィッ!!!

 

 

「技術までは、まだ手が充分に回っていないな」

 

球体の1つを操った曹操が龍の騎士団を次々と破壊した。

 

「ほう?」

 

感嘆の声を上げる曹操。龍の騎士団を破壊した次の瞬間、今度は複数本の聖魔剣が曹操の頭上から襲い掛かった。

 

「隙間を空けず、二段構えか! 面白い」

 

 

――バキィィィッ!!!

 

 

円を描くように聖槍を振るい、襲い掛かる聖魔剣を振るったと同時に放たれたオーラで弾き飛ばした。

 

「面白い試みだったが、これでも足らないな」

 

余裕の笑みを浮かべる曹操。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

次の瞬間、背後から曹操の胸に剣が突き立てられた。

 

「三段構え、これならどうです?」

 

曹操の背後から突き立てた聖魔剣をさらに押し込む木場。

 

木場の作戦は、初手で龍の騎士団を使って曹操の目くらましをし、二手目で聖魔剣を使って隙を作り、三手目で背後から強襲だった。

 

「やったわ!」

 

胸に突き立てられた聖魔剣を見て、イリナが歓喜する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――残念」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝利したと思われたその時、木場の背後から声が届いた。

 

「っ!?」

 

その声に目を見開きながら振り返るとそこには、曹操の姿があった。視線を今、自身が胸を貫いた曹操に戻すと、先程曹操だった姿が人型の光の幻影と姿を変えた。

 

居士宝(ガハパティラタナ)七宝(シッポウ)の1つだ。まだまだ未完成な代物だが、目くらましのデコイに使うくらいなら充分だ」

 

そう言い、曹操は聖槍の切っ先を木場に向けると、木場目掛けて槍を伸ばした。

 

「1つ教えておこう。必要な情報を集め、精査し、それを基に練り上げられたものは『策』と呼べるが、情報が集まりきらない、不透明な状態で練り上げたものはもはや、『賭け』でしかないのだよ」

 

「(ま…ずい!)

 

グングンその身に迫る聖槍の穂先。悪魔にとって、この聖槍は最悪の特攻。掠っただけでも致命傷になりかねない。

 

「う…ごけ!」

 

咄嗟に聖魔剣を手放し、上半身を後方に倒すと、木場の額の僅か数㎝上を紙一重で通過。間一髪で聖槍をかわした。

 

「ほう? 一声かけたとは言え、よくかわせた。…だが、かわして良かったのか?」

 

ニヤリとする曹操。

 

「(っ!? しまった!)」

 

含みのある曹操の言葉を聞き、木場が自身の僅か上を通過した聖槍の行く末に視線を向けるとその先に、ゼノヴィアの治療を終え、黒歌の治療を施しているアーシアがいた。アーシアは治療に集中していた為、迫り来る聖槍に気付いていない。

 

「アーシアさん、逃げて!!!」

 

叫ぶのと同時に即座に聖魔剣を発現させ、軌道を逸らす為に聖槍の柄に斬り付ける木場。

 

「…えっ?」

 

その声に反応し、視線を向けたアーシアだったが、状況把握が追い付かず、ただただ茫然としていた。

 

「アー…シア…!」

 

「アーシアさん!!!」

 

アーシアを守ろうとしたゼノヴィアだったが、治療は終わってもまだ身体が動かせず、イリナも動くが距離があり、間に合わない。

 

「(ダメだ、間に合わない!)」

 

聖魔剣を振るう木場だったが、間に合わない事を悲痛に悟る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ガギィィィン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伸びる聖槍がアーシアを貫こうとしたその時、甲高い金属音がフロア一帯に響き渡る。

 

「…っ」

 

咄嗟に自身の顔を両腕で覆ったアーシアが恐る恐る両腕を下ろす。

 

「……あっ…、あぁ…!」

 

その目に飛び込んだ光景にアーシアは涙を浮かべながら歓喜する。

 

 

――自身を、そして大切な仲間を何度も救い、如何なる困難をも打開していった、誰よりも頼もしい、誰よりも愛しい大きな背中…。

 

 

「間一髪、間に合ったみたいだな」

 

グレモリー眷属が誇る、最高の眷属にして、最強の武人、御剣昴がそこにいた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「よし、入れた!」

 

次元の狭間から絶霧(ディメンション・ロスト)で創られた空間の侵入に成功した昴。

 

「……これは、俺がさっきまでいたホテルか? なるほど、京都の時と同じか」

 

以前の京都の時も、二条城周辺を忠実に再現しており、今回も、昴達が利用していたホテルが同様に再現されていた。

 

「っと、早く、皆と合流しないと。……気配のする位置からして、ロビーか」

 

すかさず気配の探知をし、場所を特定すると、すぐさまそこへと急行した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「っ!?」

 

ロビーに到着した昴は、その目に飛び込んできた光景に目が見開かれる。曹操が伸ばした聖槍が、アーシアに襲い掛かろうとしてたのだ。

 

「させるか!」

 

すぐさま地を蹴って加速し、アーシアの前に立ち塞がり…。

 

 

――ガギィィィン!!!

 

 

村雨の刀身を盾にし、聖槍を受け止めた。

 

「……あっ…、あぁ…!」

 

昴の背中にいるアーシアが嗚咽のような声を漏らす。

 

「間一髪、間に合ったみたいだな」

 

聖槍は、アーシアを貫くより早く、昴によって止められた。

 

「スバルさん!」

 

待ち望んでいた男の登場に、アーシアは歓喜する。

 

「悪い、遅くなった」

 

チラリと背後を振り向きながら一言謝る昴。

 

「…」

 

状況把握をする為、視線だけで周囲を見渡す。

 

悔し気な表情で立ち尽くすリアスと朱乃。砕けたデュランダルを握りしめながら倒れ伏すゼノヴィア。アーシアのすぐ傍で血塗れで煙を上げた状態で倒れている黒歌とその黒歌に寄りそう小猫。同じく、血塗れで苦悶の表情で倒れているヴァーリ。残った面々は、少なくとも、目立った手傷は見られない。

 

「…っ」

 

思わず、身体が震えそうになる昴。一際、異才を放っているのは、黒い大きな塊とそこから触手のようなものが伸びており、その先にいる、十字架に太い釘のようなもので打ち突かれ、拘束具で繋ぎ止められている上半身は堕天使で、下半身は蛇のような不気味な生物。

 

『ぬぅ! この気配、ドラゴンだけに向けられた圧倒的な悪意。…間違いない、サマエルか!』

 

その生き物を見たドライグが、その声を震わせながら断言する。

 

「(オーフィスは、…あの中か!)」

 

オーフィスの気配を、あの黒い塊の中から感知し、解放する為に村雨の切っ先を黒い塊に向けようとする。

 

『いかん、止めておけ! ドラゴンであるお前がどんな攻撃をしてもあれには効果は与えられん!』

 

すぐさまドライグが待ったをかけた。

 

『いいか、あれには絶対に触れるな。もし触れれば、それだけで命を失いかねんぞ!』

 

追加で忠告をするドライグ。

 

「となると、あれを制御しているゲオルクをどうにかした方が良いと言う訳か…」

 

そう判断した昴は、サマエルの制御をしているゲオルクに視線を向ける。

 

「それも止めておいた方がいい」

 

昴の考えを察した曹操が、伸ばした聖槍を戻し、肩にかけながら忠告する。

 

「今ここでゲオルクに何かあれば、サマエルを制御出来なくなる。そうなれば、サマエルは所構わず暴れ回るだろう。そうなれば、君だけじゃない、他の者にも危険が及ぶぞ? 何せ、サマエルは、ドラゴン以外の者にだってその効力を及ぼす。…もっとも、俺がそんな真似はさせないが」

 

「……みたいだな」

 

その言葉に納得した昴は、視線をゲオルクから曹操に移す。

 

「ごめん、僕は、守る事が出来なかった。君に頼りにしてもらったのに…!」

 

悔しそうに謝る木場。

 

「謝る事はない。察するに、状況的にまともに戦えるのはお前だけっぽいからな。そんな中で、お前はよくやったさ…」

 

大雑把に状況を把握

 

「改めて、ごきげんよう、赤龍帝」

 

唐突に、挨拶を始める曹操。

 

「京都では世話になった。予想通り、ここに来たね」

 

「当たり前だ。つまらん小細工で俺を爪弾きにしやがって」

 

挨拶の言葉を向けた曹操に、嫌味をぶつける昴。

 

「それは失礼。目的を果たす為には、どうしても君をしばらくここから引き離す必要があった」

 

「その目的とやらが、オーフィスって訳か」

 

「そのとおりだ。気分を悪くしたなら申し訳ない、代わりに、君の仲間は誰1人殺してない。一部、手傷を負ってはいるが、後遺症が残る程のものではないはずだよ」

 

「…ふん」

 

思わず昴は不快そうに鼻を鳴らす。

 

「しかし驚いたな。俺は少なくとも、主目的が達成出来るまでの時間は充分に稼げると思ってたんだがな。いったいどうやって…」

 

予想より早く、魔法や術に長けている訳でもない昴がここに来た事に驚きの様子のゲオルク。

 

「俺は予想していたよ。赤龍帝は必ず来ると。…なるほど、次元の狭間を経由して直接ここを特定したか」

 

曹操はすぐさま、昴がこの空間に入った方法を看破した。

 

「…っ、確かに、この空間は次元の狭間に存在しているが、とは言っても、広大な次元の狭間からこの空間を見つけるのは至難の業だと思うが」

 

「フフッ、別に難しい事はない。何せ、この空間にはオーフィスがいるからな。サマエルを使う前のオーフィスのオーラなら、余程離れていない限り、場所を特定する事は可能だろう。ましてや、お前はサマエルの制御にかなりの意識を割いている。自ずと、結界の薄い部分も現れる」

 

「…そこまで分かっていたなら、俺に一言教えて欲しかったな。そうすれば、対策だって立てる事も出来たんだが」

 

「あくまで予測に過ぎなかったからな。お前には、サマエルの制御に専念してほしかったから敢えて余計な情報を与えなかった。…一応、見張りは立てておいたが、全く役には立たなかったか。…さて」

 

ここでゲオルクとの会話を切り上げる。

 

「君に言われて、俺も祖先に倣って、戦略に力を入れてみたよ。如何だったかな?」

 

「…」

 

みすみす罠にハマった身である昴は、何か答える事はなく、曹操を睨み付ける。

 

「これまで、この聖槍を使いこなす事に注力して、戦略はおざなりだった。アザゼル総督も、俺達の襲撃に備えて、いろいろ準備はしていたみたいだが。彼の頭脳に疑う余地はないが、やはり彼は所詮、科学者であって、軍師ではなかったと言う訳だ」

 

かねてより、オーフィスが来た段階で、曹操の襲撃は予想されていた。アザゼルも、オーフィスを奪回しに来るであろう曹操の襲撃に、様々な備えはしていた。だが、曹操はそれを全て突破した。

 

「相手の策を看破し、こちらも策を構築し、それが見事にハマった時、軍師ならば、それが快感なのだろうが、やはり、俺には性に合わないな」

 

そう言い、曹操の周囲に、7つの球体が取り囲むように並んだ。

 

「気を付けて! それは――」

 

 

――ギィィィン!!!

 

 

木場が忠告をしようとしたその時、甲高い音が響き渡った。

 

「せっかちだな」

 

突如として、球体の1つを昴に向けて放ち、これを昴は村雨で弾いた。

 

「へぇ、不滅の武器と言う話は聞いていたが、武器破壊の能力を有する輪宝(チャッカラタナ)でも傷1つ付けられないか」

 

驚きよりも感心している曹操。

 

「なるほど、それがその聖槍の、禁手(バランス・ブレイカー)と言う訳か」

 

「ご名答」

 

「察するに、その周囲の7つの球、その1つ1つに何か特殊な異能があるんだな?」

 

「フフッ」

 

昴の問いに、曹操はただただ笑みを浮かべた。

 

「(奴は、武器破壊と言った。と言う事は、7つの内1つは、武器破壊。後6つもあるって事か…)」

 

情報を組み立て、曹操の聖槍の禁手(バランス・ブレイカー)の能力の特定に努める昴。

 

「そろそろ始めようか。京都での借り、返させてもらうよ」

 

「やれるものならやってみろ」

 

昴と曹操、2人の戦いが再び、始まる…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

場所は、昴を次元の狭間に送り出した直後のホテルの裏口。

 

「さあ、あなたも早々に手当を」

 

決して軽くはないアザゼルの手傷。それを察したカッシュ。

 

「……カッシュ」

 

「如何なさいました?」

 

「お前、何を視た(・・・・)

 

突如として、アザゼルがカッシュに投げかけた。

 

「いくら何でも、都合よく現れ過ぎだ。お前は要職には付いちゃいないが、おいそれとこんな所をうろつける身分でもねえ」

 

「…」

 

「答えろ。何を視た」

 

沈黙をするカッシュ。

 

カッシュは、かつては旧四大魔王の相談役を務める程の人物。その本領は、長く生きた事で蓄えた知識と経験と、彼の一族だけが備え持つ能力、未来を見通せる、『予言』。

 

暫く沈黙した後、カッシュが口を開く。

 

「……そうですね。願わくば――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――この未来だけは、外れてほしい限りです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





若干ではありますが、暑さが和らいできた…かな…(?-?)

私事ですが、食生活を改善したら何と、体重が1年で10㎏も減りました…(;^ω^)

まあ、元が元なんで、まだまだゆとりのある体型ではあるのですが…(>_<)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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