ハイスクールD×D~転生せし守り手~   作:bridge

16 / 149
Life.16~グレモリーという名前、修行の完結~

 

 

 

1日目が終わり、修行は2日目に突入した。

 

「ぜぇ…ぜぇ…」

 

2日目以降から修行はさらに過酷さを増した。単純にトレーニングの量が増えたのもそうなのだが、2日目からは部長お手製の錘(1つ60㎏、総重量はおよそ300㎏)を両手両足腰付けての修行になったからだ。

 

午前中は体力づくりと肉体強化を行い、昼食後にアーシアと共に朱乃さんから魔力の特訓。それが終わると眷属内の連携の確認をし、後は木場と小猫ちゃんとぶっ倒れるまで組手だ。

 

初日こそ木場と小猫ちゃん相手に優勢に戦えていたが、部長の愛(錘)を付けてからはまったく勝てなくなった。原因は午前中のオーバーワークもあるのだが、1番の理由はやっぱり両手両足腰の錘が重すぎるせいだ。

 

すでに付けてから数日経っているのに一向に重さに慣れることができない。これのせいで毎日木場と小猫ちゃんにボコられている。

 

順調に修行を重ね。山の別荘に来てからもう1週間が経過していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「ふっ! はっ!」

 

時刻はすでに深夜。俺は1人木刀を振っていた。

 

「ふう…」

 

ひとしきり木刀を振るい終えると、俺は持ってきたタオルで汗を拭った。

 

「ふむ」

 

俺は右手を閉じたり開いたりする。

 

 

――だいぶ力が付いてきた。錘には相変わらず慣れないが、この1週間でかなり強くなれた。

 

 

「悪魔の身体にも慣れてきたし、後はどこまで追い込みを掛けられるかだな」

 

当初は向上した身体能力に多少振り回されていたが、それにももう慣れた。今ならプロモーションしても問題なく戦えるだろう。

 

それと、長く実戦から離れていた影響によるブランクも解消され始めてきた。

 

実戦で、どこまで取り戻せるかも勝利のカギとなりそうだ。

 

「さてと、そろそろ戻るかな」

 

俺はトレーニングを切り上げ、別荘に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

温泉で汗を流し、リビングの前を通りかかると、薄明りが灯っていた。気になってリビングに足を運んでみると…。

 

「部長?」

 

そこには部長の姿があった。

 

「あら? またこの時間までトレーニング?」

 

「まあ、そんなところです」

 

「ふふっ、あなたの頑張りには頭が下がるわ」

 

部長は呆れ半分で微笑んだ。

 

「そんなところに立ってないで、こっちに座って。少しお話ししましょう」

 

俺は部長に勧められるがままテーブルを挟んで部長の対面の椅子に座った。

 

「ん? 部長って、目が悪かったんですか?」

 

普段かけてないメガネをかけていたので聞いてみた。

 

「これ? 気分的なものよ。メガネをかけていると頭が回る気がするの。人間界の暮らしが長い証拠ね」

 

部長がクスクスと笑う。

 

「なんか新鮮ですね。よく似合ってますよ」

 

「またあなたは…、でも、ありがとう」

 

俺はふと、ティーライトキャンドルが並ぶテーブルに目を移した。そこには地図やらフォーメーションやらが書かれた紙が置かれていた。俺はその1枚を手に取った。

 

「これ…、レーティングゲームに向けての作戦を立てていたんですか?」

 

「ええ。…でも、こんなものを読んでいても気休めにしかならないわ」

 

部長は戦術が書かれているノートを閉じながら言った。

 

「まあ、教科書は所詮教科書、応用できてこそ価値があるものですし、相手だって当然それを把握していますからね」

 

俺は持っていた紙をテーブルに戻しながら言った。

 

「昴の言うとおりよ。それに、今度のレーティングゲームにあたって、問題はそこじゃないの」

 

別…、それ以外となると…。

 

「ライザーってのはそんなに強いんですか?」

 

俺が質問すると、部長の表情が険しくなった。

 

「ライザー自身はそこまで飛びぬけて強いわけではないわ。問題は彼の能力にあるのよ。…ねぇ、昴。フェニックスという名を聞いて、何を連想する?」

 

…フェニックスか。燃え盛る火炎を纏った火の鳥。様々な伝承を聞いたことがあるが、やっぱり1番に思い浮かべるのは…。

 

「不死身、ですね」

 

これに尽きるな。

 

「そうよ。攻撃をしてもすぐに再生し、たちまち傷を治してしまうわ」

 

…案の定そうか。

 

「けど、不死身であっても、無敵というわけではないんでしょう? 何か突破口や攻略法はないんですか?」

 

「もちろんあるわ。圧倒的な力で押し通すか、起き上がるたびに倒して相手の精神を潰すか。この2つよ」

 

なるほど。前者には強大な力が、後者にはスタミナが必要なわけか。

 

「人数と経験の不足に加え、そこにさらに不死身ですか…。部長とライザーのご両親は何が何でもこの婚約を成立させたいんですね。部長の想いや気持ちなんて一切無視して」

 

人間の世界でも政略結婚は少なからずあるが、部長に関してはやり方は少々狡い。八百長同然で戦わせ、負けたら即結婚。選択肢と希望を与えたかのように見せかけて、実際は逃げ道を塞いだだけだ。

 

「ええ、まったくよ」

 

部長の顔に怒りの様相が現れた。だが、その瞳はとても悲しみを帯びていた。

 

ふむ…。

 

「1つ、聞きたいことがあるんですが」

 

「なにかしら?」

 

「部長が今回の婚約を拒否しているのはどうしてですか? ライザーが不誠実だから、というだけではないのでしょう?」

 

ライザーの人格はあまり褒められたものではなさそうだが、これは多分後付けだろう。

 

「…」

 

部長は押し黙っている。俺は部長に自分の考えをぶつけてみた。

 

「グレモリーという名に、リアスという個が殺されるのが嫌なんですか?」

 

「!?」

 

部長が俺の言葉に目を見開いた。

 

 

――図星か…。

 

 

「よくわかるわね」

 

「ただの勘ですよ」

 

なんとなくそんな気がした。前世の話だが、俺は前世で英雄と呼ばれていた。その時の俺の子供が今の部長と同じ目をしていた。あの子も、あの子としてではなく、英雄の子として周囲から見られていた。その時の目と同じ目を部長はしていた。

 

「グレモリーの名には誇りを感じているわ。でも、あなたの言うとおり、どうあっても私という個はその名に殺されてしまう。誰もがリアス個人としては見てはくれない」

 

部長はそう言うと、その瞳に、寂しそうな影が刺した。

 

「純血の上級悪魔である私がこんな甘えたこと言うなんて、おかしな話よね。でも、たとえ甘えだと言われても、私はグレモリーを抜きにして、私を愛してくれる人と一緒になりたいの。私の小さな夢よ」

 

部長は皮肉めいた笑みを浮かべた。

 

「皆には悪いことをしていると思っているわ。私の我が儘のせいで無謀の戦いに付き合せてしまって。ごめんなさい、昴…」

 

部長は申し訳なさそうな表情で俺に頭を下げた。

 

「いいじゃないですか」

 

「えっ?」

 

「我が儘結構。俺は別に部長の命だから戦いに臨むわけではないですよ。ライザーが気に入らないのと、恩ある部長のために戦いたいから戦うんですよ。皆も同じだと思いますよ?」

 

「昴…」

 

「あなたは純血の上級悪魔である前に1人の女性です。自分が愛し、自分を愛してくれる方と幸せになるべきです。俺はそう願っています」

 

俺は椅子から立ち上がり…。

 

「謝らないでください。俺達眷属は誰1人として、悪いとは思っていません。部長は俺達にただ命じてください。戦えと、そして勝てと。俺達はその命令に命を懸けて従います。部長はいつものように凛としていてください。俺はそんな部長が大好きです」

 

「っ//」

 

部長が俺の言葉に顔を赤らめた。

 

「部長?」

 

俺が部長に声を掛けると…。

 

「な、何でもないわ//」

 

部長は俺から目を逸らしながら言葉を返した。

 

「戦略を立てるのもいいですが、部長もそろそろ身体を休めてください。戦いはもう近いんですから」

 

俺は手だけ振ってその場を後にした。

 

「昴!」

 

俺は部長の声を聞き、その場で立ち止まる。

 

「ありがとう」

 

そんな優しい声が聞こえた。

 

俺は振り返り…。

 

「勝ちましょう」

 

俺は笑顔でそう返した。

 

「ええ!」

 

部長も笑顔で返事をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

それから修行はつつがなく進み、ついに最終日を迎えた。

 

「今日で修行も最終日。そろそろ仕上げに入るわ。…昴」

 

「はい」

 

俺は一歩前に出る。

 

「裕斗、小猫」

 

「「はい」」

 

裕斗と小猫ちゃんも続いて前に出た。

 

「模擬戦を行うわ。裕斗、小猫、2人で昴の相手をしなさい」

 

「わかりました」

 

「…(コクッ)」

 

木場が木刀を構え、小猫ちゃんが腕をクロスさせ、身体をほぐし始める。

 

「昴。錘を外しなさい」

 

「おっ? ようやくこの重さから解放される時がきたか」

 

俺は言われたとおり、両手両足腰の錘を外した。外した錘を横に放り投げた。

 

投げた錘が地面に接触した瞬間…。

 

 

 

――ドォォォォォォォン!!!

 

 

 

『!?』

 

大きな爆音と共に大きな砂埃が舞った。

 

「部長…、この錘って、1つ60㎏じゃありませんでしたっけ?」

 

この爆発、どう見ても60㎏の重さじゃない。ていうか、地面に錘が陥没してるし…。

 

「60㎏よ。初めはね」

 

「初めは?」

 

「その錘には仕掛けがあってね、あなたが錘に負荷を掛ければ掛けるほど重くなるようにしておいたのよ」

 

「負荷が掛かる…」

 

俺は茫然としながら部長に視線を向けると、詳細を教えてくれた。。

 

「簡単に言うと、あなたがその錘を付けてトレーニングをすればするほど錘はどんどん重くなっていくってことよ」

 

「……なるほど、だから…」

 

道理でいつまで経っても重さに慣れなかったわけだ。

 

「どう? 調子は?」

 

俺は手首を回したり、足をグリグリさせてみた。

 

「…絶好調です」

 

重さに解放され、心も身体も軽やかになった。

 

「結構。それじゃ……3人共準備はいい?」

 

部長が3人に確認を取る。

 

「はい」

 

「いつでも大丈夫です」

 

「昴は剣は使わなくいいの?」

 

「とりあえず、素手でやってみます」

 

自分が錘を外したことでどこまでになったか。確かめるなら無手の方がいい。

 

「わかったわ。…それでは、始め!」

 

部長の掛け声がかかり、模擬戦が始まった。

 

「それじゃ、行くぜ…」

 

俺は腰を落とし、重心を下げ…。

 

 

――ドン!!!

 

 

一気に2人の懐に飛び込んだ。

 

「「!?」」

 

一瞬で眼前に現れた俺に2人が驚愕する。

 

俺は2人の胸に掌打を打ち込んだ。

 

「くっ!」

 

「っ!」

 

 

――ゴツッ!!!

 

 

木場は木刀で、小猫ちゃんは両腕を胸の前に束ねて掌打を防いだ。掌打を受けると、2人は後方に弾かれた。

 

「2日目以降は散々やられたからな。とりあえず鬱憤は晴らさせてもらう。…遠慮はいらない、来いよ」

 

俺は人差し指をクィックィッとやった。

 

「みたいだね。それなら本気でいくよ」

 

「いきます」

 

2人が左右から同時に俺に飛びかかった。

 

 

――ブン!!!

 

 

小猫ちゃんの拳を顔を右に傾けて避ける。

 

 

――ブォン!!!

 

木場の木刀を屈んで避ける。

 

 

 

――ブン! ブォン! ブォン! ブン!…!

 

 

 

2人の同時の攻撃が俺を襲う。俺はそれを全て最小限の動きで紙一重でかわす。

 

「くっ! 2人がかりなのに…」

 

「当たらない…」

 

まったく当たらないことに2人は顔を歪ませる。

 

 

――身体が軽い…。

 

 

羽でも生えたみたいに軽い。錘から解放されることでこんなにも動けるのか。

 

 

――ブン!!!

 

 

小猫ちゃんの拳が俺の胸に襲う。

 

 

――トン…。

 

 

俺はその拳を横から押し、木場のいる方に軌道を変えた。

 

「裕斗先輩! 避けてください!」

 

逸らされた拳が木場に向かっていく。

 

「くっ!」

 

ガン!!!

 

 

――木場は辛うじてその拳を木刀で防いだ。

 

 

「やる! さすが部長の騎士『ナイト』だ!」

 

俺は拳を逸らしたのと同時に飛び上がり、2人の間に右脚を振り下した。

 

 

――ドォン!!!

 

 

地面は大きく爆ぜ、陥没する。

 

木場と小猫ちゃんは、寸前で左右へと飛び去った。

 

俺は先に木場に照準を合わせ、追撃に向かった。

 

「逃がさねぇよ」

 

 

――ダダダダダダダッ…!

 

 

俺は木場に拳で弾幕を張った。

 

「ちぃっ!」

 

木場は避けられないと判断してさらに後方へと飛び去って回避した。

 

俺は木場の回避ルートを逆算して先回りをした。

 

「!?」

 

「言ったろ? バカ正直に動けば簡単に動きが読まれるって」

 

木場は不意を突かれたのと不安定の体勢により身動きが取れないでいた。

 

 

――ドガッ!!!

 

 

「がはっ!」

 

俺はその隙を見逃さず、木場の胸にコークスクリューブローのようにひねり込みながら掌打を打ち込んだ。

 

木場は吹き飛ばされ、背後の木に激突した。

 

「ふっ!」

 

 

――ブォン!!!

 

 

俺は背後に回し蹴りをする。

 

「!?」

 

背後に接近していた小猫ちゃんは咄嗟に上体を後方に反らし、その蹴りをかわした。

 

俺は蹴りの勢いを殺さず、そのまま一回転して小猫ちゃんの足を払った。

 

「ひゃっ!」

 

小猫ちゃんもこれはかわせず、地に倒れる。俺は間髪入れずに追撃をし…。

 

「!?」

 

小猫ちゃんの眼前で拳を止めた。

 

「…参りました」

 

小猫ちゃんは降参をした。

 

「そこまで!」

 

それと同時に部長の制止がかかった。

 

「昴。改めてどう?」

 

部長が俺達の前にやってきて腕を前に組みながら尋ねた。

 

「…びっくりしました。イメージどおりに身体が動いて、イメージどおりに戦いを運べました」

 

錘を付けていた時は頭のイメージに身体が付いてこなくてうまく動けなかったが、今はイメージより身体が先行したから調整に少々戸惑ったぐらいだ。

 

「裕斗と小猫はどう?」

 

木場が打たれた胸を摩りながら俺達の前にやってきた。

 

「小猫ちゃんと2人がかりなら互角に戦えると思ったんですが、まったくダメでした」

 

小猫ちゃんがその場から立ち上がり…。

 

「強かったです。簡単にあしらわれました」

 

服の埃を払いながら答えた。

 

「これが昴の実力よ。この修行期間でひたすら基礎力向上に費やした。実戦経験に長け、自分のスタイルを確立しているあなたならそれだけで実力アップにつながるわ」

 

部長が俺の前まで歩み寄り…。

 

「昴。あなたはこのグレモリー眷属の切り札。ゲームの命運はあなたが握っていると言っても過言ではないわ。あなたの力、存分にアテにさせてもらうわよ」

 

「任せてください」

 

部長は集まってきた眷属の皆に振り返り…。

 

「私達の強さを見せつけてやりましょう。相手がフェニックスだろうと関係ないわ。リアス・グレモリーとその眷属悪魔がどれだけ強いのか、彼らに思い知らせてやるのよ!」

 

『はい!!!』

 

眷属全員が力強く返事をした。

 

そして修行は終了し、俺達はレーティングゲームの当日を迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。