ハイスクールD×D~転生せし守り手~   作:bridge

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Life.19~佳境、ワンミニッツキル~

 

 

 

『ライザー・フェニックス様の戦車『ルーク』1名、リタイヤ』

 

グレイフィアさんのアナウンスがグラウンドに響く。

 

「ふう…」

 

俺は一息吐き、先ほど地面に刺した村雨を腰に差しなおした。

 

「イザベラがやられた…。先日顔を合わせた折に腕利きだということはわかっていたが、まさかイザベラを降す程とは…」

 

カーラマインはこの結果は予想外だったのか、その表情は固い。

 

「理解できたかい? 彼の実力を」

 

木場がいつものスマイル顔で言葉を紡ぐ。

 

「ああ。理解した。ただの兵士『ポーン』と思っていては痛手を負いそうだ」

 

カーラマインはポツリと呟き、再び死闘を始めた。

 

 

――ギィン!!! ガキン!!!

 

 

木場とカーラマインの剣が激突する音がグラウンドに響きわたる。

 

「さて、次は…」

 

俺は正反対に振り返り、このグラウンドに集まってきた新たな気配達に向き合った。

 

「あれ? イザベラ姉さんは?」

 

「まさか、やられちゃったの?」

 

次々とこのグラウンドにライザーの眷属が集まってくる。

 

あの猫耳2人は確か兵士『ポーン』だったな。あの十二単の女の子は僧侶『ビショップ』、背中に大剣担いでる奴は騎士『ナイト』だな。…ん? 女王『クイーン』は今朱乃さんが相手しているわけだから、残りの下僕全てが表に出向いていることになる。ということはライザーは今本陣に1人。これはいったい……っ!? まさか!?

 

俺は新校舎、ライザー眷属の本陣に振り返った。すると、新校舎の屋上に黒い翼を広げた人影と炎の翼を羽ばたかせた人影が目に飛び込んだ。部長とライザーだ。

 

「アーシア!」

 

俺はインカムでアーシアに呼びかけた。

 

『スバルさん! 私と部長さんは学校の屋上に来ています!』

 

「それはこっちからも確認している。状況は?」

 

『はい。相手のライザーさんから一騎討ちの申し出をいただきまして、部長さんがそれに応じたんです!』

 

 

――思った通りか…。

 

 

いくら自分の実力に自信があっても、撃破(テイク)されたら即敗北の王『キング』を残して、しかもプロモーションができる兵士『ポーン』がまだ残っているこの状況で全て出陣はあまりにも愚策だ。このことから導き出される答えは1つ。一騎討ちだ。通常ならこの状況はありがたくもあるんだが…。

 

「…ちと、まずいな」

 

俺の見立てでは部長とライザーの現在も実力はほぼ互角。だが、不死身による無限のライザーに対して、部長は有限だ。回復ができるアーシアが傍にいることを差し引いても部長の方が分が悪い。

 

俺が不安要素は計算していると、ライザーの妹であるレイヴェル・フェニックスが嫌味な笑みをこちらに向けてきた。

 

「お兄様ったら、リアス様が意外に善戦するものだから高揚したのかしらね。普通に戦えば私達の勝利ですもの、情けを与えたのでしょう。このままでは、対峙する前にやられてしまいそうですし」

 

ホホホと高笑いをあげた。

 

「8人もやられておいて何処からその余裕が出てくるのかは知らないが、朱乃さんがそっちの女王『クィーン』を撃破(テイク)し、俺と木場がここを制すれば戦況はこっちに大きく傾くんだぞ?」

 

レイヴェルは俺の言葉を聞いてもその余裕は一切崩さず…。

 

「わかっておりませんわね。『紅髪の滅殺姫』、『雷の巫女』、『魔剣創造』、そしてあなた。確かに脅威ではありますわ。けれど、不死身の前ではまったくの無意味ですわ」

 

「不死身はあくまでも不死身。無敵ではない」

 

弱点だって存在するんだからな。

 

「一緒ですわ。少なくともあなた達にとっては…」

 

レイヴェルはパチンと指を鳴らす。すると、先ほど集まってきた者達が俺を囲んだ。

 

「あなたのその淡い希望をすぐにでも摘み取ってあげましょう。あいにくと、残りの眷属達はカーラマインのような騎士道精うんぬんにはこだわりませんわ。皆で仲良く倒してさしあげますわ。二ィ、リィ、美南風(みはえ)、シーリス。連携を組んでこの兵士『ポーン』を討ちなさい!」

 

「にゃ」

 

「にゃにゃ」

 

「はい」

 

「御意」

 

呼ばれた4人が返事をし、俺に構えを向けた。

 

「…」

 

状況はとりあえずまだまだこちらが不利。予断を許さない。時間を掛けすぎれば部長が危険。

 

「…しょうがねぇか」

 

ライザーと戦う時まで極力体力を温存しておきたかったが、出し惜しみしている場合じゃない。

 

俺は一度大きく深呼吸をし…。

 

「木場! 状況は理解しているな!」

 

 

――ギィン!!!

 

 

木場はカーラマインの斬撃を受け止め、鍔迫り合いを演じた。

 

「こんなところで時間を掛けてる場合じゃなくなった! 早いとこ部長の援護に向かうぞ!」

 

「わかった!」

 

 

――ギィン!!!

 

 

木場は相手の剣を弾き、再び斬り合いを始める。

 

「とっとと終わらせろよ。こっちは……1分とかからないからな」

 

俺は視線を囲んでいる4人に戻した。

 

「ホホホ! 自惚れも過ぎるとみじめですわね。そんなことできるわけ…」

 

 

――ドゴォ!!!

 

 

「ぐぅっ!」

 

俺はレイヴェルが言い終えるより速く十二単の僧侶『ビショップ』の懐に飛び込み、胸に掌打を打ち込んだ。その僧侶『ビショップ』は吐血する。

 

「吹き飛べ」

 

 

――ドォン!!!

 

 

俺は手に氣を集中、爆発させた。僧侶『ビショップ』は後方に猛スピードで吹き飛んだ。

 

「1人…」

 

俺はポツリと呟くように言う。

 

「この!」

 

「よくも!」

 

二ィとリィと呼ばれた猫娘達が仲間の仇とばかりに俺に襲いかかった。

 

 

――シュッ! シュッ! スッ! スッ! …!

 

 

2人は自慢の脚力を生かし、俺の周囲を駆けずり、飛び回った。

 

「ふふん♪ お前じゃ、あたし達のスピードにはついてこれないにゃ!」

 

「じわじわ痛めつけるにゃ!」

 

猫娘達さらにスピードを上げていく。

 

 

――スッ…。

 

 

1人が俺に拳を振るう。

 

 

――ブン!!!

 

 

「!? 消えたにゃ!」

 

その一撃は空を切る。さらに俺の姿を見失った。

 

「っ! 後ろにゃ!」

 

もう一方が背後に回った俺に蹴りを見舞う。

 

 

――ブン!!!

 

 

「!? 嘘!?」

 

その一撃も空を切る。

 

「遅ぇーよ」

 

 

――ブシュッ!!!

 

 

猫娘達の胸から鮮血が飛び散った。そして、斬られたことにも気づかない風な面持ちで糸の切れた人形のように崩れ落ちた。

 

「二ィ! リィ! 貴様、何をした!」

 

もう1人の騎士『ナイト』、シーリスが得物である大剣を振りかぶりながら頭上から降り注ぐ。

 

「知りたいか? なら、お前にも分かる速度で見せてやる」

 

俺は腰の村雨に手をかけた。

 

 

――キィィィィン!!!

 

 

俺とシーリスが交差する。

 

「!? 剣が…」

 

シーリスの剣が根元から線が走り、綺麗に折れる。

 

 

――チン…。

 

 

村雨が鞘に納刀される。

 

 

――ブシャッ!!!

 

 

シーリスの胸から血が噴き出す。

 

「ぐぅぅ、バカな…」

 

シーリスは驚愕の表情を浮かべながら崩れ去った。

 

「攻撃仕掛けんならしゃべらず来い」

 

俺は身を翻し、顔に軽くかかった髪を払った。

 

「バカな…、シーリス達が1分足らずで――『斬り合い中に余所見は感心できないね』――っ!? しまっ…!」

 

 

――ズシュッ!!!

 

 

「がぁぁっ!」

 

木場の剣がカーラマインの胸を斬り裂く。

 

「まさ……か、お前…達の中で、真に警戒…すべきだったのは…」

 

「そう、彼だよ。彼こそが僕達のエースさ」

 

木場がニヤリと笑みを浮かべた。

 

「く…そ…」

 

カーラマインは苦い表情を浮かべながら地に伏していく。そして、地に倒れたライザーの眷属達の身体が光に包まれていき…。

 

『ライザー・フェニックス様の兵士『ポーン』2名、騎士『ナイト』2名、僧侶『ビショップ』1名、リタイヤ』

 

グレイフィアさんのアナウンスが響く。それはミドルゲームを俺達グレモリー眷属が制したことを意味する。

 

「ホントに1分で仕留めちゃうなんてね」

 

「造作もないことさ。ここは片付いた。部長の所へ急ごう。すぐに朱乃さんも…」

 

俺が言葉を続けようとしたその時。俺の耳に信じられない訃報が飛び込んだ。

 

『リアス・グレモリー様の女王『クイーン』1名、リタイヤ』

 

「「っ!?」」

 

バカな…、朱乃さんがやられた? 朱乃さんが遅れを取るほどの相手ではなかったはず…。

 

さらに悪いことが続く。俺が思考の海に飛び込んでしまったことで反応が遅れてしまった。敵の接近を…。

 

「きb…」

 

 

――ドォォォォォォォン!!!

 

 

激しく足元を揺らす爆発が俺の近くで巻き起こる。俺は爆風を両腕でやり過ごし、治まった後に爆心地に視線を移すと…。

 

「!? くそ!」

 

木場が全身から煙を立ち上らせ、倒れていた。やがて木場の身体が光に包まれ、消えていった。

 

『リアス・グレモリー様の騎士『ナイト』1名、リタイヤ』

 

無情のアナウンスがグラウンドに響いた。

 

「騎士『ナイト』、撃破」

 

俺から少し離れた上空から非常な言葉が響く。それは聞き覚えがある嫌な声。

 

「…女王『クイーン』!」

 

俺が睨み付けた先に冷笑を浮かべた魔導師服の女。ライザーの女王『クイーン』がいた。

 

こいつが小猫ちゃんを…、朱乃さんを…、木場を…!

 

「降りてこいよ。さっきできなかった勝負を始めようぜ」

 

俺は村雨に手をかけ、女王『クイーン』を挑発する。だが奴はそれには乗らず、嘲笑を浮かべたまま新校舎の屋上へと羽を広げて羽ばたいていった。

 

「ちっ! 挑発には乗ってくれないか」

 

急がないと、部長が危険だ。

 

俺も新校舎へと急いだ。だがその進路をレイヴェル・フェニックスが塞ぐ。

 

「…何の用だ? 確か戦わないんじゃなかったのか?」

 

「戦いませんわよ。それより、まだ戦いますの? 勝敗はもう決していますのに」

 

「勝手に決めるな。俺も部長もアーシアもまだ健在だ」

 

俺はそれだけ言ってレイヴェルの横を抜けようとする。

 

「フェニックスの涙はご存じですわよね? 如何なる傷をも癒すことができますのよ」

 

レイヴェルは懐から小瓶を取り出した。どうやらあれがフェニックスの涙らしい。

 

「なるほど。それのおかげでそっちの女王『クイーン』は朱乃さんに勝てたわけか」

 

そうとでも考えなきゃ、朱乃さんがやられる理由が見当たらない。

 

俺の推察にレイヴェルは高笑いを浮かべる。

 

「ふふっ。これのおかげで私達の財政は潤ってますわ。ゲームが始まってからフェニックス家は良いこと尽くめですの。不死身と涙。私達の時代でしてよ」

 

と、ベラベラと自慢話始める。正直俺には興味の欠片もない。

 

俺はレイヴェルを無視して新校舎へと向かう。

 

「ちょ、ちょっと! 私を無視!? どうせ負けるのですから、ここで私とおしゃべりしていた方が健全で安全ですわよ!?」

 

 

――ごちゃごちゃうるせぇな…。

 

 

俺は足を止め、レイヴェルに振り返り…。

 

「こっちはお前のおしゃべりに付き合うつもりはない。来るなら来い。そうでなきゃ、引っ込んでろ…!」

 

俺は少し声を低くし、レイヴェルに殺気をぶつける。

 

「っ!?」

 

レイヴェルは身体をビクつかせる。とりあえず、かかってくるつもりもおしゃべりを続けるつもりもないらしい。

 

俺は新校舎に向かった。新校舎目前で俺は足に氣を集中させ…。

 

「はぁ!」

 

 

――ドン!!!

 

 

一気に跳躍し、新校舎の屋上へと飛び上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

リアスside

 

「ハァ…ハァ…」

 

ライザーの一騎討ちの申し出を受け、新校舎の屋上で開戦して幾ばくか経った。先程から一進一退の戦いをしている。

 

「くっ!」

 

 

――ドン!!!

 

 

滅びの一撃をライザーに向けて撃ちこむ。その一撃はライザーの頭と左腕をとらえ、消し飛ばされた。けど…。

 

「無駄だ」

 

消し飛んだ頭と左腕はすぐさま再生してしまった。

 

戦いが始まってからずっとこの調子。さっきから私の攻撃は的確にライザーの身体をとらえている。でもライザーはとらえた矢先に傷を再生してしまう。私の傷はアーシアに治療してもらっているとはいえ、体力と魔力はどんどん消耗してしまっている。

 

「リアス、投了(リザイン)するんだ。これ以上は他の場所で見られている君のお父上にもサーゼクス様にも格好がつかないだろう。君はもう詰んでいる。こうなることはすでに読んでいたことだ。チェックメイトだ、リアス」

 

ライザーが諭すように私に投了(リザイン)を薦める。その余裕を含んだ顔が気に入らない。

 

「黙りなさい、ライザー。私は諦めない! 読んでいた? 詰んだ? まだ王『キング』である私は健在なのよ?」

 

私は不敵な笑みを浮かべる。

 

 

――諦めない! 絶対に負けてなるものですか!

 

 

私の言葉を聞いたライザーはうっとうし気に頭を掻き…。

 

「しょうがないな……、なら!」

 

 

――ゴォォッ!!!

 

 

手に炎を呼び出し、こちらに向けて撃った。

 

「くっ!」

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

私は防御魔方陣を前面に展開し、これを防ぐ。

 

「ほら! もういっちょ!」

 

 

――ゴォォッ!!!

 

 

さらにもう一撃炎をこちらに向けて撃ってきた。

 

 

――ダメ…。防げない。でも、ここで避けたらアーシアに!

 

 

私は目を瞑り、歯を食い縛り、ライザーの炎によるダメージを覚悟する。

 

 

――ドゴォォォォン!!!

 

 

目の前で爆発が巻き起こる。…けれど、いつまで経っても炎による高熱が襲ってこない。おそるおそる目を開けると…。

 

「あっ…」

 

そこには自身の得物である日本刀を構えた昴が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

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