ハイスクールD×D~転生せし守り手~   作:bridge

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Life.28~二天龍の過去、そして交渉~

 

 

 

紫藤イリナとゼノヴィアとの手合せの後、俺達は無言での解散となった。家に帰っても部長は悲嘆の表情のまま自室へと入っていってしまった。

 

アーシアも軽く夕食を頂いた後に部長の雰囲気に感化されてか、特に話す気分にならなかったらしく、同じく自室へと入っていった。

 

俺も後片付けを早々に終えると部屋に戻り、灯りをつけずにベッドに寝転んだ。

 

「…くそ」

 

俺は悪態を付く。

 

…ことを急ぎすぎた。

 

目の前に木場の憎しみの象徴であるエクスカリバーが現れたことで焦ってしまった。

 

聖剣が身近に来ることなんてそうそうないことだろう。この機会を逃したら次はいつエクスカリバーと対面できるかわからない。万が一、木場が憎しみのまま行動を起こしてしまったら……いや、これは言い訳だな。

 

結果は裏目に出た。木場はエクスカリバーに負け、さらに憎しみに身を堕とし、姿を消してしまった。

 

『そううまくいくものではないさ。こと、恨みつらみごとは特にな』

 

ドライグが俺の心情を察したのか、そんな言葉をかけてきた。

 

『お前が動かずとも、あの魔剣の小僧は動いていただろう。最悪の形でな。結果もさらに最悪となっていた。そう気を病むな』

 

「気を遣ってくれて悪いな。…だが、結果論なれど、もっと他の道があったのでは…ついそう考えてしまうんだ。ところで、頼んでいた鎧の件はどうなっている?」

 

『作業は順調だ。だが、今しばらく時間がかかる』

 

「そうか…」

 

まぁ、時間がかかるって言ってたもんな。そこは気長に待つとしよう。そうだ。この機会に…。

 

「ここいらでいろいろと聞いておきたいことがあるんだが…」

 

『わかっている。ブーステッド・ギアや我らのことだろう?』

 

「ああ」

 

ドライグが話してくれた。

 

大昔に、神と天使、堕天使、悪魔の三勢力が戦争していた時、妖精や精霊、魔物や妖怪、人間など、あらゆる存在がそれぞれの勢力に力を貸した。だが、一部を除き、ほとんどのドラゴンが戦争を尻目に好き勝手にしていたらしい。

 

そのドラゴンの中の神や魔王にも匹敵するほどのドラゴン2匹が、三大勢力戦争の最中に大ゲンカを始めたという。しかもそのドラゴンは三大勢力の面々を吹っ飛ばしながらケンカをしていたため、邪魔以外の何者でもなかったらしい。ケンカの理由は今ではわからないとのこと。

 

これを脅威に感じ、この2匹をどうにかしないと戦争どころではないと判断、いがみ合っていた三大勢力は一時手を取り合い、その2匹の討伐にあたった。

 

結果、2匹のドラゴンは幾重にも切り刻まれ、その魂を神器として封印されることになった。

 

「その2匹のというのが、ドライグとさっきゼノヴィアが言っていた白い龍(バニシング・ドラゴン)というわけか」

 

『そういうことだ』

 

神器に封印された後は、人間を介して何度も戦い続けることになった。時に一方が出会う前にすでに死に、出会わなかったこともあったが、だいたいが戦い、どちらかが勝ちどちらかが死んでいた。媒介となった人間が死ねば神器であるドラゴン達は一時的に機能が停止し次にドラゴンを宿せる人間が生まれるまでこの世に魂を漂わせ、そしてその人間に宿る。そうやって、長い年月を延々と繰り返していった。ずっとそうなるはずだったのだが…。

 

『しかし、その永遠と繰り返される戦いも突然終わりを告げた。ある世代の赤と白の戦い、それは1度や2度では終わらず、何度にも渡って戦い、時に偶然が重なるなどしたこともあり決着が着かなかった。その戦いは激しく、あらゆる物を破壊し、あらゆる者がその戦いに巻き込まれていった。無関係の者も含めてな』

 

「…」

 

あれだけの力…熟達すればさらに大きな力も振るうことも可能だろう。そんな2つの力がぶつかればそうなっても不思議ではない。

 

『そのことに当時の白の媒介となった人間がひどく心を痛めていたようでな。最後の戦い、白が赤に勝利した時、赤の宿主は死に、次の媒介へと転移する瞬間、そいつがこのブーステッド・ギアに2つの魔術をかけた』

 

「魔術を?」

 

「そいつは歴代でも指折りに魔術に秀でていてな。赤を降し、転移するブーステッド・ギアに、それが別の人間に宿っても2度とその神器の力に目覚めることのないよう封印をかけ、さらに異次元に無作為に転移させた」

 

「封印と無作為転移?」

 

『ああ。宿主が死に、また別の人間に転移するその理を変えることはできない。神器の永久破壊も同様だ。そこで考えたのが転移してもその力に目覚めず、かつ、白が現れることのない異次元に無作為転移することを考えたわけだ。そうしておけば、一方はその力を一生が終えるまで気付くことはなく、もし、何かの拍子にその封印が解けてもそこに白はおらんから戦いになることもない。そうすることでこの連鎖を断ち切った』

 

「…だが、こうして赤はまたこの世界に戻ってきた」

 

『そういうことだ。その奴の選んだ選択も、一時的なものにしかならなかったということだ』

 

クククッとドライグが笑った。

 

ドライグの話を総合するとだ、ある赤と白の戦いで白が勝ち、白の手によって赤は異次元に姿を消した。その赤の転移した先の異次元というのが外史だったわけだ。赤はこれまで同様にきっと人知れず、転移し続けたんだと思う。そして最終的に俺にそれが宿った。だが、封印がされていたために俺がその力に前世で目覚めることはなかった。

 

そう考えると合点がいく。だがそうなると、あの創造主が俺をこの世界に転生させたことは本当に偶然なのか? たまたま俺に興味を持ち、転生させた俺にブーステッド・ギアが宿っていただけだったのか? ……いや、偶然にしては出来過ぎている。

 

「封印が解けたのは何故なんだ?」

 

『これは推測だが、あの封印も長い年月を過ごす内に少しずつその効力が弱まっていたのだろう。そして、お前がフェニックスとの戦いで身体に相当無茶がかかる技を発動させたのが原因で封印が壊れたのだろうな』

 

「…なるほど」

 

偶然に偶然が重なって…。これだけ偶然が重なるとやはり、作為的なものを感じる。

 

『運命というのは少なからず存在する。赤と白が出会い、戦うようにな。ブーステッド・ギアがお前に宿り、そしてこの世界に帰ってきたのは偶然ではなく、必然、運命なのだろう。抽象的な話だがな』

 

運命……か。まあ、この件に関しては創造主に話が聞けない今となってはいくら考えても答えは出ない。考えるだけ無駄だな。

 

「ありがとう、ドライグ。おかげでいろいろ理解ができた」

 

より一層このブーステッド・ギアについて理解が深められた。

 

『構わん。知っておいた方がいいことなのだからな。お前がこの力をどう使い、どういう生き方をするのか。楽しみに見させてもらおう』

 

「あいよ。退屈させないようにするさ」

 

楽しいかどうかは分からんが、俺は俺の生き方をするだけだ。

 

「…そう言えば、ドライグ。お前は俺のことについては――」

 

「――知っている。貴様が所謂、転生したことも、1度……いや、2度か。既にその生涯を終えていることもな」

 

「…」

 

…やはりか。

 

「ドライグ。俺のことは皆には――」

 

「――案ずるな。俺は秘密をペラペラと話す趣味はない。他言はせん」

 

「…感謝する」

 

俺は、ドライグの気遣いに感謝した。

 

「…とりあえず今は、目の前の問題を片付けないとな」

 

問題、それは当然木場のことだ。このままではいけない。このままでは命を引き換えにしてでも復讐を果たそうとするだろう。仮に、生きて復讐を果たせたとしても木場は唯一の目的を失い、廃人同然になりかねない。

 

「どうするか…」

 

こうなった以上、たとえ性急でも今どうにかしなければいけない。この街にエクスカリバーがある今の内に。だが、教会側と堕天使側の問題に不用意に首を突っ込んだら文字通り全面戦争の引き金だ。

 

「…………待てよ?」

 

そういえば、あの2人……!? これだ! これをうまく交渉材料に使えば、ことをうまく運べるかもしれない。

 

「これに賭けるしかないな」

 

となると、早速次の日の休日に行動に移そう。

 

俺は1つの案を頭の中で具体的に形にしながら眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

次の日の休日、早速行動に移した。

 

「それで? 俺はなんで呼び出されたんだ?」

 

とりあえず協力者が欲しかったので、巻き込んでも後腐れなさそうな匙元士郎を呼び出した。

 

「そうです。2人で何をするつもりだったんですか?」

 

横には小猫ちゃんが。待ち合わせ場所に行く途中に見つかってしまったのだ。撒くこともできたのだが、小猫ちゃんは結構鼻が利くので撒いてもすぐにみつかりそうだし、仮に見つからなくてもこのことを部長に報告されても面倒なので一緒に来てもらった。

 

「今から説明する。なに、そんな難しいことじゃない。紫藤イリナとゼノヴィアにエクスカリバーの破壊許可をもらいにいくだけだ」

 

俺がそう説明すると、小猫ちゃんは目を丸くしていた。一方、匙はというと。

 

 

――タタタタッ…。

 

 

匙元士郎は逃げ出した。

 

 

――ガシッ!!!

 

 

しかし回り込まれた。

 

「嫌だぁぁぁぁっ!!! 俺は帰るんだぁぁぁっ!!!」

 

俺に襟首を掴まれながらも必死に逃げようとする匙。

 

「小猫ちゃんはどうする?」

 

俺がそう聞くとしばし考え込み…。

 

「私も協力します。裕斗先輩のことですよね?」

 

それを聞き。俺はニコッと笑い…。

 

「ああ、もちろんそうだ。話は決まりだ、早速2人のところに向かおう」

 

「待てぇぇぇっ! 俺はオッケーしてないぞぉぉぉっ! 離せぇぇぇぇっ!」

 

襟首掴まれてジタバタもがきながら逃走を図ろうとする匙。

 

「こんなのお前らの眷属の問題だろう!? 俺はシトリー眷属だぞ! 関係ねぇぇぇぇっ!」

 

「その前にお前は生徒会メンバーだろ? 生徒会は生徒の力になるのが仕事だろう?」

 

「それとこれとは話が別だぁぁぁっ! 嫌だぁぁぁっ! 会長に殺されるぅぅぅっ!」

 

何にビビってるのかと思えば、ソーナ会長にビビってたのか。

 

「そんな大げさな…」

 

「大げさのもんかぁぁぁっ! お前んところのリアス先輩は厳しいながらも優しいだろうよ! でもな! 俺んところの会長はな! 厳しくて厳しいんだぞ!」

 

あー、それは納得。あの人そんな感じするからな。けど協力者は欲しい。何より今となってはこの匙から会長経由で部長に伝わるのは避けたい。

 

「まあ聞け、匙」

 

俺は匙の肩に手を回し、小猫ちゃんに聞かれないように壁際まで連れて行った。

 

「そのな、確かにこの件に協力すればお前は会長にまあ、しぼられる。これは確実だ」

 

「だったら帰せよ!」

 

「まあ聞けっての。お前はしぼられる。だがそれは悪魔として、下僕としてだ」

 

「? どういう意味だ?」

 

匙は頭にクエスチョンマークを浮かべて尋ねてくる。

 

「この行動は正直褒められたものじゃない。ソーナ会長もそこのところは怒る。だがな、女としては別だ。ルールを破ろうとも、命懸けで俺達に手助けをする。これはポイント高いぞ?」

 

「……そうなのか?」

 

匙が興味を持ち出した。

 

 

――よし。あともう少しだな。

 

 

「そうだとも。女ってのはな、一生懸命な奴に心惹かれるんだ。ソーナ会長みたいな真面目な人なら尚更な。これを機にお前とソーナ会長の距離はグッと縮む。自分の下僕、生徒会メンバーという枠組み……まあ用するに後輩、弟だな。この枠組みから1人の男へと見方が変わるんだ。これはでかいぞ?」

 

「…ぐぐぐっ!」

 

匙がワナワナと震え出した。

 

 

――揺れてる揺れてる♪ あともうひと押し♪

 

 

「それに、あまり悠長にしている暇も時間もないぞ? この間のうちの部長の婚約騒動の話は聞いているだろう? 同じ純血悪魔、上級悪魔であるソーナ会長にも同じ話が来てたって不思議ではない。もしかしたら、もう匙の知らないところで話は動いているかもしれない。そうなったら終わりだぞ? 今は多少危険を冒してでも行動に移すべきだと俺は思うのだが?」

 

「むむむむっ……よし! わかった! そういうことなら協力してやろう!」

 

「そうこなくちゃな。なに、いざとなったら俺も一緒に謝ってやるから、安心しろよ」

 

「おう! その時は頼むぞ!」

 

匙は満面の笑みで俺の肩を叩いた。

 

 

――クククッ。ちょろいな。

 

 

俺達は後ろで待つ小猫ちゃんのところに戻った。

 

「話しは決まったぞ」

 

「そうですか。よろしくお願いします、匙先輩」

 

「ああ! よろしくな!」

 

満面の笑みで匙は返事を返した。

 

「具体的にはどうするんですか?」

 

「小猫ちゃん、先日の依頼を聞いた時のことを覚えているか? 向こうはこう言ってたんだ。『教会は、堕天使に利用されるぐらいなら、エクスカリバーが全て消滅しても構わない。最低でも堕天使のもとからエクスカリバーを無くす』と。これはつまり、最悪破壊して回収となっても構わないってことだ」

 

「…はい。そうですね」

 

「なら、その破壊を俺達がやったって構わないだろ? 奪われたエクスカリバーは3本もあるんだからな」

 

「…つまり、そこで裕斗先輩にエクスカリバーに打ち勝ってもらい、想いを果たしてほしいというわけですね?」

 

俺はその答えにニコッと笑みを浮かべた。

 

「そういうことだ。互いに利害は一致している。後は……向こうがそれに同意してくれるかどうかだ」

 

…これが、一番の問題だ。

 

「昴先輩、2人を怒らせました」

 

それを聞いて俺は頭を掻いた。

 

「それなんだよな~。先に向こうが吹っかけてきたとはいえ、これは響きそうだなぁ…」

 

「…もしかして、ものすごく危険なんじゃないのか?」

 

匙が状況を理解しだし、怯えだした。

 

「ん~まあ、どうにかするさ。この手の交渉事は慣れてんだ」

 

昔散々やってきたことだからな。

 

「万が一話がこじれても、お前らには傷一つ付けさせないようにする。逃げる時間くらい稼いでやる。だから心配すんな」

 

俺は2人は不安にさせないようにそう言葉をかけた。

 

「わかりました。昴先輩を信じます。それに……裕斗先輩のためです。私は逃げません」

 

小猫ちゃんはハッキリとした口調と強い眼差しで答えてくれた。心強い限りだ。

 

「助かる。…それじゃ、行こうか」

 

俺が前を歩きだした。

 

「あの2人の居場所はわかるんですか?」

 

「それは問題ない。教会の人間の気配は異質だから、この街に滞在しているならだいたいの場所はわかる。こっちだ」

 

俺が再び歩き出すと、小猫ちゃんと匙もそれに続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「うまい! 日本の食事はうまいぞ!」

 

「うんうん! これよ! これが故郷の味なのよ!」

 

例の2人はガツガツとファミレスのメニューを平らげていく。

 

気配を頼りに歩いていくと、10分程で見つけることができた。目立つ格好なうえに、物乞いまがいなことをしていたので目立つことこの上なかった。

 

俺達を見つけると、2人はかなり訝しげな表情を見せたが、『話しがある。飯驕るから来てくれ』と言ったら二つ返事でついてきた。

 

とりあえず、交渉の席に着けたことは喜ばしいことなんだが……、こいつらどんだけ食うんだよ。優に2人で3人前ずつぐらい食ってんぞ。これは現金じゃきついかな…。ここってカード使えたっけな?

 

そう考えているうちに2人の腹が満足したのか、箸を置いた。

 

「ふぅー、落ち着いた。君達悪魔に救われるとは、世も末だな」

 

「はふぅー、ご馳走様でした!」

 

ゼノヴィアのその発言にちょいとイラッときた。

 

「礼くらい言え。あとそっちは礼儀正しいのはいいが十字を切るな。頭が痛いだろ」

 

一方は紫藤イリナはきちんと礼を言ったが、律儀に十字を切ったため、俺や、小猫ちゃんと匙は頭に手を当てていた。

 

「あー、ごめんなさいね。つい十字を切ってしまったわ」

 

舌をぺロっと出しながら謝罪した。

 

ゼノヴィアがグラスの水をグイっと一気に飲み、一息つくと改めて聞いてきた。

 

「それで、私達に接触した理由は?」

 

向こうから切り出してきたか。ま、何の理由もなく会いにきて、飯を驕られるとは普通思わないよな。さて、どう攻めるか……この手のタイプは……よし!

 

「単刀直入に言う。お前達のエクスカリバーの奪還、及び破壊の任務、俺達にも助力させてほしい」

 

俺は取り繕いもお世辞も一切言わず、ストレートに本題を切り出した。

 

 

――さて、ここからが本番だ。

 

 

さらなる交渉が今、始まった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

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