ハイスクールD×D~転生せし守り手~   作:bridge

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Life.32~複合せしエクスカリバー、怨嗟を断つ聖魔剣~

 

 

 

昴side

 

「エクスカリバーが1本になった光で、下の術式も完成した。あと20分もしないうちにこの街は崩壊する。それを止めるにはコカビエルを倒すしかない」

 

バルパーの口から衝撃的な事実が発せられた。

 

 

――20分…サーゼクス様の到着は間に合わない。もはや、この街を救うにはコカビエルを独力で倒すしかない。

 

 

「フリード!」

 

「はいな、ボス」

 

コカビエルがあの神父の名を呼ぶと、暗闇からあのクソガキ神父が現れた。

 

「陣のエクスカリバーを使え。最後の余興だ、4本の力を得たエクスカリバーで戦ってみせろ」

 

「へいへい、俺のボスは人使いが荒いねぇ。でもでも! 素敵仕様のエクスなカリバーちゃんが使えるからよしとしましょうか!」

 

フリードが下卑た笑みを浮かべる。そして陣にあるエクスカリバーを握り、その切っ先を俺に向けた。

 

「さてさて、散々俺様をこき下ろしたクソ悪魔! てめえにこの聖剣ちゃんにチョンパされる栄誉をくれてやりやしょうか」

 

フリードが俺に殺気を向けながらそう言った。

 

 

――カチン…。

 

 

俺はそんなフリードを無視し、村雨を鞘に納めた。

 

「あん?」

 

そんな俺をフリードが苛立ちながら見つめる。

 

「俺はお前と戦う気は毛頭ない。あいつは……木場、お前が戦え」

 

俺は木場の肩に手を置いた。

 

「…いいのかい?」

 

「構わねぇよ、フリードもエクスカリバーも俺にはあまり関係ないからな」

 

「…わかった。なら、お言葉に甘えて僕が行かせてもらうよ」

 

木場が一歩前に出た。

 

「私も行かせてもらおう」

 

ゼノヴィアも同様に木場の横へと現れた。

 

「そこの騎士『ナイト』にも事情があるように、こちらにも事情がある。そちらから共同戦線の話を持ち込んだ以上、有無は言わせないぞ」

 

「…わかった、頼むよ」

 

木場とゼノヴィアが共に前に出た。

 

「本当はそのまま回収をしたかったが、やむを得ない。最悪、エクスカリバーの核になっている『かけら』を回収できれば問題ない。もはやあれは聖剣であって、聖剣ではない。あれは、異形の剣だからな」

 

「くくくっ…」

 

2人のやり取りがおかしかったのか、バルパーが笑い出した。

 

「バルパー・ガリレイ。僕は『聖剣計画』の生き残りだ。いや、正確にはあなたに殺された身だ。悪魔に転生したことで生き永らえている」

 

淡々と告げる木場だが、その瞳には憎悪が宿っている。

 

「ほう。あの計画の生き残りか。これは数奇なものだ」

 

バルパーは小馬鹿にするかのように言う。そしてバルパーは聖剣の想いを昔話を交えて何やら語り始めた。

 

聖剣が好きだの、自分にはその適正がなかっただのと。

 

そして、聖剣を扱える者に憧れ、そこから聖剣を扱える者を人工的に創りだす研究に没頭するようになったと。

 

「研究の甲斐あって完成に至った。君達のおかげだよ」

 

「なに? 完成? 僕達を失敗作と断じて処分したじゃないか」

 

俺も部長からそう聞いた。木場自身もそういう認識みたいだ。

 

木場のその言葉にバルパーは首を横に振った。

 

「研究を重ねた結果、聖剣を扱うには因子が必要なことがわかった。過去の被験者のほぼ全員にその因子があったが、どれもこれもエクスカリバーを扱えるに数値に満たなかった…」

 

…なるほど、そういうことか。

 

「つまり、お前は、その『因子』を被験者から抜き取り、それを利用して聖剣を扱える者を創りだしたわけだな」

 

俺のこの推理にゼノヴィアがハッとした表情を浮かべた。

 

「そうか、聖剣使いが祝福を受ける時、身体に入れられるのは―――」

 

「――そういうことだ。因子を抜き取り、結晶を作ったのだ」

 

バルパーが懐から聖なるオーラが迸る光輝く球体を取り出した。

 

「これにより、聖剣使いの研究は飛躍的に向上したよ。にもかかわらず、教会の者どもは私を異端として排除した。果ては私の研究成果を利用した。私を断罪しておいてな。しかし、あのミカエルも被験者から因子を抜き出すも殺しはしてはいないところを見ると、私よりは人道的と言えるか」

 

バルパーは愉快そうに笑った。

 

そうやって、木場と共に実験に参加していた被験者からも因子を抜き取ったのだろう。

 

「バルパー・ガリレイ。あなたはどれだけの命を弄べば気が済むんだ…!」

 

木場は怒りや憎しみや悔しさで身体を震わせている。

 

「無論、私の研究が成り、私を断罪した天使と信徒どもにその成果を見せつけるまでだよ」

 

 

――カツーン…。

 

 

バルパーは手に持っていた因子の結晶を木場の足元に放り投げた。

 

「それは貴様にくれてやろう。その結晶は貴様の同志から抜き取った因子から創りだしたものだ。研究は今や環境さえ整えば量産は可能だからな」

 

そうバルパーは言い捨てた。

 

結晶はコロコロと地面を転がり、木場の足元に行き着いた。木場は結晶を手に取ると、愛おしそうに抱きしめた。

 

「皆…」

 

木場の瞳から涙が溢れる。その表情は慈愛とも憤怒とも取れる表情だ。

 

その時、木場の持つ結晶が淡い光を帯び始めた。光は校庭を包み込むほどに拡大した。

 

「あれは…」

 

光が広がると、木場の周りを取り囲むように青白い淡い光を放った少年少女が現れた。

 

そうか、彼らが木場の…。

 

「―――」

 

少年の1人が口をパクパクさせている。声こそ発していないが、何かを木場に伝えようとしている。俺は唇の動きに注目した。

 

『自分達のことはもういい。君だけでも生きてくれ』

 

あの子はそう言っている。その言葉が木場にも届き、その瞳からとめどなく涙が溢れだした。

 

「僕は……僕は! ずっと、思っていた。僕よりも夢を持った子がいたのに、僕よりも生きたかった子がいたのに、僕だけが平和な暮らしを過ごしていいのかって…!」

 

その木場の悲痛な言葉に、その少年はそっと微笑んだ。

 

「―――」

 

魂の少年少女達が口が規則的動き出した。

 

あれは、言葉ではない。…歌か?

 

「聖歌…」

 

アーシアがそう呟いた。

 

あの子達は聖歌を歌っている。木場もそれに合わせて聖歌を歌い口ずさんだ。

 

あの子達にとって、それは過酷な環境の中で心を繋ぎ、夢と希望を保つためのものだったのだろう。

 

 

――カッ!!!

 

 

あの子達から眩い光が発生し、木場を包み込んだ。

 

『僕らは、1人ではダメだった』

 

『私達は聖剣を扱える因子が足りなかった。けど…』

 

『皆が集まれば、きっと大丈夫』

 

あの子達の声が今度は直接俺の耳に飛び込んでくる。

 

その光も、その声も、俺自身が悪魔であるにもかかわらず、温かさを感じる。

 

『聖剣を受け入れるんだ』

 

『怖くなんてない』

 

『たとえ、神がいなくても』

 

『神が見ていなくても』

 

『僕達はいつだって―――』

 

「ひとつだ」

 

あの子達の魂が天に昇り、ひとつの大きな光となり、木場のもとへと降り、その光が木場をそっと包み込んだ。

 

「っ!」

 

この感じ…。

 

『相棒』

 

ドライグが俺に話かける。

 

「この感じ、覚えがある。初めてブーステッド・ギアを解放した時のあの感覚に…そうか、木場は、至ったんだな」

 

『そうだ。神器の別の領域、これが、禁手(バランス・ブレイク)だ』

 

木場が、禁手(バランス・ブレイク)に至った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

光が治まると木場は涙を拭って立ち上がり、バルパーと向き合った。

 

「まだ終わらない。バルパー・ガリレイ。あなたを滅ぼさない限り、また僕達のような犠牲者が出る」

 

「ふん。研究に犠牲はつきものだ。ただそれだけのことだ」

 

バルパーは淡々とそう告げる。

 

…とことんクズだな。

 

「木場! ここで全てを終わらせろ! お前の復讐も、あの子達の無念も! あのエクスカリバーを断ち切って終わらせるんだ!」

 

「裕斗! 自身の手で決着をつけなさい! あなたは私の自慢の騎士『ナイト』よ! エクスカリバーごときに負けないわ!」

 

「裕斗君! 信じていますわ!」

 

「裕斗先輩!」

 

「ファイトです!」

 

皆が木場にその想いをぶつける。

 

「皆……ありがとう」

 

木場が1つになったエクスカリバーを持つフリードに向き合った。

 

「僕は剣になる。仲間達の剣になる! 今こそ僕の想いに、想いに、応えてくれ! 魔剣創造ッ!」

 

木場のその手に1本の剣が現れる。それは神々しい輝きと禍々しいオーラを放つ1本の剣。あれが、木場の禁手による新しい力。

 

「禁手、双覇の聖魔剣『ソード・オブ・ビトレイヤー』聖と魔を有する剣の力、その身で受け止めるといい」

 

 

――ドン!!!

 

 

木場が一気にフリード目掛けて走り出した。

 

「あ~あ、聖歌とかホントマジウザいッス。ていうか、てめえみたいな失敗作の不良品やクソ駄剣に用はないんですよ。とっとと死ねやぁぁぁぁっ!」

 

 

――ギィィィン!!!

 

 

聖魔剣とエクスカリバーが激突する。

 

 

――互角……いや、違う、エクスカリバーのオーラが聖魔剣によってかき消されている。木場の方が上回っている。

 

 

所詮は不完全な聖剣であり、使い手も未熟。木場の聖魔剣には敵わない。

 

その後も、フリードが複合されたエクスカリバーの能力をふんだん利用し、木場へと立ち向かう。

 

エクスカリバー・ミミックの能力を利用した伸縮自在と、刃を複数に枝分かれをさせた剣。

 

エクスカリバー・ラビット・リィの能力を利用した高速の剣。

 

エクスカリバー・トランスペアレンシーの能力を利用した剣を透過させる剣。

 

それらを巧みに使って木場に挑む。だが、そのいずれの能力にも木場は全く異に返さない。全ての斬撃を冷静にいなしていく。

 

「そうだ。そのままにしておけよ」

 

木場とフリードの真横からゼノヴィアが介入してきた。ゼノヴィアは右手を宙に広げると、何かを発し始めた。

 

その瞬間、空間が歪み始めた。歪みに中心に手を入れると、そこから1本のとてつもない聖なるオーラを放つ剣を引きだした。

 

「この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する。デュランダル!」

 

デュランダル……確か、エクスカリバーに並ぶ伝説の名剣だったな…そうか、これがあいつの切り札か。

 

「バカな! 私の研究ではデュランダルを扱える領域まで達していないぞ!?」

 

「そうだろうな。ヴァチカンでも人工的なデュランダル使いは創れていないからな。私は数少ない天然ものだ」

 

なるほど、生まれつきその素養を持っていたためにゼノヴィアはデュランダルを扱えるのか。

 

「デュランダルは創造を絶する暴君でね、使い手の私ですら手に余る。私は今、エクスカリバーとデュランダルの頂上決戦ができることに心が躍っている。フリード・セルゼン。存分に力を揮え。一太刀目で死んでくれるなよ!」

 

デュランダルが更なるオーラが発し始めた。

 

「そんなのありですかぁぁ!? クソッタレのクソビッチが! そんな設定いらねぇんだよぉぉぉ!!!」

 

フリードは絶叫をあげ、ゼノヴィアにエクスカリバーを枝分かれさせ、その刃を放った。

 

 

――ガギィィィィン!!!

 

 

その刃をただの一振りで粉々にした。その余波により、地面までが抉れた。

 

「所詮は折れた聖剣か。相手にもならなかったな」

 

ゼノヴィアはつまらなそうにそう吐き捨てた。

 

「ドちきしょうがぁぁぁ! やっぱ折れた物を再利用したのがいけなかったのでしょうか!? この経験を糧に俺様は成長していきたい!」

 

何やらアホなことを口走るフリードに木場は一気に距離を詰めた。フリードは何とかその聖魔剣をエクスカリバーで受け止めたが…。

 

 

 

――パキィィィィン!!!

 

 

 

木場の聖魔剣はそのエクスカリバーを叩き折った。

 

「見ていてくれたかい? 僕らの力は、エクスカリバーを超えたよ」

 

 

――ザシュ!!!

 

 

木場はその勢いのまま、フリードを斬り捨てた。

 

木場は勝った。自身の手でエクスカリバーに。木場はエクスカリバーを超えた。

 

「せ、聖魔剣だと? あり得ない……反発しあう聖と魔がまじり合うなど…」

 

今の光景を目の当たりにしたバルパーが狼狽し始めた。

 

確かに、聖魔剣とは異なものだな。聖と魔、対極にある2つが混じり合うなんてな。水中で炎を灯すようなもんだろ。

 

「バルパー・ガリレイ、覚悟を決めてもらう」

 

木場が聖魔剣を構えてバルパーに歩み寄る。

 

「…そうか! そういうことか! 聖と魔、それらを司る存在のバランスが崩れているならば全ての説明がつく!」

 

バルパーは何かを思いついたのか、絶叫する。

 

 

――今…、何て言った? 

 

 

聖と魔を司る存在のバランスが崩れている? ……っ!? まさか…魔を司る存在、それは魔王のことだろう。聖を司る存在、それは神のことだ。

 

何故アーシアが教会から切り捨てられたか、教会が私利私欲の団体でないならこれはおかしい。今回の理を無視した聖魔剣。俺の推理が正しければ、この世界の神は…。

 

 

――ズシュッ!!!

 

 

鈍い音が校庭に響く。視線を向けると、バルパーの胸を光の槍が貫いていた。

 

「バルパー、やはりお前は優秀だったな。それ故、お前はその事実に行き着いた。だが、俺には本来お前は不要だった。最初から1人で充分だ」

 

バルパーは口から大量の血を吐き出すと、そのまま崩れ落ち、絶命した。

 

光の槍を投げた本人であるコカビエルが椅子から立ち上がり、その足を地に付けた。

 

ついにコカビエル本人がその重い腰をあげた。

 

「なかなかよい座興であった。そろそろ大願成就の準備運動も兼ねて、俺自身が動くとしよう」

 

コカビエルが俺達のもとに歩み寄ってくる。

 

「ルシファーの妹に聖魔剣。果てはデュランダルまで……見事だった。だが、俺と戦うには役不足だ」

 

コカビエルがそう言い、不敵な笑みを浮かべると、俺にその指を向けた。

 

「お前だけは俺と戦う資格を持っているようだ。赤龍帝よ。俺と1対1で戦え」

 

その言葉にその場にいる全ての者が驚愕した。

 

「ふざけないで!」

 

 

――ドォン!!!

 

 

部長が滅びの一撃をコカビエルに撃ちこんだ。

 

「ふん」

 

 

――バチン!!!

 

 

コカビエルはその一撃を腕の一振りで払いのけた。

 

「邪魔立てをするな、ルシファーの妹よ。貴様では……むっ?」

 

「役不足かどうか、その身で確かめてみろ」

 

部長の一撃に合わせ、木場とゼノヴィアが左右から回り込んでいた。2人が聖魔剣とデュランダルを同時に振るった。

 

 

――ピン!!!

 

 

コカビエルは、木場の聖魔剣を人差し指と中指で受け止められ、ゼノヴィアはもう一方の手から波動を放ち、その動きを止めた。

 

「未熟未熟! お前達では話にならんわ!」

 

 

――ドガァッ!!!

 

 

「ぐぅ!」

 

「がっ!」

 

ゼノヴィアは腹部に蹴りを打ちこまれ、木場には拳を打ちこんだ。身動きできないゼノヴィアはそのまま蹴り飛ばされ、木場は何とか聖魔剣で防いだものの、剣はへし折られ、そのまま殴り飛ばされた。

 

「聖魔剣使い、デュランダル使い。共に話にならん」

 

コカビエルはつまらなそうに吐き捨てた。

 

「雷よ!」

 

朱乃さんがそこに雷を落とす。だが、その雷は黒い翼の羽ばたきで難なく消失してしまう。

 

「お前であっても同じだ。バラキエルの力を宿すお前でもな」

 

「っ! 私をあの者と一緒にするなッ!」

 

その言葉に朱乃さんは目を見開いて激昂した。

 

バラキエル……堕天使勢力の幹部の1人。何故……いや、今はそれを考えている時ではない。

 

「わかっただろう? お前らでは俺には届かん…来い、赤龍帝」

 

コカビエルは俺に手招きをする。俺はそれを聞いて前に出た。

 

「昴!」

 

そんな俺に部長が声をかけた。

 

「大丈夫です。奴は必ず俺が倒します」

 

「…わかったわ。あなたを信じるわ」

 

俺は部長に笑顔を向け、コカビエルの前に出た。

 

「くくく、赤龍帝よ。せめて、メインを彩るためのオードブル程度にはなってくれよ?」

 

「あいにく、お前がメインを食すことはない。オードブルで腹が満たされるだろうからな」

 

互いに不敵な笑みと同時に殺気をぶつけ合う。

 

『気をつけろ。禁手が使える状態ならいざ知らず、今のお前は通常の倍化にも制限がかかっている。勝つのは至難の業だぞ』

 

至難の業か……構わないさ。俺に勝利の可能性が1パーセントでもあるなら、俺はそれに賭けるまでだ。

 

俺は村雨に手をかけた。

 

赤龍帝と堕天使幹部であるコカビエル。

 

 

――両者が今、ぶつかる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

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