ハイスクールD×D~転生せし守り手~   作:bridge

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第四章 ~停止教室のヴァンパイア~
Life.36~堕天使のトップ、お兄様参上~


 

 

 

昴side

 

「よー、悪魔君。今日も悪いな」

 

「いえいえ、お気になさらず」

 

今日も今日とでいつもの悪魔稼業に精を出す。

 

俺を呼び出した相手は黒髪で、見た目は20代くらいの浴衣を着たワイルドな風貌の男だ。

 

俺はここ連日、この男に連続で召喚されている。基本的にとあるマニアックなオタクやワケありの女性の指名が多い俺からすればかなり新鮮な手合いだ。

 

ただ、この依頼主の願い事って変わってんだよな。夜中にパンを買いに行かされたり、釣りに行こうと誘われ釣りスポットまで付き合ったり、後は……はぁ…。

 

とにかく変わっている。

 

でも、契約面では最高のお客様で、高級な絵画や金塊、宝石などを代価でくれたりする。そういう意味ではありがたい依頼主だ。

 

「今日はゲームでもやらないか? 昼間にレースゲームを買ったんだ。1人でやるよりは相手がいた方がおもしろいだろ?」

 

と、依頼主はせっせとゲーム機の配線をテレビに繋げていく。

 

…ゲームか、文明の利器の発展に感動して一時期熱中してやっていた時期があったな。

 

RPGに格ゲー、落ちゲーにレースゲーム、とにかくあらゆるジャンルをやった。部長やアーシアが家に来る少し前ぐらいからはやってないが…。

 

「よし、ゲームもセットできた。日本って国は時間潰しのアイテムが多くていいな。ほら、コントローラー」

 

接続をし終え、俺にコントローラーを渡してくる。

 

「確かに、そればかりは同意です…負けませんよ?」

 

「そりゃこっちのセリフだ。そんじゃ、始めるぜ」

 

『GO!』

 

レースゲームが始まり、テレビ画面に熱中しながらコントローラーを操る。

 

「ほう? なかなかやるな? だが、操作は一通り覚えた。こっから本番だぜ!」

 

「まだまだ、これからですよ!」

 

最初の数レースは俺が勝利していた。だが、レースが進むにつれて実力は拮抗するようになり、勝った負けたのシーソーゲームをするようになった。

 

やがて、お互いの勝率が同等になり、勝ち越しをかけたレースが始まった。

 

このレースも抜きつ抜かれつのデットヒートが繰り広げられる。

 

「…」

 

「…」

 

お互いがテレビ画面に熱中しながらコントローラーを激しく動かす。

 

「……それで」

 

「あん?」

 

「どうして素性を隠して俺ばかりを召喚するんですか? ………堕天使さん?」

 

俺はテレビ画面を見つめながら依頼主に問いかけた。

 

「……いつから気付いていた?」

 

依頼主もテレビ画面から視線を逸らさずに問い返した。

 

「始めからですよ」

 

いくら気配を巧みに隠していても、堕天使の気配は何となくだがわかる。つい最近大物の堕天使に会ったからな。

 

「だったら、どうして逃げるなり仕掛けるなりしなかった」

 

依頼主の操る車が俺を抜き去る。

 

「逃げなかった理由はあなたの目的がなんなのか知りたかったから……仕掛けなかった理由は、あなたに仕掛けてくる気配がなかったのと、俺にどうにかできる相手ではなかったからです。…そういうあなたこそ、自分が堕天使だと気付かれているのを知りながら、どうして何もしなかったんですか?」

 

俺の車がヘアピンカーブで依頼主の車のインを突き、再び前へと躍り出る。

 

「ほう……そこまで気付いてやがったか」

 

これには驚いたのか、感嘆の声をあげた。

 

「神の子を見張る者(グリゴリ)の総督、アザゼル殿とお見受けしますが、よろしいでしょうか?」

 

「くっくっくっ、おもしれえ小僧だ。そこまで気付いてやがったか」

 

依頼主は愉快そうな笑いをあげた。

 

「確信があったわけではありませんけど、ね!」

 

俺はドリフトを駆使してコーナーを一気に曲がる。依頼主も難なくそれに付いて行き、ついに俺の操る車に並んだ。

 

「そうか、なら一応だが、自己紹介をさせてもらうぜ。俺はアザゼル。堕天使どもの頭をやってる。よろしくな、赤龍帝の御剣昴」

 

「こちらこそ、アザゼル殿」

 

『Drow』

 

両者の車が同時にゴールラインを通過した。

 

俺が依頼主アザゼルの方を見ると、その背中には12枚の漆黒の翼が展開されており、ニヤリと笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…」

 

俺は深夜の街を歩いて駒王学園の部室に向かっていた。行く時に使った魔方陣を使えばすぐに帰れるのだが、今回の件はことがことなので、ゆっくり歩いて帰りながら部長への報告を考えることにしたのだ。

 

「堕天使の総督、アザゼルか……なあ、ドライグ」

 

『どうした?』

 

「もし、あそこであのアザゼルと戦いになっていたら、どうなっていたと思う?」

 

俺はそんな質問をドライグに投げかけた。ドライグは少し考えこんでから答えた。

 

『……よくても相討ちだっただろうな』

 

相討ち…か。

 

「いや、俺は確実に負けていたよ」

 

『…むぅ』

 

俺の言葉にドライグが唸る。ドライグもわかっていたんだろうが、俺に気を遣ってくれたのだろう。

 

「アザゼルの実力は明らかにあのコカビエルを上回っていた。…まぁ、それだけならどうにかなるが。…あの男、かなり思慮深くそして頭も相当切れるようだ」

 

コカビエルみたく、力のみで相手を推し量るような力の権化なら付け入る隙もあるだろうが、あの男は冷静に相手の力量を量り、決して驕らず、決して侮らない。的確に戦いを推し進めてくるタイプだろう。戦いにおいてこの手のタイプが一番怖い。

 

「伊達に、堕天使をまとめているわけではないようだな」

 

レイナーレやコカビエル。俺は碌な堕天使と会ってない。故に、決めつけていたわけではないが、あまりいい印象を持ってなかったが…。

 

「あのアザゼルは……嫌いではないかな」

 

俺は部室へと歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

アザゼルside

 

「くっくっくっ! あれが赤龍帝か!」

 

俺は笑いが止まらなかった。

 

あの小僧…普通、俺が堕天使でなおかつその頭だと気付いてこっちの目的を探るなんて真似できるか? いやできねぇ、できるわけがねぇ。

 

常人の神経の奴ならまず逃げ出す。バカなら突っかかってくるだろう。だが、あの赤龍帝は気付いた気配をおくびも出さず、かつ隙を一切見せずにここ数日俺に付き合ってやがった。

 

「仮に、戦いになっていたとしたら負けないにしろ、腕の一本は持って行かれたかもしれないな」

 

赤龍帝からはある種の凄みが滲み出ていた。

 

「くっくっくっ、あのヴァーリが興味を持つはずだ」

 

あのバカ(コカビエル)を連れ帰ってきたヴァーリが珍しく饒舌で上機嫌だった。その理由が今わかったよ。

 

「正直、ブーステッド・ギアと、例のもう1つの神器にしか興味はなかったんだがな」

 

 

――三大勢力の会談か…。

 

 

おもしれえことになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

昴side

 

「冗談じゃないわ」

 

「…」

 

…できるだけ言葉を選んで報告したのだが、部長はかなりお冠となった。

 

しないとは思うが、これからケンカ売りにいくのはやめてくださいね。

 

「まさか、堕天使の総督が私の縄張りに侵入し営業妨害をしていたなんて…!」

 

部長はその身体を怒りで震わせている。

 

「しかも私のかわいい昴にまで手を出そうだなんて、万死に値するわ! きっと、狙いは昴の有するブーステッド・ギアね。アザゼルは神器に強い興味を持っていると聞いているもの。…でも、心配いらないわ、昴。私が昴を絶対に守ってあげるから…」

 

そう言って部長は俺をギュウっと抱きしめた。

 

部長の愛が心に沁みるなぁ…。

 

「あのアザゼルってのは、そんなに神器に興味がある奴なんですか?」

 

俺がそんな質問を投げかけてみると、木場が質問に答えてくれた。

 

「アザゼルは神器に造詣が深いと聞くよ。有能な神器所有者を集めているとも聞くしね…でも心配はいらないよ」

 

木場が俺のもとまで歩み寄り…。

 

「僕が昴君を守るからね」

 

そんな言葉を口にした。

 

「頼りにしてるぜ、我らがナイト殿」

 

俺はそんな木場の肩を引き寄せ、ニカッと笑いかけた。

 

「けど、お前そんなこと言うキャラじゃなかったよな?」

 

「そうだね、自分でもそう思ってるよ。きっと、君と出会って共に過ごしたことで心構えが変わってしまったんだろうね。昔なら少々暑苦しいと感じていただろうけど、今はそれがとても心地いいよ」

 

木場がそう言いながらフッと笑みを浮かべた。

 

「しかし、どうしたものかしら。あちらの動きがわからない以上こちらも動きづらいわ。相手は堕天使の総督、迂闊なことはできないわね」

 

部長は眉間に皺を寄せて考え込む。

 

まあ、迂闊に手を出してこれ以上悪魔と堕天使の関係を悪化させるわけにもいかないからな。けど、まあ…。

 

「気にしなくてもいいんじゃないですか? 向こうからは特に何か仕掛けてくる素振りや気配は一切ありませんでしたし、報酬も依頼以上の物を支払ってくれましたから」

 

アザゼルはコカビエルのような好戦家ではないと思うし、精々悪ふざけぐらいしかしてこないだろう。

 

「そういうわけには…」

 

「気にすることはないよ、リアス。アザゼルというのは昔からああいう男だからね」

 

この場に、グレモリー眷属の誰の者でもない声が響く。

 

俺はすぐさま声のした方向を向き跪いた。俺に続き朱乃さん達も跪いた。ゼノヴィアだけが『?』の表情を浮かべている。

 

そこには部長と同じ紅髪を携えた男性が。この方は現魔王サーゼクス・ルシファー様であり、部長の…。

 

「お、お、お、お兄様…」

 

部長の兄君でもある。その後ろには控えめにグレイフィアさんが控えていた。

 

「彼は、先日のコカビエルのようなことはしないよ。今回のような悪戯はするだろうけどね」

 

と、サーゼクス様がおっしゃった。

 

「くつろいでくれたまえ、今日はプライベートで来ている」

 

サーゼクス様からの言葉を聞き、俺達は立ち上がった。

 

「お兄様…ど、どうして、ここへ?」

 

部長が怪訝そうに尋ねる。部長の兄君とはいえ、人間界の学校の部室に顔を出すなんて真似は早々しないだろうからな。

 

「もうすぐ授業参観があるのだろう? 私も是非とも妹が勉学に励む姿がみたいからね。休暇を入れて参加させてもらうよ。安心しなさい、父上もちゃんとお越しになられる」

 

やっぱり部長の父上も来られるのか。ライザーとの一騎討ちの後に部長の横におられたあの方だよな。

 

それにしても、本当に部長の授業参観のために来られたのだろうか。

 

「し、しかし、魔王がいち悪魔に過ぎない私を特別視しては…」

 

部長の言葉にサーゼクス様は首を横に振った。

 

「これは仕事でもあるんだよ、リアス。三すくみの会談をこの学園で執り行おうと思っていてね。会場の下見も兼ねているのだよ」

 

その言葉にこの場の全員が驚いた。

 

まさか、三大勢力の会談を人間界の学校で行うなんてな。

 

「この学園は私の妹であるお前と伝説の赤龍帝に聖魔剣使いと聖剣デュランダル使い、魔王セラフォルー・レヴィアタンの妹が所属し、コカビエルと白龍皇が襲来してきた。もはやこれは偶然では片付けられない事象だ。様々な力が入り混じりうねりとなっているのだろう、そのうねりを加速度的に増さしているのが御剣昴君、赤龍帝だと思うのだが」

 

「…」

 

サーゼクス様が俺にその視線を向ける。

 

大きな力の持ち主には良くも悪くも多くの者が集まる。やはり、このブーステッド・ギアが何かしら影響を与えているのだろうか…。

 

その後、ゼノヴィアがサーゼクス様に挨拶をし、話は終了した。サーゼクス様が何処か宿泊施設はないかと尋ねてきた。時刻は深夜、今から宿泊施設を探すのは困難だろう。

 

そこで俺は…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「わざわざこんな夜更けに招待してもらって、申し訳ないね」

 

「いえいえ。少々窮屈ではあると思いますが、是非ともくつろいでいって下さい」

 

俺はサーゼクス様とグレイフィアさんを俺の自宅に招待した。無駄に広い家で部屋も余っているからな。先日、ハウスキーパーの人が清掃してくれたから部屋も綺麗なはずだ。

 

部長は可愛く抵抗していたが、結局押し切られてしまった。

 

「御両親はおられないのかな? リアスのことやこれからお世話になる身としては是非とも挨拶をしたいのだが…」

 

「両親は既に鬼籍に入っているので心配いりません」

 

俺がそう言うと、サーゼクス様は申し訳なさそうな表情を浮かべた。

 

「それは失礼した。辛いことを思いださせてしまったね、申し訳ない」

 

「お気になさらないで下さい」

 

どのみち設定上の両親なんで。

 

その後、サーゼクス様を客間に案内しようとしたのだが『今夜は君と少し話ながら床につきたいんだ』とのことなので、俺の部屋に来客用の布団を運び込んだ。その際に部長は心底悲しそうな表情で俺を見つめ、その後はグレイフィアさんに自分の部屋まで腕を引かれていった。

 

ここ最近は部長と同じベッドで眠ることが多かったが、そこまで名残惜しいものなのか?

 

「私も今夜は自室で眠りますね」

 

「ああ。そうしてくれ」

 

思えば、アーシアとも同じベッドで眠る機会が多かったな。

 

「それではスバルさん、おやすみなさい」

 

「おやすみ、アーシア」

 

アーシアはペコリと頭を下げ、自室へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

サーゼクス様と自室に入り、早々に寝支度を整え、横になった。

 

俺は、横で眠るサーゼクス様のオーラに圧倒されていた。

 

 

――これが魔王…。

 

 

グレイフィアさんも相当だったが、この方もまた別格だな。あのコカビエルが可愛く思えるほどに。

 

でも、とても内から滲み出る安心感も感じることができる。

 

全く、この世界には底が知れない者が多いな。

 

俺がそんなことを考えていると…。

 

「アザゼルに会ったそうだね」

 

サーゼクス様が俺に話しかけてきた。

 

「はい」

 

「何かされたわけではなさそうだけど、何か言われたのかな?」

 

「『今度、改めて会いに行く』と、言ってましたね」

 

「そうか…アザゼルは強い神器に興味を持っている。君のブーステッド・ギアと、報告にあったブレイブ・ハートも例外ではないだろう。君と同じロンギヌスの所有者も彼のもとに身を寄せている」

 

「…何故集めているのでしょうか? 何日か接してみて、あのアザゼルという方は戦争を好む者とは思えませんでした。自衛……にしても些か大げさだと思います」

 

「理由は私にもわからない。ただ君の言うとおり、彼は戦好きではない。過去の大戦も最初に戦から手を引いたのは堕天使だったくらいだからね」

 

ならば、アザゼルは何故強力な神器持ちを集めているのか。力を一勢力に結集すれば警戒されるのは目に見えている。戦を仕掛けるのではないのなら、何のために…単に神器を研究したいだけか? それとも何かに備えて……だとしたらいったい何に…。

 

俺が深く考え込んでいると、サーゼクス様が俺に優しい口調で語りかけた。

 

「心配はいらない。君は伝説のドラゴンであり、リアスの大切な眷属だ。私が君の身の保障を約束させてもらうよ。君が眷属になってから、リアスは毎日楽しそうにしている。それは君のおかげだと私は思っている」

 

「…そうなのでしょうか?」

 

「私はそうだと感じている…これからも妹を、リアスをよろしく頼むよ」

 

「はい。終生我が主、リアス・グレモリー様のお側でお守りする所存です。それが私の使命であり、願いですから」

 

「ありがとう。妹に君のような眷属がいて、頼もしく思うよ、御剣昴君。私も妹同様に昴君と呼んでも構わないかな?」

 

「構いません。光栄の極みです」

 

数多くの悪魔がいる中、しかもいち転生悪魔に過ぎない俺が魔王様に名で呼ばれるなんてのは最高の栄誉だ。

 

「そうか。では昴君、私のことは名前で呼んでほしい。なんだったらお義兄さんでも構わないよ」

 

…お兄さん? ……何故。

 

「お兄さんはさすがに恐れ多いので、サーゼクス様とお呼びしてよろしいですか?」

 

「ふふっ。さすがにそれはまだ時期尚早か。だが、近いうちにそうなるのだから、今はまだそれで構わないか…」

 

サーゼクス様は何やらお一人で納得されている。

 

いったいなんだというのだろうか? サーゼクス様流の冗談か? んなわけないか。

 

「それにしても、君は不思議だ」

 

唐突にサーゼクス様がそう呟く。

 

「不思議……ですか?」

 

「君の言動や雰囲気だ。時折、君がとても大人びて見える時がある」

 

「…ははっ、背伸びしたい年頃ですから。リアス様を支えるためにも、早く大人になりたいんですよ」

 

「そうなのかい? 私には子供の背伸びというよりも、経験則からの言葉に見えるのだがね」

 

「…」

 

俺は思わず沈黙してしまった。

 

「…それが君という存在なのであり、魅力なのだろう…長々とすまなかったね、おやすみ、昴君」

 

「…おやすみなさいませ、サーゼクス様」

 

俺はそう挨拶を交わし、眠りに着いた。

 

何とも慌ただしい一夜が終わった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

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