ハイスクールD×D~転生せし守り手~   作:bridge

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Life.41~天使の長との出会い、朱乃の心~

 

 

 

ギャスパーの教育と神器の特訓をした翌日…。

 

俺は朱乃さんに呼ばれ、とある目的地に向かっていた。

 

指定された先に足を進めていくのだが、徐々に街外れへと向かっていた。

 

 

――この先にある建物って…。

 

 

薄々予想は付いていたが、たどり着いた先には上へと昇る石段と赤い鳥居。そしてその先には神社が。

 

「ここ……だな。しかし、俺が神社に行っても大丈夫なのか?」

 

 

――神社…。

 

 

悪魔に転生した際に部長から絶対に入るなと釘を刺された場所の1つだ。とはいえ、呼ばれた以上、行かないわけにもいかないので、俺はそのまま足を進めていった。すると、石段の目の前に人影があった。

 

「いらっしゃい、昴君」

 

それは、巫女衣装に身を包んだ朱乃さんだった。

 

「ごめんなさいね、急に呼び出してしまって」

 

「いえいえ、構いませんよ。目的地は、この神社ですか?」

 

俺が石段の上を指して尋ねてみる。

 

「ええ、そうです。それでは行きましょうか」

 

俺は朱乃さんの横に並び、石段を登っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

朱乃さんと話をしながら石段を昇っていっているのだが、話によると、この神社は現在神主が亡くなっており、そこに部長の計らいで朱乃さんが住んでいるという。

 

石段を昇り終えると、そこに1人の人影が。

 

豪華な白いローブに身を包んだ端整な顔立ちの青年が。その頭上には金色に輝く輪っかが漂っている。

 

 

――このヒト……まさか…。

 

 

「あなたが赤龍帝ですね」

 

その青年は優し気に微笑みながらそっと手を差し出し、握手を求めてきた。

 

「初めまして、赤龍帝、御剣昴君。私はミカエル。天使の長を務めさせていただいております。なるほど、このオーラ、とても懐かしい限りです」

 

その言葉と同時に彼の背中から金色の12枚の翼が現れた。

 

…まさかとは思ったが、本当に天使側の大物だったか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

朱乃さんの先導で俺とミカエルさんは神社の本殿に足を踏み入れた。本殿はかなりの広さを誇っており、大きい柱が何本も立っている。

 

中央からは肌がビリ付くほどの波動が発している。思わず額から汗が滴りそうな程の危険のオーラだ。

 

「これをあなたに進呈しようと思いましてね」

 

ミカエルさんが指差した方向には1本の聖剣が宙に浮いていた。エクスカリバーやデュランダルを目の当たりにしてきた俺には人目でそれが聖剣だと理解できた。

 

「これはゲオルギウス・・・聖ジョージと言った方が伝わりやすいでしょうか? 彼の持っていたドラゴン・スレイヤーである、通称、聖剣『アスカロン』です」

 

聖ジョージというと、確か屈強なドラゴンを討滅したっていう奴のことだっけか。ドラゴン・スレイヤーはドラゴン退治を生業にしている者、もしくはドラゴン退治のための武具の総称だったな。

 

「しかし、聖剣にプラスしてドラゴン・スレイヤーとは、悪魔でドラゴンの力を有している俺には天敵中の天敵だな。はたして使いこなせるのか…」

 

俺が素朴な疑問を呟いていると…。

 

「心配には及びません。特殊儀礼を施しているのでドラゴンの力があればあなたでも問題なく扱えます。厳密にはブーステッド・ギアに同化させるといった方が正確でしょうか」

 

籠手に同化させるのか…。

 

『お前が望めば神器がそれに応えてくれる。要はお前しだいだ』

 

なるほど。なら、せっかくだからいただいておこうかな。けど、その前に…。

 

「1つ、お聞きします。なぜこれを私に? あなた方にとって私は宿敵であり、かつて、脅威となった存在のはずです」

 

俺が疑問に思ったことを尋ねてみた。すると、ミカエルさんは微笑みながらその質問に答えてくれた。

 

「私は今度の会談、三大勢力が手を取り合う大きな機会だと思っているのですよ。既にあなたは存じていることとは思いますが、我らが創造主である神、そして、旧魔王達は亡くなり、堕天使の長であるアザゼルも戦争を起こしたくはない建前上は公言しています。このまま三すくみの関係を続けていれば三大勢力は滅びの一途をたどることでしょう。ならば、今がその好機。いがみ合っていた三大勢力手を取り合うチャンスなのですよ。ですから、その聖剣は私から悪魔サイドへの贈り物です。もちろん、堕天使側にも贈らせていただきましたし、悪魔側からも噂の聖魔剣を数本いただきました。こちらとしてもありがたい限りです」

 

そういうことか。同じ種族である人間でさえも時として手を取り合うのは難しい。それが違う種族で、しかも途方もない昔から争いを続けてきたとなれば和平を結ぶことは砂漠の中で一粒のダイヤを見つけるようなものだ。機を見るに敏とならねば不可能。そして今この瞬間がまさにその機だ。

 

それに、聞くにこの世界は悪魔、天使、堕天使の聖書に記された種族以外に様々な種族、及び神話体系があるらしいからその者達がこっちサイドに干渉しないとも限らないだろう。

 

「過去、赤と白の龍の乱入した時、三大勢力は手を取り合ってそれを対処しました。あの時ように再び手を取り合うことができるはずだと私は思っています」

 

立派な話だ。過去の遺恨を考えた上でのこの決断だ。いくら理屈でこれが有益であると理解しても、感情がそれをよしとしないだろう。伊達に天使側の長ではないといったところだろうか」

 

「わかりました。そういうことであるなら。この聖剣、アスカロン。ありがたく受け取らせていただきます」

 

俺はミカエルさんに頭を下げ、そのアスカロンを手に取った。

 

『相棒、ブーステッド・ギアに意識を集中し、その剣を神器の波動に合わせろ。後は俺が何とかしてやる』

 

「あいよ」

 

俺はドライグに言われるがまま意識を集中させた。

 

聖なるオーラが神器に流れ込むのを感じた。

 

 

――カッ!!!

 

 

眩いほどの赤い閃光が走る。光が治まると、アスカロンが左腕のブーステッド・ギアと同化しており、籠手から剣が生えていた。

 

アスカロンが籠手と直結したか。腕にはめるより、手に持った方が扱いやすいんだが、これはこれでありか。

 

「そろそろ時間です。私はここでお暇させていただきますね」

 

と、ミカエルさんが手をポンと叩きながら言った。それと同時にミカエルさんの身体が光で包まれ始めた。俺はミカエルさんの去り際…。

 

「悪魔に転生したばかりの私が言うのもおこがましいことですが、此度の会談。必ず和平を結ぶきっかけにしてください」

 

俺がそう言うとミカエルさんがニコリと笑顔を浮かべ…。

 

「もちろんです」

 

それだけ言い残してミカエルさんは消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「お茶ですわ」

 

「ありがとうございます」

 

ミカエルさんがいなくなった後、俺は朱乃さんが生活している境内にあるお家に招待され、その和室でおもてなしを受けていた。

 

俺は茶道の礼式にのっとり、お茶をいただいた。まろやかで、口の中に適度に苦味が伝わる。部室で紅茶を淹れてもらっているので朱乃さんのお茶を飲む機会も多い。紅茶も美味しいが、やっぱり和風のお茶も美味しい。

 

「結構なお点前です」

 

「うふふ。お粗末様です」

 

こんなやりとりも少々。

 

聞いてみると、朱乃さんはここでミカエルさんとこの神社でアスカロンの仕様変更術式を行っていたらしい。

 

その後も、あたりさわりのない会話を弾ませていく。ここで俺は以前から気になっていたことをこの機会に尋ねてみることにした。

 

「1つ、お聞きしてもいいですか?」

 

「ええ、もちろんですわ」

 

「バラキエル。朱乃さんは堕天使幹部の…」

 

俺のこの言葉に朱乃さんは表情を曇らせた。

 

「…そうよ。私は堕天使の幹部、バラキエルと人間との間に生まれた者です」

 

…やはりか。もともと、朱乃さんからは僅かではあったけど堕天使の匂いがしていたし、コカビエルも『バラキエルの力を宿す者』と言っていた。

 

「母はとある神社の娘でした。ある日、傷ついていた堕天使であるバラキエルと出会い、介抱し、その時のよしみを深めて私を宿しました」

 

朱乃さんは淡々と自身の過去、生い立ちを話してくれた。

 

薄々と察してはいたが、朱乃さんは複雑な家庭環境で育ったらしい。

 

 

――ファサ…。

 

 

朱乃さんが背中の翼を広げる。その背中には、一方は悪魔の翼、もう一方は堕天使の翼が生えていた。朱乃さんは一方の堕天使の黒い羽を手に持った。

 

「穢れた翼……この翼が嫌で、私はリアスと出会い、悪魔となったいうのに…。結局、私は堕天使の翼と悪魔の翼、両方を持ったおぞましい生き物になってしまった。ふふっ、穢れた血を身に宿す私にはお似合いなのかもしれません」

 

自嘲するように朱乃さんは言う。

 

「こんな私を見て昴君はどう感じました? 昴君は堕天使を快く思ってはいないでしょう? アーシアちゃんを一度は殺し、この街を破壊しようとしたのだから当然だわ」

 

朱乃さんは顔を伏せ、悲しみで表情を歪ませながら言った。

 

俺は嘘偽りのない本心を朱乃さんに告げた。

 

「俺は堕天使を嫌ってはいませんよ」

 

「えっ?」

 

「レイナーレとコカビエルに関しては正直、心底嫌いです。ですが、それだけで堕天使を推し量ったりはしません。悪魔だって全てが善の者ではないでしょう?」

 

朱乃さんは俺のこの言葉に目を見開き、言葉を失っている。

 

俺はそんな朱乃さんをそっと抱きしめた。

 

「そんな自分を貶めるようなことを言わないでください」

 

俺は堕天使の翼をそっと触れるように撫でた。

 

「堕天使の翼。とても綺麗じゃないですか。おぞましくなんてありませんよ」

 

俺は身体を離し、朱乃さんの両の瞳を見据える。

 

「朱乃さんが堕天使の血を引いてようとなんだろうと、俺は朱乃さんを嫌ったりしません。他の皆だって一緒です。俺は優しくて、部長はもちろん、眷属の皆のことを大切に想ってくれているあなたが大好きです。だから朱乃」

 

俺は笑顔を朱乃さんに向け…。

 

「笑ってください。あなたにはそんな表情は似合いませんよ」

 

俺は少々重くなってしまった空気を変える意味も兼ねてちょっと気障な感じに言ってみた。こんなことを言えば朱乃さんもいつもの調子に戻ってあの笑顔を見せてくれると。ところが…。

 

「えっ?」

 

朱乃さんの瞳から涙が溢れ、頬を伝っていた。

 

 

――こんなこと言うべきではなかったのか…。

 

 

「そんな殺し文句……そんなこと言われたら……本当に本気になっちゃうじゃないの…」

 

朱乃さんが俺の服の襟をそっと掴みながら小さな声で言った。

 

「えーっと、朱乃さ……ん!?」

 

俺が朱乃さんの肩を掴み、声を掛けようとしたところ、その口を塞がれた。

 

「ん…」

 

朱乃さんが俺の唇に自身の唇を重ねていた。

 

時間にして1分と少々唇を重ねた後、朱乃さんは身体をそっと離した。

 

「あ、朱乃さん…」

 

「…ねぇ、昴君、リアスのこと、好き?」

 

俺は朱乃さん真意がわからず、戸惑ったが、正直に答えた。

 

「えっと、好きです。敬愛すべき主です」

 

それを聞いて朱乃さんは何かを考える素振りを見せる。

 

「敬愛すべき主……まだ主従の域を超えていませんわね。…それなら…(ボソッ)」

 

何やら呟いているが、俺にはよく聞き取れない。

 

「決めましたわ。私、一位は諦めていたけれど、これを機に一位を目指しますわ」

 

朱乃さんは何かを決意したかのようにそう宣言した。

 

「えっと、いったい何が何やら…」

 

俺が戸惑いを越えて混乱をしていると、朱乃さんが俺の頬に手を当てた。

 

「ねぇ、もう一度呼んで?」

 

「えっ?」

 

「朱乃って、さっきみたいにもう一度呼んで?」

 

そこには普段学校で慕われているお姉様の顔も先輩の顔もない、歳相応の女の子の顔を俺に向けていた。

 

「…朱乃」

 

俺は希望どおり、名前を呼んだ。

 

「はい♪ …嬉しい、昴…」

 

朱乃が俺の胸に飛び込んだ。

 

俺は朱乃さんの背中をそっと撫で……ようとしたんだが…。

 

「朱乃さん…。俺の背筋がまるで凍るかのように冷たいんですが…」

 

「それはきっとこわ~いお姉さんが睨んでいるからですわ」

 

その言葉を聞いて振り返ると、そこには…。

 

「っ!?」

 

そこには、危険なほどの紅色のオーラに身を包んだ部長の姿があった。

 

「油断も隙もないわね…」

 

その言葉には恐ろしいほどに怒気を含んでいる。部長は大股に部屋に入り、俺の眼前まで歩み寄った。

 

「例の剣は?」

 

「ばっちりいただきました!」

 

「ミカエルは?」

 

「帰られまし――イタタタッ!」

 

言い終える前に部長は俺の耳を掴み、引っ張りながら部屋を出ようとする。

 

「なら、ここにはもうここには用はないわ! 帰るわよ!」

 

「痛い痛い! 切れる! 千切れる!」

 

俺の悲痛の言葉も通じず、ズルズルと外に引っ張り出されていった。

 

「リアス。私は負けないわよ」

 

朱乃さんの言葉に部長は一度足を止めるが、再び大股で外へと向かっていった。

 

 

――って、痛い痛い痛い!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「…」

 

「…」

 

外に出た後、部長は少し足音を荒く鳴らしながら部長はひたすらに帰路についている。俺もその後を続く。

 

引っ張られた耳が痛い。神社を出た辺りで放してくれたが、まだジクジク痛い。

 

「…」

 

部長は相変わらず無言で歩いていく。

 

「…あの、部長」

 

「なに?」

 

その返事はそっけない。

 

「えーっと、いつから見て――」

 

「――聞きたい?」

 

「いえ、結構です」

 

俺は聞かなかった。いや、聞けなかった。だって怖いもん。

 

「…私の初めての時より長かったわね」

 

「えっ?」

 

「キス」

 

「…」

 

…そこから見てましたか。さて、何と言ったらいいだろうか。

 

俺が頭を巡らせていると、部長が唐突に足を止めた。

 

「…部長?」

 

俺がおそるおそる声をかけた。

 

「…」

 

部長は何も言わない。そして不意にこちらに振り返り、俺の眼前にまで歩み寄ると…。

 

「んぐ!」

 

俺の両頬を掴み、強引に自身の唇を俺の唇に重ねた。

 

 

――クチュッ…。

 

 

俺の口内に舌を侵入させ、俺の舌と絡めた。

 

「ぷはぁ!」

 

暫し、絡めた後、身体を離した。俺と部長の間を光沢の銀糸が伝い、そっと重力によって切れた。

 

「…きょ、今日のことはこれで許してあげるわ//」

 

部長は俺から視線を逸らし、顔を赤く染めながら言った。かと思うと、いつもの優しい笑顔に戻り…。

 

「ふふっ、それでは帰りましょう♪」

 

部長は俺の腕に自身の腕を絡めて歩き出した。

 

…何はともあれ、機嫌を直してくれて何よりだ。

 

俺は難が去ってほっと胸をなで下ろした。

 

ところが、この光景を我らが純粋な元シスターに目撃され、家に帰ってまた一難降りかかるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

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