ハイスクールD×D~転生せし守り手~   作:bridge

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Life.53~各々の課題、修行相手~

 

 

 

翌日、部長を始め、グレモリー眷属の面々はグレモリー家の広い庭の一角に集合した。

 

全員がジャージを着用しており、庭の置かれているテーブルを囲い、椅子に腰掛けている。

 

同じくジャージ姿のアザゼル先生。その手には俺達の詳細なデータが書いてある思しき紙を持っている。

 

「先に言っておく。これから俺が言うものはお前達の将来を見据えたトレーニングメニューだ。早々に効果が出る者もいるが、逆に長期的の見なければならない者もいる。だが、心配すんな。お前達は成長中の若手だ。方向性を違えなければ良い成長が望めるだろう。さて、ますはリアス、お前からだ」

 

指名された部長がしっかり目を見据えてそこ言葉を待っている。

 

「リアス。お前は才能、身体能力、魔力の全てが最初から高スペックに備わった悪魔だ。特別なトレーニングをしなくても大人になる頃には最上級悪魔の候補になるだろう。だが、お前は将来じゃなく今強くなりたい。そうだな?」

 

アザゼル先生の言葉に部長は深く頷いた。

 

「だったら、こいつに書いてあるトレーニングを決戦日直前までこなせ」

 

渡された資料を部長が端から目を通していく。全て目を通した後に、部長は首を傾げた。

 

「…特にすごいトレーニングとは思えないのだけれど?」

 

「そりゃ基本的なトレーニング方法だからな。お前の場合はそれでいいんだ。もともとの全ての能力が総合的にまとまっているんだからな。問題は王『キング』としての資質だ。王『キング』は時に、力よりも頭を求められる。才能や資質に恵まれずとも、戦略や機転の良さで上まで上り詰めた悪魔だっていることはお前も知ってるだろ? まずはレーティングゲームを学べ。お前が率いる眷属悪魔の実力や才能を最大限生かしてやれるようにしろ」

 

当然か。王『キング』の采配次第で勝敗を分ける。時にルールなどの縛りがあるレーティングゲームの場合は、戦闘力よりも知略に優れた王『キング』の方が重宝するかもしれないな。

 

「次に朱乃」

 

「……はい」

 

次に指名されたのは朱乃さんだが、その表情はひどく不機嫌そうだ。理由はバラキエルさん絡みなのだろうか…。

 

「お前は自身に流れる血を受け入れろ」

 

「っ!」

 

その言葉を聞き、朱乃さんは表情を曇らせた。

 

自身に流れる血、それは朱乃さん自身が嫌悪している堕天使の血のことだ。

 

「ライザーとの一戦の記録映像で見せてもらった。なんだありゃ。お前のスペックなら相手の女王『クイーン』を難なく降せたはずだ。何故、堕天使の力を振るわなかった? 雷では限界がある。雷に光を乗せ、『雷光』にしなければお前本来の力を発揮できない」

 

 

――雷光か…。

 

 

あの雷に悪魔の弱点である光が合わさればその威力と効果は絶大だ。

 

「…あんな力、私には――」

 

「否定するな。その否定がお前を弱くしている。最後に頼れるのは己の身体だけだぞ? まずは自分自身の全てを受け入れろ。そうでなきゃお前は今後の戦闘の邪魔となる。『雷の巫女』から『雷光の巫女』になってみせろ」

 

「…」

 

朱乃さんは言葉を一切発さなかった。だが、それをやらなければならないということは理解しているようだ。

 

「次は木場だ」

 

「はい」

 

「お前は禁手の解放時間を増やせ。まずは1日。それができたら実戦形式で1日だ。あとはリアスと同様に基本トレーニングをしてりゃ強くなるだろうよ。剣系の神器の扱い方は後でマンツーマンでレクチャーしてやる。剣術の方はお前の師匠にもう1度習うんだったな?」

 

「はい。1から指導してもらうつもりです」

 

木場の師匠か。どんな方なんだろう? 一度会ってみたいな。

 

「次、ゼノヴィア。お前はデュランダルを今以上に扱えるようになれ。今のままじゃせっかくの聖剣も宝の持ち腐れだ。後は、もう1本の聖剣に慣れてもらう」

 

「もう1本の聖剣?」

 

ゼノヴィアが首を傾げた。

 

「ああ、ちょいと特別な聖剣だ」

 

ニヤリと笑みを浮かべるアザゼル先生。すぐに表情をもとに戻すと、次にギャスパーの方を見据えた。

 

「次にギャスパー」

 

「は、はぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

指名されたギャスパーは超絶にビビりながら返事をする。

 

「あーもう、ビビるなビビるな。お前の最大の壁はその恐怖心だ。とりあえず、心身共に鍛えなおす。もともと血筋、神器共に相当なスペックを有している。僧侶『ビショップ』の特性、魔力に関する技術向上もお前を大きく支えてくれる。そこで、お前専用に『脱・引きこもり計画』なるプログラムを組んでやったから、そこで真っ当な心構えをできるだけ身に付けろ。最低限、人前に出ても動きが鈍らない程度にはなれ」

 

「はぃぃぃぃぃっ! 粉骨砕身の精神で頑張りますぅぅぅぅぅ!」

 

おーおー、気合充分だな。っていうか、粉骨砕身なんて言葉よく知ってたな。

 

「次、同じく僧侶『ビショップ』のアーシア」

 

「は、はい!」

 

アーシアに課せられたトレーニングは、基本的なトレーニングとアーシアの神器、聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)の強化だ。

 

現在でもかなりの回復能力を有しているのだが、それはあくまでも『触れる』でしかその効果をなさない。だが、修行次第では、全身からオーラを発し、広げた範囲内いる味方をまとめて回復することも可能になるらしい。

 

さらには、回復のオーラを対象に飛ばし、回復能力を飛び道具のように使えるようになるという。

 

それが実現できれば、アーシアのゲームでの重要性がかなり跳ね上がり、戦略性も上がる。これは是非とも実現してほしいな。

 

「悪魔をも治療できるその神器はこのチームの特徴的な持ち味、武器と言える。後はアーシアの体力勝負だ。基礎トレーニングも併用してこなしておけよ?」

 

「は、はい! 頑張ります!」

 

両手の拳を胸の前でグッと握り、返事をした。

 

「次は小猫」

 

「……はい」

 

声の調子こそはいつも通りだが、気合の入った様子がうかがえる。

 

ここ最近、元気がなさそうに見えたんだが、杞憂だったか?

 

「お前はオフェンス、ディフェンス、戦車『ルーク』としては充分な素養を持っている。身体能力も申し分ない。だが、リアスの眷属には戦車『ルーク』のお前よりオフェンスが上の奴が多い」

 

「っ! ……わかっています」

 

アザセル先生の遠慮の一切ない指摘に小猫ちゃんは悔しそうに歯を食い縛った。

 

「リアスの眷属でトップのオフェンスは木場とゼノヴィア、それと昴だ。禁手の聖魔剣に聖剣デュランダルにブーステッド・ギアを有してやがるからな」

 

聖と魔が入り混じった剣に、名だたる聖剣であるデュランダル。どちらもその破壊力は凄まじい。俺の有するブーステッド・ギアも、禁手形態で全力で力をぶっ放したら相当な破壊力になる。

 

「小猫、お前も同様に基礎の向上をしておけ。その上で自身が封じているものを晒らけだせ。お前も朱乃と同じだ。自分を受け入れることができなけりゃ大きな成長は望めないぞ」

 

「…」

 

アザゼル先生の言葉に黙り込む小猫ちゃん。先程発していた静かな気合も何処かに消え失せていた。

 

朱乃さんと同じ……小猫ちゃんにも何か、秘めたるものがあるのだろうか。

 

「で、最後に昴だ」

 

いよいよ俺の番だな。

 

「お前の場合は……っと、自分ではどう思ってるんだ?」

 

アザゼル先生は課題内容やトレーニングメニューを告げるではなく、俺自身に課題を聞いてきた。

 

「俺も基礎能力の向上が主な課題だと思っています。後は、神器のことをよく知り、扱いこなせるようになることですね」

 

俺が思う自分の課題を告げると、アザゼル先生はニヤリと笑みを浮かべた。

 

「お前の課題は概ねそんなところだ。お前の持つブーステッド・ギアは既に禁手に至っている。技量も、あのバカ(コカビエル)を追いつめる程にある。欠点らしい欠点も特にない。お前はとにかく神器の扱いに慣れろ。後は基礎能力向上させりゃ、確実に強くなる」

 

「そうですね」

 

ブーステッド・ギアの能力は倍化の能力。早い話が1の力が2になるということだ。なら、自身の基礎能力が向上すればそれだけ倍化の効果も上がる。

 

「ところで、俺のもう1つの神器、ブレイブ・ハートについてなんですが…」

 

俺が尋ねると、アザゼル先生は顔をしかめて頭を掻き始めた。

 

「あー、その神器についてなんだが、率直に、詳しいことはほとんどわからなかった」

 

「わからない……ですか?」

 

俺は三大勢力が協定を結び、アザゼル先生がオカルト研の顧問に就任した後すぐ、ブレイブ・ハートの解析をお願いしていた。

 

「ブレイブ・ハート。その神器はこれまで見た事も聞いたこともなかった。渡された武器の1つを解析、研究してみたが、全くの未知の代物だったよ。どうしてあんなに頑丈なのか、さっぱりわかんねぇ」

 

神器の造形に深いアザゼル先生にもわからないのか。

 

「頑丈なのは特別な素材で精製されているわけでも特別な魔術を施してあるわけでもない。言ってみりゃ、あの神器自体が折れたり曲がったり欠けたりするのを拒んでるかのような感じだ。それが一番しっくりくる結論だな」

 

皆の魂が1つになった神器だからな。不屈な想いや心は砕くことも折ることもできない。ま、心理だと俺は思う。

 

「だが、解析は出来ずとも、その神器を伸ばす方向性は見えている。あの神器の武器には、エクスカリバーのような多様性や、デュランダルのような破壊力や切れ味を秘めているわけではない。あれを存分に生かすのに必要なのは技量と状況に応じた機転だ。それについては俺がとやかく教えるより、お前が実戦と鍛錬を積みながら身に付けていけばいい」

 

「了解です」

 

それが結論か。ま、手に馴染む武器だからいいか。

 

「それで、俺のトレーニングメニューは?」

 

他の皆にはトレーニングメニューが書いてある紙を渡していたが、俺には何も渡されていない。

 

「ドラゴンの修行ってのは昔から実戦形式と相場が決まってんだ。その修行相手をここに呼んでいる。もうすぐ来るはずなんだが…」

 

そう言って空を見上げ始めた。俺と他の眷属達も釣られて同じ方向に視線を向けた。すると、その視線の先に何やら影が。その影は猛スピードでどんどんこっちに近づいてくる。次第に輪郭がくっきり見えてきた。

 

…何だ、ありゃ? かなりの大きさだぞ?

 

 

 

――ドオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!

 

 

 

大きな地響きと共にその影が目の前に飛来してきた。地面が揺らぎ、俺は倒れないように踏ん張っている。

 

土煙が舞い、収まると、そこにいたのは全長15メートル。大きく裂けた口に荒々しさを窺える牙、野太い腕に脚、横に大きく広がる両翼。

 

「ドラゴン…」

 

そう、これはドラゴンだ! 生で見るのは久しぶりだ。

 

「そうだ、ドラゴンだ。こいつがお前の実戦パートナーだ」

 

このドラゴンが……見た目以上に屈強そうなドラゴンだな…。

 

「アザセル。敵の領地によくノコノコと来れたものだな」

 

そのドラゴンは口の端を吊り上げながら喋った。

 

 

――すげえ、このドラゴンは言葉を交わすこともできるのか!

 

 

「はっ! こちとら、ちゃんと魔王様の許可を貰って入国してんだよ。文句でもあんのか、タンニーン」

 

タンニーン……それがこのドラゴンの名前か。今の会話からして、両者は顔見知りみたいだな。良好とは言い難いが。

 

「…まあいいだろう。だが、俺はあくまでもサーゼクスの頼みで来てやったということを忘れるなよ、堕天使の総督殿」

 

「へいへい。……ってなわけだ。昴、お前はこれからひたすらこいつと実戦稽古だ」

 

アザセル先生が指差して俺に言ってきた。俺は改めてタンニーンと呼ばれたドラゴンに視線を向けた。

 

 

――このドラゴン…タンニーン。分かる。めちゃめちゃ強い。この身にかかるプレッシャーはあのヴァーリ以上だ。

 

 

「噂には聞いていたが、舞い戻ってきたか、ドライグ」

 

俺がジーッと見ていると、タンニーンの方から話しかけてきた。すると、俺の左腕にブーステッド・ギア現れ、赤く輝きだした。

 

『そのとおりだ。久しいな、タンニーン』

 

その問いかけに答えるドライグ。その音声はその場にいる皆にも聞こえている。

 

「知り合いだったのか?」

 

『まあな。以前に『五大龍王』のことを話しだろう? こいつはその元龍王の一角だったものだ。その頃は『六大龍王』と呼称されていた。聖書にも記された龍とはこやつ、タンニーンのことをさしている』

 

元龍王か。なら、さっきから身体にビシビシ伝わる威圧感も納得がいくな。

 

「タンニーンが悪魔になったことで『六大龍王』から『五大龍王』の呼称に変わったんだ。今じゃ、転生悪魔の中じゃ最強クラスの最上級悪魔だぜ」

 

と、アザゼル先生が補足する。

 

すげえな。偉大なドラゴンが悪魔に転生か。しかも、最上級悪魔ってことは、部長よりも位が高いってことだよな。

 

「魔龍聖(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン)タンニーン。その口から吐かれる火の息は隕石の衝撃に匹敵するとさえ言われている。現役で活躍している数少ない伝説のドラゴンだよ。タンニーン、この赤龍帝の修行に付き合ってくれ。ついでにドラゴンの力の使い方も同時に叩きこんでくれると助かる」

 

アザゼル先生はタンニーンに頼み込んだ。タンニーンは僅かな時間思考した後に口を開いた。

 

「ふむ、ドライグを宿す者を鍛えるのは初めてのことだな。いいだろう。引き受けてやろう」

 

タンニーンが目を細め、楽しげな口調で了承した。その様子を見たアザゼル先生がクククッと薄く笑い声をあげた。

 

「タンニーン、言っとくが、こいつは見かけほど可愛くはねぇぞ。あまり舐めてかかるとお前がやられんぞ?」

 

「ほう?」

 

それを聞き、さらに楽しげな声をあげた。

 

『こいつは歴代最強の白龍皇にも完勝している。くれぐれも、鍛錬の域を超えないでくれよ? タンニーン』

 

「くくくっ。それを聞いたら尚楽しみになってきた。お前達程の者にそこまで言わせる実力、是非とも堪能してくれよう」

 

タンニーンは俄然やる気になった。

 

本当に鍛錬の域は超えたくはないな。このドラゴンとは。

 

「よろしくお願いします。タンニーンさん」

 

俺は深々と頭を下げた。

 

「ならば早々に始めようか。リアス嬢。あそこに見える山を貸してもらおうか。そこでなら遠慮なくこやつの修行に打ち込める」

 

「ええ。好きに使って構わないわ」

 

遠くにひっそりと見える森林が生い茂る山。そこが俺の修行場所か。

 

「では移動する。少年よ、名を窺おうか」

 

「俺は姓は御剣、名は昴です」

 

「では昴と呼ばせてもらおう。昴よ、あの山まで移動する。準備運動を済ませたら早速修行開始だ」

 

「はい!」

 

俺とタンニーンは同時に跳躍した。俺が笑顔で部長達に手を振ると、皆も笑顔で手を振りかえしてくれた。

 

それを確認すると、目的の山まで移動を開始した。

 

 

――これより各々の修行が始まる。

 

 

期間は20日。

 

1日たりとも無駄にはできない。

 

これより、グレモリー眷属達がさらに1ステージ上げるための修行が始まったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

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