ハイスクールD×D~転生せし守り手~   作:bridge

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Life.58~寄り添う想い、重ならない想い~

 

 

 

「幻術が看破できないなら、現れた全ての幻影をまとめて吹っ飛ばせばいい。行くぞ! 赤龍砲、6連、一斉掃射ぁっ!!!」

 

 

 

――ゴォォォォォォォォッ!!!!!!

 

 

 

両手で握っている双剣と俺の周囲に浮かぶ4つの武器から大質量の赤龍砲が一斉掃射された。

 

発射された赤龍砲が次々と黒歌の幻影を撃ち抜き、幻影達が消えていく。

 

「っ!?」

 

 

――バチィィィィィッ!!!

 

 

幻影達が消されていく中、その中の1人が、消えるのではなく、目の前に障壁のようなものを展開し、砲撃を防ぎ始めた。

 

「あれが本物か!」

 

 

――ドン!!!

 

 

本物の黒歌を発見し、すぐさま距離を詰めた。

 

「ぐっ! 何てデタラメ奴なの!? あんな威力の砲撃を同時発射して幻影ごと吹き飛ばすなんて――はっ!?」

 

俺の予想外の攻撃に驚きを隠せない黒歌。防御に全精力を費やしたことで何とか砲撃を凌げたが、それに集中し過ぎたあまり、俺が接近していたことに気付かなかったようだ。

 

「こ……の…!」

 

「逃すかよ」

 

 

――ゴッ!!!

 

 

「がっ!」

 

咄嗟に逃げようとする黒歌の胸に拳を撃ちこんだ。黒歌は苦悶の表情と声をあげながら地面に落下していった。

 

『いい感じじゃないか。修行の時はほとんど狙いを付けられなかったが、此度のは確実に目標を狙い撃っていたぞ』

 

ドライグから賞賛の言葉をいただいた。

 

「ああ。あと2つ3つぐらいなら砲撃を増やせそうだが、正確に狙いを定めるとなると、まだ6つが限界だ。どれだけ砲撃の数を増やせるかは、今後の努力次第だな……さて」

 

俺は黒歌の落下していった場所に視線を移し、降り立った。黒歌は空中で何とか体勢を立て直したが、地に膝を付いていた。

 

「ケホッ! ……やる…じゃないの」

 

黒歌は胸に手を当て、足を震わせながら立ち上がった。

 

『Reset!』

 

俺は立ち上がる黒歌を尻目に鎧を解除した。

 

「……何の真似よ」

 

黒歌は怪訝そうな表情で俺に尋ねてきた。

 

「勝負ありだ。これ以上やる必要はない」

 

俺がそう告げると黒歌の表情が怒りに染まってきた。

 

「はぁ!? もう勝った気でいるつもり? 甘いわよ。この程度じゃ私は終わらないわ。…今度はこっちの番よ。さっきのお礼に、妖術仙術ミックスの一発をお見舞い…して……えっ?」

 

 

――ズサァァァッ!

 

 

黒歌が両手に力を集めようとしたその時、糸の切れた人形のようにその場に崩れ去った。

 

「な…なに……か、身体が、動かない…」

 

自身の身に起きたこと異変に戸惑う黒歌。

 

「生き物……その中でも人間ってのはな、脳からの電気信号によって身体を動かしているんだ。それは、悪魔であろうと猫又であろうと、人の姿形している以上同じだ。その脳からの電気信号を俺の氣を撃ちこんで一時的に遮断してやった」

 

「!? 嘘。そんなこと…」

 

「できるさ。こいつを使えばな」

 

俺は人差し指と中指の間に挟んだ金の鍼を黒歌に見せた。

 

「俺は昔、鍼に氣を注ぎ、その鍼を身体に撃ちこむことによって病魔を消し去ることができる医者と知り合ってな。その医者から、その医術の極意を教わった。その医術を応用して編み出したのがこれさ」

 

もしかすれば指を身体に突き刺して肉体をバラバラにできるかなとも考えてはみたが、流石にそれは無理だった。

 

「くっ…そ…」

 

黒歌は何とか身体を動かそうとするが、脳からの命令を身体が聞こうとはしなかった。

 

「無駄だ。いかに仙術ってのを会得したお前でも、しばらくは動かせねぇよ」

 

俺は手元から金の鍼を消した。

 

「私をどうする気? このまま殺す? それとも、捕まえて悪魔達につき出すのかしら?」

 

黒歌は俺は睨みつけながら言ってくる。

 

「そうしてやってもいいんだが……その前に、お前にいくつか尋ねたいことがある」

 

「……?」

 

黒歌は怪訝そうな表情を浮かべる。

 

「お前、自分の主を殺してはぐれになったそうだな?」

 

「……それがどうかしたの?」

 

黒歌は特に悪びれもせず、しれっと答える。俺はさらに質問を続けた。

 

「主を裏切り、主を殺したのは――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――小猫のためか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

その質問をぶつけると、黒歌は身体をビクッと震わせ、目を大きく見開いた。

 

……やっぱりそうか。

 

「は、はぁ!? 何であちきが白音なんかのためにそんなことしなくちゃならないの? バカじゃない」

 

黒歌は強く否定するが、動揺を隠しきれていない。

 

「これは俺の推測であるが、お前が小猫に向ける視線、慈愛に満ち溢れていたぜ。それこそ、妹を想う姉のようにな。散布した毒も、即効性のないものだったしな。じわじわなぶると言えば聞こえは悪いが、本音は殺さないように加減した結果なんだろ?」

 

「っ!」

 

「わざわざ上級悪魔や魔王様方、果ては堕天使の幹部方が集まるパーティーに危険を冒してまで小猫と接触し、おびき出して、連れ去ろうとしたのも、自分の手元で小猫を守りたかったからだろ? 前の主のもとで何があったんだろうが、その前の時の二の舞ならないように…な」

 

小猫のことを何とも思っていないなら、わざわざそんな危険を冒してまで連れ去ろうとはしないだろう。ましてや、殺そうともな。

 

「ち、違うわ! あいつを殺したのは単に気に入らなかっただけよ。それに、私は自由気ままに過ごす方が性にあっているの。だから殺したのよ。それだけにゃん♪」

 

「……そうか」

 

俺は倒れている黒歌に歩み寄り、拳を構えた。そして、構えた拳を黒歌に振り下した。

 

「っ!」

 

黒歌は目を瞑り、歯をきつく食い縛った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「……?」

 

黒歌はおそるおそる目を開けた。

 

「遮断した電気信号をもとに戻した。もう、身体を動かせるだろ?」

 

黒歌はバッと起き上がり、手を閉じたり開いたりし始めた。

 

「……どうして殺さないの? 私ははぐれ悪魔で、テロリストなのよ?」

 

俺の行動が理解出来ないといった面持ちで尋ねる。

 

「そうしても良かったんだが、それをしちまったら、小猫が悲しむ気がしてな」

 

俺がそう答えると、黒歌は困惑やら悲哀やらが入り混じった表情を取った。

 

「……それはないわよ。あの子は私を憎んでる。私が死んで喜ぶことはあっても、悲しむことは…」

 

「お前、本当に何もわかってないな」

 

「えっ?」

 

俺は黒歌の言葉を遮りながら言った。

 

「もし、本当に小猫がお前のことを心から憎んでいたなら、お前の姿を視認した時点でお前を殺そうとしていたよ。勝ち目なんて一切考えずにな。心から憎むとは、そういうことだ」

 

「…」

 

「小猫はな。小猫自身も自覚していないことだが、根っこの部分では、やっぱりお前のことを想っているんだろうよ。どんな経緯があろうとも、血の繋がった、かつては愛し合った姉妹だったんだからな」

 

「嘘……よ…」

 

黒歌は戸惑いに満ちた表情で否定を続ける。

 

「俺は善人からクズまでいろんな奴を見てきたが。お前のそれは、クズと言うよりも、そう見せているようにしか見えないんだよ。まるで、小猫の憎しみをわざと駆り立てるかのようにな。それが、小猫にしてしまった自分への戒めの為なのか、そこまでわからんがな」

 

「…」

 

「どんな理由があろうと、主殺しは大罪だ。お前が小猫を連れずに1人で逃げたのは、小猫を守りながら追っ手を撒くことができなかったからと、小猫まではぐれ悪魔の汚名を着せたくなかったから。そんなところか?」

 

俺の推測がどこまで当たっているかはわからない。けど、大筋では的中していると思う。現に、黒歌は反論はおろか誤魔化しもしない。

 

「黒歌。今は退け。少なくとも、今の主は小猫を大事にしているし、絶対に見捨てたりはしない。それはお前も感じただろう? 俺だって同じだ。さっきの砲撃でお前が張った結界も消し飛んだ。近いうちに新手も来る。その前にとっとと退け、いいな」

 

俺は茫然とする黒歌を尻目に踵を返し、歩き始めた。

 

「……隙ありにゃん♪」

 

俺の背中からそんな声が聞こえ、咄嗟に振り返った。

 

 

――ガシッ!

 

 

振り返るのと同時に黒歌は俺の胸に抱きついた。だが、それだけで何かをしてくる様子はなかった。

 

「黒歌?」

 

俺は戸惑いながら黒歌の名を呼ぶ。

 

「……お前、変な奴ね」

 

黒歌は俺の胸に顔を埋めながらいった。

 

「…まともだとは思ったことはないが、とりあえず、お前には言われたくねぇよ」

 

「ふふっ。やっぱり変な奴。ヴァーリとは違った意味で…」

 

ヴァーリと同列かよ。俺はあんな戦闘狂じゃないんだがな…。

 

「……もし、お前みたいな奴が主だったら、私と白音は…」

 

「…」

 

その言葉に答える術はなかった。

 

「……なーんてにゃ♪」

 

黒歌はおどけた表情を取りながら俺から離れていった。

 

「あちきは自由気ままな野良猫にゃん。飼われるより、放し飼いの方が性にあってるのよね。遅かれ早かれ、主の元を去っていたわ」

 

黒歌は舌を出しながら言った。

 

「けど……あんたになら、飼われてもいいかにゃ♪」

 

「言うこと聞かない猫は苦手なんだがな」

 

「にゃはは! やっぱり変な奴ね、あんた」

 

笑みを浮かべると、クルッと後ろを向いた。

 

「……白音をお願い」

 

黒歌はそう言った。その声に、ふざけた様子が感じられなかった。

 

「頼まれるまでもない」

 

俺はそう返した。

 

その時…。

 

「黒歌、ここにいましたか」

 

俺の背後から、聞き覚えのない男の声が聞こえた。この声は美猴のものではない。

 

振り返ると、そこには背広を身に纏い、メガネをかけた男がいた。

 

俺は咄嗟に身構えた。

 

「お待ちを。私は戦う気はありません。勝手ながら、美猴と、そこの黒歌を連れ帰らせていただければ手出しを一切いたしませんので」

 

勝手なことを……とも思ったが、俺は迂闊に仕掛けることができなかった。

 

「お前、随分と物騒なものを持っているんだな」

 

俺は、男の腰に帯びている剣を指差しながら言った。

 

「これは聖王剣コールブランド。カリバーンとも呼ばれているものです」

 

カリバーンって、確か、地上最強の聖剣だって部長が以前に言ってたな。あれがそうなのか。

 

「もう1本のも聖剣だな?」

 

カリバーン程ではないが、こいつの持つもう1本の剣からも同様のものを感じた。

 

「そうです。こっちは最近発見された最後のエクスカリバーにして、7本中最強のエクスカリバー。支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)です」

 

行方不明になったっていう例の聖剣か。よりにもよって、テロリストの手に落ちたのか。

 

「いいの? そんなに話して?」

 

黒歌の問いかけに男は頷いた。

 

「ええ。実は私もそちらのお仲間さんには大変興味がありましてね。赤龍帝殿。聖魔剣の使い手さんと聖剣デュランダルの使い手さんに、いつかいち剣士として相まみえたいとお伝えください。それと…」

 

「?」

 

「少々、小耳に挟みまして。あなたの持つもう1つの神器による武器。破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)でも傷1つ付けれなかったというあなたの武器。私の持つ聖剣をもっても同様なのか、是非試してみたいものです」

 

男は薄い笑顔を浮かべて言ってきた。

 

「いつかとは言わず、今試せばいいじゃないか」

 

俺も笑みを浮かべて言った。

 

「……それはまたの機会としましょう。それでは、逃げ帰りましょうか」

 

男は、美猴の待つ場所まで移動した。黒歌もその後を追おうとしたが…。

 

「赤龍帝。さっきのことは白音には…」

 

「言わないよ。今の小猫に言っても、信じることも受け入れることできないだろうからな。かえって混乱させちまうだけだ」

 

それを聞くと、黒歌はフッと笑い、男の後を追っていった。

 

移動した先にあった空間の裂け目にコールブランドを振るい、さらに裂け目を広げた。

 

「さようなら、皆さん」

 

男はそれだけ言い残すと、ヴァーリの仲間達は裂け目を潜り、消えていった。

 

「逃がしてしまったようだな」

 

そこに、タンニーンが現れた。

 

 

――ん? 逃げられたではなく、逃がした?

 

 

「もしかして、さっきの俺と黒歌の会話を聞いて…」

 

タンニーンは身体能力だけではなく、嗅覚や聴力も相当に優れている。

 

「……ふむ。今日の俺は随分と耳が遠いようだ」

 

タンニーンは空を見上げながらそう言った。

 

「…恩に着る」

 

やっぱ、いいヒトだな、タンニーンは。

 

「昴!」

 

今度は部長が小猫ちゃんに支えられながら俺のもとにやってきた。

 

「部長! 毒は…」

 

「大丈夫よ。もともと強い毒ではなかったようだし、小猫が解毒してくれたからもう心配ないわ」

 

「そうですか。なら安心です」

 

けど、まだ1人では歩くことできないみたいだな

 

「…力を使いました」

 

小猫ちゃんがポツリと言った。

 

「……そうか」

 

力……それは、猫又の力のことだろう。小猫は一歩前に進み始めたのだろう。

 

「先輩、姉様と何か話していたみたいですが、何を話していたんですか?」

 

「あー……禍の団(カオス・ブリゲード)のことについて何か聞き出そうとしたんだが…」

 

俺は咄嗟にそう言った。

 

「……姉様が本当のことなんて話すはずがありません。何を喋ったかは知りませんが、聞き流してください」

 

小猫は侮蔑のこもった表情で言った。

 

…小猫からすれば、あいつは自分を裏切り、貶めた元凶だ。よく思えないのは当然のことだ。けど…。

 

「なあ、小猫……事実と真実が、必ずしもイコールで結ばれるとは、限らないかもしれないぜ?」

 

「? どういう意味ですか?」

 

小猫は首を傾げながら聞いてきた。

 

「…いや、何でもない。今のは忘れてくれ」

 

悲しいな。お互いの想いはすぐ傍で寄り添っていると言うのに、それが重なり合うことがないなんてな。

 

俺は黒歌達が消えた場所を見つめながらそう思った。

 

その後、騒ぎを嗅ぎ付けた悪魔の面々に俺達は保護され、魔王主催のパーティーは禍の団(カオス・ブリゲード)の襲来により急遽中止となったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

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