ハイスクールD×D~転生せし守り手~   作:bridge

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Life.60~ゲーム開始、それぞれの想い~

 

 

 

昴side

 

翌日、ついにレーティング・ゲームが開催される日となった。

 

俺達はグレモリーの居城の地下にあるゲーム会場への移動するための巨大魔方陣の前に集まり、会場への移動に備えていた。

 

グレモリー眷属は、アーシアとゼノヴィア以外全員駒王学園の夏服用の制服を着ている。アーシアはシスター服、ゼノヴィアはボンテージ風の戦闘服だ。シトリー側も俺達と同様に制服らしい。

 

この場には、俺達以外に部長の父君と母君。それとミリキャス様。後、アザゼル先生がおり、皆、魔方陣の外にいる。

 

「リアス、一度負けているのだ、今度は勝ちなさい」

 

「次期当主の名に恥じない戦いを心掛けなさい。眷属の皆さんも同様ですよ?」

 

「伝えることは伝えた。後はお前達次第だ。気張っていけよ」

 

それぞれに声をかけてもらった。

 

サーゼクス様とグレイフィアさんはこの場にはおられない。すでに要人専用の観戦会場に移動されているらしい。今回のゲーム観戦には、三大勢力の上役だけではなく、他の勢力のVIPも招待されているらしく、その注目度は高い。是非ともいい結果を残したいものだ。

 

魔方陣が光り輝き出す。それは会場への移動を意味する。

 

俺達のレーティング・ゲームが始まる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

魔方陣から会場へジャンプした。辺りを見渡すと、そこにはテーブルが並べられていた。

 

一見すると広いレストランだ。ここ以外にも、飲食店のようなものが連なっている。天井は吹き抜けのアトリウム。俺はこの場所に見覚えがあった。

 

この場所…………そうだ。この建物、駒王学園の近くにデパートだ! すごいな、完全に再現されている。

 

これには部長も多少驚いていた。

 

『皆さま、この度、グレモリー家とシトリー家のレーティング・ゲームの審判役を担うこととなりました、ルシファー眷属の女王『クイーン』のグレイフィアでございます』

 

そこに、グレイフィアさんのアナウンスが聞こえてきた。今回も前回同様、グレイフィアさんが審判役を務めるようだ。

 

グレイフィアさんが挨拶と共に今回の会場の説明とルールが発表された。

 

今回のゲーム会場は、2階建ての吹き抜けの長いショッピングモールで、それほど高さはないが、横面積はかなりある。他にも屋上には駐車場があり、さらに立体駐車場もある。

 

それぞれ転移された先が本陣となっており、俺達の本陣は2階の東側で、会長の本陣は1階の西側となっている。俺達の本陣周辺にはペットショップ、ゲーセン、飲食フロア、本屋、その他諸々が存在しており、シトリー側には食材品売り場と、電化製品販売店、後はジャンクフードや雑貨が販売されている売り場がある。

 

今回のルールとして、フェニックスの涙が両チームに1つずつ支給されている。ゲーム開始は30分後。その間に相手チームとの接触は禁止。他にも、バトルフィールドとなるデパートを破壊し尽さないなどがある。ということはつまり…。

 

「私や副部長、スバルには不利なる戦場になるわけだな」

 

ゼノヴィアの言うとおりだ。ゼノヴィアのデュランダルは辺りを破壊しちまうし、屋内だから朱乃さんの雷雲を展開しての特大の雷撃は屋上の行かないと使えない。俺の赤龍砲に至っては一斉掃射したならこのデパートは崩壊しちまうだろう。それではたとえ勝っても部長の評価は下がるだろう。

 

俺の修行はとにかく力の増大を中心に行ったため、加減がまだ上手くできない。完全に修行が裏目に出た感じだ。今回のゲームは禁手は使いづらい。

 

不利なのはそれだけではない。遮蔽物が多いため、ギャスパーの眼もあまり効果をなさない。まぁ、これに関してはギャスパーの神器は使用するなというお達しがきているのでもともと意味をなさないのだが…。

 

ギャスパーは現在、アザゼル先生が開発した神器封印のメガネをかけている。

 

今回のゲームは、グレモリー眷属の強みが丸々封じられたゲームになるわけだ。だがまあ、今後、こんな会場とルールのゲームがあるかもしれないからいい機会と思えばいいか。

 

「この吹き抜けのショッピングモールが問題ね。攻める際に1階からでも2階からでも進行する姿が見られてしまうわ。それはあちら側も同じでしょうけど」

 

「立体駐車場からも攻められますけど、それはあちらも充分に警戒しているでしょうね」

 

「それは間違いないわね。デパートの外に出られない以上、進行するには中央を突破するか、屋上か、立体駐車場からいくしかないわね」

 

部長と朱乃さんが状況確認と作戦を組み立てていく。

 

「屋上と立体駐車場を見てきます。近くの階段から行けますから、確認してきます」

 

木場が挙手をして進言すると、足早に向かっていった。

 

「ギャスパーはコウモリに変化してデパートの各所に移動してちょうだい。序盤、あなたにはデパート内の様子を逐一報告してもらうわよ」

 

「は、はい!」

 

ギャスパーは気合の入った返事をした。

 

やがて、15分程が経過した。詳細な戦術が決まった。

 

「ゲームは15分後。10分後にここに集合よ。それまで各自、それぞれのリラックスできる方法で待機していてちょうだい」

 

部長の言葉により、解散していく。

 

さて、中途半端に時間があるな。どうするか…。

 

俺は自陣近くのフロアをうろつき始めた。すると、飲食フロアのテーブルの一角で朱乃さんを見つけた。

 

「…」

 

朱乃さんはコーヒーカップを両手で持ち、その縁を親指で擦りながら何か考え事をしている。正確には、思い詰めてる……いや、覚悟を決めようとしているように見えた。

 

俺は朱乃さんのいるテーブルにまで足を運んだ。

 

「あら、昴君。どうかしましたか?」

 

俺の姿に気が付くと、いつものニコニコ顔に戻った。俺は朱乃さんの真向いの椅子に座った。

 

「いえ、朱乃さんの様子が気にかかったので」

 

「あらあら。でもご心配なく、私はいつも通りですわよ」

 

朱乃さんはあくまでも笑顔を崩さない。

 

「…覚悟が決まらないんですね。自身のもう1つの力を使う覚悟が」

 

「っ!」

 

俺がそう告げると、朱乃さんの表情が曇った。

 

「…昴君は何でもわかってしまうんですね」

 

朱乃さんは自嘲気味に言った。

 

「…そうね。覚悟が決まらない……というよりも怖いのよ。私に流れるもう1つの使うことが…。ゲームに勝つためとはわかってはいるの。けれど…」

 

朱乃さんは俯きながらそう言った。

 

 

――もう1つの力、堕天使の力…。

 

 

朱乃さん身の内の事情は知らないが、それは朱乃さんにとって最大限否定したいものなのだろう。それでも、強くなるために、前に進むためには使わなければならない。

 

この二律背反の狭間で朱乃さんはもがいている。

 

「怖いですか…。なら、俺が勇気が出るお呪いをかけてあげます」

 

「えっ?」

 

俺の言葉に朱乃さんが顔を上げた。俺は椅子から立ち上がり、朱乃さんの額に顔を寄せ…。

 

 

――チュッ…。

 

 

「!?」

 

そっと口付けをした。

 

「あっ……昴君…」

 

朱乃さんは俺の突然の行動に狼狽していた。

 

「どうですか? 勇気、出ましたか?」

 

俺が笑顔を浮かべて尋ねた。

 

朱乃さんがそっと自分の額を撫でた。

 

「大丈夫です。朱乃さんならきっと大丈夫…」

 

俺は子供をあやすかのように朱乃さんに囁いた。

 

「…ふふっ。これではどちらが先輩だかわかりませんわね」

 

朱乃さんが笑みを浮かべると、スッと椅子から立ち上がり、俺の横に並んだ。

 

「勇気、いただきましたわ。…けれど、後もう少しだけ、勇気をください」

 

朱乃さんが俺の背後から首に手を回し、抱きしめてきた。

 

「私が光を出すところ、見届けてくれますか? 昴君が見ていてくれれば、私はあの力を使えると思います」

 

朱乃さんは声を絞り出すかのように呟いた。心なしか、身体が僅かに震えている。

 

「もちろんですよ。必ず見届けます」

 

「ありがとう。私、勇気が出てきましたわ。あなたが見ていてくれるなら…」

 

朱乃さんは俺の顎に指を当て、自分の方へと向かせた。

 

「あなたはリアスのもの……けれど、それでも私はあなたの傍にいるわ。ずっと傍に…」

 

そして、そっと俺の唇に自分の唇を合わせた。

 

時間は一瞬。そっと触れるだけの優しいキス。

 

顔を離すと、そこにはいつもの朱乃さんがいた。

 

これで大丈夫だ。キスは少々気恥ずかしかったが、これで大丈夫。ところで、誰にも見られて…。

 

「昴先輩、そろそろ時間です」

 

俺達のすぐ真横に小猫ちゃんが立っていた。

 

これ、絶対見られたよな…。万が一、このことが部長の耳に入ったら……考えたくないな。

 

「あらあら。見られてしまいましたわね。わかりましたわ。では行きましょうか」

 

当の朱乃さんはあっけらかんとした顔で頬に手を当てると、その場から去っていった。

 

「さ、さて、俺も行くかな」

 

俺も朱乃さんの後を追っていこうとすると…。

 

 

――クィッ…。

 

 

「?」

 

俺のシャツの裾を小猫ちゃんがそっと掴んでいた。

 

「小猫ちゃん、どうしたんだ?」

 

俺がそう尋ねると、小猫ちゃんが頬を赤らめながら言った。

 

「…私にも、勇気が出るお呪いをしてください」

 

…お呪い? ……そうか。

 

「使うんだな。力を…」

 

俺がそう問い返すと、小猫ちゃんがコクリと頷いた。

 

「…わかった」

 

俺がその場で屈み、小猫ちゃんに視線を合わせ…。

 

 

――チュッ…。

 

 

「っ//」

 

小猫ちゃんの額に軽くキスをした。

 

「あ、ありがとうございます//」

 

小猫ちゃんは両手で額を押さえ、顔を更に真っ赤に染めながら礼を言った。

 

「私、猫又の力を使おうと思います」

 

「…そうか」

 

「姉様のようになるのは嫌です。でも、このまま皆さんお役に立てなくなるのはもっと嫌なんです。だから、使おうと思います」

 

小猫ちゃんは、決意に満ちた眼差しで言った。黒歌との再会で何か心境の変化でもあったのだろう。

 

「小猫ちゃんなら力を乗り越えられるさ。俺が保障する。だから――」

 

「――小猫」

 

「ん?」

 

小猫ちゃんが俺の言葉を遮るように自分の名前を呟いた。

 

「あの時みたいに、『小猫』と呼んでください。ちゃん付けだと、子供扱いされてるみたいで嫌です」

 

そういや、黒歌が襲撃した時、俺は『小猫ちゃん』ではなく、『小猫』って呼び捨てで呼んでたな。

 

「了解。小猫。…これでいいか?」

 

「小猫…小猫……ありがとうございます」

 

小猫は何処か嬉しそうな表情で礼を言った。

 

「それじゃ、行こうか。もし、力が暴走しても俺が止めてやるから。安心して力を振るえよ」

 

俺はウィンクしながら小猫に言った。

 

「はい。……ふふっ、やっぱり、優しい赤龍帝です」

 

俺達は集合場所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

『開始のお時間となりました。なお、このゲームの制限時間は3時間の短期決戦(ブリッツ)形式を採用しております。それでは、ゲームスタートです』

 

グレイフィアさんのアナウンスが入り、レーティング・ゲームが開始された。

 

時間制限が付くゲームもあるんだな。それも3時間の短期決戦(ブリッツ)。

 

「指示はさっきの作戦通りよ」

 

さっき受けた指示は、俺と小猫、木場とゼノヴィアがそれぞれペアで二手に分かれ、俺達は店内から、木場達が立体駐車場から進行。ギャスパーはコウモリに変化して店内の監視、及び報告。部長と朱乃さんと俺達の後を追って進軍だ。

 

「私の可愛い下僕悪魔達! もう無様な姿は見せられないわ! 今度こそ私達が勝つ!」

 

『はい!!!』

 

部長の檄に俺達が気合を込めた返事で返す。

 

2度の敗北はありえないな。今度こそ部長に勝利を捧げる!

 

木場とゼノヴィアが作戦通りにフロアを飛び出し、立体駐車場へと向かっていった。

 

「俺達も行こうか、小猫」

 

「はい」

 

俺達も店内から進行を始めた。

 

部長の推測として、向こうはとにかく俺が女王『クイーン』にプロモーションさせることを最優先に動き、それを成すために木場とゼノヴィアの騎士『ナイト』コンビが立体駐車場から敵本陣をかく乱、そして陽動する。俺がはれて女王『クイーン』になったら一度全員引き、改めて今度は部長達を込みで攻め込むと読んでいる。

 

ならばこちらは、その赤龍帝である俺を陽動に使い、とにかく敵を引きつけ、本命のオフェンスである木場とゼノヴィアが本陣を狙い、王『キング』を取り、チェックメイト。これが部長が描いた筋書だ。

 

無難な作戦ではある。現状戦力を考えれば悪くはない。…だが、部長のことを良く知るあの聡明の会長が果たしてそんな浅い読みをするのか? という危惧が俺の中であった。

 

それを言ってみようかとも思ったが、俺の考えに根拠があるわけでもないし、考え出したらキリがないので、俺は言葉を引っ込めた。

 

仮に裏をかかれたにしろ、皆ならどうにか対応できるだろうしな。

 

俺と小猫は遮蔽物に身を隠しながら進行していった。すると、気配を感じた。

 

「……来ているな」

 

「はい。2人ほど、こちらに向かってきています」

 

小猫が頭に猫耳と、さらに尻尾を生やし、返事をした。これが小猫の中の仙術の一端を解放した姿だ。

 

「この距離とスピードから考えて……接触まであと10分ぐらいか?」

 

「それで間違いないと思います」

 

仙術を解放した小猫のお墨付きなら間違いないな。

 

さてどうするか。奇襲でも仕掛けるか? その方が作戦の良い目暗ましになるかもしれない。だが、俺の役目は陽動だ。先の先を取るより、後の先を取る方がいいだろうか?

 

俺が出方を考えていると…。

 

「? ……どうかしたか?」

 

小猫がこちらをジーッと見ていたので思わずそう尋ねてみた。

 

「い、いえ、何でもないです//」

 

小猫は慌てて俺から視線を逸らした。心なしか顔が赤い。どうしたのだろうか?

 

俺が首を傾げながら小猫を見ていたその時!

 

「「っ!」」

 

俺と小猫は同時に上を向いた。そこには、天井から一直線にロープが……いや、ラインが伸びており、それをターザンのように操り、何者かが降下してきた。

 

「御剣ぃぃぃぃっ!!! まずは1発!!!」

 

降ってきたのは匙だった。匙は膝蹴りの体勢で俺目掛けて降下してくる。よく見ると、背中にもう1人人影が確認できた。

 

 

――ドゴッ!!!

 

 

「ちぃっ!」

 

落下の勢いに加えて、2人分の体重が乗った膝蹴りが俺を襲った。俺は咄嗟に腕を前方で束ね、後ろの僅かに飛び、衝撃を逃がしながらその蹴りを受けた。俺はその勢いに押され、地面を滑りながら停止した。

 

「なるほど、最初の相手はお前か、匙」

 

俺はニヤリと笑いながら匙を見やった。

 

「ここであったが百年目ってな。俺がお前の相手だ」

 

匙も同様にニヤリと笑い返してきた。

 

俺は匙の右腕に注目した。黒い蛇が何匹もとぐろを巻いていた。以前に見た神器の姿とはかなり異なっていた。これが匙の修行の成果なのだろう。

 

「ちっ」

 

俺は舌打ちをする。その理由は、俺の両腕にその黒い蛇が巻かれているからだ。先程の一撃の際に繋がれたのだろう。その蛇のラインは、左腕は匙に、右腕は何処か別の場所に繋がっていた。

 

その方向から推測するに、敵本陣にまで伸びているのか?

 

「なるほど、宣言通り、修行したみたいだな」

 

「ああ。天井から店内を窺ってたら、物陰に隠れるお前達を見つけたんでな。奇襲させてもらったぜ」

 

匙とは戦うことになるとはな。戦いたいと思っていたが、まさかオープニングからとはな。

 

俺が戦闘態勢を整えようとした時、突如、アナウンスが響いてきた。

 

『リアス・グレモリー様の僧侶『ビショップ』1名、リタイヤ』

 

やられた? しかも僧侶『ビショップ』って…。

 

「はぁ、ギャスパーの奴、不覚を取りやがったか…」

 

俺は額に手を当てて嘆息した。匙はニヤリと笑みを浮かべた。

 

「その通りだ。ギャスパー君は見事に引っかかったんだ」

 

「なるほど、確か、お前達の本陣近くには食品売り場があったな。大方、コウモリに変化したギャスパーを誘い出して、後はニンニクでも使って捕獲して撃破したのか…」

 

吸血鬼であるギャスパーにとってニンニクは弱点だ。

 

「ご名答だ。ものの見事に引っかかってくれたみたいだよ」

 

 

――ギャスパー…。

 

 

あいつは今度ニンニクのフルコース料理の刑に処すとして、今はこっちをどうにかしよう。

 

「…まあ、今さらどうこう言っても仕方ない。こっちもそろそろ始めるとしようか」

 

俺が匙の方に歩みを進めていった。

 

「匙は俺が相手をする。すまないが、それ以外は小猫、頼むわ」

 

「任せてください」

 

俺が匙の数メートル程で足を止めた。

 

「…お前、ブーステッド・ギアは使わないのか?」

 

匙が怪訝そうな顔で聞いてきた。

 

「ああ。お前もこのゲームのルールは聞いているだろう? あんな力の塊の神器を発動させたら下手したらこのデパートが吹き飛んじまう。だから、今日はお休みだ」

 

『むう…』

 

ドライグが残念そうに唸る。

 

「へっ! そうかよ。だったら…!」

 

 

――ドッ!!!

 

 

匙が地面を蹴り、俺との距離を詰めてくる。匙が拳を握り、構えると、俺に拳を振るった。

 

 

――ブォン!!!

 

 

「!?」

 

その拳は空を切る。

 

匙は俺の姿を見失い、俺を探そうとする。

 

「こっちだ」

 

俺は瞬時に匙のやや斜め右に移動していた。俺は横を向いたまま…。

 

 

――ガツッ!!!

 

 

「がっ!」

 

匙の頬に拳を撃ちこんだ。匙は苦悶の声をあげながら地面に転がった。

 

俺は地面に倒れた匙に歩み寄った。

 

「『だったら』……なんだ? 怖くない、か? それとも勝てるか? 心外だな。ブーステッド・ギアない俺は取るに足らない相手だと思ったか? だったら忠告しておいてやる。ブーステッド・ギアは後付けで俺に身に付いたに過ぎない。俺はもともと、この身1つで戦ってきたんだ。ブーステッド・ギアが無くとも、俺はそれなりに強いぜ」

 

「ちっ……くしょう…」

 

匙が口元の血を手で拭いながら立ち上がった。

 

「来いよ、匙。こんなんで終わりじゃ拍子抜けだ。お前の力、見せてみろよ」

 

俺は人差し指でクィックィッとさせながら匙に告げた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

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