ハイスクールD×D~転生せし守り手~   作:bridge

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Life.61~決死の匙、男と男の対等の戦い~

 

 

 

「来いよ、匙。こんなんで終わりじゃ拍子抜けだ。お前の力、見せてみろよ」

 

俺は人差し指でクィックィッとさせながら匙に告げた…。

 

「ちっ!」

 

匙は軽く舌打ちをすると、構えを取った。

 

「言われなくても、そのつもりだ!」

 

 

――ドッ!!!

 

 

グッと腰を落とすと、地を蹴り、俺に飛びかかってきた。

 

「おぉぉぉーーーーっ!」

 

手の届くところまで接近すると、右拳を振るってきた。

 

 

――ブン!!!

 

 

俺は首を曲げ、それを避ける。

 

「まだまだ!」

 

 

――ブン! ブン! ビュン!!!

 

 

匙は返す刀の如く振り返ると、左右の拳で交互に打ち抜き、右脚での回し蹴りを振るう。俺はワンツーを身体を左右に振ってかわし、回し蹴りは屈んで掻い潜った。

 

なかなか鋭い攻撃だ。筋も悪くない、だが、ヴァーリに比べたら威力も手数も速さも威圧感もない。

 

 

――ガツッ!!!

 

 

「がっ!」

 

俺は右拳を握り、起き上がりざまに匙の顎に拳を振り抜いた。匙はよろけながら一歩二歩後退したが、すぐさま体勢を立て直し、再び向かってきた。

 

匙は右ストレートで俺の顔面を狙ってくる。

 

 

――コツッ……バキィッ!!!

 

 

「ぐっ!」

 

そのストレートを左肩越しにかわしながら左拳を匙の顎にカウンター気味に軽く当て、全身を止めた後、右拳で頬を撃ち抜いた。

 

「くっ…そ…!」

 

匙は一瞬苦悶の声をあげるも、お構いなしに再度飛びかかってくる。

 

…大した根性だ。だったら、その根性が砕けるまで攻撃を入れ続けるだけだ。

 

その後も匙はがむしゃらに前に出て俺に向かってきた。俺は攻撃をかわしながら要所要所に打撃を加えていく。匙は何度打撃を加えても向かってくる。俺は神器こそ使っていないが、決して手は抜いていない。にもかかわらず、匙は倒れない。

 

 

――バキィッ!!!

 

 

「ぐがっ!」

 

匙の右拳を右肩越しにかわし、それと同時に俺の右拳をぶち込んだ。所謂、ライトクロスカウンターだ。匙はヨロヨロと後ろに下がるも、足をグッと踏ん張り、倒れることを拒否する。

 

「どうした? この程度じゃ、俺は倒せねぇぞ!」

 

匙は顔を腫らしながら、口元から血を流しながら叫ぶ。

 

 

――言ってくれんじゃねぇか。

 

 

――ドン!!!

 

 

俺は一気に匙との距離を詰め、右拳を顔面に振るう。

 

「っ!」

 

匙は両腕を束ね、ガードを試みる。俺はガードに当たる直前に拳を止め、左膝を匙の腹にぶち込んだ。

 

 

――ドカッ!!!

 

 

「がはっ!」

 

匙は苦悶の声をあげ、身体をくの字に曲げた。激痛のあまり、打たれた腹を両手で押さえた。

 

「空けたな」

 

 

――バキィッ!!!

 

 

「がぁっ!」

 

俺はその隙を見逃さず、空いた匙の顎にアッパーをぶち込んだ。匙は後方に弾かれた。匙はそのまま倒れ――

 

 

――ズッ…。

 

 

匙は足を踏ん張り、倒れることを必死に拒否した。のけ反った身体を起こすと、間髪入れずに俺に拳を振るってきた。

 

俺はその拳を受け止めようと右手を前に出した。

 

 

――シュッ…。

 

 

「っ!?」

 

だが、拳は俺の右手をすり抜け、俺の顔に飛んできた。

 

「くっ!」

 

俺は首を傾け、何とかその拳を頬の皮一枚で避ける。数歩ほどバックステップをし、距離を取った。

 

…受け止められると思ったんだがな。拳が直前で加速した。緩急を使って当てにきたのか…いや、匙に手を抜く余力があるとは思えないが……っ!?

 

俺は匙に異変に気付いた。匙の神器のラインが自身の胸……心臓に伸びていた。

 

「匙……お前、自らの命を力に変えているのか?」

 

「あぁ…。そのぐらいしないとお前には勝てないからな」

 

匙は真剣な顔で俺の眼を見据えてきた。

 

「死ぬ気か?」

 

「覚悟の上だ。俺は、俺達の夢を叶えるため、俺達の夢をバカにした奴等を見返すため、何より……俺が憧れ、尊敬するお前を超えるためにお前を倒すんだ!」

 

匙はキッと鋭い眼光をぶつけながら叫んだ。

 

「お前にはいろいろ恨みがあるよ。おもちゃにされたり、からかわれたり……でもな、それでも、お前は尊敬の対象なんだよ! すげぇ強くて、頭も良くて、顔も良くて、カッコよくて、壮大な夢を堂々と語れて! リアス先輩の自慢の眷属だ! それに比べて俺には何もねぇ! 会長に誇ってもらえるものが何1つねぇんだよ! だから俺は、お前を……赤龍帝であるお前を倒して、会長が誇れる男になるんだぁっ!」

 

匙の心からの咆哮がその場一帯に響く。

 

その言葉から匙のこのゲームに懸ける想いと覚悟がひしひしと伝わってきた。

 

 

――大した覚悟だ。

 

 

俺に、ここまでの覚悟があっただろうか? もちろん、負ける気はさらさらなかった。だが、命を懸ける程の覚悟まではなかった。けど、匙は、たとえ、このゲームでその命尽きることになろうとも、それを承知の上でゲームに臨んでいる。

 

俺がカッコよくて、尊敬の対象か。俺からすれば、夢を叶えるために1ゲームに命を懸けるお前の方が何倍もカッコいいし、尊敬できる奴だよ。

 

ここまでの覚悟を持ち、俺に、そこまで言ってくれる奴を相手するのに……このままじゃダメだよな。

 

俺は左腕にブーステッド・ギアを発現させた。そして…。

 

「禁手化(バランス・ブレイク)」

 

『Welsh(ウェルシュ) Dragon(ドラゴン) Balance(バランス) Breaker(ブレイカー)!!!!!! 』

 

俺の左腕の籠手の宝玉から眩い程の赤い光が発生する。それが治まると、俺の身体にブーステッド・ギア・ライトアーマーが装着された。

 

「お前…」

 

「使う気はなかった。だが、俺の事を尊敬の対象と呼び、命を懸けてまで挑んでくる相手に手加減をするのは失礼だろ? だから、俺もお前の全力に、こっちも全力で応えさせてもらう」

 

それが、匙に対しての礼儀だと思った。だから、禁手をした。

 

「ハハハッ。ちくしょう……やっぱりカッコいいな…(ボソッ)。よっしゃ! だったら俺は、お前のその全力をも超えてやる!」

 

匙は笑みを浮かべながら叫んだ。

 

「上等だ! 超えてみろよ。超えられるもんならなぁ!」

 

俺は笑みを浮かべながら返した。

 

「いくぞぉっ、御剣ーーーーーっ!」

 

匙が再び咆哮を上げる。その気迫は俺の身体の芯にまで響いてくる。

 

『この気迫。あやつの中の黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン)が想いに応えているのか』

 

神器は想いに応えるらしいからな。あれだけ強い想いを抱いたら、そりゃ神器も、その中のドラゴンも応えるよな。

 

 

――ドン!!!

 

 

匙が地を蹴り、真っ直ぐ俺に向かってきた。

 

「おぉぉぉーーーーーっ!」

 

匙はきつく拳を握り、俺に拳を振るってきた。俺はその拳を…。

 

 

――ガスッ!!!

 

 

真正面から受けた。

 

「どうした? その程度か?」

 

俺は頬に拳を受けながら言った。

 

 

――ドゴッ!!!

 

 

「がぁっ!」

 

返す刀で匙の頬に拳を打ちこんだ。匙はそれを頬に受け、その威力に弾かれ、後方にゴロゴロと転がっていった。

 

「まだ……まだぁぁぁぁぁっ!!!」

 

匙は立ち上がり、再び俺に向かってきた。

 

 

――ドスッ!!!

 

 

先程同じく、俺は匙の拳を真っ向から受けた。

 

「軽い……こんな軽い拳で誰が倒せんだよ!」

 

 

――バチィッ!!!

 

 

匙の顎を打ち抜いた。匙は数メートル身体を浮かされ、地面に落下した。

 

「がっ……は…」

 

匙は足に力を込め、何とか立ち上がろうとする。だが、さっきまでと違い、禁手状態での一撃なため、なかなか立ち上がることができず、身体を起こそうするたびに地面に倒れていた。

 

「お前達の夢を叶えるためにはな、悪魔の風習そのもの戦わなきゃならないんだよ。それは、俺より遥かに強大な敵だ。この程度で立ち上がれない奴がどうやって叶えんだよ」

 

「ぐっ…」

 

匙は膝に力を込め、何とか立ち上がろうとする。

 

「立て、匙! もっと、お前の覚悟と根性を見せてみろよ! お前の限界はこんなところじゃないはずだろ!?」

 

「あたり……まえだぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

匙が根性で立ち上がり、拳を握りながら俺に向かってきた。

 

 

――バキィッ!!!

 

 

「まだだ! この程度じゃ足りねぇ!」

 

 

――ガツッ!!!

 

 

「ぐはっ! …まだまだぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

――バチィッ!!!

 

 

「もっとだ! もっとお前の想い全てをその拳に込めてみろ!」

 

 

――ドゴッ!!!

 

 

「がぁっ! …オォォォォォッ!!!」

 

それから匙は何度も殴られ、それでも俺に向かってきた。俺は匙の拳を全て受け、それに応えた。俺は、俺自身の想いを拳に込めて匙に振るった。匙も自身の想いを込めて俺に振るってくる。

 

拳の応酬。何度も繰り返される拳の応酬。その応酬劇も、ついにフィナーレへと向かう。

 

「ぜぇ……ぜぇ…」

 

何度も立ち上がり、何度も殴られた匙は、顔を大きく腫らし、息も絶え絶えで、もはや立っていることがやっとの様相だ。

 

「勝つ…んだ…。夢を……会長の…自慢に…」

 

匙が顔を上げる。全身ボロボロだが、目だけは死んでいない。匙は拳を握り、ゆっくり俺に近寄ってくる。

 

「超え…る。お前を…。俺は………俺は…!」

 

拳を振り上げる。

 

「お前にぃっ……勝つんだぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!!」

 

 

――ドゴォォォッ!!!

 

 

匙の渾身の拳が俺に突き刺さった。

 

「………良い拳だ。夢と想いがこもったとても重い拳だ」

 

匙は拳を打ちこむと、ヨロヨロと下がっていった。今のが余力を振り絞った最後の一撃だったのか、その場で両腕をだらんと下げ、止まった。足も小刻みに震えており、もはや、立っているのがやっとだ。

 

俺は拳をきつく握った。

 

「俺からの手向けだ。匙、もっと願え! もっと想え! そして、もっと励め! …お前はもっと、強くなれる!」

 

俺は握り込んだ拳を、匙目掛けて振るった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

匙side

 

 

――ちきしょう、やっぱ強ぇーな…。

 

 

御剣の拳はハンパねぇよ。1発くらう度に意識が飛びそうだった。こいつの拳はとにかく重くて痛ぇ。それを何発も何発も…。

 

けど、不思議と気分は清々しいんだよな…。

 

御剣なら、ブーステッド・ギアを使わなくても俺を難なく倒せたはずだ。あいつの実力を考えたら、俺なんか道端の石ころみたいなもんだ。けど、あいつは、俺のことを敵として認めてくれた。俺を相手に本気を出してくれた。

 

 

――あいつ、途中から俺の攻撃一切避けなくなったな…。

 

 

わざとくらってた。

 

けど、不思議とそこに憤りはなかった。

 

御剣は、俺と対等に戦うためにわざと避けなかった。俺と同じ条件で戦うために…。

 

それが、たまらなく嬉しかった…。

 

 

――ちきしょう、やっぱ、カッコいいな…。

 

 

「俺からの手向けだ。匙、もっと願え! もっと想え! そして、もっと励め! …お前はもっと、強くなれる!」

 

御剣が拳を握って俺へと打ちこんできた。

 

もう、避ける気力なんて残ってねぇ。正直、両足で立ってること自体奇跡だ。

 

拳がグングン俺に迫ってくる。

 

これくらったら、俺はもう確実にリタイヤだろうな…。

 

拳が俺の眼前にまでやってきた。

 

今回は俺の負けだ、御剣。けどな、このまま終わりにするつもりはさらさらねぇぞ。

 

もっと努力してやる。それこそ、死にもの狂いでな。

 

そして、いずれは、お前にライバルと言ってくれる存在になってやる。

 

今度は、お前と対等に――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

昴side

 

 

――バキャッ!!!

 

 

俺の拳が匙の頬を捉えた。匙は身体ごと弾け飛んでいった。

 

弾け飛んだ匙はやがて地面に落下し、転がり、停止した。そして、匙は起き上がることはなかった。

 

やがて、匙の身体が光に包まれ始めた。光が全てを包むと、匙は消えていった。

 

『ソーナ・シトリー様の兵士『ポーン』1名、リタイヤ』

 

グレイフィアさんのアナウンスが響く。

 

 

――終わった…。

 

 

あいつ、最後の1撃をくらう瞬間、笑ってたな。

 

「昴先輩…」

 

小猫が俺に近づいてくる。

 

「そっちも終わったみたいだな」

 

匙を相手にしていたからアナウンスは聞こえなかったが、小猫も匙の背中に乗っていた兵士『ポーン』を撃破したようだ。

 

「昴先輩、大丈夫ですか?」

 

小猫が心配そうな面持ちで尋ねてくる。

 

「ああ、心配するな。だいぶ打たれたが、そっちは問題ない」

 

問題なのは、右腕に繋がれたラインだ。匙に繋がっていたラインは禁手した時に吹き飛んだ。だが、右腕のは匙が消えた今でも腕に繋がったままだ。ラインは敵本陣にまで伸びている。

 

匙がリタイヤしてもなくならないところを見ると、このラインにはよほどの念が込められているんだろう。

 

『オフェンスの皆、聞こえる?』

 

耳に付けたインカムから通信が入る。

 

『私達もこれから本陣へと進軍を開始するわ』

 

部長からの通信だ。それはつまり、ゲームが最終局面を迎えたことを意味する。

 

「それじゃ、行くか」

 

小猫は頷き、俺と一緒に歩き始めた。

 

さて、これで最後だ。状況と流れから、こっちの優位は崩れないだろう。ここまでは、全て俺の想定どおり。…後は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――俺が描いたシナリオどおりに進められるかどうかだな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

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