ハイスクールD×D~転生せし守り手~   作:bridge

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Life.62~エンドゲーム、決着~

 

 

 

匙との戦闘終了後、部長から本陣突入の通信が入り、俺と小猫はそのまま移動を開始した。

 

「ハァ…ハァ…」

 

「昴先輩、本当に大丈夫なんですか?」

 

俺は息を乱しながら進んでいる。それを見た小猫が心配そうな面持ちで声をかけてきた。

 

「ん? …あぁ、匙の奴が……思った以上にねばりやがるから、少し疲れちまった……ふぅ…」

 

歩いてるだけで息が切れてくる。やれやれ、歳かねぇ…。

 

現在の状況だが、歩いている途中でアナウンスがあり、シトリー側の騎士『ナイト』と戦車『ルーク』1名ずつ撃破された。木場とゼノヴィアが上手くやったのだろう。一方で、こちら側の騎士『ナイト』が1人撃破された。木場かゼノヴィア……おそらくはゼノヴィアが撃破されたのだろうと予測がついた。

 

そのまま歩みを進めていくと、ショッピングモールの中心にある中央広場に着いた。中央広場には、時計の柱があり、その周囲に円形のベンチが囲うように設置されている。

 

俺と小猫はそこで足を止めた。

 

「王『キング』自らのお出迎えとは恐れ入ります。ソーナ・シトリー様」

 

その中央広場には、王『キング』であるソーナ会長がいた。

 

「ごきげんよう、御剣昴君、塔城小猫さん。なるほど、この身に突き刺さるような波動、さすがは赤龍帝です。噂通りですね」

 

会長は努めて冷静な口調で返してくる。

 

会長の周囲には何やら結界のようなものが張られている。この結界を張っているのは、向こうの僧侶『ビショップ』の2人だろう。そして、俺の右腕のラインは、その僧侶『ビショップ』の1人の方に伸びている。

 

少し時間がたつと、生徒会副会長で、女王『クイーン』の真羅椿姫が現れ、それに続くように木場と、さらに…。

 

「あなた自ら中央に出てくるとはね」

 

部長が姿を現した。

 

「そういうあなたも王『キング』自ら本陣を出ているではありませんか、リアス」

 

「ええ、もうまもなく終盤(エンディング)でしょうから。こちらの予想とは随分と違う結果になったようね…」

 

部長が厳しい表情で言った。

 

まあ、部長の予定では俺は囮で、木場とゼノヴィアで会長を撃破する予定だったからな。そこは見事に読まれていた。

 

残念ながら、現状では、会長の方が1枚か2枚切れ者のようだ。

 

「ハァ…ハァ……くっ…!」

 

俺はとうとう足に力が入らなくなり、その場で膝をついてしまった。

 

「昴?」

 

部長が俺の異変に気付き、声をかけた。

 

「スバルさん!」

 

アーシアが回復の神器を俺にかけてくれる。痛みなどは取れたが、気怠さだけは取れなかった。

 

部長が懐からフェニックスの涙を取り出そうとしたので、俺は手で制し、首を横に振った。アーシアの神器で効果がないなら、たとえ、フェニックスの涙を用いても結果はさほど変わらないだろう。

 

俺の異変を眷属全体が気付き、困惑し始めた。一方で、会長だけが小さな笑みを浮かべていた。

 

「トワイライト・ヒーリングでもフェニックスの涙でも無駄ですよ。ライザーとの一戦でわかったことがありました。御剣君はその強さだけではなく、見識の広さと何事にも屈しない不屈の心。それが脅威であると・・・。ダメージで倒しきれないかもしれない。いえ、そもそも、そのダメージを与えること自体が何より困難。であるなら、戦ってあなたに降すのではなく、ゲームであなたを倒すことにしました」

 

僧侶『ビショップ』の1人、花戒さんが抱えていた鞄からパックを取り出した。そのパックには俺のラインが繋がれており、中には赤い液体が入っていた。

 

「もう気付いているとは思いますが、これはあなたの血液です。人間ベースとなっている転生悪魔。人間は血液を全体の半分を失えば致死量です。レーティングゲームのルール上、眷属悪魔が戦闘不能に陥ると、強制的に医療ルームへ転送されます」

 

「…」

 

 

――ヒュッ!

 

 

木場が慌てて聖魔剣の短剣を投げてラインを切断した。

 

ありがたいが、もう手遅れのようだぜ。残念ながらな。

 

「匙は、神器を用いて、御剣君の血液を少しずつ吸い取っていたのです。本来の使い方とは違うエネルギーではなく、血液を吸い取り続けるには、血の滲むような修行と緻密なコントロールが必要でした。ですが、匙はそれをやり遂げたのです」

 

…やるねぇ。その緻密な作業を俺と殴り合いしながらやり続けたわけなんだからな。逃げ回ればもっと楽にできただろうに。

 

それにしても、最高にして最良の手段を選んだな。どんなに手傷を負っても、意識がある内は激痛を歯で食い縛ればどうにか戦える。だが、血を一定量抜かれたら身体に力が入らなくなり、最後には意識がなくなる。現戦力で俺を倒せないシトリー眷属が、俺を倒せる唯一無二の手段だ。

 

「驕りが過ぎましたね、御剣君。あなたはレーティングゲームに臨む際、無意識の内に『受けて立つ』……そう思っていませんでしたか? それは見方を変えれば『負けるわけがない』とも取れます。あなたが私達を対等の敵と認識し、その上で細心の注意を払っていれば、このような事態にはならなかったでしょう。あなたの敗因は、その強さからくる驕りです」

 

「…」

 

……驕りね。そんな気はさらさらなかったんだけどな。

 

会長が視線を俺から部長へと移した。

 

「リアス、あなたはこの戦いに何を賭けていましたか? 私は、この命を賭けていました。それぐらいできなければ私の夢を叶えることはできませんからね。ひとつひとつ積み上げ、ひとつひとつ壁を崩していかなければ、道は開けません。ですから、この戦いであなたのプライドと評価を崩させてもらいます」

 

「っ!」

 

会長のその言葉に部長の表情が悔しさで歪む。手を読まれ、策を読まれ、圧倒的有利の状況をここまでひっくり返されたんだ。そりゃ悔しいだろう

 

「完全にしてやられましたね。…ですが、これ以上、泥をかぶるわけにもいきません。たとえ、勝負に負けようと、戦いにまで負けるわけにはいきません。……ぐぐっ!」

 

俺は足に強引に力を込め、ブルブルと震えながら立ち上がった。

 

「昴! 無理はよしなさい!」

 

部長が制止するが、俺は構わず話を続けた。

 

「部長、リタイヤする前にさっきから気にかかったことを伝えておきます。あの結界はおそらく、僧侶『ビショップ』の2人が張ったものでしょう。その中のソーナ会長だけ妙です。気配がなさすぎますし、何より、敵意を全く感じません。他の者からは感じるのに…」

 

「どういうこと?」

 

「ソーナ会長はこの場にはいません。あれは映像。おそらくですが、精神だけを投影しているのでしょう。狙いは、少しでも俺達を疲弊させるため、つまりは囮。そんなところでしょう」

 

「…っ」

 

俺の推理に、会長の眉が一瞬つり上がる。

 

 

――ビンゴか…。

 

 

「本体の居場所ですが、近場に隠れている可能性はないでしょう。この建物の構造を考えて、追いつめられた際に戦闘と逃亡の両方が取れる場所――」

 

俺は真上を指差し…。

 

「――屋上しかありません。そこにソーナ会長の本体がいるはずです。…それだけ伝えれば、後は大丈夫……ですよね……くっ…!」

 

俺はついに限界がきて、膝を着いた。

 

「スバルさん!」

 

アーシアが俺に回復を施そうと、その場でお祈りのポーズを取った。すると、アーシアの身体が淡く輝きだし、それが周囲に広がっていく。これが、アザゼル先生の言っていた、回復能力の範囲の拡大させたものなのだろう。

 

「っ!」

 

その時、俺の視界にあるものが映った。それは、相手の僧侶『ビショップ』の1人、花戒さんが結界と立体映像を解き、アーシアの回復エリアに入り込もうとしている様子だ。

 

 

――何をするつもりだ?

 

 

ダメージを負っていないあの僧侶『ビショップ』が回復にいくはずがない。

 

俺の直感が告げる。これを放置すると何かまずい!

 

俺はどうにかしようと試みたが、もう動く力は残っていない。ブレイブ・ハートで弓を発現してもそれを引く力がない。何か手は……っ! そうだ、あれなら!

 

 

――ドン!!!

 

 

「がはっ!」

 

向こうの僧侶『ビショップ』、花戒さんが苦悶の表情を浮かべる。その胸には太い杭が突き刺さっていた。

 

「豪天砲……いわゆる、パイルバンカーだ。…これなら、弓と違い、引き金を引くだけで事足りる…。恐らく、アーシアの回復を……何かに転用、察するに……回復能力を反転させ…、アーシアを倒す……つもりだったん…だろうが、そうはさせねぇ…」

 

 

――ガシャン!!!

 

 

俺は豪天砲を地面に落とした。正真正銘、最後の力だ。

 

「これで……打ち止めだな…。俺は、これで、失礼します。……朱乃さん、約束……守れなくて、すみません…。傍にはいられませんが、医療ルームで……見守って……いま…す…ので…、前に…進んで――」

 

ここで、俺の身体に光に包まれていった。

 

 

 

 

 

『ソーナ・シトリー様の僧侶『ビショップ』1名、リタイヤ』

 

『リアス・グレモリー様の兵士『ポーン』1名、リタイヤ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

アザゼルside

 

「これが赤龍帝か…」

 

「ふむ、噂程ではないようだな…」

 

昴がリタイヤし、観戦している重鎮達が口々に呟いた。

 

言われたい放題だな。だが、あれじゃ、仕方ないか。

 

「ほっほっほっ、面白い一戦じゃな」

 

オーディンのクソジジイが満足そうにモニターを眺めてやがる。

 

「サーゼクスや」

 

「何でしょう」

 

「あのドラゴンの神器を持つ小僧じゃが…」

 

「御剣昴君のことですか?」

 

サーゼクスの言葉にオーディンは首を振った。

 

「ヴリトラの方じゃよ。なかなか見どころがある悪魔じゃ。大事に育てるといいぞ。ああいうのが強くなる。弱者が一戦にして化ける。これぞ、真の試合というものじゃ」

 

オーディンが数時間前まで名前すら知らなかった者に最大級の賛辞を贈っている。その様子にセラフォルーの奴も満足そうだ。

 

「それにしても、あの赤龍帝の小僧は随分あっさりとやられたのぅ」

 

オーディンが今度は昴の名を口にした。

 

「優れた奴でも、策にハマればそんなもんだろうよ」

 

俺はそんな感じに返した。

 

「そうかのぅ、あの小僧が力に慢心する愚か者にも、考えなしに戦う馬鹿者にも見えぬのじゃがな。儂の眼には、あ奴がわざとやられたように見えたのじゃが?」

 

オーディンが俺の方を見ながら言ってくる。

 

「…そりゃ、気のせいだろうよ。あいつにわざとやられるメリットなんざないんだからな」

 

「……そうか、気のせいか。儂の眼も耄碌したもんじゃのぅ」

 

オーディンは暫し俺と目を合わせた後に髭を摩りながら言った。

 

 

――ったく、相変わらず目ざといジジイだ。

 

 

それにしても、この試合、リアス達にとっては苦い結果になっちまったな。あの匙って奴はこの試合で格段の評価を得られるだろうな。

 

……リアスには少し悪いことをしちまったな。もし、俺が、今回のゲームに、このルールと会場を採用させたことと、昴とヴァーリの戦闘記録をシェムハザに渡したことを知ったら、何て言いやがるかな。

 

後、俺が昴に提案したことの内容を知ったら、どうなるか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

昴side

 

『投了(リザイン)を確認。リアス・グレモリー様の勝利です』

 

試合終了のアナウンスが響いた。

 

その後、朱乃さんが自身の身に眠る忌む力を解放し、雷に光を乗せ、雷光を相手のもう1人の僧侶『ビショップ』、草下ちゃんに放った。草下ちゃんはその雷光を反転(リバース)させようとしたが、2つの属性の両方を反転(リバース)することができず、その一撃をもろにくらい、リタイヤとなった。

 

女王『クイーン』の真羅椿姫は、木場が撃破した。途中、フェニックスの涙の効果を反転(リバース)させ、大ダメージを狙ってきたが、木場はフェニックスの涙に水の聖魔剣の波動を混ぜ、涙の効果を打消すという機転を利かした。その後は、ゼノヴィアがリタイヤ前に受け渡しをしていたデュランダルを使い、真羅椿姫を撃破した。

 

私見だが、木場はゼノヴィア以上にデュランダルを扱えていたように感じた。

 

最後は屋上に昇り、部長自らがソーナ会長と一騎討ちをし、結果、部長が勝利した。

 

その結果、俺達は勝利した。だが、ゲーム前に圧倒的優勢と目されていただけに、今回の結果は評価を下げたらしい。一番の要因はギャスパーの早期に撃破されたことと、赤龍帝である俺が撃破されてしまったことが特に評価を下げてしまったようだ。

 

ヴァーリに勝利をしたということがかなりの前評判になっていたようで、上は口々に俺のことを『期待外れ』だの『白龍皇に勝ったのはまぐれ』だのと吐き捨てていたらしい。

 

せっかく勝ったってのに、やるせないなぁ。試合に勝って勝負に負けたって感じだ。部長は心底悔しいだろうな。

 

こんなことなら、アザゼル先生の打診してきた提案なんか聞かなきゃよかったかな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

それは、前日の決戦前夜に遡る。

 

『俺からの最後のアドバイスだ。絶対に勝てると思うな。絶対に勝ちたいと思え。俺からは以上だ』

 

アザゼル先生の話しはこれで終わった。これから、グレモリー眷属内で戦術の話を始めようとした時…。

 

『昴、ちょっとこっちに来い』

 

『?』

 

アザゼル先生に呼ばれ、共に廊下へと移動する。

 

『俺からお前に1つ提案がある。今度のゲーム、お前は中盤……できれば終盤に入る前に何とかリタイヤしろ』

 

突如、アザゼル先生がこんなことを提案してきた。

 

『…理由を聞いてもいいですか?』

 

『今度のゲーム、お前達の勝率は80パーセントと言ったが、ぶっちゃけ、お前がいる以上、100パーセント負けることはないだろう』

 

『勝負に絶対はありません。そんなの、やってみないとわからないと思いますが?』

 

『わかるよ。お前が力だけのただのバカならそうだろうが、お前は戦術にも戦略にも長けてる。その上、異常なまでの実戦勘もある。こんな奴がいて負けることの方がおかしい』

 

…買いかぶりだとは思うが。

 

『まあ、それはいいとして、何故リタイヤする必要があるんですか?』

 

俺がそう聞くと、アザゼル先生は襟元を正しながら言った。

 

『これから先のことを考えて、お前が撃破(テイク)される、という状況をリアス達に経験させる必要がある。グレモリー眷属は、いわば2つの柱で成り立っている。お前とリアスの2つの柱でだ。だが、もう1つの柱のリアスはお前に心身共に依存し過ぎているきらいがある。それはよくもあるが、悪くもある』

 

『…』

 

『たとえリアスが崩れても、お前が支えることで持ち直すことができる。だが逆に、お前が崩れた時、グレモリー眷属は一気に崩れ去る恐れがある』

 

…言ってることは分からなくもないが。

 

『部長や皆がそこまで脆いとは思えませんが…』

 

『まあ、俺も同感ではある。だが、どちらにしろ、経験をしておくに越したことないだろう。本格的にレーティングゲームに参戦すれば、シトリー眷属より強い相手でお前を失うという状況もある。お前抜きで戦うという状況も経験値に入れておいて損はないだろう』

 

話しは理解できる。たとえ、俺がいなくても部長達なら勝てるとも思う。けど…。

 

『俺が撃破されたら部長の評価って下がりませんかね?』

 

俺の質問にアザゼル先生は頭を掻いた。

 

『ま、下がるだろうな。だが、ただ勝つこと以上に得られるものがあると俺は断言できるぜ』

 

『…正直、気が進まないですね。全力で向かってくる相手に手を抜くのは失礼だと思いますし』

 

『リアス達のためだと割り切ってくれないか?』

 

部長達のためか…。それを言われると弱いな。

 

『誰にも悟られないようにわざと負けるのって、単純に戦って勝つより遥かに難しいことなんですけどね』

 

『そこは俺がお前がやりやすいように多少だがどうにかしてやるよ』

 

『……はぁ、わかりました。何とかやってみますよ』

 

俺は渋々だが、その提案を飲むことにした。

 

『すまないな。お前には苦労をかける』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

一応は上手くやれたつもりではあるけど、いざ、その結果を目の当たりにすると、それが正しかったのどうか苦悩させられる。

 

だが、悪いことばかりでもない。実際、俺がいなくても皆テンションを落とすことなく最後まで戦えていたし、朱乃さんと小猫は自身の忌むべき力を使った。お釣りは出ないだろうが、下がった評価の分のもとは取れたと思う。

 

「さてと、動けるようにはなったし、匙のところにでも行ってみるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「これを受け取りなさい」

 

匙の病室の前に着くと、中からサーゼクス様の声が聞こえた。中を覗くと、そこにはサーゼクス様と、会長。ベッドには匙の姿があった。

 

「あ、あの、これは…?」

 

匙は緊張しているのか、声を震わせながら聞く。

 

「これはレーティングゲームにおいて、優れた戦いや印象的な戦いを演じたものに贈られるものだ」

 

「で、ですが、俺は御剣に負けたんですよ? 俺にこれを受け取る資格は…」

 

「だが、君は結果として昴君を……赤龍帝を倒した。私達はキミの戦いを観戦室で興奮しながら見ていた。あの北欧のオーディンもキミに賛辞を贈っていたよ」

 

サーゼクス様は木箱から勲章を取り出し、それを匙の胸に付けた。匙はそれを茫然と眺めている。

 

「自分を過小評価してはいけない。キミも上を目指せる悪魔なんだ。将来有望な若手悪魔を見れるのは私にとっても嬉しいことだ。もっと精進しなさい。私は期待しているよ」

 

サーゼクス様が匙の頭を撫でた。匙は下を向くと、ブルブルと震えはじめた。

 

「何年、何十年かかろうとも、レーティングゲームの先生を目指しなさい」

 

その言葉を聞き、匙の瞳からダムが決壊したかように涙が溢れだした。傍らにいる会長も我慢していたものを溢れさせていた。

 

匙は涙を流しながらただ、『ありがとうございます』と、繰り返していた。

 

「…」

 

良かったな、匙。お前の頑張りを見てくれている方はちゃんといるんだ。もっと強くなれよ。

 

俺は胸の内に『おめでとう』と呟き、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

自販機でジュースを買い、俺の病室に戻ると、そこには部長の姿があった。

 

「昴、ゲームお疲れ様。よくやってくれたわ」

 

「部長もお疲れ様。最後の一騎討ち、見事でしたよ」

 

俺がそう言うと、部長は苦笑を浮かべた。

 

「…素直には喜べないわね。戦いには勝ったけど、王『キング』としてはふがいないばかりだったから」

 

そう言うのも無理はないか。会長に裏をかかれまくり、眷属を3人も失ったんだからな。

 

「残念ですけど、現状では会長の方が王『キング』として1枚か2枚上手でしたね。そこは認めるしかありません」

 

「っ! そうね…」

 

俺の言葉に部長は歯をギュッと噛みながらそう返した。

 

「もっと強くなりましょう。俺も、部長が本陣で安心して指揮が出来るまでに強くなります。今度は、誰も文句が言えないくらいの完全勝利をしましょう」

 

俺がニコリと笑顔を浮かべながら言うと、部長も同様に笑顔を浮かべた。

 

「ええ、もちろんよ!」

 

部長の声が部屋に響き渡る。

 

俺達のレーティングゲームは終了した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





以上で、第五章終了です。

次回、オリジナルの章に入ります。

感想、アドバイスお待ちしています。

それではまた!
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