ハイスクールD×D~転生せし守り手~   作:bridge

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Life.64~予言者のカッシュ、襲来する禍~

 

 

 

昴side

 

結界の入り口を潜り、中へと進んでいく俺とアーシアと小猫、そして匙と由良さん。

 

結界内はこれまでと同じ、木々で覆われている密林だった。結界の中は思ったより広い。

 

半径10キロ程の隔離結界だとか言ってたっけな。

 

 

――ギギギギギギッ!!!

 

 

何やら動物の鳴き声が聞こえてくる。

 

「随分と不気味なところだな」

 

匙が気味悪げな表情で言った。

 

「同感だな。本当に誰か住んでいるのか疑いたくなるな」

 

目についただけでも危なそうな虫やら小動物がいたし、多分だが、大型の動物もいる。

 

「おっ?」

 

俺は声をあげ、その場で立ち止まった。

 

「どうかしたのか?」

 

匙が立ち止まった俺に尋ねてくる。

 

「…なんか聞こえないか?」

 

俺の耳に何かの音が聞こえてくる。

 

「聞こえます。前方から何か来ます」

 

小猫が前方を指差しながら呟く。それと同時に…。

 

 

――ゴゴゴゴゴゴ…。

 

 

重低音の地響きが4人の耳に入る。

 

「…嫌な予感しかしないな」

 

遠巻きから、前方から何かが迫ってくるのがわかった。そのシルエットが徐々に見えてくる。

 

「何だありゃ? ひょっとして、猪か?」

 

あの逆立つ牙に伸びた鼻。あれは紛れもなく猪だ。だが…。

 

「大きいな…」

 

由良さんがポツリと呟く。

 

そう猪にしてはでかい。猪の大きさは大きくても精々2メートルぐらいだ。けど、あの猪は明らかに5メートル以上はある。

 

「冥界の猪は随分とでかいんだな」

 

「おいおい、そんな他人事みたいなこと言ってる場合か! こっちに向かってきてるぞ!」

 

匙が慌てながら前方の猪を指差す。

 

そんなに慌てんなっての。…だが、このままだとちとまずいか。

 

左右は木々で囲まれてるから横に避けることができない。何より、猪のスピードがその体格に似合わずかなり速い。時速は推定で150キロ程だ。全長4メートルの巨体にあのスピードが加わったら破壊力は凄まじいことだろう。

 

後ろに退いても最後には追いつめられる。なら、やることは1つだ。

 

俺は左手にブーステッド・ギアを発現させた。

 

「アーシア。少し下がってろ。小猫、行くぞ」

 

「はい」

 

小猫が一歩前に出る。

 

「俺と小猫であの猪を受け止める。動きが止まったら匙と由良さんはあの猪の額に1発ぶち込んでくれ」

 

「わかった!」

 

「任された」

 

俺と小猫が横に並び、その1メートルほど後ろに匙と由良さん。さらに後方にアーシアが立っている。

 

巨大猪が至近距離にまで迫ってくる。俺と小猫が深く腰を落とした。

 

 

――ドガァァァァッ!!!

 

 

俺と小猫が両手を前に出して巨大猪を受け止めた。

 

 

――ズズズッ…。

 

 

その重量からくる衝撃は凄まじく、俺と小猫ちゃんでも1メートルほど後ろに足を引きずった。

 

「よし、やれ!」

 

巨大猪が止まったのを確認した匙と由良さんが飛び上がった。

 

「おりゃ!」

 

「ふっ!」

 

匙が拳を構え、由良さんが空中で1回転しながら足を振り上げた。

 

 

――ドゴォッ!!!

 

 

拳と踵が巨大猪の額に突き刺さる。

 

『プギャァァァッ!』

 

巨大猪は絶叫を上げると、そのまま横たわった。どうやら失神したようだ。

 

「やれやれ、人騒がせな猪だ」

 

道は猪に塞がれてしまったので、4人は猪の上を越えて再び目的地を目指す。

 

「…」

 

猪を越えると、小猫が猪をジーッ見ている。

 

「どうかしたか、小猫?」

 

「……冥界の猪は絶品」

 

……食べる気か?

 

「…ま、それは後にしようぜ」

 

「……残念です」

 

小猫は残念そうな顔をすると、再び歩きだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

それからの道中、あらゆるものが行く手を阻んできた。

 

俺の身の丈を遥かに超す大蛇や、全長50センチオーバーの蜂の大群。果てはドラゴンまで現れる始末だ。

 

「ぜぇ…ぜぇ……み、道が険しすぎる…」

 

匙は大きく肩で息をしていた。

 

本当にここに誰か住んでるのか?

 

そのまま道を進んでいくと、ある地点で周囲の景色が変わってきた。今までは多種多彩の木々が周囲に生えてたのだが、急にそれが竹林へと変化してきた。

 

竹林に入ると今までの険しさが嘘のように穏やかになった。獣も爬虫類も一切の気配も感じなくなった。

 

「あれか?」

 

竹林を進んだ先に、一軒の庵風の屋敷が現れた。その佇まいは旧日本の屋敷家屋を思わせる何とも趣がある屋敷だった。

 

立派ではあるが、正直、悪魔には不似合いだな。グレモリー家の本邸にも一部、和を思わせるものがあったが、今悪魔界ではそれが流行っているのか?

 

俺達は屋敷の敷居を跨ぎ、敷地内へと足を運んでいく。玄関の扉である引き戸の前に辿り着き、引き戸を叩こうとしたその時…。

 

『どうぞ、鍵は開いてますのでお入りください』

 

中から声が聞こえてきた。声の感じはとても若々しい。使用人か何かか?

 

「おい御剣、早く入ろうぜ」

 

匙にせっつかれ、俺は扉を開ける。すると…。

 

 

――ブォン!!!

 

 

「!?」

 

扉を開けた先から丸太のようなものが俺に迫ってきた。俺は咄嗟に横に避けた。

 

 

――ドス!!!

 

 

「うごっ!」

 

俺の真後ろにいた匙はその丸太の存在に気付かず、ものの見事に直撃し、後方に弾かれていった。

 

「匙ーっ!」

 

「元ちゃん!?」

 

俺と由良さんの絶叫が響き渡る。弾かれた匙はそのまま気絶した。

 

「ハッハッハッ、いやぁ、見事に引っかかってくれたね」

 

屋敷の中から、20代後半ぐらいで碧色の髪を背中ほどまでに伸ばし、袴を纏った男性が現れた。

 

「ようこそ、赤龍帝の御剣昴君。それとアーシア・アルジェントさんに塔城小猫さんに由良翼紗さん。今飛ばされていったのはヴリトラの匙元士郎君だね。私が本日あなた方をお呼び立てしたカッシュ・マルバスです」

 

っ!? このヒトがカッシュ・マルバス……部長は確か、現存する悪魔の中で最高齢と言ってたけど、随分と外見は若いな。

 

「悪魔はある程度歳を取ると外見を自由に変えられますから、見た目と歳は関係ありませんよ」

 

あぁ、なるほど。……って、あれ? 今俺、言葉を口に出したか?

 

俺がそんな疑問を抱くと、カッシュさんは含みのある笑みを浮かべた。

 

「ここで立ち話も何です。どうぞ、中にお入りください」

 

カッシュさんに促されると、一度皆で顔を見合わせると、弾かれた匙を担ぎ、屋敷の中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「いてて…」

 

目を覚ました匙は、丸太が直撃した腹を摩っている。

 

俺達は屋敷の中の畳が敷いてある客間に案内された。

 

「さあ、どうぞ」

 

カッシュさんが湯呑にお茶を注ぎ、俺達にふるまってくれた。

 

「数十年程前に人間界の一国の1つの日ノ本という国の『和』というものに感銘を受けました。あれはとても素晴らしいものです。今ではこうして屋敷も和風家屋に変え、周囲の林も竹に変更しました」

 

それでやけに畳やらちゃぶ台やらが目についたわけか。

 

「日ノ本のお茶です。よろしければおあがりください」

 

カッシュさんが手をスッと差し出して促した。

 

「い、いただきます!」

 

匙が緊張した面持ちでそのお茶を口にした。

 

「ぶうぅぅっ!」

 

匙が口に含んだお茶を噴き出した。

 

「げほっ、げほっ! な、なんスか、このお茶…」

 

匙が涙目で咳き込みながら尋ねた。

 

「あっはっはっ! 君は本当に見事に引っかかってくれるね。それは苦丁茶ですよ」

 

苦丁茶って、あのめちゃくちゃ苦いお茶か。カッシュって方は随分とユニークな方だな。っていうか、苦丁茶の産地は中国だぞ。

 

「失礼失礼。すぐに変わりのお茶を出しますから」

 

カッシュさんはふるまってくれた湯呑を回収していく。

 

俺はふと気になることがあったので質問してみた。

 

「あの…、もしかして、目が不自由なので?」

 

カッシュさんはさっきからずっと目を閉じている。もしかして、目が見えないのか? まあ、傍から見たらそれを全く感じさせないのだが…。

 

「ええ。寄る年波にはやはり敵いません。ですが、目は見えなくとも、慣れてしまえばこの通り何も問題はありません」

 

カッシュさんはそう言いながら、改めて湯呑にお茶を注いで出してくれた。

 

「どうぞ。まりも茶です」

 

…また渋いお茶が出たな。

 

「いやー、すまないね、匙元士郎君。私は生来の悪戯好きでして、趣味のようなものです。気を悪くさせて申し訳ない」

 

「い、いえ! 大丈夫です! 全然平気ですので!」

 

匙は手を顔の前でブンブン振りながら言った。

 

「こんなこと言ってはあれですけど、猛獣やら蛇やらが出てくる場所でよく暮らせますね」

 

道中、獣や爬虫類に襲われまくったもんな。

 

「あれは私が差し向けたちょっとした演出ですよ」

 

「え、演出ですか?」

 

アーシアがおずおずと聞き返した。

 

「ただ私の屋敷まで来てもらうのも面白くありませんからね。ここは物語の定番である、試練を1つと思い当ったわけですよ」

 

カッシュさんはハッハッハッと笑いながら言った。

 

この方、いったい何を考えているんだ…。

 

「それにしても、サーゼクスの妹君の眷属とセラフォルーの妹君の眷属達を目の当たりをすると、時が過ぎ去るのは早いと実感しますね」

 

ズズズッとお茶を口にした。

 

「サーゼクス様とセラフォルー様とはどういったご関係なんですか?」

 

「私は一時、いわゆる教師のようなものをしていた時期がありまして、2人はその時の教え子なんですよ」

 

っ!? 現魔王様の教師!? それはすごいな。

 

「ちなみに、アジュカとファルビウムも私の教え子ですよ。数々の上級悪魔の指導をしてきましたが、あの4人は別格でしたよ。遂には、魔王になってしまうとは。指導とした身としては鼻が高いですよ」

 

すげえな、現魔王様全てが教え子なんてな。

 

そういや、現魔王様方は皆変わっているって以前に部長に聞いたことがあったけど、さっきのお茶目な悪戯といい、道中の演出といい、このカッシュさんの影響なんじゃないか?

 

「ふふっ、おそらくそうでしょうね~」

 

と、俺を見ながら言ってきた。

 

……まただ。また俺の心の言葉に返事を返した。

 

「では、そろそろお呼び立てした本題へと向かうとしましょうか」

 

カッシュさんがスッと立ち上がった。

 

「御剣昴君。隣の部屋までよろしいかな? 少々、込み入った話をしたいので。それ以外の皆さんはこちらでお待ちください」

 

「わかりました」

 

俺は客間を出たカッシュさんの後についていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

隣の部屋に移動すると、そこは広さ八畳程のフローリングとなっており、その中央に人1人が納まるほどの小さな魔方陣とその倍ほどある魔方陣が張られていた。

 

その魔方陣の中央には座布団が敷かれていた。

 

俺はカッシュさんに促され、小さな魔方陣の方の座布団に腰掛けた。カッシュさんは大きい魔方陣の方の座布団に腰掛けた。

 

「…」

 

共に座布団に腰掛けると、カッシュさんはそのまま黙り込んでしまった。

 

俺は辺りをキョロキョロしながら正座をしていた。

 

正座をしてから10分程が経過すると、カッシュさんは口を開いた。

 

「…ふぅ。御剣昴君。君はとても数奇な人生を送っているね」

 

「数奇……ですか? まあ、確かに人間から悪魔に転生して、果ては赤龍帝になるとか、数奇と言えばこれ以上の数奇はありませんね」

 

こんな非日常の世界に飛び込んだ俺は数奇と言わざるを得ないよな。

 

「ハハハッ、それは確かに。ですが、数奇と言ったのはそこではありませんよ」

 

カッシュさんが顔をこちらに向けた。

 

「あなたは一度、その生涯を閉じてますね。そして、やり直すかのように今一度生を与えられた…」

 

「っ!?」

 

どうして……それを…。このことは眷属の皆はおろか、部長にも話したことはないはずなのに…。

 

「失礼ながら、あなたの過去を覗かせていただきました。これには私も驚かされました。あなたは一度死んでいる。こことは随分と異なる世界のようですね。『外史』……ですか? あなたはそこに存在していた」

 

「…」

 

俺はあまりの出来事に言葉を失っていた。

 

「随分と人も殺めたみたいですね。悪人も、善人も…。そして、その深き愛と情、それ故に戦乱から離れることが出来なかった…」

 

俺はどんどん喉がカラカラになっていった。

 

「ですが、最後にはその苦しみから解放されたようで、それは何よりです」

 

「……どうしてそれを」

 

俺は乾いた喉から何とか声を絞り出した。

 

「この魔方陣は相手の記憶を垣間見ることが出来る代物でして、あなたの下の魔方陣に座った者の記憶が私の流れてくる仕組みなのですよ」

 

…この魔方陣にそんな仕掛けが…。

 

「ちなみに、このことが誰にも口外致しませんのであしからず。あなた自身も主であるリアスさんにも黙っているみたいですので」

 

「…それは助かります」

 

俺がすでに何十年も生きていると皆が知って、それで俺に対する態度が変わってしまったらなんか辛いからな。

 

「あの、俺が考えていることがわかるのもカッシュさんの力ですか?」

 

この屋敷でカッシュさんに会ってから2回ほどそう取れる場面があった。それと、俺が転生者であることを部長達に黙っていたことも言い当てた。これはもはや表情から読み取ったレベルではない。

 

「いかにも。心、過去を見通す力。それと予言。それが私に備わっている力です」

 

…なるほど、その力故に、この方は旧四大魔王の相談役という地位につけたわけか。

 

「予言に関しては決して万能ではありません。今ではふとした拍子に見える。その程度です。最近ではほとんど見ることができませんがね」

 

「…俺達を呼んだ理由はなんですか?」

 

「それは聞いての通り、あなた達に興味があったらですよ。ウェルシュ・ドラゴンとプリズン・ドラゴンを宿した君達に…。それと、あなた達を試してみたくなったのですよ」

 

「試す?」

 

「ええ」

 

そう言うと、カッシュさんは姿勢を正し、真剣な面持ちとなった。

 

「先日。私に運命が垣間見えました。あなたに……いえ、あなた達にまもなく、禍(わざわい)がやってきます。決して避けることができない禍が…」

 

…禍(わざわい)?

 

「その禍に対して、あなた方がどういう答えを出すか。それを見てみたいのです」

 

「禍とはいったい――」

 

「――残念ながら、それを説明している時間はなさそうです。禍は、もうまもなくここにやってきます」

 

「まもなく? さっきから意味が全く――っ!?」

 

何だ? 誰かがこっちに向かってくる。これはアザセル先生やセラフォルー様でもなく、バロウズさんでもない。悪意を持った何かがここに向かっている。この気配……覚えがある。

 

 

――ドゴォォォォン!!!

 

 

突如、爆発音と共に屋敷が全体が揺れ出した。

 

「きましたか。禍を冠する者が…」

 

禍を冠する――っ!? まさか、禍って…!

 

『な、なんだお前は!』

 

外から匙の叫び声が聞こえてくる。俺は慌てて部屋を飛び出した。

 

部屋を飛び出すと、同じく客間を飛び出した小猫やアーシア、匙と由良さんがいた。皆が一様に上を見上げていた。皆の視線の先、そこには胸元を大きく開け、深いスリットの入ったドレスを纏った女性が佇んでいた。

 

 

――ちっ! こいつは…!

 

 

「ごきげんよう、初めまして。…赤龍帝のあなたにはお久しぶりと言った方が正しいですわね」

 

その女性はこちらに不敵な笑みを浮かべながら言う。

 

「やはり来ましたか。…カテレア」

 

俺のすぐ後に部屋から出てきたカッシュさんがその女性の名を呼ぶ。

 

そうだ。こいつは駒王協定の折に駒王学園に襲来した旧魔王の末裔…。

 

「改めて、私はカテレア・レヴィアタン。魔王の血を引く正統なるレヴィアタンの後継者。すぐにお別れになるでしょうけど、以後お見知りおきを…」

 

禍(わざわい)…。禍の団(カオス・ブリゲード)の幹部であり、旧魔王の末裔である、カテレア・レヴィアタンが、俺達の前に襲来した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

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