ハイスクールD×D~転生せし守り手~   作:bridge

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Life.72~アザゼルの実験、昴の受難…その3~

 

 

 

――バキッ! ゴッ! ガッ! ガキッ!!!

 

 

互いが互いの打撃をかわし、払い、いなし、間隙を縫って打撃を加えていく。

 

「ハッハッハッ! これが俺か! やっぱり楽しいなぁ!」

 

「ちっ!」

 

嬉々として戦いを愉しむ分身体の俺。こっちとしてはやりづらいことこの上ない。

 

過去にも自分と似たスタイルの奴とはやりあったことはある。その場合、互いに歯車が噛み合い、技や駆け引きを織りなす技術戦になる。

 

だが、今回の戦いの場合、相手が全てにおいて俺と同じなため、歯車が噛み合いすぎる。さっきから互いに裏の裏のかき合いばかりしているため、同じことの繰り返しだ。

 

 

――ガッ!!!

 

 

互いの右脚での蹴りが交差する。

 

埒が明かない。

 

おそらくだが、このまま戦い続ければ何時間どころか、何日も同じことの繰り返しになるだろう。

 

均衡を崩すきっかけが何かあれば…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

リアスside

 

2人が戦い初めて30分が経過した。

 

勝負は互いに牽制をし合い、均衡を保っている。

 

偽物の昴はそれを愉しんでいるように見えるけど、本物の昴は少し苛立っているように見えるわ。

 

「昴はどうして神器を使わないのかしら?」

 

ブーステッド・ギアかブレイブ・ハートを使えばこの状況を変えられるかもしれないのに…。

 

「考えられる理由は2つだな」

 

「アザゼル?」

 

いつのまにか私の横に並んでいたアザゼルが腕組みをして2人の戦いを観察していた。

 

「1つはあの分身体が神器を使う隙を与えてくれないのさ」

 

アザゼルがさらに補足説明をする。

 

偽物の昴はさっきから一切の距離を開けずに絶えず打撃を繰り出している。神器を発動させればどうしても一瞬隙ができてしまう。そのため、神器発動はもちろん、禁手もできない。

 

「後は、昴のプライドが神器を使うことを許さないってところだな」

 

「どういうこと?」

 

「相手は自分の分身体。背丈から身体能力まで全てが同じなんだ。つうことはだ、勝る理由はなくとも、劣る理由もないわけだ。神器を使っちまったら自分が分身体より劣ると認めるようなものだ。だから使わないのさ」

 

「…昴」

 

「手をこまねいているのはお互い様だ。もうそろそろ突破口を開くために何か仕掛けんじゃないのか?」

 

アザゼルに促され、私は2人の戦いに集中した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

昴side

 

膠着状態が続いて幾ばくか時間が過ぎた。

 

同じことを繰り返すのももう飽きた。そろそろ流れを変えたいな…。

 

『ブーステッド・ギアを使えばいいだろう? いかに相手が自分とはいえ、そのくらいの隙を作るくらいことくらいは出来るだろう?』

 

ドライグから俺に声がかかる。

 

「…」

 

ドライグの言うこともわかる。ブーステッド・ギアを使えばこの状況を打開できる。神器を発現させる隙を作りだすことも出来ないこともない。だが…。

 

「使えないよなぁ?」

 

分身体の俺がニヤリと笑う。

 

「俺(偽物)とお前の力量技量共には同等なんだ。俺(偽物)が使えない神器を使っちまったらお前は偽物以下ってことになるからなぁ」

 

「…ちっ!」

 

分身体の俺が俺の心を見透かすように吐き捨てる。

 

「立派なプライドだ。だが、俺(偽物)から言わせればクソなプライドだな」

 

「あっ?」

 

分身体の俺の物言いに少しカチンとした。

 

「戦いなんざ勝ってナンボだろう? プライドにこだわってみすみす勝ちを逃すなんざはっきり言ってバカのすることだ」

 

「神器に頼らなくとも、俺の偽物に勝つくらいわけないんだよ」

 

俺は拳をきつく握り、分身体の懐に飛び込んだ。

 

 

――ガツッ!!!

 

 

俺が振り抜いた拳を分身体の俺は腕をクロスさせて防いだ。

 

「っとぉ! いいの打ちやがるなぁ! …だがまぁ、この膠着状態もそろそろ飽きてきた。そろそろ空気を変えよう――」

 

 

――ガシッ!!!

 

 

分身体の俺が俺の腕を掴んだ。

 

「なぁ!」

 

 

――ブン!!!

 

 

俺を投げた。

 

「ちぃっ!」

 

俺は空中で1回転して地面に着地した。

 

「猛虎…蹴撃!」

 

分身体の俺が右脚を振るい、氣で虎を象ったものを俺に飛ばしてきた。

 

「んなもん当たる――っ!?」

 

俺は氣の虎をかわし、分身体の俺に仕掛けようとしたが…。

 

 

――ゴォォォォッ!!!

 

 

俺は両手に氣を集め、氣の虎を両手で受け止めると、その虎を消し飛ばした。

 

「はっ! やっぱり止めたな」

 

 

――ドッ!!!

 

 

「ぐっ!」

 

俺の胸に衝撃が走った。

 

「ちっ……くしょう…」

 

俺は身体を動かそうとしたが、俺の身体は全く動いてはくれなかった。

 

「脳からの電気信号を遮断してやったぜ」

 

分身体の俺はニヤリとしながら右手の人差し指と中指に挟まれた小さな鍼を見せた。

 

「逃げ回ってる時によさげな鍼を見つけてな? 何気なしに拾ってみたが、役に立つもんだなぁ」

 

「て……めえ…! もし、俺があの虎を受け止めなかったらどうしてんだよ!」

 

俺は分身体の俺を睨みつける。

 

先程分身体の俺が猛虎蹴撃を飛ばした先にはアーシアが椅子に眠っていた。俺が避けていたらアーシアに直撃しており、大怪我か、最悪…。

 

「当たるわけがないだろ。お前がアーシアの位置に気付かないわけがない。100パーセント受け止めてくれると確信していたよ」

 

分身体の俺が俺の下まで歩み寄り、俺の肩に手を置いた。

 

「過程、プライド、それにこだわった結果がこれだ。結局、戦いなんざ勝てばいいんだよ。お前なら、わかるよなぁ?」

 

「なんて、卑怯な…!」

 

「同じ昴君とは思えませんわね」

 

部長と朱乃さんも不快感を露わにしていた。

 

「俺は所詮、偽物だ。だがなぁ、偽物が本物に勝てないなんて、誰が決めたんだよ」

 

「…」

 

「弱い俺は、さっさと退場し――っ!?」

 

俺の頭の中は今、怒りが支配していた。

 

分身体の俺が言うこともわかる。俺がやってることが綺麗事だってのもわかる。だが…!

 

「勝つためにアーシアを……仲間も危険に晒したことだけは許さねぇ!」

 

俺は全身に氣を纏いはじめた。

 

「くそっ、てめぇ!」

 

「おぉぉぉぉぉぉーーーーーーっ!!!」

 

 

――ゴォォォォォォッ!!!

 

 

俺は氣を全身で爆発させた。俺の周囲一帯は爆ぜ、俺の立っていたところが少し陥没した。

 

「ふぅ…」

 

俺は手を動かしてみる。手は問題なく動かす事ができた。

 

「ちっ! …全身に氣を限りなく爆発させて、遮断した氣を強引に接続しなおしたか」

 

「氣で遮断したなら、氣で元に戻せるのがどおりだ」

 

俺は分身体の俺を睨みつける。

 

「つい頭に血を昇らせちまったよ…」

 

俺は頭を掻きながらうっとおしげに言う。

 

「これ以上、俺の姿で俺の意に反するされるのも不快だ。この騒動含めてとっとと終わらせる」

 

俺はブーステッド・ギアを発現させた。

 

「お前の言うとおり、くだらないプライドだったよ。お前が正攻法でくるならこのままで良かったが、仲間に手を掛けようとするお前に、もはや遠慮はしない」

 

『Boost!』

 

俺の力が倍化する。それと同時に分身体の俺との距離を一気に詰めた。

 

「っ!?」

 

 

――チッ…。

 

 

俺の振るった拳を分身体の俺は首を傾けてかわす。俺の拳が頬を掠る。

 

 

――ブン! ビュン! ブォン! ビュン!

 

 

俺は立て続けに打撃を連打する。

 

「くっ!」

 

分身体の俺はパリングを駆使しながらかろうじて俺の打撃をかわしていく。先程までと違い防戦一方で、俺の攻撃を避けるだけで手一杯のようだ。

 

『Boost!』

 

俺の力が更に倍化する。

 

 

――ブォン! ビュン! ブォン! ブン!

 

 

俺の打撃の威力とスピードと手数が更にあがった。

 

 

――ドガッ!!!

 

 

「ぐっ!」

 

ついに俺の打撃を捌ききれなくなり、両腕でガードする。

 

 

――ガッ! ゴッ! ドガッ! ガッ!

 

 

分身体の俺は直撃こそ避けているが、ガードに追われるようになった。

 

 

――ダダダダダダダダッ!!!

 

 

俺は拳の弾幕を張った。

 

「くっ……そ…」

 

分身体の俺は両腕を束ね、その拳の弾幕をやり過ごそうとした。拳の嵐が直撃する瞬間!

 

 

――ドォン!!!

 

 

その拳を止め、分身体の俺の背後に回った。

 

 

――ブォン!!!

 

 

右拳をきつく握り、背後からその拳を振るった。

 

「……やっぱそうきたか」

 

分身体の俺が俺へと振り返った。

 

「拳の弾幕での目暗ましからの背後からの強襲。お決まりのパターンだな。だがな、俺はお前でもあるのを忘れたのか? お前の考えはお見通しだ!」

 

左手を手刀に構えた分身体の俺が俺の心臓目掛けて打ちこんできた。

 

俺の拳と分身体の俺の手刀が交差する。

 

タイミング的には狙い澄ましていた分身体の俺の方が速い。

 

 

――バチン!!!

 

 

「っ!?」

 

「………やっぱりそうきたか」

 

俺は互いの手が交差すると、分身体の俺の手刀を構えた腕を振るった右拳で払った。

 

「相手が自分である以上、相手の考えが読める。だったら、逆は考えなかったのか? お前の考えはお見通しだ」

 

俺は左手にソフトボールサイズの氣を発現させ、右回りに旋回させた。

 

「これで、終わりだ!」

 

 

――ゴォォォォォッ!!!

 

 

氣を集めて発現させた左手を内側に捻り込みながら分身体の俺の腹にぶち込んだ。

 

「……ちぇ、所詮、偽物は本物には敵わないか…」

 

分身体の俺は口から血を溢れ差しながら自嘲気味に呟いた。

 

「だがまあ、楽しませてもらったからそれでよしとするか。…なあ、俺、1つ聞きたいんだがよ」

 

「なんだ?」

 

「お前はどうして、部長やアーシア、朱乃さん達の好意に気付かないフリをするんだ?」

 

「!?」

 

俺はその問いに心臓がドクンと跳ねた。俺にしか聞こえない声で喋っているため、他の誰にも聞こえていない。

 

「ま、答えは言わなくてもわかる。なんせ、俺のことだからな。…だから、一言だけ言わせてもらう。そんなことをしたってあいつらは喜ばないぜ?」

 

「…」

 

あいつら。それが部長達のことを指しているのではないことはわかっている。

 

「だが、今のままじゃ部長達を……言うだけ野暮か。敗者はただ消えるのみ、せいぜい、幸せにな」

 

分身体の俺はニコリと笑みを浮かべると、煙となって消えていった。

 

「……サンキューな、俺」

 

天に昇っていく煙を見上げながら、俺は礼の言葉を述べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「終わったようね」

 

「ええ、なんとか」

 

部長達が俺の下まで駆け寄ってきた。

 

「かっこよかったですわ」

 

朱乃さんが俺に抱擁しながら言った。

 

「ハッハッハッ! よくやってくれた!」

 

「いや、もともとはあなたが原因でしょう…」

 

豪快に笑うアザゼル先生を冷ややかな目で見ながら言った。

 

「最後、何を話していたの?」

 

「……いえ、あたりさわりのないことですよ」

 

部長からの質問に俺は視線を逸らしながら答えた。

 

 

――今は、まだ…。

 

 

部長はそんな俺を見て頭に『?』のマークを浮かべたが、特に追及するつもりはないみたいだ。

 

なんにせよ、2学期目前に起こった珍騒動。これで全て片付いた…。明後日には新学期が始まり、いつもの日常がやってくる……と、思ったのだが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「ねぇ、御剣君! これから買い物に行こう!」

 

「私とこれからデートの約束でしょ?」

 

「えー! 私とデートの約束したんだから」

 

騒動が終わり、これから帰宅しようとしたとき、校門の前で女生徒達に俺は囲まれていた。

 

「あー、いやー…」

 

俺は対応に困り、しどろもどろになる。

 

「ちょっとー! 御剣君は私とデートに行くのよ?」

 

「私よー! 約束したのよ!」

 

矢次にデートという単語が飛んでくる。

 

あんの野郎(偽物の俺)! 学校にいた女生徒にところ構わず口説きまくりやがったな!

 

俺達から逃げながらそんなことを…。

 

そうも考えているうちに次々と女生徒がやってくる。

 

どうしようか…。これ、収拾つかないよな…。

 

 

――誰か、助けてくれ!

 

 

俺は助けを求めるために視線をグレモリー眷属に向けた。

 

「…(ぷい)」

 

小猫は拗ねた表情で視線を逸らした。

 

「グス…」

 

アーシアは涙目を浮かべていた。

 

木場…!

 

唯一頼りになりそうな木場に視線を向ける。

 

「………っ//」

 

木場は顔を赤らめながら視線を逸らした。

 

あっ? あいつはなんで頬を染めてんだ?

 

「アザゼル……早く生徒達の記憶を消しなさい…」

 

部長が危険なオーラを醸し出しながらアザゼル先生に詰め寄っていた。

 

「ハッハッハッ! 女を囲うのは男のステータスだぜ? あんなに囲うなんざ、昴もなかなか――」

 

 

――ドォォォォォォォォォン!!!

 

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁーーーーっ!!!」

 

アザゼル先生の頭上に雷が落ちる。ふと見ると、鬼のような形相をした朱乃さんがいた。

 

「早く記憶を消しなさい……でないと、黒焦げにしますわよ?」

 

「ハイ、ワカリマシタ、イマスグ…!」

 

あまりに危険なオーラを醸し出した部長と朱乃さんにアザゼル先生は身体を震わせながら首を縦に振った。

 

これにより、女生徒達の、今日1日の俺に関する記憶は綺麗に消え去ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「ん?」

 

騒動が治まり、表向きの部活動が終わってので、俺達は一度、帰宅することになった。

 

俺の自宅にまでたどり着くと、1つの人影が見えた。

 

「アーシア・アルジェント! やっと会えた!」

 

一見して優男と思われる男がアーシアを発見すると、アーシアの下まで駆け寄ってきた。

 

優男の行動にアーシアは困惑している。

 

なんだこいつ? 変質者か?

 

俺はこの優男に警戒心を抱く。

 

それにしてもこいつ、どっかで…。

 

「覚えていないのかい? なら、これを見てもらえば思い出してくれるかな?」

 

その優男は胸元を開いた。すると、そこには深い傷跡があった。

 

「っ!」

 

その傷を見てアーシアは目を見開いて驚愕した。

 

アーシアはこいつに見覚えがあるのか?

 

「ディオドラ? あなたディオドラね?」

 

部長の言葉で俺は思い出した。

 

そうだ。こいつは若手悪魔の会合の時にいた上級悪魔の1人だ。確か、ディオドラ・アスタロト。現ベルゼブブが出た御家だ。

 

「アーシア、君を迎えにきたよ。会合の時は碌に挨拶もできなかったから改めて挨拶にきたよ。それで、突然だけど、僕の妻になってほしい。僕はキミを愛しているんだ」

 

突然現れたディオドラ・アスタロトからまさかの求婚。

 

やれやれ、まためんどくさいことになりそうだ。

 

また新たな物語が始まろうとしていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





以上で、第六章終了です。

次回、第七章が始まります。

感想、アドバイスお待ちしています。

それではまた!
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