ハイスクールD×D~転生せし守り手~   作:bridge

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Life.77~アスタロト眷属との初戦、不安~

 

 

 

昴side

 

神殿内に入ると、中は思いのほか広かった…。

 

要所要所に並ぶ巨大な柱以外には特に目立ったものはない。

 

神殿を抜けるとさらに神殿が、ひたすら神殿を抜けていき、また新たな神殿に足を踏み入れた時…。

 

「…」

 

俺は足を止めた。気配を感じたからだ。他の皆も同様に気付き、足を止め、辺りを警戒している。

 

『ごきげんよう、リアス・グレモリーとその眷属達』

 

突如、ディオドラの声が響く。俺は居場所を探すために辺りを探すが…。

 

『いくら探しても僕は見つからないよ。僕はこのずっと先の神殿にいるんだからね。――せっかくだから、少々趣向をこらすことにしたよ』

 

…確かに、いくら気配を探してディオドラを探知できない。声だけをこっちに飛ばしているのか。

 

『お互いの駒を出し合って、試合をしていくんだ。ルールはそうだね、一度使った駒は僕のところに来るまで使えない。後は自由で構わないよ』

 

なるほど、趣向を凝らすとはそういうことか…。

 

ディオドラがなおも言葉を続けていく。

 

『それでは第一試合だ。僕は兵士『ポーン』8名と戦車『ルーク』2名を出すよ。ちなみに兵士『ポーン』達はすでに女王『クイーン』に昇格しているよ。リアス・グレモリー眷属は強力な眷属を持っていると有名だからそれでも構わないよね?』

 

前方にフードを深く被ったディオドラの眷属10名が現れた。

 

ハナから対等に戦う気はさらさらないというわけか。

 

「いいわ。あなたの戯言に付き合ってあげるわ。私の眷属の力がどれほどのものか、あなたに教えてあげるわ」

 

部長はその不利な条件を承諾する。

 

やむを得ないか。こっちはアーシアを人質に取られているからな。

 

「こちらは昴、小猫、ゼノヴィア、ギャスパーを出すわ」

 

部長が4名を選出する。

 

部長が選出した4名を集め、耳打ちを始める。

 

「(戦車『ルーク』2名はゼノヴィア、あなたに任せるわ。全力でやってしまいなさい)」

 

「(了解。ふふっ、そういうのは私向きだ)」

 

確かに、小手先でちまちまやるより、力の限りをぶつける方がゼノヴィア向きだろう。

 

「(兵士『ポーン』はあなた達で相手をしなさい。小猫をオフェンスに――)」

 

「いや、オフェンスは俺1人でいいです」

 

俺は部長の言葉を遮るように言った。

 

「(昴、いくらあなたでもそれは――)」

 

「充分です。他の皆は俺の討ちもらしだけを相手にしてくれればそれで事足ります」

 

俺はそれだけ言って前方の敵に歩いて行った。

 

『それでは始めようか』

 

ディオドラの声を聞いて向こうの10名が一斉に構えを取った。

 

「ちょ、昴!? …もう! 小猫、ギャスパー、昴のサポートをしなさい」

 

部長が後ろで指示を出し、小猫とギャスパーが続いて歩いていく。

 

俺の横を歩くゼノヴィア。右手にはデュランダル、左手にはさっき俺が渡しておいたアスカロンが握られていた。

 

そして、その全身からは過去に見たことないくらいのプレッシャーを放っていた。

 

「私はかつて、アーシアに酷いことを言った」

 

ゼノヴィアが深く目を瞑る。

 

「それは、たとえ罵られても殴られても文句が言えないことをアーシアに言ったんだ。…でも、アーシアは笑って私を許してくれた。そして、こんな私のことを『友達』だと言ってくれた」

 

ここでゼノヴィアはカッと目を開いた。その眼光はかなり鋭かった。

 

 

――ダッ!

 

 

相手の戦車『ルーク』2人がゼノヴィア目掛けて走り出した。それは戦車『ルーク』と称するにはなかなかのスピードだった。

 

「私は絶対にアーシアを助ける! 私の友達を……いや、私の親友を絶対に助けるんだ!」

 

 

――ドンッ!!!

 

 

その瞬間、ゼノヴィアのデュランダルから膨大な量の波動が溢れだし、相手の戦車『ルーク』2人を弾き飛ばす。デュランダルを天空に掲げる。

 

「デュランダルよ! 私の願いに……私の想いに応えてくれ! 私はアーシアを失いたくはない! だから、デュランダァァァァァァルッ!!!」

 

 

――ドォォォォォォォォォォッ!!!

 

 

ゼノヴィアの声に呼応し、デュランダルから何倍にも膨れ上がった聖なるオーラが放出された。それは敵意を向けられていない俺にもジリジリと伝わるほどだ。

 

その量は、以前に見たデュランダルとは比較にならない。

 

 

――バキッ! ベゴン!

 

 

ゼノヴィアの周囲の風景はデュランダルの放つ聖なるオーラによってひび割れている。

 

これが夏休みの修行でゼノヴィアが体得したものらしい。

 

もともと、ゼノヴィアはデュランダルをうまく抑えることができなかった。木場はシトリー眷属との試合でうまく御していたようだが、ゼノヴィアでは同じことができるようになるまでどれだけの時間を有するかわからない。そこで、ゼノヴィアはデュランダルの切れ味と破壊力をとにかく伸ばした。

 

あまりにもゼノヴィアらしい考えだ。

 

ゼノヴィアは右手のデュランダルと左手に持つアスカロンを宙でクロスさせた。すると、デュランダルの波動がアスカロンに流れ、聖なる波動がさらに膨れ上がった。

 

アスカロンもデュランダルに触発され、聖なる波動を莫大に発生させ、2本の剣が放つオーラの相乗効果を促し始めた。

 

「いこう、デュランダル! アスカロン! 私の親友を助けるために! 私の想いに応えてくれぇぇぇぇっ!!!」

 

デュランダルとアスカロンの波動が広大な光の柱となり、それが天高く迸り、神殿の天井を突き破るほどになった。

 

ゼノヴィアはそれを戦車『ルーク』2人に一気に振り下した。

 

 

 

――ザバァァァァァァァァァァッ!!!

 

 

 

その2つの大波とも称せる程の膨大な聖なる波動が戦車『ルーク』2人を飲み込んでいった。

 

 

――ゴォォォォォッ!!!

 

 

神殿が激しく揺れる。揺れが収まると、ゼノヴィアの前方の柱や壁、そして真上の天井が丸ごと消失し、神殿の半分が吹き飛んでいた。

 

相手の戦車『ルーク』は説明するまでもなく跡形もなく消滅した。

 

「ハァ……ハァ…」

 

ゼノヴィアは肩で大きく息をしている。かなり疲弊したようだ。現状では連発は無理なようだな。

 

ゼノヴィアは自身の役目を果たした。後はこっちだな…。

 

俺は視線をゼノヴィアから敵の兵士『ポーン』達に移した。

 

「何よ、あのデタラメな威力は…!」

 

「ありえないわ!」

 

向こうは今の惨状を見て恐れおののいている。

 

「でも、すぐにはあの一撃は放てないみたいだわ。消耗具合から見てももうまともには戦えないようね」

 

「なら、私達は他の3人をさっさと倒して、その後にあの騎士『ナイト』を始末しましょう」

 

兵士『ポーン』達がニヤリと笑みを浮かべながらこっちを見てきた。

 

完全にこっちを舐めきっているな。

 

にしても、あの兵士『ポーン』達のあの目、完全に腐りきってやがるな。もはや、救いようが無いほどに…。ま、主の愚行を止めるでもなく、付き従っている時点でお察しか…。

 

俺は兵士『ポーン』達のところに歩いていく。

 

「なに? あなただけなの?」

 

「お前らごとき、俺1人で充分だ」

 

俺がそう言うと、兵士『ポーン』達が一斉に笑い始めた。

 

「薄汚いドラゴンさんは頭が悪いのかしら?」

 

「カッコ付けてないで素直に助けを求めたらぁ?」

 

「身の程をしれっての」

 

口々に俺を罵倒していく。

 

「アハハッ! ドラゴンって、ホント馬鹿ばかりなのね! そう言えば、シトリー眷属のドラゴンも馬鹿だったよね」

 

 

――ピタッ…。

 

 

俺はその一言を聞いて足を止めた。

 

シトリー眷属のドラゴン……匙のことだ。

 

「ホントそうね。夢がどうこうとか叫んでたけど、キモいったらありゃしないわ」

 

「雑魚が吠えるなっての」

 

今度は口々に匙の事を罵倒していく。

 

こいつら……俺の事だけならいざ知らず、匙のことまで…。

 

「匙は雑魚なんかじゃねぇ。あいつは強ぇー奴だよ」

 

俺が言い放つと、奴等は再び高笑いをあげた。

 

「ハァ? あんな奴のどこが強いの?」

 

「叶わない妄想を口に出すキモイ雑魚の典型じゃない」

 

「あなたは本当にバカね。……ああ、そういえば、あなた、その雑魚にやられたんだったわね」

 

「雑魚にやられたあなたはいったいなんなのかしらね?」

 

「あーキモいキモい、薄汚いドラゴン同士の傷の舐め合いなんて、ホント醜い――」

 

 

――ドゴッ!!!

 

 

俺は向こうの兵士『ポーン』の1人が言い切る前に懐に飛び込み、その顔面を殴り飛ばした。殴り飛ばされた兵士『ポーン』は数メートル程吹っ飛ぶと、その場でピクリともせずに倒れ伏した。

 

「どうした? 匙をバカに出来るくらいなんだから匙より強いんだろ? あいつはこの程度の一撃喰らったぐらいならすぐに立ち上がって向かってくるぞ?」

 

周りの兵士『ポーン』達は突然のことで呆気に取られている。

 

放心状態からハッと状況を理解した2人が左右から俺に向かって飛びかかってきた。

 

 

――バキッ!!! ゴッ!!!

 

 

俺は右から来た奴を右肘で、左から来た奴を左脚で腹を撃ち抜き、弾き飛ばした。弾き飛ばした2人は先程の奴と同じく倒れ伏した。

 

「っ! この…!」

 

残りの5人が俺から距離を取り、全員が一斉に魔力の弾を俺に向けて撃ち放った。

 

 

――ドォォォォォォン!!!

 

 

魔力の弾が着弾し、爆発が起こり、そこを中心に大きな煙が立ち込めた。何発か直撃したが、俺には全く問題ない。

 

5人が状況を見守っている。

 

 

――ドォン!!!

 

 

「っ!」

 

俺は立ち込める煙から縮地で飛び出し、相手の1人の眼前にまで一気に飛び込んだ。そいつの目の前で左回りに1回転回り、反動を付け…。

 

 

――バキャッ!!!

 

 

右脚を相手の顔面に振り抜き、蹴り飛ばした。

 

吹っ飛んでいくのを確認すると、次なるターゲットに視線を向ける。

 

「…(ビクッ!)」

 

視線があった敵は身体を一瞬ピクリと震わせる。

 

 

――シュッ…。

 

 

俺は縮地でその場から移動する。俺を見失った敵は俺を探すべく、その場をキョロキョロする。

 

「こっちだ」

 

背後からの俺の声に反応し、慌てて振り向く。

 

 

――ドォッ!!!

 

 

すかさずそいつの腹に掌打を撃ちこむ。俺の手のひらに骨がへし折れる手応えが伝わる。

 

俺が手を引くと、そいつは糸の切れた人形のように前のめりに崩れ落ちた。

 

 

――後3人…。

 

 

俺は、残りの敵が集める方へ身体を向ける。

 

 

――ドォン!!!

 

 

俺は残りの敵目掛けて突進し…。

 

 

――ガシッ!

 

 

並ぶように立っていた2人の顔を両手で掴み…。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

そのまま地面へと叩き付けた。頭から叩き付けられた2人は後頭部から血を流しながらピクリとも動かなくなった。

 

 

――これで7人…。

 

 

「後は…」

 

「ヒィッ!」

 

最後の1人に振り返ると、そいつはか細い声で悲鳴をあげ、その場で腰が抜けて座り込んだ。目の前で仲間の惨状を目の当たりにしたため、その顔は恐怖で引き攣っている。

 

俺はゆっくりそいつの下に歩いていく。

 

「嫌……こないで…!」

 

座り込みながら後ろへと後ずさっていく。その瞳からは涙が溢れている。

 

俺はそいつの目の前にまで歩を進め、上から見下ろす。

 

「お願い……助けて…ご、ご慈悲を…」

 

ブルブルと震えながら命乞いを始める。

 

「質問だ。俺は何だ?」

 

「えっ?」

 

「俺は何だって聞いてるんだよ」

 

「せ、赤龍帝…」

 

俺の質問に掠れるような小さな声で答える。

 

「まぁ、間違いではないが、もっとわかりやすいのがあるだろ?」

 

俺が問いかけると、少し考える素振りを見せ…。

 

「あ、悪魔…」

 

と、答えた。

 

「…そっ、正解だ」

 

俺がニヤリと笑みを浮かべる。それを見てかそいつも表情を弛緩させる。

 

「俺は悪魔だ。天使でも聖人でもなく、な…」

 

俺がここで先程の表情に戻す。

 

「そう、悪魔なんだよ。……悪魔に慈悲なんてあるわけないだろ」

 

俺が右脚を大きく振りかぶった。

 

「嫌ァァァァァァァァァァッ!」

 

 

――バキャッッッッ!!!

 

 

俺の振りかぶった右脚が顔に直撃し、そいつは地面を猛スピードで転がりながら吹き飛んでいった。やがて失速し、止まると、他の7人同様、ピクリとも動かずに倒れ伏した。

 

「終いだ」

 

俺は振り上げた足を静かに地に降ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

リアスside

 

初戦が終わった…。

 

ゼノヴィアがデュランダルとアスカロンの聖なる波動で戦車『ルーク』2人を早々に消し飛ばし、兵士『ポーン』8人は昴によって倒された。

 

 

――さすがね…。

 

 

ゼノヴィアもそうだけど、相手の兵士『ポーン』は全員が女王『クイーン』にプロモーションしている状態だったのに、全く問題としていない。実力が……いえ、格が違い過ぎるんだわ。

 

「ごくろうさま。2人共、見事だった――っ!?」

 

 

――ドクン!

 

 

私の心臓が高鳴った。

 

2人の功績を労おうと歩み寄った時、私は昴の顔を見て思わず動揺してしまった。

 

 

――今一瞬、昴が嗤っていた…。

 

 

それは、戦いに勝利したことを喜んでいるそれではなく、とても醜悪な笑みだった。

 

私は思わず目を擦ってた。

 

「部長、どうかしましたか?」

 

昴がそんな私を不審に思い、声をかけてきた。そこにはいつもと同じ昴がいた。

 

「い、いえ、なんでもないわ。昴、ゼノヴィア、見事だったわ。小猫とギャスパーは出番がなくなってしまったわね」

 

私は動揺を気付かれないように努めていつも通りに労った。

 

「昴先輩、1人で無茶をし過ぎです」

 

「お役に立てなくて申し訳ないですぅ~」

 

小猫はムスッとし、ギャスパーは申し訳なさそうに頭を下げた。朱乃や裕斗は昴達に賞賛を送っている。

 

……他の皆は誰も気付いていないようね。なら、さっきのは私の見間違いかしら?

 

アーシアが攫われた時といい、さっきの昴といい、いったい昴に何が……いえ、考えるのは後にしましょう。今は…。

 

「すぐに次に向かうわよ。私の可愛いアーシアを取り戻すわよ!」

 

『はい!!!』

 

皆が返事をした。

 

私は、私の中に生まれた疑念を胸の内にしまいながら次の神殿へと向かっていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

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