ハイスクールD×D~転生せし守り手~   作:bridge

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Life.83~体育祭、アーシアの心からの想い~

 

 

 

「うっ…」

 

目を覚ますと、そこは知らない天井……ではなく、見知った天井、自室だった。

 

「お目覚めですか?」

 

誰かの声が聞こえてきたのでそちらに視線を向けると、そこにはグレイフィアさんの姿と…。

 

「母様! スバルお兄様が目を覚ました!」

 

紅髪の男の子、ミリキャス様も一緒だった。

 

「ミリキャス様、人前でそうお呼びにならないようにと以前に申し上げたはずですよ」

 

「ぶぅ。はーい」

 

俺はベッドから上半身だけを起こすと、グレイフィアさんがコップに水を入れ、渡してくれた。

 

「ありがとうございます」

 

それを受け取り、水をいただく。

 

「俺はどのくらい眠っていたんですか?」

 

「丸1日程です」

 

俺の質問にそう答えてくれた。すると、グレイフィアさんが立体映像装置を展開し始めた。装置を起動させると、サーゼクス様の立体映像が現れた。

 

俺はベッドから降り、跪こうとしたところ、サーゼクス様に手で制される。

 

『そのままで構わない。…昴君。目を覚ましたようだね』

 

「はい。おかげさまで」

 

『此度の件、ご苦労だった。キミやリアスの活躍もあって、禍の団(カオス・ブリゲード)旧魔王派と一応の決着をつけることができた』

 

カテレア・レヴィアタンは脱退、クルズレイ・アスモデウスはサーゼクス様が倒したらしい。シャルバ・ベルゼブブは俺……ではなく、あいつが倒したから、旧魔王派の首魁は全て倒したことになる。

 

サーゼクス様が俺が倒れた後のことを説明をしてくれた。

 

まず、旧魔王派の悪魔の残党だが、例の旧魔王達が軒並み倒されたことにより、降伏するか、または闇に身を潜め、姿を隠したらしい。

 

次に、アスタロト家だが、次期当主であるディオドラが禍の団(カオス・ブリゲード)に通じていたことにより、信用の一切を失った。これにより、アスタロト家はしばらくの間、魔王輩出の権利を失った。

 

この件で現ベルゼブブ様も責任を問われたのだが、同時期に現ベルゼブブ様も禍の団(カオス・ブリゲード)の襲撃を受けていたことと、他の3名の魔王様の擁護もあり、非難の声も次第に収まったという。

 

レーティングゲームの基礎理論を展開したのが現ベルゼブブ様であり、現ベルゼブブ様程の人材が他にいないので、現状で外れるのは悪魔側にとって痛手らしい。

 

そして最後に、ウロボロス、オーフィスのことも説明してくれた。

 

それを聞いた後、俺はいくつか気になったことを尋ねてみた。

 

「2つ程お聞きしたいことがあるのですが、よろしいですか?」

 

『なんだろうか?』

 

「まず1つ目ですが、そのオーフィスの目的がグレートレッドを追い出し、次元の狭間への帰還を果たすことだと言うならば、こちら側も協力してその目的を果たしてあげれば、オーフィスはいなくなり、禍の団(カオス・ブリゲード)は本格的に瓦解するのでは?」

 

頂点がいなくなれば異端者や危険人物が集まったテロリストは統制を失うことは確実だ。だが、サーゼクス様は首を横に振った。

 

『残念だが、それは難しい。現在のオーフィスは俗世に永く居続けてしまったことにより、初期の頃よりもかなり変質してしまっている。そのため、オーフィスかヴァーリにグレートレッドがやられたり、そのオーフィスが次元の狭間を統べてしまったら世界はどうなるかわからない。グレートレッドが統べているからこそ、各世界の間にある次元の狭間が均衡を保っているというのが大勢の見解を占めているのだよ』

 

そうなのか…。ヴァーリは、当然そのことを……知っているんだろうな。知りつつ倒そうとし、その結果、世界がどうなろうが知ったこっちゃない。こんなところだろう。

 

「それではもう1つなんですが、オーフィスは本当に私達の敵なんですか?」

 

これが俺が聞きたかった本命の質問だ。

 

『それは、どういう意味かな?』

 

「オーフィスが目の前に現れた時、オーフィスに敵意や殺気が一切なかったので」

 

俺がそう言葉を紡ぐと、サーゼクス様は少し考える素振りをした後に質問に答えてくれた。

 

『ふむ。その質問だが、恐らく、オーフィスに敵意や殺気がなかったのは、オーフィスの力が強大であるからだよ』

 

サーゼクス様は尚も続けて説明していく。

 

『こんなことを言ってはあれなのだが、オーフィスが現れたあの時、もし、オーフィスがその気であったなら、アザゼルやタンニーンを含め、あの場にいた者は全員殺されていたことだろう』

 

「…」

 

『殺そうと思えばいつでも殺すことが出来る。だから、オーフィスは敵意を持たなかったというわけだ』

 

やはり、それだけの強さを有していたのか。文字通りの無限の強さというわけか。

 

だが、俺がオーフィスが敵じゃないと思った理由はもう1つある。オーフィスがグレートレッドを見つめていたその瞳が俺には――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――とても寂しそうに見えたからだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…わかりました。ありがとうございます」

 

俺はサーゼクス様に頭を下げた。

 

『今後のレーティングゲームも大きな見直しが必要になった。再びテロリストが介入されてしまってはあまりに危険だからね』

 

「それでは中止ですが?」

 

『いや、仕切り直しだ。だが、冥界に住む者達や他勢力の間から、どうしても実現してほしいと熱望しているカードがあってね』

 

「実現してほしいカード……ですか?」

 

『リアスとサイラオーグの一戦だ』

 

「っ!?」

 

若手ナンバーワンと目されるあのヒトとの試合を…。

 

 

――お前とは小細工なし、理屈抜きの勝負をしてみたいものだ。

 

 

サイラオーグさんはそう言った。

 

あの、とてつもない実力を持つサイラオーグさんとまともにぶつかったら…。いったいどうなるんだろうか…。

 

俺の身体が思わず震えた。

 

『楽しみかい?』

 

「……はい」

 

『同時にシトリー対大公アガレスのカードも熱望されていてね。実現すれば、パワー対パワー、戦術対戦術となるのだろう。実に楽しみだよ』

 

サーゼクス様も楽しげだ。一番熱望しているのはもしかしたらサーゼクス様なのかもしれないな。

 

『何はともあれ、試合の是非が決まるまでは全員待機ということになっている』

 

テロがあった以上、それは仕方がないことだ。

 

『私から伝えることは以上だ。キミも目を覚ましたばかりだ。無理をせず、ゆっくり休むといい』

 

「はい。そうさせていただきます」

 

『では、私はこれで失礼させてもらうよ。グレイフィアをキミのお世話ために置いていく。何かあれば、彼女に言うといい』

 

「何か何までありがとうございます」

 

俺はベッド上で正座をし、深々と頭を下げた。

 

『なに、構わないさ。…明日は駒王学園の体育祭だ。私も観覧に行く予定だ。リアスやキミ達の活躍を楽しみにさせてもらうよ。では、また明日』

 

そう言うと、立体映像装置からサーゼクス様の姿が消えた。俺は再びベッドに横になり、グレイフィアさんはその装置を片付けていく。

 

「では、ごゆっくりお休みください。私は傍に控えておりますので、何かあればお呼びください」

 

片付け終えると、掛布団を俺にかけながらそう言い、頭を下げて部屋を後にした。

 

「ふぅー」

 

俺は一息吐き、目を瞑った。

 

部長達が部屋を訪ねて来ることはなかった。恐らく、グレイフィアさんが気を遣ってくれたのだろう。

 

体育祭か。すっかり忘れてたな。何はともあれ、騒動がまた1つ終結したな。

 

俺の身体はまだ疲労が残っていたらしく。目を瞑るとすぐさま夢の世界へと旅立った。そしてそのまま、翌朝まで眠りついたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

翌日。駒王学園の体育祭が開催された。

 

 

――ぼーん! ぼーん!

 

 

空砲の音が鳴り響く。

 

「おし! 1着いただき!」

 

俺はゴールテープを切った。

 

俺の参加種目の1つである100メートル徒競走。2位に1メートル程差を付けて駆け抜けた(もちろんかなり加減している)。

 

「昴ーっ! よくやったわ!」

 

「昴君、格好良いですわ」

 

部長と朱乃さんが俺に駆け寄り、水とタオルを渡してくれた。

 

「まあ、このくらいは…」

 

何せ悪魔だからな。

 

「病み上がりなのだから、あまり無理をしてはダメよ?」

 

「もちろんです。わかっていますよ」

 

昨日も学校があったのだが、俺は病欠扱いとなっていた。

 

もともと俺は病んでいたわけじゃないから何の心配もいらないんだけどね。

 

 

――ぼーん! ぼーん!

 

 

空砲が鳴り響き、次の競技が始まった。プログラムによると、次は障害物競争だったな。……おっ、匙発見。あいつはこれに出場するのか。

 

スタートと同時に匙が先頭を駆け抜ける。

 

あいつ、気合入ってるな。会長にいいところでも見せようとか考えてんのか? …あっ、こけた。

 

平均台を急いで駆け抜けようとして平均台中央で足を踏み外し、おもいっきり頭打った。悶絶している内に後ろに抜かれた。

 

その後も失態を取り返そうと奮闘したものの、網潜りで盛大に網が絡まり、さらに泥沼。結果は中途半端な3位。

 

そこまでいったらもうビリでいいだろうに…。中途半端…。

 

会長の溜め息が見えたのか、匙スゲー泣いてた。可愛そ過ぎる…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

午前中のプログラムが終わり、昼休憩となった。

 

「私達が協力し合って作ったお弁当よ。よく味わって食べなさい」

 

部長が結構な大きさの上の重箱をシートの上に置いた。

 

「うふふ。昴君の大好物をたくさん作りましたわ」

 

「わ、私のも食べてください!」

 

「私もお手伝いしました」

 

「私も手伝ったのだぞ?」

 

「私も私も!」

 

朱乃さん、アーシア、小猫、ゼノヴィア、イリナが言った。

 

それは楽しみだな。かなりでかい重箱だけど、何とか食べきれるだろ。…小猫いるし。

 

「余裕があったら僕のお弁当も食べて欲しいな」

 

と、木場が。

 

気持ちはありがたいが、何で顔を赤らめてるんだ?

 

俺はありがたくお弁当をいただいた。

 

どのおかずも絶品で、思わず口が蕩けそうになるほどだった。

 

「病み上がりのスバルにと思ってな、イリナと協力して身体に良い薬草をできるだけ集めたんだ」

 

「栄養満点の健康ジュースよ! 飲めばたちまち元気一杯になるわ!」

 

と言って、ゼノヴィアとイリナがコップいっぱいに入った紫色の健康ジュースを俺に差し出した。

 

「わざわざ悪いな」

 

俺はその健康ジュースを受け取った。

 

「さてと…」

 

辺りをキョロキョロしていると……おっ、何やら落ち込みながらトボトボ歩いている匙発見。

 

俺は匙に駆け寄り、匙の肩に手を置いた。

 

「よう、匙。そんな落ち込むなよ。まだまだ競技はあるんだ。これから挽回すればいいだろ、な?」

 

「御剣…」

 

匙が涙目で囁くように呟く。

 

「ほれ。健康ジュースだ。これ飲んで元気だして、午後から頑張れよ」

 

俺のために作ってくれたゼノヴィアとイリナには悪いとは思ったが、元気を出してもらうために健康ジュースを匙に手渡し、背中を軽く叩くと、後ろで匙に手を振って部長達のいるシートに戻っていった。

 

「お前ってやっぱ良い奴だな…。何か元気が出てきたよ。これ、ありがたく貰って――グハッ!」

 

ん? 今なんか聞こえたような……ま、いいか。

 

俺は再び弁当をありがたく味わった。

 

余談だが、午後の競技に匙の姿はなかった。何かあったのだろうか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

そして、午後のプログラムが開始された。

 

競技はどんどん進んでいき、ついに二人三脚となった。

 

「そんじゃ、アーシア、行こうか」

 

「はい!」

 

 

――パンッ!

 

 

空砲が鳴り、競技が始まった。俺達は完璧なスタートを切り、抜群のコンビネーションで快走する。

 

「昴! アーシア! 勝てるわよ!」

 

「2人共、頑張って! 行けますわよ!」

 

部長と朱乃さんの応援が聞こえる。

 

「昴君! アーシアさん! いけるよ!」

 

「頑張れっ! スバル! アーシア!」

 

「2人共頑張って!」

 

さらに木場とゼノヴィアとイリナの応援が聞こえる。

 

「お兄ちゃーん! アーシアせんぱーい!」

 

「頑張ってください!」

 

大声で応援をしてくれるギャスパーといつもよりテンションの高い小猫の声。

 

「おらぁ! 負けんじゃねぇぞ!」

 

言われなくても負けませんよ、アザゼル先生。

 

俺達はそのまま1位を死守しながらゴールテープを切った。

 

「よっしゃ! 1位だぞ、アーシア!」

 

「はい! やりました!」

 

俺とアーシアは抱き合いながら喜びを分かち合った。

 

「ス、スバルさん! つ、次の競技が始まりそうですので、お邪魔にならないように体育館の裏で紐を外しましょう!」

 

「ん? 紐だったら今ここで――」

 

「お願いします!」

 

「あ、ああ…」

 

アーシアの剣幕に押され、俺は思わず頷いた。俺達は紐に足を結んだまま体育館裏へと移動した。

 

「頑張りなさい、アーシア」

 

後ろで、部長がこう囁いていたことは誰も気付いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

体育館裏の入り口前の段差に腰を下ろし、ゆっくり紐を外していく。外し終えたところでアーシアが真剣な表情になった。

 

「スバルさん。あの時、私を守ってくれてありがとうございました」

 

アーシアが頭を下げた。

 

「気にするな。俺にとっては当たり前のことだからな」

 

「私、気付いたんです」

 

「?」

 

「優しいリアスお姉様がいて、皆さんがいて…、そして、スバルさんがいて…。私はそれだけで幸せでした。…でも、スバルさんが死んでしまうと思った時、私の胸は悲しみと同時に後悔でいっぱいになりました」

 

アーシアは胸の上で両拳を組み、目を瞑った。

 

「私の中にあるこの気持ち。伝えられなかったことがとても悲しかったです。もう、こんな思いをするのは嫌です。だから…」

 

アーシアは目を開け、俺と目を合わせる。

 

「聞いてください。私の気持ちを」

 

「アーシア…」

 

「私はスバルさんのことが大好きです。私は、これからもずっと……ずっと……スバルさんの…あなたのお傍にいます」

 

アーシアは心からの告白を俺に告げた。

 

「……アーシア、俺は…」

 

俺は暫し沈黙をし、それから言葉を紡ごうとすると、アーシアは首を横に振った。

 

「今はお返事をしていただかなくてもいいです。いきなりこんなこと言われてもスバルさんも困ってしまうことはわかっていましたから」

 

アーシアは俺に胸元に近づき…。

 

「お返事は今でなくてもいいです。…でも、これだけは許してください」

 

スッと背伸びをすると、俺の唇にそっと自分の唇を合わせた。

 

そっと触れるだけのキス。10秒程キスをした後、アーシアは唇を離した。

 

「…アーシアがそう言うなら、今は返事はしない。でも、これだけは誓う。俺は何があってもアーシアを守る。絶対にだ。だから、ずっと俺の傍にいてくれ」

 

今、俺が言える精一杯の言葉をアーシアに告げた。

 

俺の言葉を聞いたアーシアの瞳から涙が溢れ…。

 

「はい。よろしくお願いします。スバルさん!」

 

そして、笑顔で答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、プログラムにある全ての競技は終了し、体育祭は無事、終了したのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

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