駒王学園の体育祭から数日が経ったある日の夜の自室でのこと…。
「おい、刃」
俺は自分の胸に手を当てながら声をかける。
――刃…。
かつて、命を賭けて死闘を繰り広げた相手であり、つい先日の禍の団(カオス・ブリゲード)の旧魔王派がテロを仕掛けてきた際、俺の身体を乗っ取り、旧魔王の末裔であるシャルバ・ベルゼブブを倒した奴だ。
「聞こえているんだろ? 返事をしろ!」
俺は声を荒げながら自らの身の内に問いかける。だが、俺の声が響くばかりで何処からも返事はない。
『相棒よ。その刃という輩なら、ブーステッド・ギアの中に居座っているぞ』
と、ドライグから返事がきた。
「ブーステッド・ギアの中?」
俺は反射的に左腕に視線を移した。
『ああ。どうやら、身体を相棒に返した後、ブーステッド・ギアの中に移動してきた。会いたければ神器の中に来るといい』
「とは言っても、どうすればいいんだ?」
神器の中に来いと言われてもな…。
『その場で座禅でも組んで神器に意識を集中させろ。後は俺がフォローしてやる』
俺は言われた通り、座禅を組み、深く目を瞑り、意識を集中させた。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「……おっ?」
ふと気が付くと、そこは辺り一帯暗闇の海のようなところにいた。俺はどんどん下へと泳いでいく。下へ下へと潜っていくと…。
「……ここは」
真っ白な空間に辿り着いた。そこにはテーブルと椅子がたくさんあり、椅子の1つ1つに人が座っていた。
「こいつらはいったい…」
俺がドライグに尋ねようとした時…。
「赤龍帝の成れの果てさ」
「っ!?」
突如、俺の後ろからドライグではない声が聞こえてきた。俺が咄嗟に振り返るとそこには…。
「……刃」
そこには、かつて宿敵そのままの刃がいた。顔、出で立ち、服装、全て前世での姿そのままだった。
「クックックッ、そう身構えなくても君をどうこうするつもりはないよ」
刃は含み笑いを浮かべながら俺に告げる。
「……ちっ」
俺はその姿に少しばかり苛立つ。
「彼らはかつて、赤龍帝と呼ばれていた者達の残留思念さ。死してもなお、解放されることなく、ここに留まり続けている」
刃が淡々と説明していく。
「かつての、赤龍帝…」
俺はその赤龍帝達の1人に歩み寄ろうとした。
「話掛けても無駄だよ。彼らに意識はない。あの赤い龍に言によれば、覇龍(ジャガーノート・ドライブ)とか言う、禁断の業を発動させればその時だけ意識が戻るみたいだよ。話しをしたければ試してみるといい。ま、おすすめはしないけどね」
「…説明どうも」
俺はそこで刃に振り返る。
「こいつらのことは理解した。次はお前のことだ。…お前はどうして俺の中にいる? お前は、――なのか?」
俺は疑問に思っていたことを聞いていく。
「クックックッ、そうだな、まずは後者から答えていく。厳密に言うと、俺は彼じゃない。刃という名も俺の本当の名前というわけじゃない。この姿も同様だ」
「あん?」
「この出で立ちで姿を現したのは、この姿の方が君にいち早く理解できると思ったからだ」
刃は尚も含み笑いを浮かべる。
「…なら、お前はいったい何なんだ? あいつと刃は同一人物なんだろ?」
「そうだね。『刃』とは、彼が守り手になった際に名乗った偽名さ。刀の内に一太刀入れて刃。愛する者を失しなわせた自分との決別するべく新しく名乗った名だ。…クックックッ、愉快なことだ」
「…」
「俺は、そんな奴に宿ったもう1つの存在。いや、生まれたと言ってもいいかな?」
「生まれた?」
俺は思わず聞き返していた。
「君も知っているはずだ。あいつは、彼はその身に持つ強大な力とは裏腹に心がとても脆かったことを。その弱い心と外史内の不可思議な力に当てられて生まれたのが『刃』というもう1つの存在。つまり俺さ」
確か、あいつは全てを守ろうとし、その結果、精神をどんどんすり減らし、最後には甘言に惑わされてしまった。その時生まれたのが目の前の刃。なら、こいつはあいつの中のもう1つの人格みたいなものか。
「次に、俺が君の中にいた理由だが、前世で君が俺を降した後、偶然か、何かの陰謀か、俺は君の魂に憑りついた。前世で俺が表に出ることはなかったが、君がこの世界に転生し、コカビエルの戦いの折に君の魂にこびりついた前世の英雄の魂達が神器へと姿を変えた。それと同時に俺の意識も目覚めた」
「…」
「そして、君が先日のテロで深い憎しみを抱いたことで鍵が開かれ、最後に、君が深い致命傷を負ったことで俺が表に現れた。…ご理解いただけたかい?」
なるほど、そういうことだったのか…。
「クックックッ、君があんな三流魔王なんかに不覚を取るなんてね。まぁ、そのおかげで俺が表に出てこれたんだけどね。感謝しているよ」
「……話はわかった。…それで? お前はこれからどうするつもりだ?」
「?」
「また、前世のように暴れ回るつもりか?」
「だとしたら、どうするんだい?」
「知れたことを。この場でお前を倒すさ」
俺は村雨を発現し、構えた。
「やれると思っているのか? 君は確かに前世で俺に勝った。…けど、それは、君の土俵で戦ったからだ。こっちの土俵で戦ったなら、確実に俺が勝つよ?」
そう言って、刃は村雨影太刀を発現し、構えた。
「やってやるさ。皆を守るためにな」
俺は殺気を刃にぶつけた。
「…」
「…」
暫しの間睨みあう俺と刃。
「……ふっ。冗談だよ」
刃は村雨影太刀を消し、再び笑みを浮かべた。
「あん?」
「君をどうこうするつもりはない。君の仲間にもね。君に死なれると俺も困るから手出しはしない。むしろ、手助けをしてあげてもいいくらいだ」
「…信用し難い話だな。お前が前世でどれだけ暴れたと思っているんだ?」
こいつの手によって数多くの命が失われた。
「心外だな。あれは彼の野望を叶えてやっただけだ。覚えているだろう? 彼の野望がなんだったかを」
…あいつの野望。それは、愛する者達との再会。
「それに先日、胸を貫かれた時の傷。俺が光を払い除け、傷を塞がなかったら確実に死んでいたよ? それと、君があのハーフヴァンパイアの神器の干渉を受けないのは何でだと思う? 俺が対抗魔術をかけていたからだ。そのおかけで君はあの目が発動しても影響を受けない。これには感謝してもらいたいぐらいなんだけどね」
「…」
俺だけギャスパーの神器の影響を受けないことに関しては疑問に感じていたが、こいつのおせっかいによるものだったのか。
「もっとも、あのハーフヴァンパイアに関しては、あの子の資質が完全に解放したら俺でも防ぐのは不可能になるだろうけどね。…まあいいや。とにかく、これからはあの赤い龍と同じ、俺も相棒ということになる。ということで、今後ともよろしく♪」
刃は俺にウィンクをした。
「……くそっ、何でこんなことに…。だが、こうなってしまった以上、こいつと付き合っていくしかないか…。だが、1つ言っておく。もし、また俺の先日のように俺の身体を勝手に奪ってみろ。そしたら今度こそお前を身体から追い出してやるからそのつもりでいろ」
俺は威圧しながら刃に向けて言い放った。
「心配しなくても、君はあいつと違って心も意思も強いから、君の身体が先日みたいに極端に負傷して疲弊したり、君が俺を望まない限り俺は表に出てこれないから安心しなよ。…それじゃ、俺はここに居座ることにしたから、用があったらここに遊びにきなよ。ではな」
刃はスッと姿を消した。
「…」
全く、勝手な奴だ。
『相棒よ。そこに居続けては精神に大きく負荷をかける。一度戻ってくるといい』
「わかった。そうするよ」
ドライグからの忠告があり、いろいろ考えたいこともあったが、俺は戻ることにした。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「ふぅ…」
俺は戻ってくると、一息吐き、座禅を崩した。
『勝手な男だ。神器の中に我が物顔で居座りおって』
「同感だな。だが、話し相手が出来て良かったじゃないか」
『ふん』
ドライグは鼻を鳴らした。
まさか、あの刃とこんな形で再会することになるとはな。あいつの言葉通りなら、俺の邪魔をするつもりはないみたいだが…。
「面倒事が次々増えるのは勘弁してもらいたいな」
俺は悪態を吐きながら自室を後にした…。
※ ※ ※
翌日の放課後…。
「昴、アーシア、ゼノヴィア。これからあなた達の使い魔を探しに行くわよ」
部長が唐突にそう切り出した。
使い魔とは、悪魔の手足となって使役する存在で、あらゆる面でサポートしてくれるパートナーみたいなものだったっけな。
「あなた達はまだ使い魔を持っていなかったでしょう? これから悪魔が使役する使い魔が生息している場所へ移動するわよ」
へぇー、そんなところがあるんだ。
「部長の使い魔って、確か、コウモリでしたよね? 紅色の」
「えぇ、そうよ」
部長がそう言うと、部長の手元に部長の髪と同じ色のコウモリが現れた。
「私のはこの子ですわ」
朱乃さんが手のひらサイズの鬼を呼び出した。
「シロです」
小猫は白くて可愛い子猫だ。
「僕のはこの子だよ」
木場は肩に小鳥を乗せていた。
「僕はこの子ですぅ」
ギャスパーは部長と色違いの一般的なコウモリだった。
多種多彩の使い魔が俺の前に現れる。
使い魔か、いて損はないよな。
「使い魔ですか。可愛い使い魔がいいです」
「ふむ、屈強で、共に戦場を駆け抜けられる使い魔が欲しいところだな」
アーシアとゼノヴィアは各々理想の使い魔像を頭に浮かべているようだった。
いろいろ考えていると、部室の床一面に描かれている魔方陣が光り出した。
「部長、準備が整いましたわ」
朱乃さんが部長に報告する。この魔方陣から使い魔が生息しているところにいくのか。
「では、出発するわよ。あなた達の使い魔をゲットしに行くわよ」
俺達は魔方陣で転移していった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
転移した先は、見知らぬ森の中だった。
ここで俺とアーシアとゼノヴィアの使い魔を探すわけか。
辺りは背の高い巨木が生い茂っているため、日の光はあまり差し込んではこない。まぁ、このくらいの暗さなら悪魔には問題ないが…。
にしても、雰囲気のある森だ。何が出てきてもおかしくわなさそうだ。
「ゲットだぜ!」
「きゃっ!」
「むっ?」
突然、俺達の目の前に帽子を深く被り、ラフな格好した青年が現れた。
「俺の名前はマザラタウンのザトゥージ。使い魔マスター目指して修行中の悪魔だ」
…何だか、変な奴が現れたなぁ。アーシアは驚いて俺の背中に隠れちまったし、ゼノヴィアは訝しげに警戒している。
「ザトゥージさん。例の子達を連れてきたわ」
部長が俺達を使い魔マスターとやらに紹介をした。
「OK! 任せてくれ! とびきりの使い魔をゲットしてやるぜ!」
使い魔マスターはやたら「ゲット」を強調しながら快く引き受けてくれた。
部長曰く、このヒトは使い魔に関してはプロフェッショナルらしい。このヒトからアドバイスをもらいながら使い魔を探すのだという。
「さて、どんな使い魔をご所望かな? 強いのか? 速いのか? それとも毒持ちかな?」
うーん、迷いどころだな…。
ザトゥージさんが何やらカタログのようなものを取り出した。
「迷っているならこんなのはどうだ!? ヒュドラだ! こいつはとんでもない猛毒持ちだ! どんな悪魔もこいつの毒には耐えられない! しかも不死身! 主人すら毒殺する最悪の魔物だ! どうだ!」
「そんな危ない生き物、手元に置けるか」
主人をも毒殺って、ただの敵じゃねぇか。
「なんだいなんだい。男だったら大物をゲットするべきだろうに。…そっちの御嬢さん達は何かご希望の使い魔はいるのかい?」
「では、可愛い使い魔が欲しいです」
「屈強な奴を頼む」
「OKOK! だったらこんなのがおススメだ!」
再びカタログをペラペラめくると、2人の希望の使い魔の欄を開いた。2人は解説を受けながらカタログに目を通していく。
2人に紹介した使い魔は2人の希望に沿ったものだった。
……何で俺だけあんな危ない生き物紹介しやがったんだ?
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
それから森の中を巡りながら使い魔を探した。
多種多彩の生き物がいるのだが、どうにもしっくりこない。
ちなみに、波長というか、相手側がこちらを気に入ればすぐにでも使い魔にできるらしい。まぁ、中には戦って降さなければならない使い魔もいるらしいが…。
「部長。使い魔の契約儀式についてはだいたい理解できたので、俺は少し遠くの方を見に行きたいのですが…」
「それは構わないけど、この森は広くて複雑だから、あまりに遠くに行くと迷子になるわよ?」
「それは大丈夫です。空から探索するつもりですので」
森の中を歩いたら最悪迷いそうだけど、空からならその心配はないだろう。部長達のことは多少離れても気配で見つけられるし。
「わかったわ。なるべく早く帰ってきなさい」
部長からの許可をいただいたので、俺は跳躍し、空へと飛びだした。
木の葉を突き抜け、空へと飛び出ると…。
「よし。せっかくだから、あれの試運転でもするか。…出ろ!」
俺が号令をかけると、俺の足元に赤い縦幅1メートル50センチ、横幅70センチ程の赤い乗り物が足元に現れた。
――ブーステッド・ギア・スカイボード。
禁手形態時の鎧のパージ及び軽量化した際、余った鎧パーツが籠手の中にあり、このまま余らせておくのももったいないので、ドライグに頼んでこれを作ってもらった。
機能としては、飛行やホバーなどの機能がある。俺の魔力をエネルギーとし、前もって魔力を溜めておけばしばらくはその魔力で動く。スピードも速く。最大時速はマッハを超える。
『まったく、俺を職人か何かと勘違いしてはいないか?』
ドライグから不満の声が。
「悪いな、いろいろ世話になっちまって」
『ふん、ほどほどにしてくれよ』
不満を漏らすわりに、結構デザインが凝っていたりする気がするが…。
「とりあえず、向こうの方を見てくるとするかな」
俺はブーステッド・ギア・スカイボードに命令を送ると、後ろの噴射口からブーストを噴かし、移動した。
※ ※ ※
リアスside
「うーん…」
「どうかしましたか?」
ザトゥージさんが困り顔で唸っているので声をかけた。
「いやなに、さっきの奴が飛んでいった方向なんだが、あっちは―――が目撃されることで有名な場所があるんだぜ」
「えっ!?」
私は思わず大声をあげてしまった。
「んー、まあ、最近はその話も聞かないし、目撃と言っても、数回目撃されただけだから、出会うことなんてそうそうないはずだぜ」
「そう? それならいいのだけど…」
ザトゥージさんの言うあれに出会ったら大変なことになる。でも、出会うことなんてないわよね?
※ ※ ※
昴side
「出会ってしまった」
『ゴォォォォォォッ!』
ブーステッド・ギア・スカイボードで飛行中、突如、目の前に全身青色のドラゴンが猛スピードで現れた。そのドラゴンは息を荒げながらこっちを睨みつけている。
『ドライグゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーッ!!!』
「ぐっ!」
そのドラゴンがドライグの名を叫びながら咆哮する。俺はその咆哮の圧力にのけ反るほどに圧倒される。
何だ、このドラゴンのこの気当たりは!
『…まさか、このような場所で会い見えるとはな』
ドライグがポツリと呟く。
「知り合いなのか?」
『昔、少しな。……久しいな――』
――ティアマットよ…。
続く
用語紹介コーナー。
――刃…。
前作、外史の守り手のラスボス的存在。破壊を楽しみ、殺戮を楽しむ、非道な性格。前作にて、昴に倒されたはずだったが…。
武術、魔術共に天才クラス。武術こそ、昴に若干の遅れを取るが、魔術に関しては、あらゆる魔法、魔術は1度見てしまえばそのまま再現出来てしまう。ただし、魔王、神格クラスがやっと扱える魔法や、血族特有の魔法(リアスの滅び等)は再現出来ない。氣の扱いに特化した者は魔術を、魔術に特化した者は氣を扱うことが困難になる(設定)ので、その2つを巧みに扱うことが出来るまさに天才。
――村雨影太刀…。
昴の持つ村雨を黒くした刀。刀自体が呪われている為、これに斬られると、その傷は治癒出来ない。トワイライトヒーリングや、フェニックスの涙でも不可能。
――ブーステッド・ギア・スカイ・ボード…。
禁手形態時の鎧の改良をした際、パージして外したパーツで作成したボード。
機能としては、飛行能力とホバー機能。昴の魔力をエネルギーとして稼働する。あらかじめボードに魔力を溜めておけばしばらくはそれで稼働する(なくなれば昴自身が直接魔力を送ることで稼働できる)
最大時速はマッハを超える。その際にかかる風圧やGは、ボードに特殊な結界が展開されているため、無効化される。
ボードの形状のイメージとして、Zガンダムに出てくる、フライングアーマーを真っ赤にした感じです。
この二次創作において、ティアマットはオリジナル化しております。容姿として、全長は8メートル程で、姿はディシディアファイナルファンタジーのデスペラードカオスを青色にした感じです。
そろそろストックが無くなるので、更新速度が落ちるかと思います。
感想、アドバイスお待ちしております。
それではまた!