ハイスクールD×D~転生せし守り手~   作:bridge

99 / 122

投稿します!

モチベーションが残っている内に投稿です…(^-^;)

それではどうぞ!



Life.99~雌雄、達人の領域~

 

 

 

真の力を解放したロキ。先ほどまでとは比べものにならない程のプレッシャーが俺の身に突き刺さる。

 

「…」

 

チラリと視線を下に向けると、部長達が地に膝を突いていたり、倒れている。

 

…さっきのロキの一撃で皆満身創痍。この場で戦えるのは俺だけ。

 

「余所見している余裕があるのか?」

 

突如、ロキが俺に向けて魔力を放った。俺は瞬時にかわし、ロキの背後を取った。

 

「あるぜ?」

 

俺は発現させた村雨をロキに振り下ろした。

 

 

――ガギィン!!!

 

 

「っ!」

 

振り下ろした村雨はこちらを一切向かず、背中に突き出した武器に止められる。

 

「ふん!」

 

その武器を振り抜き、俺を弾き飛ばすと、得物をグルグルと回しながら俺に向けて振るった。

 

「ちぃっ!」

 

 

――ギィン!!!

 

 

振るわれた武器を村雨で受け、俺は一度距離を取った。

 

「あれは…」

 

態勢を整えながらロキの出した武器に視線を向ける。見た所、槍のようだが、俺はあの槍に見覚えがある。

 

…何処で………っ!? そうだ…!

 

「グングニル…!」

 

「ほう? これを知っているか。大方、オーディンのものでも見たというところか」

 

「何故お前がそれを持っている」

 

あの槍はオーディン独自の物のはず。オーディンがロキに渡すはずがないし、盗まれたという話も聞かない。

 

「当然であろう。オーディンの持つあのグングニルを創ったのこの我だ。奴にくれてやる前にレプリカを創っておいたまでの事」

 

俺の質問に答えると、グングニルを一振りする。

 

「レプリカと言っても、本物のグングニルと差異はほとんどない。限りなく本物に近い逸品だ。当然だ。我が創ったのだからな」

 

「…」

 

「光栄に思え。本来はオーディンを始末するのに使うつもりだったが、貴様で試し打ちしてやる。もはや貴様らに万に一つの勝機もない。絶望しながら死んで逝け!」

 

ロキがグングニルを俺に向けて一振りすると、切っ先から極大なオーラが放出された。

 

「っ!」

 

咄嗟に高度を下げ、オーラをかわす。

 

「…っ」

 

振り返ると、俺の上空にあった雲がキレイさっぱり晴れていた。先ほどのオーラで消し飛ばされたのだろう。

 

「今ので充分この槍の恐ろしさが理解出来たようだな。言っておくが今のわざとかわしやすいように放ったのだぞ。次は一片の欠片も残さん」

 

再びロキが槍を振りかぶる。

 

「っ!」

 

それを見て俺はすかさず距離を詰める。

 

「で、あろうな。あの威力を見れば距離を空けるなど愚の骨頂。距離を詰めての近接戦闘を仕掛けるのが定石。だが…」

 

 

――ガギィン!!!

 

 

「浅慮だ」

 

俺の横薙ぎを槍で受け止め、槍を回しながら弾く。

 

「そら!」

 

態勢を崩した俺にすかさず追い打ち、槍を振り下ろす。

 

「ぐおっ!」

 

咄嗟に左手で峰を抑えながら受け止めたが、振り下ろしと同時に放たれたオーラが俺を襲う。

 

「くっそ…!」

 

 

――ドォォォォォン!!!

 

 

俺はそのオーラを止めきれず、地面に叩きつけられてしまう。

 

「ハッハッハッ! ほらほら、我は容赦はせんぞ」

 

地面に叩きつけられた俺に向けて槍を振るってオーラを連続で放つ。

 

「ちっ」

 

俺は転がりながら一撃目をかわすと、すぐさま起き上がり、迫りくるオーラを走りながらかわした。

 

「どうした! 逃げるだけで精一杯か!?」

 

高笑いしながら俺にオーラを放つロキ。

 

「調子に乗るなよ」

 

地を蹴り、一瞬でロキの傍まで飛び上がり、村雨を振り下ろす。

 

 

――ガギィン!!!

 

 

「白痴だな」

 

俺の斬撃をこちらに振り向くことなく槍だけを向けて受け止める。俺の村雨を弾き、俺の額に槍を突く。

 

「…っ」

 

咄嗟に首を傾け、槍を避ける。だが、ロキはすぐさま槍を横薙ぎし、追撃する。俺は上体を後方に下げ、それもかわす。そのままバク転をしながら距離を取る。

 

「ふっ!」

 

態勢を整え、仕切り直し、再びロキに斬りかかる。

 

 

――ギィン! ギィン! ガギィン!!!

 

 

俺の斬撃を槍の中央で受け止める。俺の村雨とグングニルと鍔迫り合いになると、槍の穂の下、口金を掴み、強引に俺の胸に向けて槍を振るう。

 

 

――チッ…。

 

 

「くっ…」

 

身を引いたが、僅かに槍が俺の胸を掠めた。

 

「甘い」

 

 

――ドガァッ!!!

 

 

「ぐっ!」

 

石突が俺の腹に突き刺さり、俺は後方に突き飛ばされた。

 

「ぺっ!」

 

俺は魔力で足場を創り、ブレーキをかけながら態勢を整え、血液の交じった痰を吐き捨てた。

 

「口ほどにもない。我が本気を出せばこのとおりだ。貴様ごとき造作もない相手だ」

 

「…」

 

「魔術に秀でた北欧神話なれど、武術とて疎かにはしていない。貴様がどれ程武術に時間をかけて修練し、研鑽してきたかは知らぬが、所詮は100年あまりの短い時間での話。我は貴様が生を受ける遥か太古からこの世界に君臨している。魔術を極め、僕を生みだす研究の過程でこのとおり極めたわ」

 

「…」

 

「悪魔、天使、堕天使ごときが神であるこの我に歯向かうべきではなかったのだ。だが、今更後悔しても遅いぞ? ここまで我をコケにした罪はもはや貴様らの命でしか贖えん。己の所業を懺悔しながら死んでいくがよい。ハッハッハッ!」

 

高笑いを上げるロキ。

 

『…っ』

 

近接戦闘を以ってしても押されている俺を見て部長を始めとした眷属の皆の表情が曇る。だが…。

 

「フフフッ、ハッハッハッ!」

 

俺はロキの言葉を聞いて高笑いを上げた。

 

「昴…?」

 

そんな俺を見て部長が心配そうな視線を向ける。

 

「フッ! 自身の死を目の前にして気でも狂ったか? だがまあ、この絶望的な状況、もはや笑うしかあるまいな」

 

笑う俺をロキは嘲るような表情で呟く。

 

「ロキ………笑わせるなよ?」

 

笑い声を止めると、俺はロキに言い放った。

 

「武術を極めたと言ったな、その程度で武術を語るなんざ片腹痛いぜ。お前のそれは武術ではない。武術と称する事すらおこがましい」

 

「負け惜しみもそこまで行くと哀れだな。その様でよくその言葉を吐けるものだ」

 

そんな俺を憐れみ染みた表情をしながら言うロキ。

 

「見せてやるよ。本物の武術をな……龍牙」

 

俺は村雨を消し、龍牙の名を呼ぶ。すると、地面に刺さっていた龍牙が俺の手元に飛来し、それを掴み、構えた。

 

「ハッハッハッ! ならば見せてもらおうか。貴様の言う武術とやら――」

 

 

――ドン!!!

 

 

言い終える前に俺は動いていた。魔力で創った足場を蹴り、構えた龍牙をロキの胸目掛けて突いた。

 

 

――バチィィィ!!!

 

 

目前で防御魔方陣で龍牙を止められる。

 

「らぁっ!」

 

「むっ!」

 

俺は渾身の力で槍を押し込む。龍牙は防御魔方陣を突き破り、ロキに向かう。だが、直前でロキは身体を右に逸らしながらかわす。

 

「ハッ!」

 

「くっ!」

 

かわしたロキにすかさず龍牙を振るい、追撃をかける。ロキは咄嗟にグングニルの柄で受け止めた。

 

 

――ガギィン!!!

 

 

龍牙を受け止められるも、俺は槍を強引に振り抜き、ロキを弾き飛ばす。

 

「小癪な…!」

 

弾き飛ばされた勢いを殺し、停止すると、ロキはグングニルを構えて俺との距離を詰めた。

 

 

――ブォン!!!

 

 

グングニルを振り下ろすロキ。俺は右脚を引き身体を半身にしてかわす。

 

「ええい!」

 

振り下ろしたグングニルを今度は振り上げる。俺は左脚を引いてかわした。

 

 

――ブン! ブォン! ブン…!!!

 

 

そこからロキはグングニルを無数に振るい続ける。俺は身体を揺り動かしながらそれをかわしていく。

 

「ちぃっ! ちょこまかと…!」

 

痺れを切らせたロキはグングニルに力を集め、横薙ぎに振るい、前方一帯にオーラを放った。

 

「フッ……くっ!?」

 

勝利を確信したロキは笑みを浮かべたが、すぐに俺の姿がない事に気付く。

 

 

――ズシャッ!!!

 

 

「がっ!」

 

俺はロキがグングニルのオーラを放つ瞬間に背後に回り、逆手で持った龍牙をロキに向けて突いた。ギリギリで俺の姿に気付いたロキは咄嗟に身体を後方に倒して龍牙をかわそうとするも、僅かに胸を斬り裂かれた。

 

 

――バキィッ!!!

 

 

「うごっ!」

 

龍牙を突き入れた直後、俺は龍牙を手放し、反転しながらロキの脇腹に肘鉄を叩き込んだ。

 

「ぐぅっ! おのれおのれおのれぇっ!!!」

 

脇腹を抑えながら激昂したロキがグングニルを構えて俺に再び襲い掛かる。絶えず、俺に向けてグングニルを振るい、突き続けるが、俺はそれを全てかわし続ける。

 

「ええい! 何故だ、何故当たらん!」

 

一向に俺を捉える事が出来ないロキが苛立ちの言葉を吐き出す。

 

「だから言ったろ。お前のそれは武術でも何でもないと…」

 

俺はグングニルをかわしながらロキに告げる。

 

「達人同士の戦いってのは言わば情報戦なんだよ。如何にこちらの情報与えず、相手の情報を手に入れるか…。だが、お前は俺に情報を与え過ぎた」

 

「っ!?」

 

俺が告げた言葉にロキは目を見開く。

 

「達人領域の敵を相手にする場合、相手が動きを見せてから対応していたのでは間に合わない。だから達人は相手の動き出しの筋肉の動きを見て相手の動きの予測を立てて対応する。だから達人は、その動き出しを悟られないようにする工夫するのだが、お前は槍をただ力と能力任せに振るってるだけだ。おかげで先の動きなんざ簡単に読めるからかわすの容易い」

 

「…っ!」

 

「リズムもスピードも、先日の戦いと今の戦いでもう充分過ぎるほど掴んだ。もう、お前のグングニルが俺を捉える事はない」

 

「くっ! 戯言をぉぉぉぉっ!!!」

 

さらに激昂したロキがグングニルに力を集め前方一帯にオーラを放った。俺がいた一帯を消し飛ばしたが…。

 

「そんな大振りの一撃が近距離で当たる訳ないだろ」

 

 

――ズシャッ!!!

 

 

「ぐうっ!」

 

背後に回った俺が背中を向けながら龍牙を脇の下から通し、ロキの背中を斬り裂いた。背中を斬り裂かれたロキは咄嗟に距離を取った。

 

「お前がどれだけの年月を生きていたかは知らない。だがな、俺は短い人生の大半を費やして鍛え上げ、研磨したのが俺の武術、北辰流だ。途方無い年月の片手間で身につけた程度の武術如きで敵うと思うな」

 

「…ぐっ!」

 

「もう1度だけ言う。お前のそれは武術ではない」

 

龍牙を回しながら俺はロキに告げた。

 

「ぐぐぐっ…! 黙れぃっ!」

 

見下していた相手から圧倒され、平静を保てず、遂に怒りを爆発させた。

 

「調子に乗るなよ赤龍帝! たかが武術でこの程度の手傷が何だと言うのだ!? その程度で…!」

 

ロキがバッと両腕を広げると、ロキの周辺から魔方陣が無数に現れ、そこから砲弾が俺目掛けて無数に発射された。

 

「いい加減見飽きた」

 

俺は龍牙の柄の中心を持ち、グルグルと回しながら迫りくる砲弾を防ぐ。

 

「ちぃっ!」

 

今一度ロキが腕を払うと、今度は俺の周囲に魔方陣が現れ、そこから砲弾が発射された。

 

「またそれか?」

 

俺は回した龍牙を前後左右上下に翳しながら砲弾を防ぎ、突きと同時にオーラの砲弾を放ち、魔方陣を破壊していく。

 

 

――ゴォォォォッ!!!

 

 

俺の周囲に展開された魔方陣を破壊した後、自身の周囲にブレイブ・ハートの武器を6つ展開させ、赤龍砲を放ち、ロキの周辺の魔方陣を消し飛ばした。

 

「なっ!?」

 

攻撃用に展開した魔方陣を全て消し飛ばされ、目を見開きながら言葉を失うロキ。

 

「たたみかける」

 

その動揺に付け入る為、俺はすかさずロキとの距離を詰めた。

 

「っ!」

 

 

――ガギィン!!!

 

 

俺が動いたの同時に正気に戻ったロキは俺の龍牙をグングニルの柄で受け止めた。

 

「おぉっ!」

 

受け止められてもお構いなしに龍牙を振り抜き、ロキを弾き飛ばすと同時にバランスを崩す。

 

「二天」

 

龍牙を消し、双剣を手元に呼び寄せ、掴むと、たたらを踏んでいるロキに追撃をかける。

 

 

――ガギィン…ギィン…ギィン…ガギィン!!!

 

 

「ぐっ…くっ…!」

 

連続で間髪入れずに双剣を叩き込む俺の攻撃を防ぐためにロキは防戦一方になる。

 

「ふっ!」

 

 

――ギィィィン!!!

 

 

左右の剣を同時にロキの頭上から叩きつけると、ロキはグングニルを頭上に掲げてそれを防いだ。

 

「お…らぁっ!!!」

 

 

――ドォォォォォン!!!

 

 

それでも俺は渾身の力を込め、左右の剣を振り下ろし、ロキを地面に叩きつけた。

 

「多幻双弓」

 

弓を手元の呼び、ありったけのオーラを込めて矢を創り、弦を目一杯引き、ロキが落下した地点に放った。

 

 

――ドォォォォッ!!!

 

 

着弾と同時に一帯が大きく爆発する。

 

「ぐっ…!」

 

爆煙が舞い上がると、一角から衣服を焦がし、傷を負いながらロキが飛び出してきた。

 

 

――パシュッ…パシュッ!!!

 

 

俺は再び矢を創り、飛び出したロキ目掛けて矢を放っていく。ロキは紙一重でかわしながら距離を取って立て直そうとする。

 

「させねえよ」

 

地面に降りて矢を1発放つと、多幻双弓を消してロキとの距離を詰める。途中で南海覇王を拾い、構え、ロキに振るった。

 

 

――ガギィン!!!

 

 

「ぐぅっ!」

 

どうにか斬撃を防ぐロキ。

 

「この程度で…!」

 

ロキはグングニルから左手を放し、俺に向けた。

 

「死ね!」

 

 

――ゴォォォォッ!!!

 

 

左手から魔力の砲撃が放たれる。俺は咄嗟に上半身を後方に倒し、1回転する。

 

「鈴音」

 

同時に鈴音を呼び、逆手で掴む。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

回転しながら鈴音を振るい、ロキの左腕に一太刀入れた。

 

「うぐっ…!」

 

左腕を斬られたロキは苦悶の声を上げる。俺は着地と同時に右足を上げ、ロキの腹に蹴りをぶち込んだ。

 

「ゴホッ!」

 

蹴りをぶち込むと、身体をくの字に折り曲げながら吹っ飛ぶ。

 

「村雨」

 

村雨を発現させ、切っ先を吹っ飛んでいったロキの方角に向けた。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!』

 

村雨の切っ先にオーラを集めると、俺はそれを一気の倍化させる。

 

「終わりだ」

 

 

――ゴォォォォォォォォッ!!!

 

 

倍化させたオーラをロキ目掛けて放った。

 

 

――ドォォォォォン!!!

 

 

オーラが着弾すると、一帯が大爆発し、消し飛んだ。

 

「やったわ。これならロキも…!」

 

勝利を確信した部長が安堵の笑みを浮かべる。

 

「…………っ!」

 

しばらく着弾地点に視線を向け、警戒していると、1つの影が煙から飛び出した。

 

「ぐぅっ! ……この我が…このような…!」

 

飛び出したロキは空中で止まり、俺を呪い殺すかのごとく視線で睨み付ける。俺の倍化して放った赤龍砲をまともに喰らい、衣服の大半が消し飛び、身体のあちこちから煙が上がり、全身は深い火傷を負い、特に左腕は重症であり、もうまともに動かす事は出来ないだろう。

 

「しぶといな。だが、それだけ負傷した上、今の一撃を防ぐために魔力の大半を失ったお前にもう勝ち目はない」

 

「…っ!」

 

俺が淡々と事実を突きつけると、ロキの表情がさらに歪んだ。

 

「退くというなら追いはしない。とっとと消えるんだな」

 

「ぐぐぐぅっ…! おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぃっ!!!」

 

俺の言葉に激昂したロキが頭を掻きむしり始めた。

 

「この我がぁっ! あぁ悪魔ごときに敗北するなどぉ、あぁあり得ぬ…あり得ぬぞぉぉぉぉっ!!!」

 

ロキは頭を何度も激しく揺らしながら喚き叫ぶ。

 

「ゆぅぅ許さん…許さんぞぉ……この我にぃ…このような屈辱を…」

 

そう叫ぶと、ロキはグングニルに力を集め始めた。

 

…神の意地か、まだやるつもりか。だが、もう奴の動きは見切っている。お前の攻撃は俺には…。

 

グングニルに力を集めると、視線を俺から部長へと向けた。そして、俺の方に向き直り、不敵な笑みを浮かべた。

 

…っ!? まさか…!

 

俺の頭の中に1つの最悪の予感が過り、俺は反射的にロキに向かっていった。同時にロキはグングニルを頭上に掲げると、身体を部長が倒れている方に向けた。

 

…くそっ! やはりか!

 

予感が的中し、俺は焦りの色を浮かべながらロキに向かう。

 

「フハハハハハッ! その表情が見たかったのだよ!」

 

「プライドを捨てたか、ロキ!!!」

 

「くだらぬな。無様に敗北するくらいならば、せめて貴様に最悪の一矢を報いてやろうぞ!」

 

俺の焦りの表情を見て満足そうな表情を浮かべるロキ。奴の狙いは部長。残った力で部長を葬り去るつもりだ。

 

…赤龍砲をただ撃っても止められない。かと言って倍化させようにもさっき最大倍化で放ったばかりだから再度倍化させるのに時間がかかる。直接仕掛けようにも距離が遠い、このままでは…!

 

それでも俺は距離を詰める。

 

…くそっ、間に合わねえ…!!!

 

無情にも、ロキは頭上に掲げたグングニルを振り下ろした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうは問屋が卸さねえぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グングニルを振り下ろそうとしたその時、1本の触手のようなものがロキの腕に絡みつき、それを阻止した。

 

「匙!」

 

ロキの後方、俺と対称の位置の岩山にシトリー眷属の1人の匙元士郎が黒い龍脈(アブソーブション・ライン)を伸ばし、腕を拘束した。

 

「なっ!? 何者だ…!?」

 

突然現れた匙にロキは動揺を隠せない。

 

匙はこの決戦に備え、グリゴリでアザゼル先生の指導を受けていた。決戦当日に姿を現わさなかったからてっきり間に合わなかったのだと思っていたが…。

 

「おのれぇっ! 悪魔風情がこの我の邪魔だてしおってぇぇぇぇっ!!!」

 

予想外のアクシデントにさらに激昂したロキはすかさず左手を絡みついたラインに添え、ラインを解いた。

 

「死ねぇぇぇぇっ!!!」

 

今一度ロキはグングニルを振り下ろそうとする。

 

「匙…、お前は頼りになる仲間だ」

 

「っ!?」

 

 

――ガギィィィィィィン!!!

 

 

匙が伸ばしたラインを解いている間に距離を詰めた俺がロキ目掛けて村雨を振り下ろす。ロキは振り下ろしを中断して俺の斬撃を柄で受け止めた。

 

『Boost』

 

俺の力が倍になる。

 

『Boost』

 

さらに倍になる。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost…!!!!!!!』

 

どんどん倍化させ、俺の力を引き上げていく。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!」

 

俺は渾身の力を込めて村雨を振り下ろす。そして…。

 

 

 

――パキィィィィィィン…!!!

 

 

 

「なん……だと…!?」

 

遂にグングニルが耐えられず、真っ二つに折れた。それを見てロキは目を見開きながら言葉を失う。

 

「今度こそ幕引きだ。残った力、ありったけ叩き込んでやる」

 

村雨を手放し、右の掌に氣を集め、回転させ、左手に氣を込めた。

 

「ディープインパクト!」

 

 

――ゴッ!!!

 

 

「がはっ!」

 

左右の手をロキの腹にぶち込む。右手の氣で身体の外側を、左手の氣で浸透勁で身体の内側を攻撃。身体の外と中を同時攻撃をする。

 

「零式翔脚」

 

 

――ドガッ!!!

 

 

「ごっ!」

 

次に俺はロキの懐に入り潜り込み、身体を捩じり、回転しながら右脚に力を集約させ、ロキの顎を回転の力を加えた蹴りを放ち、ロキをさらに上へと蹴り上げた。

 

「これでラスト!」

 

ロキを蹴り上げたの同時に俺もさらに上に上昇し、ロキを追い抜く。その際、魔力で編み上げた縄をロキに巻き付けた。

 

「俺の持つ技の中でもっとも威力のある彗星爆撃。だがこれは、止まっている敵にしか当たらない、問題だらけの不完全の技」

 

俺はグングン上昇し、やがて雲を超える程の高さまで上昇すると、反転両脚を空に向け、足元に魔力で足場を創り…。

 

 

――ドォン!!!

 

 

縮地で足場を蹴り、高速落下を始めた。

 

「その弱点を補う為、あらかじめ技の対象である敵に魔力で創った縄を巻き付け、引っ張り上げる…!」

 

俺は魔力の縄を引き、ロキをこちら側へと引っ張り寄せる。

 

「敵を俺の方へ、引っ張り寄せ、拳を叩き込む!」

 

 

 

――バキャァァァァァァァァッ!!!

 

 

 

「うごぉっ!!!」

 

引っ張り寄せ、半ば無防備のロキに超高速落下の勢いに加え、引っ張り寄せた勢いを追加した技。

 

「彗星爆撃・廻!!!」

 

 

 

――ドゴォォォォォォォォォン!!!

 

 

 

拳をぶち込み、そのまま地面まで叩きつけた。

 

「きゃっ!」

 

同時に大規模の爆煙が舞い、部長は思わず声を上げて両腕で顔を覆った。

 

煙が晴れると、そこには大きな大きなクレーターが出来た。

 

「…」

 

クレーターに中心に、小刻みに痙攣しながら倒れ伏すロキの姿が現れた。俺はそんなロキの傍まで歩み寄り、腰に括り付けていたミョルニルを手に取った。

 

「これで! …………と、必要は、なさそうだな」

 

ミョルニルの魔力を込め、叩きつけよう……と思ったが、やめた。目の前で倒れているロキはもう満身創痍。もはや瀕死である。もう指一本まともに動かせない。そんな相手にわざわざトドメを刺す必要もないだろう。

 

「今度こそ……終わった…」

 

勝利が確定すると、俺は気が抜け、その場で座り込んだ。

 

「御剣! 大丈夫か!?」

 

そんな俺を心配した匙が俺に駆け寄った。

 

「よう匙、助かったぜ。おかげで部長を守れた」

 

「礼には及ばねえよ。それより、戦いに間に合わなくてすまなかった!」

 

俺が礼を言うと、匙は俺に頭を下げた。

 

「充分に間に合ったよ。あのタイミングだったから、奴の虚を付けた。お前は、最高の仕事をしてくれたよ」

 

「そ、そうか…。お前がそこまで言ってくれるなんてな。…ま、まあそう言ってくれると俺も救われると言うか…ハハッ! ああでも、特訓の成果を全く出せなかったし、これでは会長に顔向けが…」

 

匙は頭を掻きながら照れ笑いを浮かべ、かと思ったら頭を抱えだしたり、忙しい奴だ。

 

「昴」

 

俺の背後から声が届く。

 

「部長」

 

腕を抑えながら部長が俺の傍までやってきた。衣服は所々穴があいており、身体に傷を負っているのが見えた。

 

「よくやったわ。あのロキを1人で…。あなたの主である事を誇らしく思うわ」

 

傍まで寄り、膝を曲げ、視線を俺に合わせると、賛辞の言葉をかけてくれた。

 

「部長こそ、見事な采配でした。おかげで、俺はロキとの戦いに集中する事が出来ました。それより、身体の方は…」

 

「大丈夫よ。傷はアーシアが癒してくれたわ。他の皆も無事よ」

 

部長が振り返ると、その方向に眷属の皆が。木場とゼノヴィアとイリナが笑顔で俺に手を振り、小猫がギャスパーを抱えながら笑顔を向け、ギャスパーは歩くのもしんどそうだが、無理やり笑顔を作ってこちらに向けた。

 

ティアマットは上半身を起こし、拳を握り、バラキエル様は気を失っている朱乃を抱きかかえながらこちらを見て頷き、ロスヴァイセは大岩に背中を預けながら俺に向けながら一礼し、アーシアはそんなロスヴァイセを治癒していた。

 

「私達の、勝利よ」

 

部長がそう言葉を口にすると、俺は高々と右拳を天へと突きあげた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 






技の紹介コーナー…。


――旋氣掌…。

掌に氣を集め、右回転に回転させ、叩き込む際に内側に掌を捻りながら撃ち込む技。例えるならNARUTOの螺旋丸をボクシングのコークスクリューで打ち込む感じです。


――浸透勁…。

氣を相手の体内に撃ち込み、身体の内側からダメージを与える技。


――ディープインパクト…。

旋氣掌と浸透勁を同時に撃ち込み、身体の外と内を同時にダメージを与える技。


――零式翔脚…。

相手の懐に飛び込み、身体を捩じり、回転の勢いと足に集約させた蹴りで相手の顎を蹴り抜き、宙高く蹴り上げる技。


――彗星爆撃・廻…。

Life.85の彗星爆撃の改良。狙いが大雑把にしか付けられず、止まっている相手にしか当てられないという弱点を、上昇の際に相手を魔力で創った縄で縛り付け、落下と同時に縄を力いっぱい引っ張り、こちらに手繰り寄せる事で狙いを付けやすくした技。引っ張り寄せる勢いが加わる為、威力も上がる。NARUTOの裏蓮華のような技。


戦いの決着と同時に一旦切りました。次話で第八章、原作の第七章を終わらせる予定です。久しぶりにこっちを投稿してみて分かった事、原作を読みながら執筆すると、原作引きずられて書けなくなるという事です。大雑把流れだけ頭に入れて、後は自由に書いて方が書きやすいです…(^-^;)

しかし、複数連載はやっぱりしんどいです。3つ4つ連載を抱えて全ての作品を一定の間隔で投稿出来る作者はそれだけで尊敬出来ますわ…(>_<)

感想、アドバイスお待ちしております。

それではまた!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。