万屋鎮守府   作:鬼狐

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この形式、割と書きやすいな。


第一話『ナイフとかが街に降ってくる』

「ふざけてなんかない。俺は本気でこの街を……」

「いやそっちじゃなくてな……あぁもういい。仕事始めんぞ」

 

 グラハゲの勘違いを捨て置き、うんざりとした気持ちを隠さない声で俺はそう言った。気は進まねぇが、仕事は仕事だ。マジクソ(ファッキンシリアス)ベインが受けちまった以上、後払いのみであろうと敵がゴミであろうと掃除するしかない。チッ。さっきまであんなにノリノリの気分だったのによ。

 

「んで、まずはどこからヤる? 一緒に連れてきた奴らは全員ドンパチ向きだ。装備さえくれりゃあ、いつでも始められんぞ」

 

 ぐるり、とこの場にいる艦娘たちを見回しながらグラハゲに言った。武蔵、夕立、不知火、北上、多摩、レクラス、アイアンウーマン高雄、大鳳、その他数名。見事に荒事に慣れた奴らだ。

 ……どうでもいいが妙に静かだなコイツら。あぁ、鼻つまんでんな。臭くて喋りたくねぇのか。一時期スラムの住人と同棲してたこともあるから、俺は慣れているんだが。人間よりもまずはこの拠点の掃除をすべきかもしれねぇ。

 

「装備?」

 

 どこから掃除しようかと考えていた俺の耳に、聞き捨てならない声が聞こえた。グラハゲのモノだ。……明らかに、きょとんとした声。嫌な予感がしやがる。

 

「……オイ、まさかとは思うが。装備の支給はねえのか?」

「あ、あぁ。前に仕事を頼んだときは自前だったから今回もそうかと思っていた」

「チッ……急いで人数だけかき集めて来たから、装備を積み込む暇がなかったんだよ」

「急いで……? 依頼したの、数週間前だったと思うが」

「あぁ? 具体的にいつだ?」

「えーと……○月✕日だな」

 

 そいつぁタンカー食堂での飲み会の日だな。……そういやベインの野郎が酔っ払いながら誰かと電話してメモを取ってた覚えがある。

 

「そろそろブッ殺すべきかもしんねぇな、ベインの野郎……」

 

 つまり、アイツは酔っ払ったまま適当に仕事を受けたあげく、そのことをすっかり忘れていたのだ。メモを見つけて、初めて思い出したに違いない。そんで慌てて俺に丸投げしたわけだ。

 

「クソ。加賀に連絡して武器を運ばせるしかねーな」

 

 この国へはいつものわけわからんオスプレイで来た。もしかしたら何人かは帰すかもしれない、と思い待機させていたが……こんな形で頼ることになるとは思わなんだ――待てよ。オスプレイ。オスプレイか。あの最高高度だのなんだのを無視してステルスで空高くそしてエラい速度で飛べるオスプレイが待機中か。

 

「オイ、グラハ……おっさん。聞きたいことがある」

「なぜ途中でやめた? きちんとグラハムと呼んでく……俺の名前、言ったっけか?」

 

 そんなクソどうでもいいニアミスをしてたのか。まぁ、グラハゲのままで良いだろう。

 

「三つの組織のアジトだの拠点だのは分かってるのか?」

「あぁ。俺の愛人を何人か送り込んでるからな。一組織につき一、二個ぐらいは分かってる。ヤクの保管場所の一つとか、武器の密輸地点とかな」

 

 そんぐらいはしているんだな。武器もねえし前金もねえし何もせずに全部持ってこうとしてんのかと思ってたわ。

 

「それじゃあ……」

「全員可愛いぞ」

「テメェの娼婦の詳細なんざ聞いてねえしどうでもいいわクソボケ」

「娼婦と呼ぶな。娼年と言え。まだ全員未成年だ」

 

 そっちか。まぁ、A合衆国とグレートBにはそういう趣向の人間は多いと聞くしな……どちらにせよどうでもいいが。

 

「どこから嫌がらせするか、こっちで決めて構わねぇよな?」

「あぁ。どうせ全部に嫌がらせするしな」

 

 ならばやることは決まった。最初の嫌がらせ先も、どんな嫌がらせをするかも。

 パン、と手を一つ叩いてメンバーの注目を引く。全員、鼻を抑えて静かにしたままだ。喜べ、お前ら。すぐに苦しみから解放してやる。

 

「この部屋を掃除すんぞ。誰か手袋買ってこい」

 

 

「あぁあアアあぁ……あーァ……ツライ……クルシイ……」

「うるせぇぞレクラス」

 

 ぐったりと項垂れてぶつぶつ言っているレクラスに手袋を投げつけつつ、俺はオスプレイの窓から外を見ていた。当然、行きと同じオスプレイだ。飛んでいる方向は日本、もっと言えば俺たちの万屋鎮守府タンカーだ。……まぁ、たまたまだが。

 別にショタコングラハゲに嫌気が差して帰ろうとしているわけではない。仕事のため、つまり……最初の嫌がらせのためだ。

 

『天龍。予定地点に着いたわよ』

 

 オスプレイ内のスピーカーから、パイロットの加賀の声が聞こえてきた。全然揺れなかったから止まったときどころか動いてるのも全く分からなかったな。いまも空中で止まっているはずだが、全くそんな気がしない。なんなんだこのオスプレイ? ……まぁいい。

 

「オイ。そろそろ起きろ。始めるぞ」

「別に寝てはいなかった。……具合が悪かっただけだ」  

 

 のそり、と武蔵が身体を起こしながらそう言った。武蔵以外の奴らもまるで幽霊のような青い顔色で動き出す。全員乗り物酔いかねえ。ま、あんなもんと同じ空間にいたら吐き気も出てくるか、と俺はオスプレイの奥に置いてある黒い袋に一瞬だけ目をやった。

 

「オ前ラハマダマシダ。オレハ鼻ガイイカラマジデ辛カッタ」

 

 青い顔を更に青くしているレクラスが言った。よほどキツかったらしい。昔のようなググもった声になっている。練習の成果か、いつもはちょいと混ざるぐらいなんだがな。

 

「おい……しょっと」

 

 今にも死にそうな奴らを無視し、ガダン、とオスプレイの後部ハッチを開けた。同時に、空気が流れ込んでくる。カラッと乾いたいい空気だ。オスプレイに充満していた臭いが、一気に消え去っていく。……やや酸素濃度が薄いが。

 

「ハァァァー……いい空気! 無味無臭って素晴らしいネ! 薄いけどー。あ、やっほーみんなー。スーパー北上様だよー。誰を出すか決めてなかったから前話で静かにしてたことになったんだよネー。え? この番外編の時系列? そのうち分かるんじゃないかなー」

 

 ……ようやく喋り出したと思ったら、畳み掛けるように妄言を吐き出しやがるなコイツ。クソうるせえ。意味わからんし、俺に向かってじゃなく俺のやや上を向いて喋ってやがるし。なんなんだマジで。

 

「よし。準備だ」

 

 ガチャン、といつものピエロマスクを付け、青い手袋を嵌める。掃除人が使うようなヤツだ。

 

「触りたくないにゃあ……手袋越しでも……」

 

 はぁ、とため息を履きながら多摩が黒い袋を一つ持ち上げた。元猫のクセに潔癖だな。飼い猫だったのか?

 多摩に倣うように、俺も含めて全員が一つずつ袋を持つ。そして、後部ハッチに並んで立った。遥か下には、低いが広そうな建物が見えている。にんまりと口の端を上げてから、俺はゆっくりと袋の口を開けた。

 さぁ、ショウタイムだ。この街に対する最初の一撃……それも、とてつもなく臭い一撃。嫌がらせにはぴったりの一撃をくれてやる。

 

「ほーらよっと!」

 

 掛け声と共に袋の中身をガッと掴み、下に向かって思い切り放り投げた。風も無ければ障害物も無いため、ソレは艦娘の腕力と重力に従って真っ直ぐに下……数千メートル下へと向かっていく。遠くてよく見えないが、おそらくは建物の屋根に綺麗に落ちただろう。特に確認せず、袋の中身を次々と投げ落とした。

 

「ぽいぽいぽーい!」

 

 楽しそうに無邪気な声を出しながら夕立も袋の中身を投げ捨てて行く。アイツなんでずっと静かだったんだろうな。臭いとか気にしねぇと思うんだが。たまに変な肉喰ってるし。

 夕立と俺だけじゃなく、他の奴らも全員、袋の中身をどんどん下へと投げている。モノはゴミだ。あの地下にあったモンをすべて袋に詰め込み、オスプレイでここまで運んできた。

 近接武器になりそうな錆びたナイフ、年季が入って硬くなった汚物、丸めて血を拭って艦娘握力で硬く握った紙ゴミ、汚染されてそうな注射器、血の付いた鉄パイプ、汚え鍋、その他諸々、あそこにあったものすべてをだ。それをいま、遥か上空から建物……ケビンファミリーが武器を保管している倉庫の一つに投げ落としていた。

 今頃、下は阿鼻叫喚だろう。高層ビルからコインを一枚投げ落としただけでも、地面に突き刺さるという。それより高く、大きいブツが投げ落とされてんだからな。倉庫の屋根、トタンだし。まぁ、多少は落下地点がズレるかもしれねぇが……周囲に被害があったほうがより嫌がらせにはなるだろう。落とすモンは大量にあるしな。

 もしかしたら下では硬いクソが頭に突き刺さって死んだヤツがいるかもしれない。そんな想像をしてしまい、くくく、と口から笑いが漏れた。

 

「汚物を投げながら笑ってる……こわい……サイコパスですサイコパス……いや……スカトロマニアですね……こわい……」

 

 大鳳がこっちを見て引き攣った顔をしながらそう言った。ちげえよ。汚物に触れることに抵抗がないだけで、コレに性的興奮は覚えねえ。万が一そういう人間だったとしても、大鳳(ネクロフィリア)に引かれる筋合いもない。

 

「全部投げきったら飛び降りるぞ。そんで、生き残った奴らを素手で適当にブッ殺しつつ武器をありったけ抱えて逃げる。オーケイ?」

 

 拠点は綺麗になり、嫌がらせもでき、武器も無料で手に入る。一石三鳥の作戦だ。ついでに何人か攫えば情報も手に入るだろう。これで四匹目だ。合理的かつスピーディ。実に良い。ベインのクソに任せていたら、こうはならない。うんうん。

 

『……汚物塗れの武器なんて使いたくないんですが』

 

 不知火のセリフは、聞こえない振りをした。

 

→『七回死にたい男』に続く




まさにクソSS(百万回使いまわされた激うまギャグ)
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