灰色の狼と小さな白猫 作:鯵開き
プロローグ
かつて、天使・悪魔・堕天使に間で起きた大戦争
その最中、堕天使陣営では他勢力への兵器として、三本のベルトを作り出した。
デルタギア
カイザギア
ファイズギア
これを使用することであらゆる生物に有毒な【フォトンブラッド】を巡らせた戦士【ライダー】へと変身することができる。
しかし、三本のベルトには欠点があった。
適合者でなければ運用不可能──ということだ。
デルタギアは適合者以外が変身すればその者を凶暴化させる。
カイザギアは適合者以外が変身すれば変身解除後に灰化し死亡する。
ファイズギアは適合者でなければそもそも変身すらできない。
この欠点により適合者探しは難航した。
デルタギア、カイザギアは下級堕天使を使い捨てにする案も出たが実現はしなかった。
そしてとうとう、適合者が現れないまま二天龍の出現という異常事態によって戦争は終結。
用済みとなった三本のベルトはお蔵入りとなり、二度と日の目をみることはない……
……はずだった。
─千年後 冥界 グリゴリ─
「何?ファイズギアとデルタギアが紛失?」
「はい」
冥界にあるグリゴリの一室にそんな声が響いた。
「マジか、面倒なことに」
部下の報告に─アザゼル─は頭を抱えた。
「すぐに探せ!ファイズギアはともかくデルタギアなんて危険物を野放しにしておく訳にはいかねぇ!」
立ち上がり、血相を変えて叫ぶアザゼル。
「は、はッ!」
部下の堕天使は即座に部屋を飛び出して行った。
「くそ!見つかってくれよ」
アザゼルは深刻な顔で呟いた。
しかし、アザゼルの思いとは裏腹にこの後に行われた大々的な捜索も虚しくファイズギア、デルタギアが見つかることはなかった。
────────────────────────────────────────────────────────────────────────────── ─────────
─三年後 日本 駒王町─
「眠みぃ」
風吹きすさぶ中、昼下がりの道を歩く少年が一人、呟いた。
容姿は比較的整ってはいるものの、無造作に切った黒髪と鋭い目付きが威圧感と危険な香りを与えており、まるで狼のような印象を醸し出している。
彼の名前は【
彼はつい先日にここ【駒王町】にある【駒王学園】の二年に進級したばかりであり、今日はホームルームだけであったため早めに帰宅したのである。
路地を曲がった時巧真に声が掛けられた。
「ひさしぶりだな」
その声に振り向いた巧真の前に5歳ほど年上の青年が立っていた。
黒髪の整った顔立ちで漢服に身を包んでいる。
巧真は青年を一目見るなり言った。
「曹操か」
そう言うと、男─曹操─は頷き肯定した。
「何の用…と聞くまでもないか」
「そうだな。単刀直入に言う。戻るつもりはないか?」
曹操はそう言って巧真を見つめた。
「言ったはずだ。俺はもう戻らない」
「そう、か。ならば君を殺そう」
「……」
曹操と巧真の間に張り詰めた空気が流れる。
が、それは一瞬のことだった。
すぐに曹操から発せられた殺気が霧散する。その様子を巧真はどこか他人事のように静観していた。
「やめておこう、今の君に殺す価値はない」
「用がすんだらとっとと帰れ」
「手厳しいな。今回はこれで去ろう、また来るよ」
「二度と来んな」
巧真の声を背に受けて曹操は去っていった。巧真はその背中が消え去るまでじっと見つめていた。
巧真は自宅へと入った。ごく普通の一戸建てに彼は一人で住んでいる。前はともに住んでいた保護者がいたのだが高校に入ると同時に「旅に出る」と言って出ていったのだ。
「あいつもしつこいな」
ラフな格好に着替えた巧真はソファに体を預けるとどこか懐かしそうにつつ呟いた。
電気を消し、安物のパイプベッドに潜り込む。
「“殺す価値はない”か。その通りだな」
どこか悲しみを称えた顔で彼はぽつりとそう言った。