灰色の狼と小さな白猫   作:鯵開き

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第十話 授業参観

 

「粘土を自由に使って作りましょう。そういう英会話もある」

 

 

無えよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業参観のこの日、英語の授業が図工になった。

 

「何作ろうか」

「「おっぱいだな!」」

「粘土もまたローマである」

「そもそもそんな英会話あるのか?」

 

周りの奴も困惑気味だ。何人かネタに走った奴がいるが。

 

「なにを作るか」

 

適当に粘土を捏ねつつ考える。

曹操に貰ったバイク、名前はオートバジンと言うらしい。

あれを作るか、いや面倒そうだしやめとくか。

 

──君ほどの男が何に怯えているんだ──

 

ふと、白龍皇の言葉を思い出す。

 

怯えている。か、特に覚えはないが。

 

それにしても、白龍皇、ヴァーリとかいったか。兵藤のところにも現れたらしいが、コカビエルとの戦いがあったあの夜の様子からみて、白龍皇は堕天使の関係者、それも総督アザゼルに近しい立場だろうに、それが会談前のデリケートな時期にこうも頻繁に接触してくる理由はなんだ?

 

 

「乾、乾」

 

考えていると桐生が声をかけてきた。

 

「なんだ」

「もうすぐ時間だけどどうすんのよ?あんた何も作ってないじゃない」

 

いつの間にかそんなに経ってたのか。チラリと手元を見ると非常によく練られた粘土の塊があった。

 

「なんだあの人だかり」

 

桐生に視線を移す途中に人だかりが見えた。

 

「ああ、あれね。兵藤がリアス先輩の全裸像作ったのよ。これが完成度高くて、オークションすら始まった訳」

「そうか」

 

人だかりができるとはな、よっぽど完成度が高かったんだろう。

 

とりあえず兵藤、なぜ部長を作った。よっぽど恋しかったのか。

 

「で、そんなことよりあんたはどうすんの?」

「適当に作るさ」

「あそ、ま、頑張んなさい」

 

桐生はそれだけ言ってさっさと人混みに紛れていった。

 

 

 

 

 

「なんでしょうか。あの人だかり」

「さあな」

 

いつも通り食事を終えた俺と塔城は二人で校舎に戻ってきたのだが、なぜかできている人だかりに遭遇した。

 

「あ、小猫ちゃんと乾。二人揃って何やってんだよ」

「兵藤に、部長」

「皆揃っています」

「こんにちは二人とも」

 

声をかけられ振り返るとそこには兵藤と部長、それからゼノヴィアを除くオカ研メンバー全員がいた。

 

「あれなんだ?」

「それできたんだよ。俺たちも」

「ええ、祐斗が言うには魔女っ子の撮影をしてるみたいだけど」

 

兵藤の言葉に続いて補足する部長。

そうか、兵藤達もあの人だかりに用があったのか。にしても魔女っ子ね。どこの誰だか。

 

「俺も気になるからな、ついて行くぜ」

「乾がそんなこと言うなんて珍しいな」

「ほっとけ」

「えっ!」

 

オカ研で人だかりに近づくと、部長が狼狽し始めた。

人だかりの中心を見ると確かに魔女っ子、というか魔法少女がいた。ひらひらした日曜朝8時半みたいな痛々しい格好だが、素体が良いため非常によく似合っている。

そんな魔法少女に、なぜ部長が狼狽したのかがわからないが。

 

「はいはい、生徒会だ。校内での撮影は禁止。散った散った」

 

その時、生徒会の匙が現れて人だかりを散らせた。

 

「あの、そのような格好では困ります。場に合わせた衣装をですね」

「これが私の正装だもん」

 

全く聞く耳を持たない魔法少女に匙の顔がひきつっていた。

 

「匙、何をしているのです」

「ソーナちゃん見っけ☆」

 

そこにやって来た生徒会長に魔法少女が抱きついた。

この人は一体。

 

「やあセラフォルー、君も来ていたのか」

 

会長の少し後からやって来たのは、赤い髪の魔王と同じく赤い髪のダンディなおっさんだった。

セラフォルー、ね。聞き覚えがあるが、まさか、な。

 

「レヴィアタン様よ」

「えええええ!」

 

部長からの補足に兵藤が驚愕していた。そりゃそうだ、魔王だぜ目の前の魔法少女。

それから、部長の父親とサーゼクス・ルシファー、それからセラフォルー・レヴィアタンが何言か会話をしていたが、セラフォルー・レヴィアタンこちらを向いた。

 

「君たちが赤龍帝くんとファイズくんだね。私はセラフォルー・レヴィアタンだよ!レヴィアたんって呼んでね♪」

 

頭が痛くなってきた。

これが魔王なのか?

 

俺の頭の中の魔王像が崩れていく。

サーゼクス・ルシファーもどちらかと言えば軽めだが、まさか残り人も軽いのか?さすがにセラフォルーほどじゃねえはず、だろ?

 

二人目の魔王はかなりの衝撃を俺にもたらした魔法少女、いや、魔王少女だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日からよろしくお願いします」

「ああ、こっちこそな」

 

自宅の居間でテーブル越しに向かい合いながら塔城が言う。

そんな塔城の隣には何やら大荷物が置いてあった。

 

なぜか、それはつい二時間前までさかのぼる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「乾君。白龍皇が接触してきたそうだね」

「まあ」

 

放課後、オカ研の部室で魔王サーゼクスがそんなことを聞いてきた。

 

「そういえば、報告を受けたわね。それからはどう?」

 

部長も続けて言う。あれから接触はない。

 

「特に」

「そう」

 

そう答えると魔王サーゼクスは思案顔になった。

 

「乾君、僕は君に護衛をつけるべきだと思うよ」

「何?」

 

思わず声が出た。

 

「理由としては、乾君がコカビエルを追い詰める程の実力者だと言うことだ。それは白龍皇も同じだが、君との違いは後ろ楯の有無なんだよ。つまり、組織もしくは個人が乾君もしくはベルトを狙って多少強引な手段をとる、可能性がある」

「なるほど」

 

後ろ楯のない俺は狙われ易い、ということか。故に護衛を。

 

「問題はその護衛を誰にするか、ということだね」

 

確かにな、知らない奴が周りをうろちょろしてたんじゃ落ち着かない。

数秒考えて、魔王サーゼクスは何かを思い付いたのか塔城を見つめた。

 

「そういえば、塔城君は彼の監視役をしていたんだったかな」

「……はい」

 

塔城が答える。

やな予感がしてきた。

 

「リアスちょっといいかい?」

「はい」

 

少し離れて二人が話す。

ややあって戻ってきた二人の内の部長が一歩前に進み出て言った。

 

「小猫、新たに命令を下すわ」

「はい」

「巧真の監視役を続行しつつ住み込みで護衛役も兼任なさい」

「おい、ちょっと待て!」

「どうしたの巧真。何か不満が?」

 

あるに決まってんだろが!

 

「監視役の続行は構わない。護衛役も問題ない。だがな、なんで俺の家に住むことになる!」

「その方が効率がいいのよ。調べたけれど部屋が余っているのでしょう?」

 

確かに余っている。だが、突然人を住まわせる何てことをそうやすやすと納得できるか。

 

「塔城だっていやだろ」

 

本人が嫌がればなんとかなる。そんな思いで塔城に問いかけた。

 

「…………いいです」

「なん……だと」

 

裏切られた気分だが、本人が嫌がらない以上どうしようもない。俺は住まわせられない理由があるわけでもない訳で。

 

「さて、決定したわね。小猫すぐに支度をして頂戴」

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけだ。ごねたが知らない奴が住み込むよりましか、ということで納得した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




無理矢理ですが、なんとか同居まで持っていけました。
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