灰色の狼と小さな白猫   作:鯵開き

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二年ぶりぐらいの投稿です。長らくお待たせいたしました。
本当に申し訳ありません。

駄文は変わりませんが、今話もよろしくお願いいたします。


第十二話 三大勢力会談 前編

アザゼルの思惑がわからないまま、三大勢力の会談の日がやって来た。

 

放課後、俺は部室にて久しぶりに渡されたファイズギアを抱えながら塔城と話をしていた。

 

「つまり、ギャスパーは留守番になるわけか」

「はい、ギャー君はまだ神器を制御できてませんから」

 

ギャスパーは留守番だというが、一人で問題ないだろうか?いや、今まで一人で引きこもっていられたんだ。数時間の留守番くらいなんてことはないだろう。兵藤がギャスパー用にゲームを持ってきているみたいだしな。

それにしても、あれからいろいろあって、ギャスパーは随分兵藤になついたようだ。まあ、もともと変態なことを除けばいい奴だ。兵藤との依頼でミスって凹むギャスパーを励まして、オカ研男子で夜通し猥談した結果だろう。

 

「さ、行くわよ」

 

部長の言葉に従い、ギャスパーを除く全員が会場である新校舎の職員会議室へ移った。

 

 

 

 

 

「さて、お次はファイズ。いや、乾巧真。お前についてだ」

 

和平交渉の終盤。話も纏まった辺りでアザゼルが水を向けてきた。俺はその言葉に従いテーブルへとファイズギアを置いた。

 

「お前の持つファイズギアについて詳しく話しておこう」

 

アザゼルの言葉に興味深そうに、魔王二人と天使二人(ミカエルとガブリエル)が先を促した。

 

「まず、ファイズギアってのは、俺が戦争中に何でも殺せる兵器として作った強化スーツのことでな。これの他にあと二本、カイザギア、デルタギアの三本のベルトがある」

「何でも殺せる兵器?」

 

兵藤が不思議そうに首を傾げた。何日か前にサーゼクス、立ち会いのもと性能の調査を行ったが、パワーは普通のルーク、スピードもポーンよりは速いがナイトには及ばない。スペックだけなら精々力自慢の中級悪魔といったところという結果だった。

 

「ああ、ファイズはスペックこそ大したこと無いが、こいつの真骨頂はそこじゃねえ。万物に対する毒フォトンブラッドが各攻撃に付与されてるのさ」

 

フォトンブラッドという言葉にその名を知る連中が凍りついた。

何人か知らない奴が不思議そうに首を傾げている。

 

「フォトンブラッドってのはさっきも言ったが万物に対する毒だ。どんくらいかっつうと、毒で想像できる一番強い奴の数千倍かつ超速効性で浸透性を高い。そしてくらうと灰になっちまう」

 

想像したのか兵藤の顔がひきつっている。

ここでサーゼクスから何故戦争で使わなかったのかと質問が出た。

 

「使わなかったのは単に使える奴が居なかったからだよ。ちょっとファイズギア借りるぞ」

 

アザゼルは立ち上がってベルトを腰に巻き付けてコードを入力し、ベルトにセットした。

その瞬間、轟音と共にスパークを放ちながらベルトが吹き飛んだ。兵藤が慌ててキャッチする。

 

「とまぁ、こんな感じでだ。ファイズギアの場合、適合しない奴は変身出来ねぇのさ」

「ファイズギアは、ってことは他の二本はどうなの?」

「死ぬぞ」

 

ファイズギアを受け取って再びテーブルへと戻しながら、セラフォルーの質問に対してあっけらかんと答えたアザゼルにミカエルが詳しく説明するように促す。

 

「カイザギアは適合しない奴は変身することはできるが、解除後に灰になって死ぬ。デルタギアは変身できるが解除後に精神に異常をきたして自滅するってわけだ」

 

これが解決しないまま戦争がおわり、そのままお蔵入りになったのだと説明するアザゼル。

「それがどうして乾君の手元にあるんだい?」

「それが三年前、紛失したんだよ。デルタとファイズの二本がな。そこからは乾が知ってるんじゃないか?」

 

話を振られた俺はようやく呼ばれた意味を理解した。要するに俺の経歴とファイズギアの入手経路について聞くためだったのだ。こうして三大勢力の長の前に出すことで逃げ道を塞いだのだろう。

 

俺はため息をついて口を開いた。

 

「わかっ……わかり、ました。説明します」

 

流石にこの状況で敬語を使わないわけにはいかない。おい塔城。俺の敬語がそんなに面白いか?肩震わせて笑ってんじゃねえよ

 

「俺は、つい二年前までとある組織に所属してました。その組織で戦闘員をしていた俺に当時のボスが武器として渡してきたんです」

「ボスはどこで、ファイズギアを見つけたんだ?」

「さあ、古道具屋で売ってたとは言ってましたけど」

 

その説明に不承不承といった様子でアザゼルが頷く。ついで、話は組織の方にシフトしていった。

 

「組織は二年前に壊滅しました。生き残りはボスと俺だけです」

「どんな組織だったのかな?」

 

サーゼクスの質問に俺は一瞬逡巡したものの答えることにした。あまり思い出したくはないのだが。

 

「神器や異能なんかで身寄りのない子供たちを保護する組織でした。ボスと俺ともう一人の三人で立ち上げた小さい組織で、山奥の古い屋敷を買い取ってアジトにしてました」

「確かに二年前までそんな組織があったな日本を中心に活動してたみたいだが。何て名前だったか」

 

アザゼルが俺の話に思い出したように言った。それでも組織が小さ過ぎて名前すら定かではないらしいが。

 

俺の過去の話を皆興味深そうに聞いていた。さらに話は壊滅のきっかけに向いていく。

 

「あれは、組織の一周年記念のパーティーの日でした。創設した俺達三人は所用でそれぞれ出掛けてたので、遅れてアジトに向かったんです」

 

 

 

────────────────────────────────

──────────────────

 

部屋の中の灰の山。

 

 

 

『どうなっている』

 

 

 

部屋の入り口で、アタッシュケースを持った少年が茫然と立ち尽くす。

 

 

 

─なんだ!これは!─

 

『坂上か』

 

 

 

部屋の入り口に現れたアタッシュケースを持った青年─坂上─は中を見ると慌てて入っていった。

そして呆然と中を見回す。ややあって、男は何かに納得したのか乾を見る。その顔は憤怒に歪みながらも目だけはドロリと濁っていた。

 

 

─乾!そうか!─

 

『坂上?ぐわ!』

 

 

 

坂上はアタッシュケースを振るい、乾を攻撃する。突然の一撃に、乾は踏ん張ることも出来ずに外へと叩き出された。

 

雨が乾の体を濡らす。

 

 

 

 

 

坂上はアタッシュケースを開けると中からデルタギアをとりだし、腰へと取り付けた。

 

 

 

乾は困惑した表情のまま、しかし、反射的にアタッシュケースを開けるとファイズギアをとりだし、ベルトを腰に巻き付けた

 

 

 

雨の中、二つの影が対峙する。

 

 

 

─遂に本性を現したな!化物が!─

 

『違う!俺は……』

 

─黙れ!殺してやる!変身!─

 

『クッ!やるしかねぇのか?変身!』

 

 二つの影が姿を変える。

 

一つは白いラインを巡らせ、もう一つは赤のラインを巡らせる。

 

 

 

白いラインのデルタがファイズに向かって走り出した。

 

 

『落ち着け!俺じゃない!』

─黙れ!貴様が皆を!─

 

揉み合いになる二人の前に新たな人影が現れる。それは黒い髪青年だった。彼の登場に二人は思わず静止した。

 

─ねぇ。二人とも。なんでかなぁ?─

 

青年は泣きそうな声で続ける。

 

─声がするんだ。頭の中の声がやれって、仲間を増やせって。だからさ。俺、やっちゃったよ─

 

次の瞬間、青年の姿が変わる。灰色の馬と騎士が融合したような怪物へと変貌した。

 

─────────────────────────────────

──────────────────

 

「原因は仲間の一人がオルフェノクの声に支配されたせいだった。そしてその戦いで二人は死んで、俺は組織を抜けた。もう、死んでく奴を見たくなかったんです」

 

語り終えると沈黙が満ちた。

ややあって、サーゼクスが口を開いた。

 

「聞かせてくれてありがとう。乾君」

 

その言葉で俺への質問は終わった。他のメンバーのところまで下がると、隣の塔城がソッと袖を掴んだ。

 

「なんだよ」

「いえ、なんとなく、です」

 

塔城のことはとりあえず放っておこう。

 

「あの、オルフェノクってなんなんですか?」

 

兵藤が質問する。まぁ、裏に関わったことのない奴は知らないのも当然か。

 

「オルフェノクってのは、並の悪魔や堕天使並の力を持つ人間の進化体のことでな。人が死んだとき、低確率で進化して蘇生するんだ。ただ、あまりにも急激な進化に体が付いていかなくてな、短命の奴が多い」

 

アザゼルの説明になるほど、と兵藤は頷く。それを確認してアザゼルは続けた。

 

「ここまでなら寿命の短い転生悪魔みたいなもんなんだが。コイツらは恐ろしことに殺し方が確立してねぇのさ」

 

その言葉に兵藤は疑問符を浮かべた。その様子に苦笑してサーゼクスが口を開く。

 

「そのままの意味だよ。現状彼らを倒すには超強力な火力で消し飛ばす以外に無いんだ」

 

その方法だと周りへの被害が尋常じゃないという弱点がある

 

「そして、もう一つ、俺でも食らえば死にかねない力を連中は持ってる。短命のオルフェノクが仲間を増やすための方法として、使徒再生ってもんがあるんだ。これをくらうとオルフェノクになれる奴以外は灰になって死ぬ。しかも人の進化体だからな、人以外の種族がくらうと確定で灰になる」

 

その言葉に兵藤が青ざめる。さっきからコロコロ表情の変わる奴だ。

 

「でも、それならやらない奴もいるんじゃ」

「ああ、いる。でもな、そういう奴の頭の中に、声が聞こえるらしいんだ。仲間を増やせ。ってな。乾の所のもそれに支配されたんだろう?」

 

アザゼルの言葉に頷く。あれは抗い難いものらしいからな。

 

オルフェノクの講義を終えてそろそろお開きかと思った瞬間だった。

 

 

 

 

世界が静止した。

 

 

 

 

 

 

 




完結はさせるつもりです。本当にお待たせいたしました。

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